創作小説with音ゲー 7thtrax

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1爆音で名前が聞こえません:2010/05/10(月) 20:43:33 ID:k7DfOn130
音ゲーを交えて小説・SSを書くスレです。 
題材はIIDX、ポップン、ギタドラ、DDR、その他何でもOK。 
ノンフィクションでもフィクションでもOKです。 
文章形式も正統派からブーン系まで何でもどうぞ。 
投下は1レスのSSから、どなたでもお気軽に! 

◆投下時の注意 
投下する話を完成させてから書き込むようにしましょう。 
話がパート別になる時も、投下するパートをきちんと完成させてから。 
書きながらの投下は避けるように。 
ただし、携帯からの投稿はこの限りではありません。 
また、なるべく投下終了時には『投下終了宣言』をして下さい。 
作者名の明記は強制ではありませんが、名無しで二作品以上(もしくは連載)投下した場合、 
『初投下時のスレ番号-初投下レス番』の名前がまとめ側で識別の為付けられます。 
(初投下スレ番が3、初投下レスが250だったら『3-250』となります) 

◆投下された作品について 
基本的に投下された作品は、全てまとめwikiに保管されます。 
その際、題名が無い作品は仮の題名が付けられます。 
なるべく本文投下時には、名前欄に題名を入れてください。 
なおwikiに保管されたくない人は、投下開始時または投下後にその旨を記述してください。

◆まとめサイト 
本家まとめ(現在更新停止中?) 
http://boonstory.xxxxxxxx.jp/ 

臨時まとめWiki(本家が復活するまでの臨時Wiki) 
http://www40.atwiki.jp/beatnovel/ 

◆過去スレ 
( ^ω^)ブーンが音ゲーを始めたようです 
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1151857063/ 

( ^ω^)ブーンが音ゲーを始めたようです2 
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1167326761/ 

創作小説with音ゲー 
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1175531879/ 

創作小説with音ゲー 2ndtrax 
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1196339079/ 

創作小説with音ゲー 3rdtrax 
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1211113343/ 

創作小説with音ゲー 4thtrax 
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1227987925/ 

創作小説with音ゲー 5thtrax 
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1241276676/ 

創作小説with音ゲー 6thtrax
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/otoge/1259431222/
2とまと ◆iK/S6sZnHA :2010/05/10(月) 20:48:22 ID:k7DfOn130
前スレが容量不足でしたので、新スレを立てさせていただきました。 
早速ですが「トップランカー殺人事件」の続きを投稿していきたいと思います。 
今スレもよろしくお願いしますぞね。 
3とまと ◆iK/S6sZnHA :2010/05/10(月) 20:52:29 ID:k7DfOn130

〜〜〜 「トップランカー殺人事件」前スレまでのあらすじ 〜〜〜 


beatmaniaIIDXのトップランカー、BOLCEが殺された。 
絞殺された上、IIDXの筐体から首吊りにされるという残酷な手口で。
早速捜査に乗り出した盛岡警察署捜査一課の乙下と空気は、 
現場に残されたダイイングメッセージや証言の不自然さから、 
同じくIIDXのトップランカーであり第一発見者の1046に対して強い疑いを持つ。 

1046にはe-AMUSEMENT PASSを使った鉄壁のアリバイがあったが、 
自称「占い師」の女子高生IIDXプレイヤー・杏子の協力も得て、 
ついに乙下は1046が築いたアリバイトリックを崩すことに成功した。
そして1046は犯行を自白。
彼の逮捕により、事件は終わりを迎えたかに見えた。

しかし、乙下は重大な事実に気付く。
「全ては罠だった」と。

事件の真犯人は誰なのか?
BOLCEが殺された本当の理由は何だったのか?
そして、事件の裏側で一体何が起きていたのか?

物語の舞台は九年前、BOLCEと1046の出会いにまでさかのぼる。


(※前スレまでに投稿した本文は>>1の臨時まとめサイトで読むことが出来ます) 


  
4トップランカー殺人事件(318) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/05/10(月) 21:04:01 ID:k7DfOn130
彼の操縦する戦闘機が目まぐるしく動き回る。
おびただしい数の弾を回避しつつ、着実に敵機を打ち落としていく。
幾度となく弾がぶつかりそうになって肝を冷やしたけど、
その度に彼の戦闘機は、華麗に弾と弾の間をすり抜けるのだった。

