いつも釜山(Busan)そろそろ飽きたなと思い、釜山で1泊後、近隣の馬山 (Masan) まで
1泊2日で出張してきた。
夕暮れに到着したためバスターミナル周辺にある比較的清潔そうな荘旅館 にインし、
速攻近所のサウナで定例あかすり。フルチンの親父に全身こすられながら片言で世間話。
なんでも 「若いころは猛虎部隊というところに所属し、ベトナムで大暴れしてきた」 と
威張って話すその親父。「ほおほお」 と感心して尊敬のまなこで親父の戦歴を聞くふ
りしていると、なぜか大いに俺のことを気に入った様子で、仕事を片付けるから一緒に
家まで来いと。
基本的にいきずり韓国人の歓待には遠慮しない方針なので、ほいほいついていった。途
中親父の知り合いが働いていると思しき家具屋に寄って「いるぼん、いるぼん(日本、
日本)」 と見世物にされたり、あちこちつれ回されて親父宅に到着したのが9時ころ。
あかすり業を生業としている割には豪勢な邸宅のオンドルに通され、親父の奥さんが作
った恐ろしい量の食事を半ば強制的に食わされた。中学生の息子がいてしきりにサッカ
ーの話の相手をさせられたり、メシを食った後になぜか酒盛りを始めたりした。
時の経つのも忘れて飲み食いし、もうそろそろオイトマを、と思っていると、
親父がなにやら奥さんに合図し、奥の間から誰だか女を連れてきた。ロングの黒髪もつ
ややかな細身で背の高い女の子は年のころなら23, 4。火のついたような恥入り方に
見ているこちらまでハラハラしたが、これがとんでもない超美人。
父親、母親とは別人種かと信じて疑わないほどの East Asian Beuty (イースト・エイジ
ャン・ビューティー)。たとえて言えば加藤あいを更に美形にしたかのような天然の美。
久々に衝撃で心臓ばくばく状態の俺をよそに、親父は娘を俺の横に強引に座らせ満足
げにニヤニヤしている。奥さんといえば何故か感極まったようにボロボロ涙を流しだす
始末。
しばし奇妙な沈黙の後、これから一体何が起こるか、期待と不安を抱きつつ呆然とする
異邦人に、やにわに親父が 「出来たら嫁にもらってくれ」、と途轍もない剛速球発言。
娘はうつむいたまま何も発せず恥入り続けている。俺は金縛り状態で痙攣したよなへら
へら笑いをしてはみたものの、場の雰囲気はどうやらマジだ。
なんとか冷静になり、この異常な空間をなんとかしようとせんが為、必死でわれを取り戻
そうとすればするほど、したたか飲まされたマッカリ酔いが体中を駆け巡り、遠い耳鳴り
を聞きながらその場で気を失ってしまった。
気がつくと朝になっており、知らぬ間にズボンを脱がされ薄い布団に横たわっていた。各
所点検してみたが異常はない。寝てる間に襲われた形跡もないな、などと安堵していると、
やおら戸が開き親父が照れ笑いを浮かべて現れた。どうやら 「夕べは珍しい日本の若い男
と意気投合し、調子に乗っておかしな事を言ってすまない」、と詫びているらしかった。
韓式朝ごはんのお粥などを軽くご馳走になったあと、親父が運転するワゴンで旅館まで
送ってもらうことになった。玄関先まで総出で見送ってくれた。美人娘も出てきてくれた
が最後まで一言も口を聞かずもじもじしているらしかった。
信号で停車した時に親父が、ぼそりとつぶやくように言った。「娘は耳が聞こえず、口が
きけないもんで、嫁の貰い手もなくってさ」 言葉に湿り気はなかったが、陽やけした横
顔は寂しげだった。俺はといえば、返す言葉もなくもどかしく、ただ 「信号変われ、
信号変われ」 と心の中で繰り返していた。
5年も前のことながら、今も時折、口のきけない美しい女の子のことを思い出しては、
馬山で所帯をもってくらす自分の姿を夢想してしまうことがある。「ありえない、ありえ
ない」 と苦笑しながら、、、
http://logsoku.com/thread/kamome.2ch.net/oversea/1298168356/16-18