http://mimizun.com/log/2ch/peko/1274869145/

このエントリーをはてなブックマークに追加
133名無しさん@お腹いっぱい。

「おかしいよな。このご時世、雇う側だって賃金が出ないっしょ。でも人を集めてる…」
 ブドウ糖の残りを紙にくるみ、懐の勾玉を握り込む。
「ちょっと見てくる」
 武政はそのまま、妙な奴が待つ角へ向かった。
 男衆は角から少し広めの焼け跡に誘導される。しかし三十人前後がひしめきあっているので、結局狭い。そんな彼らの前に、小綺麗な洋装の若い紳士が現れる。
 金を持っていそうだ。男達は期待をもって彼に仕事の内容を問う。だが、紳士は残酷に告げる。
「皆さんには、我らの生体改造をグレードアップするための実験台となってもらいます」
 紳士の皮膚が無数の緑のイボで覆われる。目が肥大化し、口からは異常に長い舌が伸びる。
 南洋に棲息する、カメレオンという蜥蜴(トカゲ)の一種に似ていた。その蜥蜴は周囲に合わせて体の色を変化させ、敵の目を欺くのだという。
 怪物の出現に逃げ惑う男衆。だがこのカメレオン怪人は、体のイボから黄色い霧を噴射。これを吸った者は次々倒れる。
 改造素体、確保完了。カメレオンはそう確信し、巨大な口を歪めて笑った。だがその顔面に、磨り減った靴底が叩きつけられる。
「卜部武政、見参!さてトカゲさん、おたくの仕事を教えなさい」
 カメレオンは再び霧を噴射するが、武政には効かない。
「何故だ!何故眠らない!」
「眠り薬か。オレは今、心の鬼がおたくを八つ裂きにしてえって駄々こねてっからさ、眠気とか無縁なのね」
 要は破壊衝動の昂りで睡魔を封じている、と言えば良いのだが。
 件の、声が甲高い男の部下であるカメレオンは舌を伸ばし、武政を捕らえようとする。幾度も伸縮し襲いかかる舌を回避しながら武政は眠った男衆を観察する。
「このベロ使えばあの人達を簡単に殺せる。でもそうしなかったのはあの人達が必要だから。でもオレを殺そうとしてる以上、彼らに慈悲をかけたわけじゃない。彼らはつまり…お前の労働力だ」
 カメレオンの動きが一瞬止まり、不気味に笑った。
「少し違うな。我らは実験台が欲しい。我らは人間をより高等な生物へ進化させる改造実験を行っている。そして改造兵士の能力を上げ、また頭数を増やすために実験台となる改造素体が必要なのさ!」
 改造兵士。恐らくこのカメレオン男もその一人なのだろう。日本は敗けたというのに、今更人体実験とはハイカラではない。731部隊でもあるまいに。
「ヤバいな…かちーんと来た」