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「み、美羽さんっ。が、がんばりますからっ」
そう返事をしたかなえは何故か背筋を伸ばし、顔もどことなく引きつっている。
「外野はだまっとき。2人の勝負やで」
「えっ、わ、私ですかっ? あづささんっ」
あづさの言葉にうろたえたのは大木姫子だった。普段はおっとりとした性格なのだが、
試合になれば打って変わって走攻守三拍子揃った外野手に一変するのだが……ん、外野?
「なんや? ヒメ」
「す、すいません。おとなしくしていたつもりだったんですか……」
そう言うと、姫子は口をつぐんだ。何だったんだろう。
第三戦、東京・御堂あづさ対横浜・栃原かなえ。
「――よよいのよいッ! ジャンッケンッホイッッ!」
勝負は一瞬で決まった。あづさの拳が、かなえの二本指を砕いた。←比喩です。
「はぁ……。流石はあづささんですね。まだまだ私の力は及びません」
かなえは素直に敗北を認め、座っていたイスへと戻った。
「んもう〜。とっちぃはしょうがないなぁー。後でおしおきだからねっ☆」
後ろで見ていた美羽が、かなえに冗談を飛ばした。
「青龍の方角ッ! とどまるところを知らない球界の女番長ッ、御堂あづさッ!」
ここまで立て続けに2人を倒したあづさが歓声に答える。
「白虎の方角ッ! ハマの爆走クローザーッ、矢尾つかさッ!」
わああああっ。横浜の三人目として名前が呼ばれたのは、同球団の不動の守護神として
君臨する矢尾つかさ……だったのだが。
「ちっ。何であたいなんだよ。屋城、お前出ろよ」
「私は……子供の頃からジャンケンだけは勝てないのだ……」
屋城昴は昔を思い出した。鬼ごっこの時はいつも自分が鬼だったな、とか。
「マジかよー。メンドくせーなー」
「まあまあ、そう言わずに。お客さんも待ってますし」
「そうだよー。最後はストッパーにビシッと締めてもらわないと」
「しゃーねえな、よっこいしょ」
関内史織と五十川亜樹に促され、やおら立ち上がる矢尾つかさ。いかにも気だるそうに見える。
ところが、勝負事となれば話は別だ。その目は勝負師の目へと変わった。
第四戦、東京・御堂あづさ対横浜・矢尾つかさ。
「――ジャンッケンッホイッッ!」
つかさは伝家の宝刀フォークボールを彷彿させるチョキを繰り出した。
「くっ……」
勝負アリ。あづさの出した手は、パーだった。