60 :
春樹風:04/03/20 22:04 ID:cMUH8B3X
八月はどしゃぶりの雨と共に幕を開けた。
そして、雨のあとのからりと晴れ上がった日に、
僕は成田空港に立っていた、大きなバッグと共に。
急に決めたもんだから、チェックインしてから出発するまでの間
友人・知り合いに電話をかけまくっていた。少しの間留守にするから
よろしく。旅行は二週間の予定です。しかし、そんなことをしていたら、
搭乗時刻の十分前になってしまった。僕は大慌てでゲートへ行ったけれども、
飛行機には乗せてもらえなかった。そこで、空港監視員と僕の間で大喧嘩が
行われた。このことについてはあまり語りたくない。とにかく僕は一晩を
あの最低な成田空港で過ごして、翌日の夕方同じフライトでシンガポールへと
旅立った。
61 :
春樹風:04/03/20 22:08 ID:cMUH8B3X
シンガポールは暑かった。くそ蒸し暑かった。僕の頭は寝不足と
疲れでボーっとしていたが、ロンリー・プラネット片手に、とにかく
彼女のいる場所までのルートを計画した。まず始めに、
マレーシアの国境の町、ジョホ・バルーへと向かう。シンガポールから
ジョホ・バルーまではバスで二、三時間かかる。ジョホ・バルーで、
クアラ・トゥレンガヌ行きのバスへ乗り換える。クアラ・トゥレンガヌ
へ着いたらクアラ・ベスッ行きのバスへ乗る。そして、
クアラ・ベスッからフェリーでペルヘンティアン島へ渡る。
クアラとはマレーシア語で河口の意味。つまり、僕はずっと海岸沿いを
バスで走るわけだ。早朝シンガポールのチャンギ国際空港に到着した僕は
しばらくの間空港のベンチで時間をつぶしてから、朝一番に市内へ
行くバスをつかまえた。結局ジョホ・バルーのバス・ターミナルへ
着いたのは午前十時ごろだった。窓口の男は言った。
「明日の昼までクアラ・テンガル行きのバスはないよ」僕は失望して
「途中の町までのバスもないのか?」と聞いた。
「ないよ」男はそっけなくそう言うと、どけという風に片手を振った。僕の後ろで並んでいる中年の男が顔を突き出して叫んだ。「ク・ムラッカ、サトゥ」
僕はあきらめてその場を離れた。適当な宿を見つけて、しばらく
その辺をうろうろする。バス停では英語が通じたが、
町の人は通じる人と通じない人が半々くらいだった。
割と中年の男性が英語を話すようだ。
老婆なんかは百パーセント駄目だ。
62 :
異邦人さん:04/03/20 22:10 ID:LI6OGWoV
このスレに吐き気を催さない、と言ったら嘘になる。
63 :
春樹風:04/03/20 22:17 ID:cMUH8B3X
バス・ターミナルの裏の方にマーケットを見つけた。
小さな屋台がひしめきあっていて、大変な喧騒だ。
上から下までびっしりと品物でうめつくされている店々を
僕はゆっくりと見て回った。フェンディもどきのバッグ、
カルティエもどきの時計、主にフェイク品がひしめきあって
並んでいる。大変な安さだ。フェイクと言っても、
作りはしっかりしているし見た目もかわいい。
僕はグッチもどきのバッグを手に持って眺めていた。
彼女に似合いそうだ。とたんに、店の男が話しかけてきた。
「コレ、カワイイ、ソレニ、ヤスイネ」僕はあいまいにうなずいた。
「ディスカウント、ゴジュウ、ドウ?」僕は首を振って
その場を離れた。彼女に何か買っていきたかったけれど、
島に行くのにバッグはいらないだろう。歩いているだけで次々と
声をかけられた。
「オニイサン、コレ、ヤスイヨ」「チョット、チョット、ミテッテヨ」
無視していると中には、「オーイ、ムシスンジャネエヨ」と言う者も
あった。僕はそんな喧騒に少し疲れてカフェに入った。
