米国を世界一のブロードバンド大国に押し上げることを目指した「全米ブロードバンド計画」が公表された。
米国は世界的なIT企業を多く抱える一方、ブロードバンド環境の整備は出遅れており、国際比較では普及率は世界15位に甘んじている。
オバマ政権は巻き返しを急ぐ考えだが、計画実現には課題も多い。
中核となるのが、1億世帯が毎秒100Mbpsの速度のブロードバンドを手頃な価格で利用できる環境を、20年までに整備するという目標だ。
米国でのブロードバンドは現在、4Mbps程度が一般的で、20倍以上の引き上げを目指す。
大容量データのやり取りができれば、ネットを通じた遠隔医療やデジタル教育の普及、次世代送電網の推進など、幅広い分野での活用が
期待される。目標実現のため、景気対策法から72億ドルを投じ、110億ドルの基金も創設する方針だ。
米国のブロードバンド環境は、「普及率」「速度」「価格」のいずれも、国別ランキングで2けたの順位にとどまっている。例えば、日本の
光ファイバーサービスは、100Mbpsのサービスを月額6000円台で利用できるのに対し、米国では日本の半分の速度の50Mbpsで150ドル
(約1万4000円)もかかり、危機感は強い。
米国が後れを取った一因として、競争政策の失敗が指摘されている。FCCは、計画の実行に向け、通信会社間の競争を促す政策を強化し、
迅速な普及を進める考えだ。
ただ、計画実現への道のりは平坦ではない。狭い国土に都市が密集する日本や欧州とは異なり、広大な国土に都市が点在する米国は、
通信網の整備に多額のコストが必要となる。さらに、米国内では通信政策を巡る党派対立が鮮明で、立法措置などが迅速に進むか
どうかは不透明だ。大手通信会社に対し他社への通信網開放を義務づける「アンバンドリング」政策についても、共和党側は「設備投資
意欲がなくなる」として反対し、結果的に計画では結論が先送りされた。
今回の計画で、米国は反転攻勢に向けた体制を一応整えた。ただ、資金面や規制面での具体策はこれからで、オバマ政権の実行力が
問われることになる。
http://www.yomiuri.co.jp/net/report/20100524-OYT8T00494.htm