新・連続架空ドラマ

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249TβS放送協会
新番組(>>21のリクエストより)

元スレの >>383 名前: 名無し職人 投稿日: 03/01/15 19:37
【北の国から 〜亡命〜】

第1話「電気がないです」
第2話「では自家発電スタート」
第3話「おばあちゃん、それ電気じゃなくて便器だよ」
第4話「将軍様、食べものを」
第5話「極東経由のエアメール」
第6話「脱出失敗 − ようこそ収容所 −」
第7話「鉄格子に味噌汁ぶっかけます」
第8話「北はサムいし、南はコワいし」
第9話「西はマンモス、東はそのまんま」
第十話「鉄格子がさびて壊れた!脱獄」
第11話「豆満江を越えろ」
最終話「足枷よ、ここが自由の地だ!」

〜第1話 製作中〜
250柴田ぁ:03/08/16 02:56
【北の国から 〜亡命〜】

第1話「電気がないです」

「これ見ろぃ。じゃがいもぉ。ぶっといじゃがいもだよぅ」
と、馬鹿みたいな大きな声で叫んでいるのが、僕の父、堅崎駕太郎(中尾彬)。

僕らの住む星・ジョニールの最北端の国、ミングー。
父はそもそも「地球」に住んでいたそうなのだが、父が20歳の頃起きた第4次世界大戦の頃、
疎開移民としてこの星に流れついたのだそうだ。その時持ってきた地球野菜の種が、たまたま
この星の土壌に合ったらしく、おかげで父は一代でそこそこの大金持ち。
でも、もともと素朴な農家で育った父は金に頓着がなく、今日も呑気にじゃがいもを掘っている。

「ケンタウローよぉい、じゃがいも、じゃがいも」
僕、堅崎ケンタウロー(小林賢太郎/ラーメンズ)は高校を卒業し特に就職するでもなく、
時々父の仕事を手伝っては小遣いを貰う生活をしている。何も不自由のないくらし。
でも、時々思うんだ。僕はこうして毎日、じゃがいも掘ってる器じゃないんじゃないかって。
何不自由ない暮らし。でも、何かもの足りない。

隣に住むジョセフおじさん(井上順)も元は地球人で、彼はこの国に未だ無い「電気」の開発に勤しんでいる。
時々彼の発明を手伝っているのだけれど、この「電気」を使えば、何か凄いことがおこりそうな気がするんだ。
この日も、父の声を聞こえないフリをして、ジョセフおじさんの家に向かった。
「ケンタ君、良い時に来た。いよいよ電気だ。電気がこの国に!」

どきどきしていた。
電気って、何なんだろう。

次回 >>第2話「では自家発電スタート」
第2話「では自家発電スタート」

ジョセフおじさんの家に行くと一人の少女(紺野あさ美/モ娘。)が座っていた。リンという名前だと
おじさんが教えてくれた。見た目は人間のように見えるけど別の生物なんだって言ってた。
リンと目があった。ドキドキした。粗末なボロ布を着て体にはいろいろなコードが繋がれていた。
ジョセフおじさんの研究では、リンは「地球」の「電気ウナギ」に近い生き物なんだって。何の事か
よく分からなかったけどすごい発見なんだ。

「ケンタ君、いよいよ自家発電の開始だぁよ!」
そう言うとジョセフおじさんはリンの体を擦り始めた。頭、顔、手、胸、太腿・・・まもなくすると、
家の天井にぶら下がっていたガラス玉から光が溢れ始めた。

「電気だぁよ、電気だぁよ!!」
ジョセフおじさんは興奮しながら奇声をあげた。そしてゴシゴシとリンの体中をこれでもかと擦り
まくっていった。

「ケンタ君! 君もこっち来て擦れ。あったかいぞぉ。やったぞ! ついにやったぞ!!」
おじさんに促されるままリンに近寄った。また目が合った。とても・・・悲しそうだった・・・。
ぼくはなんだか・・・せつない気持ちでいっぱいだった・・・。


