http://mimizun.com/log/2ch/peko/1274869145/

このエントリーをはてなブックマークに追加
118名無しさん@お腹いっぱい。
シーン2

 線路沿いの路地を、ひとりの青年が必死で逃走する。
 泥まみれの患者服に素足、息も絶え絶えで、背後からせまる何者かの気配に何度も何度も振り返りながら。

 とうとう線路横のフェンスに行く手をふさがれ、恐怖に満ちた表情で背後に向き直る青年。
 闇の中から、急ぐでもない様子でゆっくりと、重いブーツの足音が近づく。

 影の中から現れたのは、全身黒尽くめ、夜だというのにサングラスをかけた、長身の男。
 その右手に握られた巨大な拳銃を見て、青年は小さく悲鳴を上げる。

 フェンスに背中を押し付けたまま、その場にへたりこむ青年。
 うわごとのように「許して」と繰り返す彼に銃口を向けた黒い男は、
 無表情に口を開く。
 「まだ……」
 フェンスの向こうを、轟音をあげて列車が通過する。
 「……か?」

 青年が目を見開く。

 路地の上、狭い夜空に、銃声が轟く。



シーン3

 疲れ果てた様子の患者たち、看護士、医者らでごった返す、市民会館の二階ホール。
 周囲を行きかう警察官、機動隊員などの慌しく緊迫した姿が、不安を煽り立てる。

 不意に、入り口側の屋外で、すさまじい数の銃声と怒号が響き始める。そして、獣じみた何者かの声。

 子供に薬を飲ませていた女性看護士のひとりが立ち上がり、怯える人々の間を抜けて
 入り口側の窓に歩み寄り外を見る。

 マズルフラッシュと硝煙の向こう、眼下に、
 機動隊の群れをなぎ倒しながらじわじわと前進する怪人の姿が見える。息を呑む看護士。
 警官や機動隊の攻撃は足止め以上の役には立っておらず、
 怪人がここに到達するのも時間の問題であるのがはっきりと分かる。

 一歩下がり、自分の肩を抱いて震え始める看護士。
 あの怪人の標的が自分であることを、無意識のうちに悟ったかのように。