ヨーグルト・シェイクを頼む。最近、アジアでの主要な観光地で、
物売りはみんな日本語を話す。大抵は、柄の悪い日本語だ。
なぜか「チビマルコ!」や「タマゴチッ!」と叫ばれたこともある。
バンコク、デリー、パラオ、メキシコへ行ったときまでそうだった。
日本人はほいほい金を出す格好のターゲットなのだ。
64 :
春樹風:04/03/20 22:19 ID:cMUH8B3X
ウエイターがどでかいグラスにたっぷりと氷が入ったシェイクを
テーブルの上にどんと音をたてて置いた。僕は考えるのをやめにして
、からからの喉に勢いシェイクを吸い込んだ。
頭の左奥が小石を射ちこまれたようにキーンと痛んだ。
冷たい飲み物とともにカフェの中に座っていると、
少し気持ちが落ち着いてきた。相変わらず寝不足でまぶたが
重かったけれど、爛々と照りつける太陽や生き生きと動いている人々は、
僕にエネルギーをくれた。
65 :
異邦人さん:04/03/22 19:53 ID:gj9I6mhx
僕は、このスレッドを一度ひととおり読み終えてから
もう一度はじめから終わりまで、読み直した。
窓の外から、山鳥の鳴き声が聞こえた。
ぬるくなったビールをひとくち口に含み、ホワイトアルバムを
ターンテーブルの上に乗せた。
直子は今頃、どこでどうしているのだろう。
66 :
異邦人さん:04/03/29 15:01 ID:XTDgH4Zv
あげ
67 :
異邦人さん:04/03/30 22:59 ID:jrZsLW2h
age
ちょっと死相出てた。ちょっと死相出てた。
69 :
村上春樹28号:04/04/12 22:10 ID:05xG9Q4C
僕は37歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた。
その巨大な飛行機はぶ厚い雨雲をくぐり抜けて降下し、ドンムアン空港に到着しようとしているところだった。
十一月の冷ややかな雨が大地を暗く染め、雨合羽を着た整備士たちや、のっぺりとした空港ビルの上に立った旗や、BMWの広告板やそんな何もかもをフランドル派の陰うつな絵の背景のように見せていた。
やれやれ、またタイか、と僕は思った。
タイ人スチュワーデスがやってきて、僕の隣りに腰を下ろし、もう大丈夫かと訊ねた。
「大丈夫です、ありがとう。ちょっと勃起しただけだから」と僕は言って微笑んだ。
「そういうこと私にもときどきありますよ。よくわかります」
彼女はそう言って首を振り、席から立ち上がってとても素敵な笑顔を僕に向けてくれた。
「良い御旅行を。さよなら」
「コップンカッ!」と僕は言った。
70 :
異邦人さん:04/07/05 11:51 ID:akNTBi5G
僕は心のなかでジョン・レノンとなま暖かいビールで乾杯をした
71 :
異邦人さん:04/07/21 17:04 ID:Pqi4yRpI
保守
72 :
異邦人さん:04/07/29 02:21 ID:nEPj3tiJ
モンゴルの草原はこの世のものとは思えないほど印象的だった。
ただ、ただ、だだっ広いだけの緑に、陽がさんさんと照っていて何だかしらないが
とにかく神々しい、という感じだった。
私がボーイフレンドのポケットの中の手に私の手をからめて
「何だか夢で見た光景みたい」というと、彼は唐突に「僕は昨日この景色を夢で見た」
と恐ろしくオカルトなことを語り出した。
「僕とあたるがここで昼寝をしていると僕らの馬が走ってくるんだ。
その馬は額に傷が有ってとても優しい目をしているんだ。じっとこちらを見て言う。
(子供が死んだ。急いでここから北へ2qの泉へ行かなければ)
馬なのに何故か僕らにはその言葉がわかるんだ。「子供」が誰のことかも
