トラウマ
あ 誤爆です 生まれてきてすみません
3 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 12:02:30 ID:gERiN13vO
い く い く タ ワ ー
ドンキーコング2??
5 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 12:08:13 ID:84gNoiHNO
ここをVIPと間違えるのも致し方ない。
6 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 12:09:10 ID:9sxBtglZO
7 :
ららら:2007/10/16(火) 12:10:07 ID:gYrW6V/o0
懐かしいなw
セーブポイントまで行ったら後は楽だ
ポケ板と誤爆?
ドンキーは3までやったけどステージの名前まではわからんな…
アニマルランドのスコークスステージの方が難しい
とりあえず1000ゲト
12 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 12:15:54 ID:84gNoiHNO
ラトリーで深みに落ちたら復帰が簡単じゃない事を除いてはそんなに難しくないっしょ。
初代ドンキーコングの難しさは異常。
13 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 12:19:06 ID:T0ctgSsd0
>>12 初代っていうとFCの方なのかSFCの方なのか
14 :
ららら:2007/10/16(火) 12:25:24 ID:gYrW6V/o0
あぁ 初めてやった時に苦労したのは
>>10かな
アニマルランドのスコークスは、風に涙目
次点に3のぽんこつロケットw
2の茨ステージのBGM最強だと思う人挙手
タルタルとげ迷路は神曲
茨ステージもむずいが
やはり事実上時間制限のあるどくどくタワーには敵わないと思う。
あとは裏ステージのアニマルランドはきつかったwww
18 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 12:36:44 ID:84gNoiHNO
ポンコツも確かに難しいけど俺は敢えて暴走エリーのボーナスステージを挙げたい。
19 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 13:00:37 ID:mHojl9wj0
裏ボスの弱さは異常
暴走エリーは慣れれば簡単だろ
初見は余裕で死ねるが
アニマルランドスコークス>ホットドーム>どくどくタワー>>(トラウマの壁)>>>ラスボス
この辺りはガチ
21 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 13:16:12 ID:84gNoiHNO
3でいえば七面のさかさまとコインドーザーあたりも屈指の難しさだな。
次点で雷あたりか。
1のさいごのステップとかオンボロ工場もマゾすぎる。
ボーナスステージも見えない場所に隠しリフトとかねーよwww
ホットドームタイザーはそんなでもないだろ
3は全体的に難しかったな。スイーピーも酷かった
音ゲ板でもこのスレを受け入れる心の広さに乾杯
スイーピーはとにかく長い長い・・・
あとボーナスステージも難しかったなー。
2の水面がせり上がっていくステージでピラニアが待ち構えているステージがトラウマだった。
無敵になって水面に潜ってボーナスステージのタルまで進むんだが
ピラニアの噛み付きエフェクトが・・・
ホットドームタイザーはボーナスステージしくじったらゴール直通とかひどいっす
どくどくチンポステージ
でっていうアイランドのバカ犬が難しかった
でっていうアイランドのバカ犬は下が溶岩なのが難しいよな。
犬も反応遅いし
30 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 14:23:08 ID:84gNoiHNO
その点、スーパーデラックスは数こなせば楽勝だけど面白い神ゲーだったよね。
でっていうアイランドのボーナス3の100点の取りにくさは異常
GBAのおまけ6は嘆き並に無理ゲー
そういえば星のカービィSDXはDSでリメイクされるね。
33 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 14:33:14 ID:O8pudMckO
>>1 お前ぜってえニコニコでドンキー見たばっかだろ
35 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 14:52:08 ID:nGP/bCr7O
でっていうアイランドのBGMのクオリティは異常
1やったのが消防低学年だからネッキー辺りで進めなくなったなあ
久々にやった今では4コマでしか見た事なかった吹雪の谷もクリアしたが
未だにクルールが倒せてない(´・ω・`)
ここ難しいよな
スクリーチレースまたやりたいから再クリアしよかな
38 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 14:56:06 ID:O8pudMckO
39 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 15:00:11 ID:84gNoiHNO
