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222名無しさん@お腹いっぱい。

 少女は城の一角を占める塔へと足を運んだ。すると、白髪の老婆が少女を出迎えた。

「師匠、お疲れさまです。」

 頭を下げる老婆に、少女は顔をあげるように言って報告を求めた。

「鳥が一羽ぶつかった以外は城内の魔法結界に異常はありません。先日届いた魔法兵用のロッドは
新兵への配布を終えました、現在私の部下が新兵に使用方法を教習中です。」

「鳥は?」

「死にました。丸焦げです。」

「最近は猟友会や動物愛護団体がうるさい。結界の出力を下げるように。」

 少女は老婆に指示を与えると、自分は塔の中の一室である自室に入った。
部屋の中には、分厚い辞書や百科事典のような本が棚を占拠し、床には動物の骨や
幾何学文様の書かれた布が散らばっていた。

(さて、何をしよう?)

 少女は辺りを見回したり、手帳を確認したが、特にするべき事が見当たらなかった。
たいていのことは優秀な弟子や部下に任せておけば片がついてしまう。人手は足りているし、
国内に異変も無ければ、急ぎの研究課題もない。天下泰平、鼓腹撃壌、世はつとめて平和だった。

「平和になったものだな…」

 誰に言うでもなく、少女は虚空に語りかけた。

つい、数百年前には人類は存亡をかけて魔王と戦っていたというのに――