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221名無しさん@お腹いっぱい。

「大ババさま、覚悟っ!」

 10歳ばかりに見える少女に、木剣を握った青年が飛びかかった。

「おそい。」

 少女は体を横にそらすだけで木剣をかわすと、青年の額に杖を突きつけた。

「…ま、まいりました。」

 青年はがっくりと肩を落とした。

「接近戦で魔法使いに勝てない程度の剣術では、意味がないぞ。」

 からかうような口調で、少女は言った。

「全くもって。精進いたします。」

 青年は姿勢を正し、うやうやしく少女に頭を下げた。

「生半可な剣術など必要なかろう?」

「我が朝の初代は剣で魔王を打ち破り、国を手に入れました。
剣術を学ぶのは先祖にあやかりたいが故です。」

 少女の問いに青年は凛として答えた。技量の半端さとは裏腹に、志と表情だけは一人前である。
少女はなぜかそんな青年から顔をそむけた。

「そんなことよりも、早く結婚せぬか。即位から何年経っておるのじゃ?
王たるものがいつまでも嫁の一人も得られぬようでは国の面子に関わるぞ。」

 そして、その幼い容姿にはそぐわない、世話焼きおばさんのような説教をはじめる。

「王とは言え人間です。相手を選ぶのは当然のことでしょう。」

 毎度のことなのか、青年も慣れた感じで反発した。

「それに、数百年間一度も結婚しなかった大ババさまに言われても説得力に欠けます。」

 事実であるが故、少女は反論できなかった。

「もうよいわ! 全く態度ばかり大きくなりおって。」

 それだけ言うと、少女は静かに道場を後にした。