解らなかったけど夢なのでそこらへんは違和感無く理解するんだ。」
私はふうん、と何となくその話を聞いていた。
そこまで話した時に、ふと彼があの馬、と驚いたようにつぶやいた。
コテコテだな。。。
73 :
異邦人さん:04/07/29 02:23 ID:nEPj3tiJ
↑ばなな
74 :
異邦人さん:04/07/29 03:50 ID:qSWhcadN
僕は29歳で、そのときアエロフロートのシートに座っていた。
そのオンボロな飛行機はぶ厚い雨雲をくぐり抜けて降下し、シェレメチェボU空港に到着しようとしているところだった。
一月の恐ろしく冷たい風が大地を暗く染め、毛皮の帽子をかぶった整備士たちや、のっぺりとした空港ビルの上に立った旗や、空港そばのトランジットホテルやそんな何もかもをシベリアの陰うつな絵の背景のように見せていた。
やれやれ、またモスクワでトランジットか、と僕は思った。
75 :
異邦人さん:04/08/12 00:01 ID:XV0TGjz2
hosyu
76 :
異邦人さん:04/08/22 08:04 ID:44XgLa+v
僕の一番好きな場所はユナイテッドキングダムである。
真っ昼間からパブでエールビールをたらふく飲み、ロンドンのバッキンガムの
夕暮れは神々しい程の金色と碧で満たされ僕を幸福にするのだ。
大英博物館の展示品に太古に渡る文化の意志を感じながらまた旅しようと思う。
77 :
異邦人さん:05/01/03 08:42:33 ID:hjRkK8ml
動脈硬化の検査で PWV、ABI。
喘息だからパルスオキシメータで、血中酸素濃度の検査。
78 :
異邦人さん:05/01/22 14:43:35 ID:8Qox7n0+
w
79 :
異邦人さん:05/01/29 07:19:14 ID:GVmSM7pe
test
80 :
異邦人さん:05/01/30 19:24:41 ID:Xhas1ZLW
そして彼女が落ちつきを見せるとゆっくりと動かし、長い時間をかけて射精した。
最後には直子は僕の体をしっかり抱きしめて声をあげた。
僕がそれまでに聞いたオルガズムの声の中でいちばん哀し気な声だった。
81 :
異邦人さん:05/01/31 00:32:56 ID:2z6V/2BT
age
82 :
異邦人さん:05/02/20 22:40:53 ID:lCPXgN+u
ドイツ人はなぜ今もタイ女を買いつづけるのか
イスラエル人はなぜ粗悪なドラッグを売りつづけるのか
彼らは知らないのだろうか
フルムーンパーティーがもう終ってしまったことを
"The End of the Full-Moon Party"
ノルウェイに着いたニャ
84 :
異邦人さん:2005/05/11(水) 01:42:18 ID:hjZM1pEF
中身からっぽの村上春樹の本。タマネギのようだ。
何かありそうなふり。むいてもむいても何もない。
85 :
異邦人さん:2005/05/11(水) 01:45:00 ID:hjZM1pEF
「日時計」創元推理文庫 読んでみな。
村上のデビュー前からある本だが、春樹文体だから。。。
翻訳しているのは日本の小説家の何とかいう人。
86 :
異邦人さん:2005/07/17(日) 19:39:46 ID:eAkZGAwf
>>84 タマネギはその君がむいているもの自体がタマネギの本質なのです。
何もないわけではないのです。
タマネギを弁護してみた。
87 :
異邦人さん:2005/10/04(火) 19:37:15 ID:mSbx1kaR
>>86 上手いこと言うなぁとオモた
しかし過疎スレだな・・・・。なぜ落ちない??
