人口3000人余の山あいの村に突如持ち上がった放射性廃棄物最終処分場問題は、
急速に終息に向かった。上小阿仁村の小林宏晨村長は28日、村議会全員協議会と
村民説明会に臨み、処分場誘致に関する発言を撤回。「村民を混乱させ申し訳ない。
誘致には応募せず幕引きしたい」と陳謝し誘致断念を宣言した。「平和な村に放射能
関係施設はいらない」と村民は一様に安堵(あんど)の表情を浮かべた。
説明会には村民ら約200人が詰めかけた。小林村長は「誘致の行動をしたのではなく
資料を集め分析した」と釈明。報道については「予想だにしない反響の大きさだった」と述べた。
断念の理由は「村民に大きな不安をかけたことを考慮した」と述べ、低レベル放射性廃棄物
処分場の誘致についても「今後考えない」と明言した。
最前列でメモをとりながら聴いていた前村長の北林孝市さん(84)が発言を求め、
「あまりにも独断専行だ。百十数年の村政に大きな汚点を残した」と非難すると会場から拍手が。
小林村長は「誠に示唆に富んだ考えで異存はない」と応じた。別の村民が「村に核関連施設を
入れない条例を制定する考えはないか」とただすと、村長は「精査したい。幕引きしたのだから
その余地(制定)はある」と答えた。
傍聴していた無職の森川昇さん(72)は「嫌な感じが晴れ、安心した。もし核関連施設を誘致したら、
人口が減って村が消滅していただろう」と話した。自営業の小林ミヱさん(82)は「こうなると思っていた。
村長は勉強家なので、村財政を何とかしようと考えたのだろう。上小阿仁は自然が豊かな今のままがいい」。
農業の原田金作さん(77)は「安心した。最初は村長の考えはいいと思ったが、話を聞くうちに
危険だと知り、米が売れなくなるのではと心配になった。財政赤字解決には、企業誘致などで
若者が村で暮らせるようにしなければ」と話した。4月の村長選を争った小林俊悦さん(62)も
姿を見せ「村民全員に不安があった。村長の説明を聞き安心した」とホッとした様子だった。
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/akita/news/20070729ddlk05010184000c.html