俺は時間が経つのも忘れて、すっかり彼のプレイに見入っていた。

「よく飽きないね」

彼はステージ間のわずかな休憩時間で、耳に装着したイヤホンを外しながら、
ほとんどうんざりした口調で俺に話しかけてきた。

「飽きないよ。だって面白いんだもん」
「今時シューティングなんかを見て面白がれる人なんて、滅多にいないよ」
「俺から言わせてもらえばね、こんなにシューティングが上手いヤツの方が滅多にいないよ。
 だからつい見とれちゃうんだってば」

次のステージが始まった。
彼は返事をせず、敵機を打ち落とす作業を再開した。
打ち落とすそばから新しい敵がわらわら出現し、
出現するそばから新しい弾をもりもり発射してくるものだから、
瞬く内に画面は色とりどりの弾で埋め尽くされてしまった。
まるで模様だ。

「綺麗だなー。こういうところも見てて飽きないんだよ、シューティングって」
「まぁ確かにフラクタルな美しさはあるよね」

聞き慣れない単語に、思わず首を捻ってしまう。

「それどういう意味?」
「口で説明するのはちょっと難しい」
「ふーん。なんかよく分かんないけど、中学生なのに物知りなんだな」
「中学生じゃない。君と同じ、高校一年だよ」
「ウソつけ。どっちかっつーと小学生だろお前」

一瞬の判断ミスが生死を分けるゲームの最中なのに、
彼ははなから冗談と決めてかかった俺を一瞥して言った。

「本当のことみたいだからこそ、ウソをつく意味がある。
 ウソみたいだからこそ、本当のことを言う価値がある」
「はい?」
「僕はすぐバレるようなウソなんてつかないってことだよ」

それから彼は戦闘機の操縦を一瞬だけ片手運転に切り替えて、
余った方の手でポケットから青いビニールカバーに覆われた
真新しい手帳を取り出し、こちらに寄越した。

私立稜運高等学校、一年四組、三浦清。
顔写真も貼ってあるから間違いない。
それは立派に彼の身分を証明する、生徒手帳だった。

俺は驚いた。
無責任なことに、俺は彼を小学生呼ばわりしたことをさておき、別のことに驚いていた。

「稜運高校……ってマジかよ、お前めちゃくちゃ頭いいんだな!」
5トップランカー殺人事件(319) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/05/10(月) 21:11:33 ID:k7DfOn130
進学に興味のない俺でも知っている。
稜運高校と言えば東大の現役合格者を毎年何人も輩出している、
この辺りじゃダントツに偏差値の高い名門高校だ。

それで合点がいった。
確かこの高校には指定制服が無い、つまり私服通学ができる自由な校風なのだ。
だから彼は、俺のようにブレザーを着てシルバーにやって来る普通の高校生と違って、
学校帰りにもかかわらず私服だったのだ。
小中学生と見間違えたのも、そんなところに原因があったのだろう。

「ホントすげーな。稜運に入れる頭があるなら、
 将来約束されてるようなもんじゃねーか。羨ましいわぁ」
「そんな大袈裟なもんでもないよ。
 頭の良さってのはテストの点数じゃ決まらないんだ」

ありふれた謙遜の仕方だな、なんて思っていると、

「その証拠に、僕の周りには馬鹿な人間しかいないもん」

謙遜どころか、とんでもない暴言が飛び出した。
なんてこと言いやがるんだコイツは。

「稜運に行けるヤツが馬鹿ってことはないだろ?」
「ところがね。テストの点数が良いってだけで、自分は特別だと勘違いしてる連中ばかり。
 実際は五十歩百歩、ドングリの背比べ、目クソ鼻クソを笑うってとこだけどね」
「お前、そりゃ言い過ぎだろ。
 稜運高校の生徒が目クソなら、俺なんてクソの完全体じゃないか」
「クソの完全体って」

会話をしながらも器用に戦闘機の操縦を続ける彼の口元が、少しだけほころんだ。

「君、なかなか面白いことを言うね」
「お前の言うことが笑えなさ過ぎんだよ」

実際、笑えない話だった。
彼の発言はあまりにも心無い。

それでも俺は彼のことを、ただ粋がっているだけの
虫が好かない男だという風には思わなかった。
ひょっとすると、どこか自分と同じ匂いを感じ取ったからかも知れない。

充実した高校生活に期待を抱き、部活や恋愛に精を出す俺のクラスメイト達。
一方で、そんなクラスメイト達を羨ましがる俺がいた。
なぜなら、俺には夢も目標もなく、灰色の今日をなんとなくやり過ごして生きてたからだ。

一流大学を目指し、受験勉強に打ち込む彼のクラスメイト達。
一方で、そんなクラスメイト達を見下す彼がいる。
なぜなら?彼には夢も目標もなく?灰色の今日をなんとなくやり過ごして生きてるから?

