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そこには9歳くらいの少女がいた。
髪は金色でおそらく外人の子供だ。
流ちょうに日本語を話していたから、幼い頃から日本で暮らしているのか。
それにしても、随分と高そうな服を着ているな。
きっとお金持ちの娘なのだろう。
「やっぱり、思った通りだわ。あなた、綺麗な目をしてますのね」
少女が更に言葉を投げかけてきた。
正直、うっとおしい。
早くどこかへ行って欲しかった。
「こんな所で何をしていますの? あら、よく見たら服がぼろぼろですわ。お髭も手入れをしてはいかが? 今よりもずっと男前になると思いますの」
一目見たら、俺の汚い身なりがまっさきに分かるだろ。
この子供はどこに目を付けていたんだ。
それとも、まさか、この子供は俺に嫌みを言っているのか。
優しげに語りかけてくれるのは偽りで、実は俺の事を腹の中で笑っている? いやいや、こんな子供がそんなに高度な事をできるとは思えない。
浮浪者の俺だが、31年間生きてきた。
子供からの悪意に気づけないはずはない。
「ワタクシはツインクルクルエラといいますの。どうぞよろしくして下さいな」
ツインクルクルエラだと、変な名前だな。
ツインクルだから、英語圏の人間か。
アメリカかイギリスか。
クルエラはずっと前に映画の登場人物で見た記憶があったな。
確か犬が101匹でてくる話だった。
あの頃は俺も仕事をしていて、社内の女と一緒に映画を見ていたんだった。
今思えば、女と映画を見た事そのものが架空の出来事のようにさえ思えてくる。
……俺は何を考えているんだ。
相手は子供とはいえ、気を許してはいけない。
リストラされた時の事を思い出せ。
人を信じると痛い目にあう。
軽々しく人を信じるな。
自問自答をしていた間、少女は俺の事を澄んだ瞳で見続けていた。
心を見透かされているようで居心地が悪くなってきた。
ええい、もういい、さっさと答えて、この子にはどこかへ行ってもらおう。
「川を見ていた」
分かったら、どこかへ行ってくれと続けようとしたが声が出なかった。
しばらく人と話していなかったからか、糞。
「まあ、そうなの。顔に似合わず、ロマンチストですのね」
どうでもいい、早くいなくなれ。
「あなた、お名前をお聞きしてもいいかしら」
こいつ、まだ言うのか。
早くいなくなれ。
いい加減、早くいなくなってくれ。
目の前の少女は俺が答えるのをじっと待っていた、俺の目を見続けて。