オーディオのロマンを語ろう パート3

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835エピソード4
国王TKは鬱であった。帝国幹部達を引き連れて「謎国」に密航したまでは良かった。
しかし、広報大臣楠公爵と厚生大臣麻彦はそそくさと引き揚げてしまったからである。
できれば国王もそうしたかった。片腕たる官房長官EMGも恐らく同様であったに違い
ない。しかし一緒に引き揚げるわけにはいかなかった。帝国の代表としての任務はこの
際もう、どうでも良かった。何故ここに今いるのか、歴史も熟知し、経験も豊富なこの
俺が何故ここに。藁にもすがったのか?何を夢みたのだ?魔が刺したのか。自分自身へ
のケジメのつけかたに躊躇している国王であった・・・

国王と幹部のいない帝国は荒み、民衆の怒号は廃墟となったビルの間で乱反射して定位
が定まらず、民衆の落胆は明けきれない梅雨とともに地下に沈んでいった。

特攻隊長であり裏帝国宰相との噂が流れるキルロイは地下潜伏から浮上していた。キル
ロイは腹心の嶽穏を携えていた。嶽穏は昔、金型職人であったが、今は帝国最大の国益
企業UTT(ユニバーサル・テレフォン&テレグラフ)社のCEOである。キルロイ同
様、歯に物着せぬ特攻爆弾野郎であった。特攻隊長キルロイは前回の「謎空爆」の際の
行動を国王TKよりたしなめられると言う、苦い経緯があった。キルロイの国王達への
不信は今や敵対心から蔑み、哀れみにまで変化しつつあった。「謎」の『財力がなくて
も虚穏をなくし幸福になれる』教えを喝破したキルロイは、そのカラクリを民衆に声高
らかに叫んでいた。「謎」は奇帝である。そんなことも判らないのかと・・・

「謎国」に密航したとたんに広報大臣楠公爵は帰りたくなってしまった。予想した楽園
ではなかったのだ。酒池肉林、百花繚乱の天国を期待していた公爵はがっくりとこうべ
を垂れた。こんな質素な「謎国」であれば自身の巨体を維持出来ないのは一目瞭然であ
った。いくら『虚穏』のない『実穏』の世界であっても納得いかなかった。やはり美味
い物を食って美女を侍らせる『虚穏』が必要であることを再確認しただけであった。早
く帰ってウェスターニンでタノ〜イしたくなったのである。タノ〜イクラブKでテラ星
のクボッタとハカイサンを飲まなければ・・・

「謎国」に密航したとたんに厚生大臣麻彦は帰りたくなってしまった。予想した楽園
ではなかったのだ。なんと浅はかな。帝国での満たされた喜びがありながら、欲を出
した結果が長旅の疲れきった身体に更に追い討ちをかけた。「謎国」が悪いのではな
い。理性を失って密航に参加した自分に腹が立った。この怒りを今ぶちまけてはなら
ない。絶対ならないのだ。自分は帝国でも満足度200%の最高位の男ではないか。
いや、それよりも連れ添いが恐いのであった。喧嘩しないで帰るからね・・・