猫が好き 2

襟を立て、頬を当たる風を少しでも遮るように猫背で歩いている山さんとUちゃん

「あ！山さん！猫だ！」

山さんの腕をツンツンと小突くUちゃん
まだ酔いも覚め切らず、焦点が少しのあいだぼやけてる山さん

「ん？どこ？」
「ほら！ほら！あの塀のそばだよ！」

言うが早いか駆け出すUちゃん

（走るとビックリして逃げちゃうよ）
声に出して忠告しようとするも、酔っているせいか声を出すのも億劫になり
ただ彼女と猫の影を眺める

もたいさん元気かなぁ?!

「はやく！はやく」

何度か呼ばれてようやくUちゃんと猫の元へ

「ねぇ、この子目が見えないのかなぁ？」

片目にやたらと目ヤニを付けながらも此方の様子をジーっと伺っている猫

「そうかもしれないね、喧嘩でやられたのかな？」
「うん、きっとそうだよ・・・それにしても可愛い」
「可愛いけど可哀想だよ」
「なんで？」
「野良猫ってね、殆どが冬に死んじゃうんだよ　寒さと餓えでさ」
「そうなんだ・・・」

「チョット待っててね！コンビニ行ってくるから」
「うんっ！」

牛乳を買いにコンビニへ向かう間にようやく酔いが醒め、頭が覚醒し自問自答が始まる

（俺は何故牛乳を買うんだ？猫の為か？それともUちゃんの為か？）
（今夜餌をやれば奴はあと何日生き延びる事が出来るんだろう？）
（生き延びたところでそれは猫にとってどういった意味を持つんだろう？）
（栄養不足で弱っている猫に冷たい牛乳を与えても問題は無いのか？）
（てか奴はホントに野良猫なのか？）
（飼い猫か！？！？）

なんの答えも出ぬままコンビニへ辿り着く
レジの前を横切る時に温かそうな唐揚が目に付く

「すいませーん、唐揚君ひとつくださーい」

牛乳を買うつもりが条件反射で唐揚を買う事に
（こんな寒い日は冷たい牛乳より唐揚でしょ！）

からage

唐揚げを手に提げ戻る道すがら、またまた自問自答が始まる

（寒い日には温かい物、てな人間的な考え方はそのまま猫にも当てはまるのか？）
（そもそも牛乳よりも肉の方が餓えてる野良には刺激が強すぎないか？）
（よくよく考えたらこの唐揚げピリ辛風味だったような・・・猫は食えるのか？）
（やはり戻って牛乳も買ってやった方がいいのか？）
（俺は何をそこまで自問自答してるんだ？猫の為か？それともUちゃんの為か？）

「山さんおかえりっ！寒かったよぉ」
「うん、猫は？」
「全然逃げないでジッとしてるよ　人間に慣れてるのかなぁ？」
「どうだろう？もしかしたらこうやって誰かに時たま餌をもらってるのかもね」

まだ湯気が立っている唐揚げを千切り猫に投げ与える

投げた唐揚げに「アチチアチチ」と猫パンチを食らわすメクラ猫

「熱いんだね、きっと」
「やっぱ牛乳買えば良かったかなぁ・・・」
「あ、舐めた！」

一瞬舐めるも、猫パンチを数発食らわしただけで一向に食べる気配なし・・・
うーん、やはりピリ辛が良くなかったのかなぁ・・・

「もしかしたらピリ辛だから食べられないのかなぁ？」
「えーっ！ピリ辛買ってきちゃったのぉ？」
「だってそれしかなったんだもん・・・」
「山さん、唐揚げ貸して！」
「はい」

山さんから唐揚げ君を取り上げ、近くにあるゴミ箱へ向かうUちゃん

「山さん！ティッシュある？」

何をやってるの？Uちゃんの手元を覗くと

「たぶん周りの皮に刺激があるから食べられないんだよ」

手をベタベタにしながら唐揚の衣を剥がすUちゃん
衣が剥がれ落ち肉の塊となった唐揚君

「これなら確かに食いそうだね」
「食べてくれるとイイね」
「はいティッシュ」
「ありがと」

ティッシュで油を拭う手をボーっと眺める
（小さい手だなぁ・・・）

山さんｗｗｗ

「ほれっ、今度こそ食え」

衣を剥がされ肉を剥き出しにされた唐揚げ君をちぎり、メクラ猫に投げ与える

「あ、猫パンチしてるけど食べそうだよ！ほら！ほら！ほら！！食べた！！！」

寒い中、湯気を上げる唐揚げ君をようやく口にする
少し熱いのか口に入れては出し、出しては口に入れ

「よかったね、山さん　山さんの誠意が通じたよ」
「Uちゃんが衣取ったおかげだよ」
「可愛いね」
「うん」

（君がね）

「山さん、もう帰る？」
「帰りたい？」
「寒いから今度は私達が温かいところへ行こっ！」
「そこのデニーズでコーヒーでも飲む？」
「うんっ！　バイバイ！元気に冬を乗り切るんだぞっ！」

メクラ猫に別れを告げ来た道を戻る

「山さんて猫好きなんだ！？」
「もともとは犬好きだったんだけどね、前の彼女の影響で気づいたら猫派になっちゃった」
「ふーん、そんなこともあるんだ」
「情に弱いんだ、長く一緒にいるだけですぐ情が移っちゃう（＾＾」
「今日はわたしと長く一緒にいるよね・・・なーんちゃって（＾＾」
「あはは・・・」

（うわーっはっはっはっはっはｈっはっはっはっはｈっはっはｈっはっはっはっは）

ヌルヌル禿げチョンコ山さんｗｗ

大奥とはそういう所じゃ。