次回 >> 第3話「おばあちゃん、それ電気じゃなくて便器だよ」

252名無し職人:03/08/20 07:10
第3話「おばあちゃん、それ電気じゃなくて便器だよ」

リンは人間じゃないんだ。どこから見ても人間にしか見えないのに。
だから、ぼくはつい、リンに話しかけてしまったんだ。
「リン、きみはぼくの言うことがわかる?」
すると、リンは何とこっくりと頷いたのだ。

「ケンタ君ダメだよ。そんなことしちゃ」
ジョセフおじさんはとても厳しい声で言った。
「え? なにが?」
「今、リンに話しかけただろ? そんなことしちゃダメなんだよ。掟でそう決まってるんだ」
「掟で・・・」
そう、ぼくの住んでいるところでは掟は絶対なのだ。掟で決まっていると言われてしまえば
なぜ? と訊き返すこともできない。

ぼくの目頭がなんだか熱くなってきたので、上を見ることにした。
「おや?」
すると、昼間だというのに空に流れ星が見えた。
その流れ星はだんだん近づいてきて、ものすごい音を立てて、すぐ近くに落ちた。
もちろん、ぼくとジョセフおじさんは流れ星が落ちたところまで走って行ってみた。
253名無し職人:03/08/20 07:10
地面が抉れてクレーターができていた。
そこのクレーターの中心から、驚いたことに女の子(矢口真里/モ娘)が出てきたのだ。
女の子は体にぴったりとしたテカテカと濡れたように光る服を着ていた。
女の子は手に大きな銃を持っていた。

女の子はぼくたちを見るとこう言った。
「4M@@@^¥7##&&蜂蜂蜂^^^」
「え、なに?」
「いけない。翻訳機の調子がおかしい」
「翻訳機?」
「始めました。冷やし中華。おばあちゃん、それ電気じゃなくて便器だよ。地球は丸い。
丸いは青い。青いは四角。人民の人民による人民のための。わたしは〜するや否やです。
あれ? このボロ翻訳機め」
女の子は何だかわけのわからないことを言った。

次回 >>第4話「将軍様、食べものを」
第4話「将軍様、食べものを」

流れ星に乗ってやってきた女の子のせいで村は大騒ぎになった。町からもなんか偉そうな
人たちがやってきて色々ともめていた。なんか「翻訳機」というものが壊れていてうまく
話ができないらしい。ただ女の子は「しょ・・ぐ・・・ん」という言葉を繰り返すので
僕らはこの女の子の事を将軍様と呼ぶことにしたんだ。

翌日は大騒ぎだった。
町の偉い人と話していた将軍様はいきなり銃を乱射して相変わらず「冷やし中華!」とか
「バンバンジー!」とか分けのわからない言葉をいっていた。そして、リンを見つけたんだ。
将軍様はリンの右手を乱暴に掴んで引きずりはじめたんだ。リンは嫌がっていた。
町の人たちが大勢で引き止めた。
それで僕は分かったんだ。リンが・・・このままでは連れて行かれてしまうという事に。

僕は将軍様の所にいった。
「将軍様、食べものをどうぞ」
睡眠薬を入れておいた。
その夜、僕はリンの手をしっかりと握って村を出て行った。

父は黙って見ていてくれた。


次回 >> 第5話「極東経由のエアメール」
255名無し職人:03/08/25 22:25
第5話「極東経由のエアメール」

ぼくらはまず東に向かうことにした。
極東には宇宙空港があるのだ。空港に向かってからはどうするかはまだ決めていない。
地球型の生物が宇宙に出るにはものすごいストレスがかかるそうだ。
そのために空港では、ぼくらの体を情報圧縮体として処理し、変換しなくてはならない。
これを『エアメール』と呼ぶ。

