山野井泰史6

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786底名無し沼さん
この道 1 クライマーズ・ハイ 2010.5.6中日新聞夕刊より

どこまでも登っていきたいな、どこま
でも上がっていきたいなって感じること
があります。時間なんかどうでもいい。
成功も失敗もどうでもいい。頂に引き寄
せられるみたいに進んでいく感じです
ね。よくランナーズ・ハイといいます
が、クライマーズ・ハイみたいなのもあ
るんですよ。

チョオユー(8201メートル)南西壁を
登ったときも、K2(8611メートル)南南
東稜でも、ギャチュンカン(7952メートル)
北壁の時も感じました。すごく苦し
いはずなのに、それさえも忘れてリラッ
クスしているんです。求めている世界に
近づいていくという感じでしょうか。   続く
787底名無し沼さん:2010/05/10(月) 23:24:39
目の前の雪面にピッケル刺し
て、足を前に出して、呼吸し
て、というだけ。頂を目指して
いるようで、そうじゃない。ど
コマでも行くんだ、と。目に入
ってくるのは白い雪面と紺色の空だけ。
聞こえるのは呼吸と雪を踏みしめる音だ
け。自然に溶け込んでいる感じです。山
の一部になっているなと思いますね。

 小柄で引き締まった体。いつも朗
 らかさをたたえている顔。登山史に
 長く名を残すに違いない四十五歳の
 名クライマーである。先鋭的な登山
 一筋に生き、八千メートルの高峰や、そそ
 り立つ垂直の大岩壁という異次元の
 世界を味わい尽くしてきた。   続く
788底名無し沼さん:2010/05/10(月) 23:28:25
 本当の高所に一人っきりでいる。そし
て高みに向かって一歩一歩、止まらずに
進んでいる。そんなときに僕はそれを感じ
ます。これが永遠に続いても疲れないん
じゃないか、永遠に続けば幸せだな、と
さえ思いますね。
過去も未来もない。いまそこにいて、
それが幸せなんです。もしかしたら、そ
れは僕が生きていく中で一番幸せな時間
かもしれませんね。      終わり