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右腕には鋭い断崖に似た多層の刃が沿い、左腕には盛り上がった外骨格から洞窟の如き穴が覗く。
姿を変えた仮面ライダー=オメガフォームは右腕の装甲より鬼剣バーサークグラムを伸ばし、コブラ男の長い右腕を切断する。
吹き飛んだ右腕は地を転がり、工事現場の穴へ落下する。
「ぐわあ!俺の腕を…おのれ!」
苦痛に苛まれるコブラ男は仮面ライダーへ毒液を吐きかけるが、仮面ライダーには当たらない。仮面ライダーの周囲に空間の歪みが生じ、その歪みが盾となって毒液を跳ね返しているのだ。
その盾に身を包みつつ、仮面ライダーは洞窟に似た左腕を突き出す。その周囲に見える陽炎がコブラ男目掛けて飛んでゆく。直撃は免れ、二発の陽炎=時空衝撃波はコブラ男の足元と背後の壁を爆破した。あくまでも仮面ライダーの目的は牽制だった。
勝てる筈が無い。逃走を図るコブラ男。彼を睨み、仮面ライダーは指を鳴らす。直後、コブラ男の足元に吹雪が生まれ、その下半身から凍結してゆく。
「まあ、はなから逃がすつもりも無いからね」
最後の「からね」にエコーが掛かった。それもそのはず。仮面ライダーの姿が三体出現し、コブラ男の周囲を包囲したためだ。
どれかが幻影、どれかが本物。しかしコブラ男にそれを見破る術はなく、そもそも凍結した彼には抵抗すら難題だった。
三方より鬼剣バーサークグラムが振り抜かれる。それらの斬撃は各々がコブラ男の体を無慈悲に引き裂いてゆく。仮面ライダーは幻影を作ったのではなく、周囲の時間軸へ影響を及ぼし、一時的に自分自身を三体形成した。即ち分身は、全て実体だったのだ。
コブラ男をバラバラに寸断した仮面ライダーは、再び一体へ集約する。
「オレの勝ちっ」
さて、他の労働者を救出し、切り落とした腕を処分せねば。
しかし、武政には誤算があった。コブラ男の死に伴う爆発が工事で脆弱化した地盤へ亀裂を産んだ。
このままでは労働者が生き埋めになる。仮面ライダーはそれを救出するのが精一杯で、切り落としたコブラ男の右腕は土砂に埋もれついぞ発見できなかった。
六十数年後、京也=仮面ライダーは巨大コブラの吐きつける毒液に四苦八苦していた。
接近は厳禁、背後に回れば尾に打たれる。ならば、と仮面ライダーは腕の装甲にある尖鋭部を高速振動させる。
「ライダーチョップ!」
振り出した腕が、迫り来る尾を切断した。
次回「六杯目、改造うどん讃岐を飛ぶ」に続けたいなと思う。