88 :
異邦人さん:2005/10/05(水) 00:57:34 ID:w3u5eBdo
2月→5月→7月→10月
何かレスしにくい雰囲気・・・
89 :
異邦人さん:2005/10/19(水) 02:10:22 ID:YC/Lnak/
僕は今日、犬の散歩をした。
僕が記憶している限り、日がまだ上がりきっていない、
午前4時半頃――――正確には午前4時48分頃だった。
でもそれは、僕自身の記憶というより、僕のまわりを
包むように取り巻く―――混沌とした、まだ未完成の―――
その空気そのものの感情のように思えた。
僕自身の周りの空気と呼ぶのは何か間違っている気もする。
その世界の空気が僕自身にまとわりついているというより、
僕がその世界の空気の中の一部、付属品なのかも知れない。
とにかく午前4時48分頃に僕は歩き出した。一歩一歩、
確かに地を踏み、それに犬が空気のぬけた風船のように
後についてくるのだ。
そうすると、歩いた先に女がいた。こっちに振り向くと静かに微笑んだ。
・・・それが君なんだよ。
と僕の左腕に胸をつけるようにして寝ている彼女に言った。
聞いているのか聞いていないのか、それは彼女にしかわからない。
日本に帰るまで後2日。
バカみたい、と床で寝そべる犬は呟いた。
―――
作者プロフィールあったほうが面白いと思うのですが!(女22)
0615
0616
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0620
test
96 :
異邦人さん:2006/03/08(水) 20:17:46 ID:Lj5BL2z7
age
97 :
異邦人さん:2006/03/08(水) 20:38:36 ID:UW6CkVcs
準はゲイだった。でも、自分はそのことに気づいてない。今まで女の子を好きになったことがないのだ。でもタイに行くとオカマたちと楽しそうにしゃべっている。私はそのことを知っている。
きっと彼はHIVで死ぬのだろう。そしてチャオプラヤー川の風を受けて、その風に乗って遠くの、私たちの知らないところに行ってしまうのだろう。
98 :
異邦人さん:2006/03/08(水) 22:50:39 ID:eIMZFdgj
ゲイ・HIVときたら村上龍かな…
99 :
異邦人さん:2006/03/09(木) 01:11:09 ID:2ddv9yMQ
一応吉本バナナのつもりでした
100 :
異邦人さん:2006/03/11(土) 15:49:06 ID:qL0mJb00
age
101 :
異邦人さん:2006/04/05(水) 08:13:55 ID:UKzfPB7d
貯めるんだよ、と羊男は言った。
マイルを上手く貯めるんだよ、みんなが感心するくらい。
102 :
異邦人さん:2006/04/05(水) 12:40:06 ID:L7EW9oP1
空港に着いたのは夜だった。
生ぬるい空気は私を南へ来た事を実感させた。
103 :
異邦人さん:2006/05/06(土) 04:05:15 ID:pN7c3vxN
nyanmage
104 :
異邦人さん:2006/05/06(土) 11:47:33 ID:Ezx0tPG7
さっき、NHKで世界各国の春樹翻訳家が語ってたね。
105 :
異邦人さん:2006/05/06(土) 21:41:35 ID:Tg9UVlvR
「この国にどれくらい居たい?」と入国管理官は言った。
「氷河が融け、小熊が野原を転げまわる日が来るまで」と僕は言った。
そんなわけで、僕は別室送りになった。やれやれ。
106 :
異邦人さん:2006/05/07(日) 04:18:40 ID:9FYSksz4
安宿の天井には黒いしみがひろがっていた。
俺はとなりの白人カップルのお楽しみを壁越しに感じながら、
残りの金を数えた。
107 :
異邦人さん:2006/07/08(土) 17:13:00 ID:WumfFJL4
108 :
異邦人さん:2006/07/08(土) 17:14:58 ID:wDCB/8Nb
,' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l
i : : : : : /´ ̄ `V  ̄ `、: : : : : : : l
ハ .l: : : : : :/ '、 : : : : : : l
// l l : : : : :/ '、:: : : : : : l
/ / / l : : : : l_ i: : : : : : :l
>>1 / / /-l: : : : : r-`ニニコ 〔二ニニ´;: : : : : : : l - 、 乙イェーイ!
{ / / ,': : : : ::イ i¨f;リ゙`,. r゙<"f;リ¨! `!: : : : : : l ` 、
, ヘ ' /_ /: : ::/ヽ|  ̄ |:::;.  ̄ |/ヽ: : : : l
/`ヽ. Y´ }: : : :{ l !;: | }: : : : !
./ ! l |: : : : \ ト、 ,イ / : : : : |
. Y | | l: : : : : : : | ` ^ー'^ ' | : : : : : : : l
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異邦人さん: