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会社をリストラされた。
だから、僕は平日の公園を他にやる事無く彷徨っていた。ブランコに腰掛けてキィキィと金属の擦れる音を耳にしながら、何をするでもなく景色を眺める。その陽気な気温は日々の苦労を容易に押し流すだけの安穏を保っていた。
決して日々の努力を怠っていた訳ではない。しかし、平成の不況は個人の憂慮など気に掛ける事無く決断を与えた。だから、今こうして先立つものも無くスーツの僕はある。幸いにして独身だが、それでも一年と経たず貯金は尽きるだろう。
だから、何か職を探さねばならなかった。
そんな時だった、彼女から声を掛けられたのは。
「お暇ですかか?」
「え?」
不意に声を掛けられて後ろを振り返る。
すると、そこには一人、女性が立っていた。
びしっとスーツを着た成人女性である。如何にも仕事が出来る風を思わせる外観をしていた。平日の公園に佇む存在としては場違いだ。だから、次いで自分が返した言葉は疑問をそのままである。
「あの、自分ですか?」
「他に人が居ますか?」
「いや、まあ、こんな時間帯ですから……」
それが自然と自分に対する皮肉に聞こえて言葉を濁す。
「あ、いえ、別に強く当たった訳では無いのですよ」
「僕に、何か用ですか?」
勿論、相手に面識は無かった。
「お暇でしょうか?」
「え、ええ、こんな具合ですから、明日の食い扶持に頭を悩ませるくらいですよ」
「そうですか、それは良かったです」
「え?」
軽やかに語ってみせる女性の言葉に驚いたのも束の間、相手は更なる驚愕を与えるべく言葉を続けた。それは仕事を失って数日を過ぎた自分には、あまりにも話の合う語りであった。
「私、人を探しておりました」