>>36 偽スタッフロール後のクルールはしゃがめ。
しゃがむ場所とタイミングは数こなせばわかる。
40 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 15:07:30 ID:O8pudMckO
でっていうGBAのひみつもキツい
普通にやる分にはまだしも100点狙いだと
トゲトゲ落下地帯三回やらないといけないのがな…
あつあつてっぽーうおと目隠しテレサが居るのも嫌
まあラストの演出見たら苦労も吹っ飛んだがな
ついでにカメックは死ね
42 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 15:24:19 ID:O8pudMckO
43 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 15:25:30 ID:O8pudMckO
44 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 15:30:40 ID:O8pudMckO
45 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 15:35:51 ID:O8pudMckO
せっかく音ゲー板なんだから、ゲーム音楽語ろうぜ。
鉱山、マグマ、荊は名曲。この頃の任天堂ゲーム音楽はかなり良い。
いや、今はどうだか知らないんだが。
それにしても、何かが迫ってくるステージってのは思い出に深く残るな。
ミッキーのゲームのホーンテッドマンションとか。
47 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 16:01:09 ID:84gNoiHNO
2のみだけど新規データのモードセレクト画面で下押しまくるとテストミュージックになるんだっけ。
48 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 16:07:46 ID:O8pudMckO
49 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 16:15:54 ID:O8pudMckO
ドン2はゴーストロープのBGMが神。
マグマ、茨も好きです
しずむなんぱせんはトラウマ
1はデモ画面でなんかコマンド
3はファイルセレクトでLRRLRRLRLR→MUSIC
でもな、ゲーム音楽スレ行こうぜ
52 :
なるぴょん ◆AnalSexRiQ :2007/10/16(火) 16:29:08 ID:84gNoiHNO
ゲーム音楽だけ語ってもネタ切れは目に見えてる。
53 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/16(火) 16:32:10 ID:PqzhY56iO
ドソキーユングは雑魚です。
俺、当時は外国に住んでてさ、向こうの海賊版のソフトつかまされて、表記はすべて英語だわセーブ機能は壊れてるわで大変苦労した記憶があるな。
ラスボス前でリセットボタン押したときは泣いた。
結局どくどくタワーって前半勝負だよね
ラトリー時は蜂1回しか踏めないわ足場無さ過ぎるわでシビアだが
スコークスに変身すれば少しだけ楽になるし
スティンガーになっちまえばもうウイニングラン(Bステージ見逃すと涙目だが)
■ 星のカービィ ウルトラスーパーデラックス(DS:仮称)
96年にスーパーファミコンでリリースされた「星のカービィ スーパーデラックス」のリメイク版。
DS版はオリジナルステージが追加され、ミニゲームが刷新され全3種類となっている。
基本的な遊び方は、スーパーファミコン版とほぼ一緒で、タッチペンも使用しない。
パステルカラーがふんだんに使われたカラフルなステージを、敵を倒しながらグイグイ進んでいく。
筆者は久しぶりにカービィをプレイしたが、今プレイしてもまったく古さを感じさせない。
2Dアクションゲームの魅力がギュッと凝縮された作りに、周囲の目も構わず思わずニヤニヤしてしまう。
3種類のミニゲームは、毎度おなじみの「カービィ」テイスト。
同じ絵柄を当てるカルタ、出現するターゲットを瞬時に狙う早撃ち、
上から流れてくる異物をはじくベルトコンベアなどのミニゲームを、
例のごとく小憎らしいCPUのライバルキャラたちと競い合う。難易度は1〜3段階までだが、
CPUの難易度設定が絶妙なため、低いと「なんか俺ナメられてる気がする」となり、
上にいくと「そんな反応ありえないって!!」という、人間の限界に挑戦している感じが実に素晴らしい。
スタッフのかたに「これ、クリアしたらステージやミニゲームが増えるとか、
そういったフィーチャーはないですか?」と質問したところ「まだ開発中ですが、
もしかしたらミニゲームくらいは増やすことができる……か……も?」という、実に微妙な回答が得られた。
個人的には、当時半日くらい平然とやっていた「刹那の見切り」が復活したら非常に嬉しいのだが、
仮に実現した場合、移動中の電車内などでハマった日にはそら恐ろしい気がしないでもない。
2008年発売予定で、価格は未定。
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20071010/ninp.htm 下の方にスクリーンショット
>>58 おお
そのままリメイクとはわかってるなぁ。
絶対買う。
あれwポケモン板から来たけどこんなスレ音ゲー板にあったかw?