ぼくは空港に向かって、車を走らせた。
このスピードで行けば、2日もあれば空港に着くだろうと思った。
だが、その途中で、ぼくらは大兵団に出会ってしまったのだ。
戦車、装甲車、武装ヘリ、巨大ロボまでいた。
ぼくの車はすぐに発見され、たちまち捕らえられた。

ぼくらを捕らえた兵団はどうやら反政府ゲリラであるらしかった。
ぼくらのいた国はあまりにも田舎なので、つい、この星の政治状況にうとくなっている。

ここまで、独白して、ぼくはとんでもないことに気がついた。
電気もないような村に住んでいたぼくにどうして『エアメール』の知識がある?
電気もない村のどこに車があった?
戦車、装甲車、武装ヘリ、巨大ロボだって? どうして、見ただけでぼくにそんなことが
わかる?
ぼくは、ぼくは、いったい何者だ?

次回 >>第6話「脱出失敗 − ようこそ収容所 −」
256ちょっと気になる富田林 ◆Cyokit0E3k :03/09/02 01:59
第6話「脱出失敗 − ようこそ収容所 −」

夢を見た。
父とジョセフおじさんが暗い部屋の中で話をしていた。

「戦い・・・革命・・・・聖戦・・・・・・・」
「・・・秘密・・・兵器・・・大量の・・・」

突然、大勢の人たちがやってきて二人を連れて行った。
僕は小さな水槽みたいな中でそれを見ていた。誰かが近寄ってきた。
リンだった。とても悲しい瞳をしていた。
リンは右手に握ったピストルで・・僕を撃った・・・。

* * * * *

・・・はっ!
夢から覚めるとそこは鉄格子の中だった。記憶が混乱していた。
いや、何かが頭の深いところで蠢いているような感じだった。

「ようこそ我が収容所へ」
いつのまにか鉄格子の外に、人(高橋克実)が立っていた。
「とんだタナボタだ。まさかあんな所に隠れていたとは。これからは
我々のために働いてもらうぞ」

その人が何を言っているのかよく分からなかった。それよりも僕はその人の
後ろで鎖に繋がれてボロボロの姿のリンのことだけが心配だったんだ。


次回 >> 第7話「鉄格子に味噌汁ぶっかけます」


257名無し職人:03/09/03 01:50
第7話「鉄格子に味噌汁ぶっかけます」

収容所の所長(高橋克実)は僕を捕まえるとニヤリと笑った。
「君はもうすぐこの世から消えてなくなる。最後に何か言いたいことでもあるかい?」
「僕を殺すのか?」
「殺す、ということが君の生命活動を停止させるのか、という質問なら答えはノーだ。
しかし、個人の死というものがアイデンティティの喪失であるならば答えはイエスだ」
「どういうこと?」
「いま話している君は本当の君ではない。言わば、ペルソナだね。表層人格というやつだ」
「表層人格?」
「そう、誰かが君の知ってる色々な秘密を隠すためにニセの記憶と人格を植え付けた。
これからそいつをひっぱがして、本当の君においで願おうってわけさ」
「・・・・」

どういうことだか、よくわからない。
でも、つまり、僕は僕でいられなくなるらしい。
さよなら、リン。
心の中でそうつぶやいた。
その時、突然、この収容所は空襲を受け、警戒警報がなった。

「何だ?」
慌てる所長の声を聞きながら、空を見上げると、僕が将軍様と名付けたあの女の子が
空を飛び回りながら、レーザーキャノンを辺りかまわず乱射していた。
「鉄格子に味噌汁ぶっかけます。本日は晴天です。冷やし中華万歳。生麦生米生卵。
汁男優のギャラって一回いくら?」
翻訳機の不調のせいで相変わらず訳のわからないことを言っていた。

