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国王は笑顔を浮かべていた。その顔は数百年前のあの青年と同じ顔だったが、彼の豪放磊落な笑いとは
似ても似つかない、育ちの良さそうな穏やかな微笑みだった。少女は思わず、彼に目を奪われてしまった。
「誰が、誰とじゃ?」
少し間をおいて、気を取り直した少女が聞き返す。
「わたしが、あなたと。」
国王がはっきりとそう言っても、少女はその意味を理解するのに時間を要した。
「え? えええええ? な、なんじゃとぉ!?」
数秒の間をおいて少女は叫んだ。
「ど、どういうつもりじゃ? わらわを辞めさせないための詭弁か?」
「いいえ。お仕事は辞めてくださって結構です。
むしろ辞めていただかなければ王族の行事との兼ね合いで困ります。」
「それでは、なんじゃ、お主はまさか童女趣味じゃとでも…
はっ!まさかそれで今まで結婚しなかったというのか!?」
「大ババさま、その、少し落ち着いてください。」
国王はそう言って、少女を静かにさせてから口を開いた。
「私は、あなたの見た目の年齢より幼き頃から、あなたのことをお慕いしておりました。しかし、あなたは伝説の英雄であり、
永遠の存在。私にはどうすることも出来ない存在だと思っておりました。だから、この想いを伝えることもできずにいました。
かと言って他の女性に興味をもつことも出来ず、今に至ったのです。」
どうやら本気らしい告白に、少女は非常にむずがゆい感じがした。なにせ数百年生きてはじめて告白されたのだ。
これまでそういう事が無かったのは少女の器量や見た目の年齢の問題以上に、彼女の存在の特殊さが原因だった。
しかし、少女自身はそうは考えず、自分が子供であるため、女性として興味をもたれる存在ではないと思い込んでいたのだ。
「ですが、このままではあなたは永遠に私の手の届かないところへ行ってしまう。
それだけは我慢できません。その命を捨てるぐらいならば、私に預けてください。」
そこまで聞いて、少女の顔はすでに熟れすぎた林檎のように赤くなっていた。
「わ、わらわ以外には興味がわかぬじゃと?
つまりは成人女性に興味がない重度の童女趣味ではないか。変態めが。」
少女は顔をそむけながらそう言った。顔を向けずに悪態をつく様子を、国王は決意を変えないための
ポーズだと受け取った。つまりは、否定的な答えだ。国王の顔に落胆の影が浮かぶ。
「…しかし、本物の子供に手を出されても困る。
じゃから、なんじゃ…その、わらわで満足してもらうしかあるまい。」
「は?」
今度は国王の方が、よく理解できなかった。まごつく国王に少女は少しいらだったようすで振り向いた。
「ええい、もの分かりの悪い! お主の嫁になってやると言っておるのじゃ。」
少女のその言葉に、国王の顔がパッと明るくなった。
「大ババさま!」
国王は少女に思い切り抱きついた。
「こ、こら、花嫁に大ババはなかろう!」