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胸の厚い装甲には両脇から爪のようなディテールが生じ、肩角は後ろに向かって伸びる。
右腕には鋭い断崖の如き多層の刃が沿い、左腕には盛り上がった外骨格から洞窟の如き穴が覗く。
姿の変わった武政。その目にはカメレオンの姿が鮮明に写る。その視覚に従い、舌の攻撃速度以上の高速で近接、腹に肘を入れる。
「ぐ…何故俺の居場所が…くそ、食らえ!」
擬態色が解けたカメレオンは、苦し紛れに武政へ舌を伸ばす。対して左腕を構える武政。左腕の装甲には盛り上がった部位に穴が覗く。
その穴に陽炎が生じ、その陽炎が高速で飛翔、舌を切断する。この左腕は「時空振動骨」を形成しており、「時空衝撃波」を射出する所謂銃になっているのだ。
武器を奪われ、焦燥するカメレオン。その胸元めがけて、武政の右拳が唸りをあげる。
一瞬の静寂。
拳は届かなかった。カメレオンは最後の力を振り絞り腕力で強引に拳を止めていた。
左手で拳を拘束しながら、武政の喉へ手を伸ばすカメレオン。しかしそのカメレオンの左手と胸に鈍痛が走る。
変身した武政の右腕に見える、積み重なった多層の刃。これが剣の如く長く伸び、カメレオンの左手を切り裂き胸元を貫通したのだ。
事態を理解すると同時に耐え難い激痛がカメレオンを苛む。武政は自分の首にかかっていたカメレオンの左手を払い、突き刺さった剣を無慈悲に引き抜いた。
耳には言葉の体裁をなさぬ絶叫が刺さり、目には毒々しい血飛沫が写る。武政は血にまみれ悶絶するカメレオンに背を向け、軽く右手を上に払う。
「燃えな」
武政がそう言った直後に、カメレオンの身体の各部が炎に包まれ始めた。
カメレオンは最早言葉をつむぐ事さえままならず、単なる悲鳴をごく短い時間続けた末、炎の粒子と化して爆散した。
意識を取り戻した男衆を確認し、美月屋への帰路につく武政。
「取り敢えずは初勝利だぜ、斎」
念珠に向かい、そう一人ごちた。
それから六十数年後、卜部京也の変身した仮面ライダーは二匹の妖魔に苦戦していた。
溶解液による遠隔攻撃を得意とする食人サラセニア。更に奴は蔓を伸ばし仮面ライダーの足を止める。そこへ真正面からハサミを突き出し、蠍が突進を敢行する。
蔓を振りほどいている暇はない。その隙にハサミにやられる。
ハサミを受け止めればその間に食人サラセニアの溶解液を食らう。
蠍はもう目の前だ。どうする、仮面ライダー!