新・連続架空ドラマ

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388柴。 ◆shibatXtDE
第1話「いきなり閉館かよ!?」

東京都江戸川区のとある街。
不況により閉店を余儀なくされたスーパー「あけぼの」。
店主の渋川崑(矢沢永吉)は、友人知人親戚とありとあらゆるつてを頼って
一念発起、長年の夢であった映画館を設立した。
「3歩も歩けばコンビニにぶつかる時代にさ、スーパーなんてのはやっぱ必要ないわけ。
 これえからはさ、後世に残すべきものをさ、俺等おっさん達が提供してかなきゃいけないと思うわけ」

昭和の日本に残された良い映画を上映すべく建てられた名画座「乙女座」。
第一回目の上映は、渋川たっての希望により「ピンキーとキラーズ・恋の季節」に決定した。
初日、初回上映。
客席には、出資に協力した友人・長田(ムッシュかまやつ)小池(横山剣)の2人だけ。
長田「渋ちゃんさぁ、チラシなんかはちゃんと配ったのかい」
渋川「チラシ?」
長田「宣伝しないとさぁ、それは駄目だよ」
小池「弱ったネこれ」


次回>>第2話「リニュアルオープンかよ!?」
389柴。 ◆shibatXtDE :04/01/20 01:58
長らく断筆していて申し訳ない。
>>383-385 乙だ!
390名無し職人:04/01/20 03:35
第2話「リニュアルオープンかよ!?」

「おねがいしま〜す。お〜ねがいしま〜す!」
駅前で声を張り上げる渋川。急遽作った手作りのチラシ。そのチラシはまるでスーパーのチラシそのものだった。
主婦が喜んで受け取り中身をみてがっくり。
はぁぁ〜。大きな溜息をついてはまた声を振り絞る渋川。
通りがかった学生の成瀬光一(注1)はチラシを受け取った側からクシャクシャと丸めてポイ! 激怒する渋川。
「やっぱ今の流行はワイヤーだよ、ワイヤーアクション。」光一の言っていることが全然分からない渋川。
チラシ配り成果なし。うなだれながら帰る渋川は川原で数人の学生からいじめられている光一を見つけ助ける。
光一を連れて乙女座に帰ってきた渋川は映画を見ていけと誘う。
「ピンキーとキラーズ・恋の季節」第2回上映。客は光一と長田と小池の3人だけ。
上映終了。
「どうだ! ワイヤー・・・なんとかなんてなくてもおもれえだろ。」
「・・・ふん! わかんねぇよ・・・でも・・・」
「でも?」
「なんでもねぇよ!」走り去る光一。

翌日の早朝。乙女座の前にやってきた渋川はなぜかゴジラの切り抜き看板がワイヤーで吊られて踊っている姿を目撃する。
「なんじゃこりゃぁ!!」
乙女座の屋上からひょっこり顔をだしたのは光一だ。
「おっちゃん。やっぱりワイヤーだよ。ワイヤーアクションさいこー!!」
「ばかやろう!!」


次回 >> 第3話「土砂災害!おかみ死す!」

(注1)配役なんですが「ごくせん」に出てたおでぶちゃんです。名前がみつけられんかった・・・。
391名無し職人:04/01/23 17:24
第3話「土砂災害!おかみ死す!」

長田が町内の福引で「鬼怒川温泉1泊2日ご招待券」を当てた。「乙女座作戦会議」の名目で渋川、
小池と3人で行くことになった。
途中、小池が冷凍みかんを買っていて発車に間に合わなかったり、長田が横川の釜飯を食いたがって
ダダを捏ねたりしながらなんとか到着。
ひなびた温泉旅館「湯ちゃん」はおかみの橋田きん(山岡久乃)が一人で切りもりしていた。相棒は
白猫のユウジロウだけだ。息子夫婦とは廃業を巡ってもめているらしい。
渋川達は旅館の中で1室だけきれいな装飾のされた部屋を見つける。
「探検だ! 特攻だ!!」渋川が制止するのも聞かず、小池が部屋に入っていく。仕方なく続く2人。
そこにあったのは、壁一面に貼られた故・石原裕次郎のポスター。そしてブロマイドや記念品の数々。
客には決して見せない笑顔をしているおかみと裕次郎の2ショット写真。
勝手に入ったところをおかみにみつかりしゃもじで叩かれる3人。おかみは裕次郎の大ファンであり、
生前、石原裕次郎が泊まったこの旅館を大切にしていたのだ。
話に聞き入っている中、長田が我慢できずに放屁。後ろで寝ていた猫のユウジロウがびっくりして大
暴れしてしまう。取り押さえようとしてユウジロウに引っ掻かれる3人。そして、ユウジロウはおかみ
が大切にしていたポスターを破ってしまう。
激怒したおかみはユウジロウを裏山に捨ててしまった。渋川がおかみさんに話しかける。
「おかみさん、ビデオだDVDだって時代だけどね、俺さ、やっぱ映画は映画館に限ると思うんすよ。
大画面とか音とかってよりも、なんか思い出はその、なんだ、心にあるのがいいなって・・」
渋川の言葉に一瞬足を止め、すぐに部屋に篭ってしまうおかみ。
その夜、鬼怒川一帯を豪雨が襲う。消防署から避難命令が出て慌てて逃げ出す3人。しかし、おかみの
姿が見えない。渋川が裏山におかみの姿を見つける。しかし、雨で危険な状態だと消防職員に止められ
てしまう。そして、土砂崩れが・・・。夜が明けた。懸命の捜索。現場には・・・白猫のユウジロウがいた。
* * *
乙女座 第3回上映「嵐を呼ぶ男」
客は長田と小池の2人と猫が1匹だった。