次回 >> 第8話「北はサムいし、南はコワいし」
258名無し職人:03/09/05 07:51
第8話「北はサムいし、南はコワいし」

しかし、僕はこのあとの翻訳機に出された言葉に驚愕した。

「ゆで卵を食べようとしたらまだ中身が半熟でした。
 責任者出てこい!と叫んだが、明日は雨のようです。」

もちろん、意味不明な内容だった。
しかし、僕にはその意味がわかった。「早く逃げろ!」と言いたかったのだろう・・・。

(これは、ひょっとすると、あの女の子がくれたチャンスなのかも)

所長の慌てている隙に、なんとか収容所から抜け出すことに成功した僕は、
リンを探すため、東西南北あらゆる地を回っていた。
ところが、今年は異常過ぎる程の冷夏だった。

北は梅雨明けがなく、作物も育たず不作というぐらいの寒さだった。
この寒さに耐え切れず2週間程、病魔に侵されてしまった・・・。

だからと言って南に行くと、謎の工作船に出会い、威嚇射撃をされ、
あわや、今度こそもう後が無い状態にまで陥ってしまった・・・。

「何てこった・・・このままだとリンの行き所が掴めない・・・。」

僕は、頭を抱えながら悩んでいると、
そこにひとりの男(児玉清)が立っていた・・・・・。

次回 >> 第9話「西はマンモス、東はそのまんま」
259名無し職人:03/09/06 23:57
第9話「西はマンモス、東はそのまんま」

その男(児玉清)は僕を見ると、まるで痛ましいものでも見るように目を細めた。
「可哀想に。まだ記憶が戻らないんだね。このままキミを無明の闇に落とすのも気が引けるが、
これもまた宿命。せめて苦しまずに私の手で逝かせてやるが情け」
男はそう言うと、突然、僕に襲い掛かってきた。
とっさに男の一撃をよけた。
男の手は僕がそれまで寄りかかっていた大岩に深々と突き刺さっていた。
「何をするんですか、先生」
「おや、私を先生と呼んだね。記憶が戻ったのかな?」
先生? どうしてこの男が先生なんだ? 何の先生だ?
「まだ、わからぬか。しかし、お前を哀れんではやれるが、助けてはやれぬ。観念せい」
また、男の手が閃いた。
しかし、今度は逃げずに逆に一歩踏み出していた。
両の手のひらで男の胸を強く打った。
男が口から血を吐いた。白目をむいた。人形のように倒れた。
「火星甲機術奥義、双掌衝撃波。見事じゃ、お見事。もう私が教えることは何もない」
「先生!」
「まだ、私を先生と呼んでくれるか。あ・・りがとう。しかし私はもう長くない。東だ。
東へ行け。西はマンモスの勢力地域と化したが、東はそのまんまだ。記憶を失っても技の
冴えは変わらなかったな。お前のような弟子がいたことを誇りに思う・・・」

次回 >> 第十話「鉄格子がさびて壊れた!脱獄」
260ちょっと気になる富田林 ◆Cyokit0E3k :03/09/11 03:57
第10話「鉄格子がさびて壊れた!脱獄」

僕は先生に言われたとおり東に向かって歩いていた。
荒廃した巨大なビル郡があった。どこか懐かしい光景だった。
その間を歩いていると目の前にジェセフおじさんが現れた。

「ケンタ君。君は悪い子だ。掟に従わない悪い子だぁ。」
おじさんにも驚いたけど、もっと驚いたのはおじさんの右手に握られた鎖の先に
リンがいたことだった。
「ケンタ君ぅん。君は悪い子だ! おかげで奴らにつかまりおじさんはひどい目に
あったんだぞぅ!! 鉄格子がさびて壊れたおかげでこうして脱獄してきたんだ。
もう実験は必要ない。今ここで発動させてやるぅぅ!!」
突然、おじさんは持っていた拳銃を僕に向かって撃った。
避けられない・・・そう思った瞬間、僕の前に大きな背中が立っていた。父だった・・・。
父は何発も銃弾を浴びながらおじさんに近づいていき、おじさんを絞め殺してしまった。

「ケンタウローよぉい」
父は僕の腕の中で弱々しく僕の名前を繰り返し呼んでいた。涙が止まらなかった。
「ケンタウロー、振り返るな。行け豆満江へ。」
僕はどんどん冷たくなっていく父をずっと抱きしめていた。
そんな僕の手をリンがそっととって自分の頬にあててくれた。とても暖かかった。
僕はリンの肩を強く抱きしめて歩き始めた。


次回 >> 第11話「豆満江を越えろ」
261名無し職人:03/09/12 10:59
第11話「豆満江を越えろ」

僕もリンも歩きつかれた頃、僕が将軍様と名付けた女の子が空を飛んでやってきた。
「やっと翻訳機が直ったわ。それで、あなたの記憶は元に戻った?」
「・・・・」
「そう、まだ元に戻らないのね。いいわ。聞いて。私はあなたの味方よ」
「状況が何一つわからないんだ。そんなこと言われても・・・」
「そうね。じゃ、簡単に説明するから、聞いて頂戴。この星はかつて大規模な
テラフォーミングが成功して、地球にもまけないくらい栄えた星だったの。
でも、何がいけなかったのか、ある日環境が激変して、そのせいでこの星の人口は
5%以下になった。文明も徐々に消え去り、旧世界のテクノロジーを持っている者と
そうでない者に二分された。
地球と火星の連合政府はこの星の様子を見るため、それぞれ1名づつの視察員を出したの。
地球の視察員が私。火星の視察員があなたよ。
でも、あなたはこの星を調べていくうちに、過剰にこの星に肩入れしていった。
たぶん、あなたは自分のトラウマを忘れたかったんでしょうね」
「トラウマ?」
「火星は何年にも渡って、大規模な内乱がつづいているの。そこで、あなたは家族を
すべて失ったわ」
「・・・・・」
「そして、あなたはこの星に同化しようとした。自分の履歴を改竄してこの星で生まれたと
信じ込もうとした」
「履歴を改竄って、だって、僕には父もいたし、おじさんだっていた。あの人たちは
どうしたっていうんだよ?」
「あの人たちは存在しないわ」
「何を言ってるのさ?」
「私たちの体は実体じゃないのよ。情報圧縮体よ。エアメールよ。それも忘れた?」
「何だって? じゃあ、僕に襲い掛かってきた先生も・・・」
「そう、飲み込みが早いわね。すべてあなたが創り出したモノなの」
262名無し職人:03/09/12 11:01
「とても信じられない! じゃあ、もしキミが実体じゃないというのなら、キミをこの銃で
撃ち殺してもキミは死なないんだな?」
「いいえ、死ぬわ」
「さっきの言葉と矛盾してるじゃないか?」
「矛盾はしていないわ。私たちはデータだもの。あなたが私を銃で撃ったら、私のデータは
壊れる。回収できないわ。つまり、それが死よ」
「ちょっと待て、僕らの実体はどこか別のところにあるんだろ?」
「もちろんそうよ。私たちは本体の人格と記憶を持ってここに来てるの。完全なるコピーよ。
でも、ここで得た知識や経験は私たちの人格に影響を及ぼすわ。オリジナルとは違うものになっていくでしょうね。
わからない? 私たちの本体がどうであれ、私たちはこうして自分で考えることもできれば、
話すこともできる。アイデンティティだって持ってる。
我思う故に我在り、ならば、私たちは実体じゃなくても立派に人間なんじゃない?」
「ちょっと待て、僕らがデータだとして、回収された後はどうなる? 回収先で人間として
扱ってくれるのか?」
「いいえ、それは無理。実体がないもの。データだもの」
「どうなるんだ?」
「どこかのデータバンクに保存してくれるでしょうね」
「データバンクに保存されたらどうなるんだ?」
「どうなるって? 質問の意味がわからないわ?」
「僕らはこうして今までのように、しゃべって、考えたりできるのかって訊いてるんだよ」
「さあ、それはわからない。でも私たちは永遠を得るのよ」
「何だって?」
「わからない? 不確かな壊れやすい肉体に捕らわれることなく、ハードディスクやメディア
の中で今の形を保存し続けることができるのよ」
「まるで、宗教だな。死ぬのは怖くありませんよ。永遠の安らぎを得られます。神の国へ
行けますよ。ってな」
「・・・・・」
「キミは今までそれを疑問に思わなかったの?」
「私、私は・・・・」
想像以上に彼女はショックを受けたようだった。
263名無し職人:03/09/12 11:02
「どいてくれ。僕は行かなくっちゃ」
「行くって、どこへ?」
「豆満江へ。父の最期の言葉だったから」
「何を言ってるの? あなたにお父さんなんかいない。それはあなたが創り出した妄想よ」
「じゃあ、僕の妄想に従うさ。僕はキミの話なんか信じない。データとしてどこかに保存
されるなんて、まっぴらさ。僕は今、この瞬間の僕を信じる」

