自動車工場の期間従業員は…

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799FROM名無しさan
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第二十二話 「ぎゃっ 」
12.02.29  狐皇子さん

愛知の自動車工場に期間工で勤めていた時の話です。
独身寮に入っていたのですが、この建物がすごい建物でした。
築30年以上経っているのは間違いない、とんでもなく古臭い
木造平屋の建物でした。

部屋数は約20部屋、すべて6畳の二人部屋でした。
私は2歳年下のA君と相部屋でした。
その出来事が起こったのは、2月の土曜日深夜のことでした。
私とA君は、翌日が休みだということで、夜遅くまで酒を
飲みながら話をしていました。
話の種も尽き、「そろそろ寝ようか」、といった時、
遠くの方で『ぎゃっ』という声がしました。
「なんだろう?」
A君と二人で首をひねっていると、もう一度、『ぎゃっ』!
さっきとは声が違います。それにちょっと声が近くなった
ような気もします。

そのあとも数十秒毎に『ぎゃっ』とか、『うぉっ』という
声が聞こえてきて、それも、だんだんと近づいて来ている
ように聞こえます。
私たち二人は、動くこともできないまま声の聞こえてくる
壁をジッと見ていました。
そして、とうとう隣室の先輩の『ぎゃっ』という声が聞こえて来た
・・・その数秒後。

私たちの見ている壁から、くたびれた背広を着た中年のオジサンが
が現れました。
オジサンは驚いて硬直している私たちには目もくれず、足早に
反対の壁の中に姿を消していきました。
硬直のとけた私たちは、そろって叫びました。

『ぎゃっ』