次回 >> 第4話「ひじぶつけた」
392名無し職人:04/01/28 18:20
第4話「ひじぶつけた」

乙女座の前で突然倒れた婦人、赤根麻衣子(鶴田真由)。渋川が介抱していると長田と小池がやって
くる。小池は麻衣子に一目惚れ。舞い上がること竜巻のごとく。
乙女座の館内で意識を取り戻した麻衣子は理由も言わずに慌てて出て行こうとする。必死に止めよう
とする小池。
「ね、ね、今いい映画がやってるんですよ。是非見て行ってくださいよ。」
強引な小池の誘いに渋々了承する麻衣子。しかし、席順をめぐって大騒動。今や野獣と化した小池を
抑えるため、永田が麻衣子の隣に座ろうとするが小池は譲ろうとしない。揉み合っている間に長田の
ひじが麻衣子の胸に触れてしまう。
「このエロおやじぃ!! 死ね、死んで麻衣子さんにお詫びしろ!!」
もはや発狂状態の小池。そこに麻衣子の旦那、銀二(石倉三郎)がやってくる。麻衣子の帰りが遅い
ことを問い詰める銀二。銀二のどうみてもスジ者風の格好にビビる長田。しかし小池は果敢に銀二に
戦いを挑み・・・帰り討ちにあう。
「負けらんねえよ!」あきらめない小池。そこに割って入ったのは長田だった。
「あんたがやってることは・・・エゴだよ、おせっかいだよ!」
「どけよ!」長田を殴り飛ばし銀二に襲い掛かる小池。あまりの迫力にびびった銀二のパンチは空を
きり、小池のパンチが銀二の顔面をとらえる。倒れた銀二に2発目を浴びせようとした時、麻衣子が
銀二の上に覆いかぶさった。
「やめて下さい! うちの人を・・・うちの人を虐めないでください!!」

* * *

乙女座 第4回上映「あ・うん」
お客は4人。上映中、小池のひじが長田にあたる。長田は一瞬ムッとするが、すぐに自分の体を横にずらした。
上映終了。長田が横の小池を見ると・・・小池は寝ていた。
「死ね! 死んで詫びろぉお!!」長田の絶叫が乙女座内に響き渡った。


次回 >> 第5話「エッチなのはいけないと思います!!」

393名無し職人:04/02/01 01:02
第5話「エッチなのはいけないと思います!!」

渋川はそわそわとしながら小脇にフィルム缶を抱えて乙女座にむかっていた。その渋川を尾行する影。
乙女座に着くと長田と小池が待っていた。
「ついに手に入れたよ!」
興奮気味の渋川がフィルム缶を開ける。そのラベルには「愛のコリーダ オリジナル・無修正版」の
文字が。
「ついにこれを上映する日がやってきたんだね。」長田の言葉にウンウンとうなずき合う3人。
「愛のコリーダ」はその過激な性描写で、公開当時は大幅な修正を余儀なくされた作品。芸術か?
エロか? そんなもの見る人間が決めるんだ、渋川はそう思っていた。
いよいよ上映日。客の入りも上々だ。渋川が緊張しながら上映を開始しようとした時・・・突如サイレン
が鳴り響き、黒服の人間が大挙して渋川を取り囲んだ。その中心の女性(田嶋陽子)は渋川の胸ぐらを
つかみ上映を中止するように言う。それは市民団体「女性差別映画根絶同盟」だった。
抵抗する渋川は小部屋に監禁され、説教をくらうことになった。
そして3時間後・・・憔悴しきった表情で渋川が現れ、大半は帰ってしまったが残った僅かなお客におわび
をして上映を再開した。観客の期待する問題のシーンが近づいた時、突如渋川はスクリーンの前に立ち
ぼかしなしの映像を隠すように飛んだり跳ねたりし始めた。唖然とする観客たち。
「エッチなのはいけないと思います!!」渋川は完全に洗脳されていたのだ。
静まりかえる場内。その時、長田が叫んだ。
「おかしいよ! こんなのおかしいよ!! 渋やん、目を覚ましてよ、こんなの映画じゃないよ!」
渋川はその動きを止め、その場にうずくまってしまう。
「やっぱり無理じゃない。やっておしまい!」女性の命令で黒服の男がフィルムを映写機から引き出し
火をつける。そして、何かに満足し、満面の笑みで引き上げていった。
「ごめん、みんなごめん。」涙をながして許しを請う渋川。
「渋やんのせいじゃないよ」長田がなぐさめる。
「見たいんじゃぁ! 理屈なんかあるかい! 見たいもんは・・・見たいんじゃぁ!!」小池が絶叫する。
場内から拍手が起こる。
この日、乙女座では映画は上映されなかったが、残った人々は朝まで映画談義に華を咲かせた。

次回 >> 第6話「こんなのムリ!!地底魔神と暴れ牛」