次回 >> 最終話「足枷よ、ここが自由の地だ!」
264ちょっと気になる富田林 ◆Cyokit0E3k :03/09/13 01:20
最終話「足枷よ、ここが自由の地だ!」

目の前に大きな川が現れた。きっとこれが豆満江なんだと僕は思った。
向こう岸まではどれくらいあるんだろう。そんなことを考えてもしょうがないか。
僕はしっかりとリンを抱えて川の中へと入っていった。川はまるで海のように、進めば
進むほど深くなっていった。すぐに足がつかなくなって僕等は泳ぎ始めた。
どれくらい泳いだだろう。・・・疲れた。向こう岸はまだ見えない。
足が攣ってきた。水を掻く手が重い。リンを片手に抱えているんだからしょうがない。
・・・リン。こいつは何なんだ? やっぱり将軍様の言うように僕の作り出した妄想
なんだろうか? だとしたら随分とやっかいな妄想だ。僕はこの足枷を抱えてここで
朽ち果てるのだろうか。
僕は泳ぐのをやめた。リンを見た。いつもの悲しそうな瞳がそこにあった。
僕はリンを離すとゆっくりと彼女の首を締め始めた。
ごめんよ。僕は妄想と一緒には死ねない。ごめん。力を込めた。その時、遠くで声がした。
「ケンタウローよぉい、じゃがいもぉ。ぶっといじゃがいもだよぅ。」
父が笑っていた。僕はハッとして手を離した。そして・・リンが口を開いた。

「・・・待ってるから。ずっと・・・待ってるから・・・」

途端に僕の目から涙が溢れてきた。僕はリンを抱きしめてそっと唇をあわせた。
僕たちはそのまま川の底へと沈んでいった。

265ちょっと気になる富田林 ◆Cyokit0E3k :03/09/13 01:21

* * *

ガシャ〜ン!! 
僕を入れていたカプセルが壊れ水が溢れ出した。随分と水を飲んだみたいで咳き込んだ。
将軍様の声が聞こえた。
「なんてこと! エアメールを自分の意思で拒否するなんて。あなたはせっかくの亡命
の機会を逃したのよ。もう人類は5年も生きられない。情報体として保存されない限り・・
せっかく私が外部からの侵入者から守ってあげてきたのに・・・あなたに世界を与えて
あげてきたのに・・・」
僕は将軍様の声がするコンピューターユニットを無視して扉を開けて外へ出て行った。

外は雪だった。そこに一人の少女が立っていた。
リンだった。
「おかえりなさい。」
そこには僕を待っていてくれた優しい瞳があった。
この一瞬を精一杯生きていこう。そうだよね、父さん。
僕たちは北の大地をしっかりと踏みしめながら歩き始めた。


E N D