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141名無しさん@お腹いっぱい。

「ノアさん、ですか」
おそらく白い人さんの仲間なのだろう。白髪、全身真っ黒なスーツ、スニーカー。
「黒い人、ともお呼び下さい。ズィロ」
やはりそうだったか。
「では黒い人さん。貴方は何の為に私の居るここに来たのですか?」
「貴方にお教えしたい事が有ります。ジヴォンの事、その時計の事、そして私とヨセフの事を」
所変わってここはホームレスの溜まり場。その中に一人極端に目立つ服装をした男性が居た。
彼は立ちあがると、この場所から逃げるようにして出て行った。


「何でしょうか?ノアさん」
「ではまず自己紹介から。私の名前は『タンデ・クロン・ノア』。出身はヱデン。役割は貴方に
情報を提供する事、及びジヴォンの監視役です」
面白いほどペラペラと喋る人だ。白い人さんとは大違いだ。
「まずジヴォンについて話しましょうか」
「いや、まずヨセフさんの事からお願します」
「ではそうしましょう。『ビュライ・ジ・ヨセフ』、それが彼の名前です。役職はジヴォンの監
視役。デ・ノッシュ・ラン・シドーさんも同じ役職です」
メモに書く指が追いつかない程の早口だ。ここまで速いと聞きとるのすら難しい。しかも長った
らしい名前を連発するのでかなり書き辛い。
ともかく今は、デ・ノッシュ・ラン・シドーという人物のこと、ジヴォンとこの時計の事が知り
たい。
「それでは本題に入りましょうか」
令が唾を飲む。
「ジヴォンの事、そして貴方の時計の事を」

その瞬間、ノアの周りの空気が一気に変わったような気がした。いや、気のせいだと思っている
だけで、本当に空気が変わっているかも知れない。
「ジヴォン、ヱデンで生活している知的生命体。階級社会であり、殺害したヒトの数で階級が変
化する。殺人を行う際はデ・ノッシュ・ラン・シドーがそれを管理し、不正が無いかの確認をす
る。その為1度につき一人しか殺人を行えないルールが有る。また知能が高い為ヒトの社会に溶
け込む事も可能」
急にゆっくりと話すようになっていたことに気づく。話しかけようと思ったがそのような空気で
はなかったので辞める事にした。
「そして貴方の所有している時計、それはジヴォンが反乱を起こした際の粛清の為の装置。
正式名称は『ZЙRO‐対ジヴォン用特殊装甲服』です」
少しずつだが話が見えてきた。白い人さんの名前はヨセフ。そしてシドーと呼ばれる人物がジヴ
ォンによる殺人を監視・操作している事、そしてこれは時計ではなく兵器だという事を。


外へ出ると、サイレンの音が聞こえる。近くで事件でも起きたのだろう。愛車の「エース」に乗っ
てパトカーを追う。
どうやら強盗犯が立て篭もっているようだ。野次馬達が周りを取り囲んでいる。
警官隊が突入しようとしたその時、何本もの槍が飛んでくる。
警官たちが持っていた立てを突き破り、身体を貫通した。一斉に悲鳴が上がる。
ガラスが割れ、中から出て来たのは、シャチのような顔をしたジヴォンだった。