自動車工場の期間従業員は…part4

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656慎二@01/10
朝起きると手が激しいまでの筋肉痛になっていた。動かすたびに手の甲や指に痺れを感じる。物を触るとそれだけでも痛い。
だがもちろん筋肉痛など障害の内に入らない、仕事に行こう。工場までの道のりを歩くたび痣だらけの足が痛んだ。
工場ではいつも通りラインが稼働していた、私の工場では標準で残業が四十五分あり、ラインは朝六時半から夜二時まで回り続けている。止まる事はほぼ無いと言っていい。
それが私の気持ちをさらに重くさせた。
職場体操をした後、他の作業員と『工場内を走らない、工場内を走らない、よし』と掛け声をかけ、作業開始。テールパイプを触れるたび手が痛むが、泣き言は言っていられない。
痛みを押し、作業を続ける。
やはり今日もテールパイプに付いたHリングを車にはめるのに握力を使わなければいけないので苦労する。
ここで自動車工場に詳しい人なら体重を利用して押し込めばいいではないか、と思うかもしれない。
確かに今の作業員の人は背の高い人で、体重をかけて押し込んでいるが、私ぐらいの身長だと、取り付ける位置が身長に対して高いので体重を掛けられないのだ。
結果今の作業員の体重分の力を握力と腕の力で出すしかないのだ。
トヨタの中の最もきつい工場のきつい部類に入る部署をさらにきついやり方でやるのだ。体がおかしくならないほうがおかしい。
実際二時間も作業していると手が焼けるように熱くなり、頭がひどい風邪をひいたようにぼうっとしてくる。
だが痛みを無視して作業をし続ける。
そしてやっと昼休み、肉体的にも精神的にもほぼ限界だ。食事もそこそこに十分ほど仮眠するのだが、体力が全く回復しない。
午後、三十分ぐらい作業をしたところで意識が朦朧としてきて、車体に頭をぶつけ、転んでしまった。(地面に転ぶなんて数年ぶりだ)
EXが呆れたような顔をして近づいてくる。
「もういいから今日はビス締めといて」
………どうやら私は今日も仕事をこなす事が出来なかったらしい。
仕事が終わり、帰りに缶ジュースを買った。だが自分の親指にはもうプルを起こすだけの力が無かった。
私の体は異常なまでのスピードで崩壊していった。