勝手な思い込みだったら申し訳ないけど、
俺と彼の境遇は似ているような気がしてならなかった。
だからこそ、俺はますます彼を誘ってみたくなったんだ。

「なぁ、三浦?って呼んでいい?」
「いいよ」
「三浦も音ゲーやろうよ」
6トップランカー殺人事件(320) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/05/10(月) 21:20:25 ID:k7DfOn130
「やだよ」
「なんで?」
「だって、音ゲーってアレでしょ?」

彼は左斜め前に位置する音ゲーコーナーの方を、僅かに腰を浮かせてチラ見した。
同じシルバーの店内だと言うのに、
このビデオゲームコーナーとは明らかに人口密度に差があった。
無論、こちらが過疎であちらが過密だ。

「僕は、あの手のゲームはちょっと」
「どうしてだよ。お前先週まではあんなにIIDXを頑張ってたのに」
「だから言ったじゃん。
 あれは、シューティングと間違えてプレイしてただけだって」
「つまんなかった?」
「いや、決してつまんなくはなかったけど。むしろ結構面白かったけど。
 けど、僕は音ゲーみたいな浮ついた感じのゲームはあんまり好きじゃない」
「そう言うけどさ、まぁ聞いてくれよ。
 三浦は音ゲー初体験だったにもかかわらずだよ、
 一週間も経たずにあっさりグラサイをクリアしたんだ。
 これってどれだけ凄いことか分かるか?」
「さあ」
「断言する。三浦には音ゲーの才能があるよ。
 そんじょそこらの人間には持ち得ない恐るべき才能だね。
 場合によっちゃ、トップランカーになれるかも知れないほどだ」
「音ゲーのトップランカーになってもなぁ」

彼は音ゲーにそそられる様子も見せなければ、ゲームオーバーになる様子も見せない。
よくこうも喋りながら集中力を維持できるものだ。
感心を超えて、感動すら覚える。

「音ゲーってさ、所詮流行りものって言うか、
 ほとんど遊びでやってるヌルゲーマーばかりでしょ?
 あいにく僕はシューティングみたいな、
 コアなゲーマーが真剣にスコアを狙う系のゲームにしか興味が湧かないんだよ」
「ちょっと待った、それは誤解だ」

俺は慌てて抗議した。

「確かに流行りものだし、遊びでやってる人も多い。
 でもね、流行に流されてプレイしてるような人達は、流行が過ぎればいなくなるよ」
「……それ、当たり前のこと言ってるだけのような」
「いやまぁ、そうなんだけど。
 とにかく俺が言いたいのは、音ゲーマーの中にもコアなスコアラーはいるってことだよ。
 インターネットを見てみろよ。
 こうしてる間にも、血で血を洗う激戦が繰り広げられてるんだぞ」

俺はどこかで聞いた言葉を、身振り手振りを交えながら、まるで見てきたかのように話した。
が、彼はゲーム画面を見つめたまま、身じろぎもしない。

「本当にそんな人いるの?」
「いるよ、確実に。俺がそうだから」
「君が?」
「正直に話そう。なんで俺がこんなに熱心にお前を誘うかって、
 お前には俺のライバルになれそうな素質があるからだ」
「……へぇ」

彼の息遣いが変わった。
思い切り上から目線の物言いをしたことで、彼の興味を引くことができたのかも知れない。
7トップランカー殺人事件(321) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/05/10(月) 21:28:43 ID:k7DfOn130
「君、そんなに上手いわけ?」
「はっきり言って、岩手で俺と対等に勝負できる音ゲーマーなんて一度もお目にかかったことがない。
 俺は飢えてるんだよ。一度でいいから、音ゲーで胸が熱くなるような勝負をしてみたいんだよ」
「面白い」

彼は手を止めた。
と同時に、彼の操縦していた戦闘機が、爆音と共に散った。
ゲームオーバーだ。

「そこまで言うからには、僕を楽しませてくれるんだろう?」

彼は負けずに、俺以上の上から目線で告げた。
ゾクリと背筋に震えが走り、それから、
これまで経験したことのない高揚感が腹の底から込み上げてきた。

「約束するよ。必ず」
「OK。やってやるよ、音ゲー。
 シューティングとはしばらくおさらばだなぁ」

そう言って彼は、ネームエントリー画面で
しみじみと別れを告げるかのように『BOLCE』と入力して、立ち上がった。

「『ボルチェ』……それが三浦のスコアネーム?」
「うん」
「BOLCEねぇ。BOLCE、BOLCE」
「何さ」
「お前のこと、BOLCEって呼んでもいい?」
「三浦で呼ぶんじゃなかったの?」
「そんな平凡な名前より、BOLCEの方がカッコいいし」
「人の名前に対して、よくそんな失礼なことを平気で言うね」

