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231名無しさん@お腹いっぱい。

「いま親はいませんの。ワタクシが館の主をしていますのよ」
親がいないのか。
不安の種だった、クルエラの親との面接がないと分かり、俺は安堵した。
しかしまてよ、親がいないという事は誰がクルエラの保護者なのだろうか。
「今はお前、いや君と使用人だけで暮らしているのか」
それとなく俺はクルエラに聞く。
「使用人はいませんわ。ついこの前、辞めてしまいましたの。ちょうどあなたがいらして、良かったですわ」
この子は本当に俺を使用人として勧める気でいるのか。
だが、勧める相手は誰だ。
「1人で住んでいるのか」
そんな訳ないと思いながら、クルエラに尋ねる。
「いいえ、吟という、なんといえばいいのかしら、そう、友達と暮らしていますわ。あと、今はお客様が2人来ていますわね」
どうやら保護者はいないらしい。
吟という人はクルエラの友達という事だから、まだ子供なのだろうな。
「保護者もいないで、子供だけでどうやって暮らしているんだ」
はっきりと俺はクルエラに聞いてみた。
ん、返事がない。
どうしたんだろうとクルエラの顔色を窺おうとした時、クルエラがしゃべり出した。
「ワタクシ、見た目ほど子供ではありませんの。追々お話していきますわ」
どうみても子供だろうと思ったが、ひょっとしたら本当に彼女が自分の雇い主になるのではと思い、俺は謝罪した。
「悪かった」
歩きながら、クルエラは俺の方へ振り向くと、悲しそうに微笑んで言った。
「ほら、見えて参りましたわ」
遠くを見ると、確かに洋館らしきものがあった。
彼女が見せた表情の意味を深く考えず、俺は目の前の物に興味を持った。
木々に囲まれ、館はあった。
館の屋根や木々にはカラスがたくさん留まり、何羽かこちらを見ている。
そして、周りには道らしきものがなかった。
人が住む場所の近くに道がない風景を見慣れてないせいか、俺は違和感を覚えた。
肝心の洋館はというと基本は2階建ての建物に屋根裏部屋や3階建ての尖塔を加えたような感じだった。
部屋の数はここから見える窓の数からいって3、40ほどありそうだ。
いわゆる豪邸というやつなのだろう。
「昔はもっといい家で暮らしていましたのよ」
恥ずかしそうにクルエラは言った。
これでも立派な建物に思えたのだが、俺は彼女と住んでいる世界に違いを感じた。