BOLCEは長い前髪を掻き上げた。
前髪の向こうにある子供っぽい二重瞼の目は、にこやかに笑っていた。

「でも僕もそう思うよ、トシロウ」

俺はぎょっとした。

「名前教えたっけ?」
「お、正解だった?」
「……なんで分かったんだよ」
「ふふ」

BOLCEは意味深に笑った。

「君、さっき言ったよね。
 岩手で君より音ゲーが上手い人はいないんでしょ?
 で、僕がシューティングと間違えてプレイしたあのゲーム……IIDXだっけか?
 あれのスコアランキング画面には『1046』の名前しか無かった。
 ってことは、君がイチゼロヨンロクだ。
 まぁ普通に考えればトシロウって読ませることくらい想像つくよ」
「……ご名答。大したヤツだ」
「別に。これくらい誰でも見当つくと思うけど」
「じゃ、種明かしついでにもう一つ答えてくれ」

俺は借りっぱなしになっていたBOLCEの生徒手帳を突っ返しつつ、疑問を口にした。

「さっき『君と同じ高校一年だ』って言ったな?
 どうしてそんなことまで知ってるんだよ」
8トップランカー殺人事件(322) byとまと ◆iK/S6sZnHA :2010/05/10(月) 21:41:13 ID:k7DfOn130
「あぁ、そのこと」

BOLCEは生徒手帳をポケットに仕舞いながら答えた。

「そのブレザー、盛岡東高校の制服でしょ。だから君は高校生だ」
「それが分かるのは分かる」
「胸ポケットのその刺繍。盛岡東高校の校章だね」

BOLCEは俺の左側の胸を指差した。
つられて下を向くと、入学して一ヶ月の間あまり気にかけていなかったが、
確かに左の胸ポケットには流麗なアルファベットが
葉っぱやリボンで囲まれているデザインのエンブレムが付いている。

「この辺で見かける盛岡東高校の生徒の校章には三種類のバリエーションがある。
 ほら、向かいで格ゲーやってる人も盛岡東の制服を着てるけど、校章の背景が赤でしょ。
 今ここにはいないけど、背景が青の校章を付けてる人も何度か見たことがある。
 でもって、1046のは緑。となると、どうやら盛岡東高校には『学年色』の概念があって、
 校章の色で学年を区別しているんじゃないかな、と推測される」
「……」

マジですか。
そんな話、生徒の俺でさえ初耳だった。

「赤の人と青の人と緑の人を比べると、色々な点で違いがある。
 例えば体格や顔つきから学年の序列を推測することも不可能じゃない。
 でも一番顕著に異なるのは、服装だね。
 緑の人の制服には汚れもほつれもないし、
 ズボンのヒザがまだあまり出張ってない。全体的に新品に近いんだ。
 極めつけは革靴で、こればかりは時間と共にツヤが消えていくから、
 新しい物か古い物かは素人でも一発で分かるでしょ?
 というわけで、緑の1046は新入生。高校一年生だ」

笑うしかなかった。
尋常じゃない洞察力による、清々しいほどの大正解。

俺は心の中で断定した。
BOLCEは紛れもなく本物の天才だ。
周囲の人間を馬鹿扱いするのも、彼ならちょっぴり許せる気がした。

「お前それほど鋭い読みができるのに、どうしてIIDXをシューティングと間違うんだよ!?」
「……いや、だって、あれはどう見てもシューティングでしょ。
 最終防衛ラインを超えた戦闘機の突撃を防ぐために
 七つのピンポイントバリアと回転式反重力波装置をタイミングよく発動させるみたいな、
 明らかにそういう設定が読み取れるじゃん」

俺は心の中で断定した。
BOLCEは紛れもなく本物のアホだ。
周囲の人間を馬鹿扱いしてる場合じゃないだろ、ホント。



そんなこんなで、俺とBOLCEの壮絶な戦いの幕は切って落とされた。
ゴールデンウィークが終わり、
北緯40度の岩手でもようやく桜が散りきった――そんな季節だった。





                            to be continued! ⇒
9とまと ◆iK/S6sZnHA
今回はここまでです。

前スレで2-387さんにも指摘されましたが、
昔からあるIIDXをシューティングに例えるコピペをオマージュ(?)しています。

それではまた次回。