61 :
ららら:2007/10/17(水) 06:37:59 ID:z3msvxJX0
初代ってなんかオープニングの時に
下Y 下Y 下Y 押してたらアニマルステージみたいなん行けなかったっけ?
あれで当時友達と星の数競争してたなぁ〜カエルが一番多かったかな
スレタイ見てると
全くお前は
くどくどくどくどくどくどくど
くどくどくどくどくどくどくど
くどくどくどくどくどくどくど
を思い出した。
黙らせるにはカツラを取れ。
64 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/17(水) 12:30:28 ID:yIChVYBB0
スレタイ見てポケモンかと思ったwwwww
65 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/17(水) 12:59:43 ID:upJttkIGO
__ __ |
蜂 (○)(×)| |
 ̄  ̄ ‖\|
_________‖ ‖
_________\‖__
プアップァップアッポォ
となる定番
67 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/17(水) 15:04:41 ID:upJttkIGO
68 :
◆AnalSexRiQ :2007/10/17(水) 17:10:14 ID:6pap1yof0
で、どうすんのこれ?
レ ゲ ー 板 で や れ
ナツカシイワァ……マチガイナクメイサク
記念真紀子
72 :
爆音で名前が聞こえません:2007/10/18(木) 14:44:38 ID:aO+5IDcB0
age
>>15 ノ
あとラトリー登場のトコとかの曲も好き
>>15 ノ
あとステージ5の森のBGMと氷のステージのBGMもかなりよかった。2の音楽は当時消防だった俺も鳥肌が立った覚えがある
キングBが追っ掛けてくるのは怖かった
>>62 まさかこんなところでゼロヨンネタ見るとは思わなかったわwwwww
本編のレースゲーよりサブのRPGの方が長い。それがゼロヨン。
最終的にはNSXが538kmでブッ飛ばすが中の人大丈夫か(笑
このスレで化学の勉強させてくれ
シクロヘキサンがいす形配座をとる結果、多くの重要なことが起こってくる。
その一つは、2種類の環上水素-アキシアル配置(axial position)とエクアトリアル配置
(equatorial position)-が存在することである。いす形シクロヘキサンは環に垂直(環の
軸に平行)な6個のアキシアル水素と、大まかな環の平面にある(赤道の周りの)6個の
エクアトリアル水素をもっている。シクロヘキサンの各炭素はアキシアル水素と
エクアトリアル水素を1個ずつもっており、シクロヘキサン環のどちらの面も、交互に
並んだアキシアル水素とエクアトリアル水素を3個ずつもっている。たとえば、
シクロヘキサン環の上側の面が1,3,5の炭素上にアキシアル水素をもっていれば、
2,4,6の炭素上にはエクアトリアル水素をもっている。下の面はこれと全く逆となり、
1,3,5の炭素上にエクアトリアル水素を、2,4,6の炭素上にアキシアル水素をもっている。
1メタン(methane) CH4
2エタン(ethane) C2H6
3プロパン(propane) C3H8
4ブタン(butane) C4H10
5ペンタン(pentane) C5H12
6へキサン(hexane) C6H14
7ヘプタン(heptane) C7H16
8オクタン(octane) C8H18
9ノナン(nonane) C9H20
10デカン(decane) C10H22
11ウンデカン(undecane) C11H24
12ドデカン(dodecane) C12H26
13トリデカン(tridecane) C13H28
20(エ)イコサン[(e)icosane] C20H42
21ヘンイコサン(henicosane) C21H44
30トリアコンタン(triacontane) C30H62
イバラは全ゲーム曲中最高の癒し曲。
官能基の名前
アルカン CH3CH3
アルケン H2C=CH2
アルキン H-C≡C-H ここから先は表すのが難しいので省略。
アレーン、ハロゲン化物、アルコール、エーテル、アミン、ニトリル、スルフィド
チオール、カルボニル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド
カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物
シクロアルカンの性質の違いは、一つは鎖状化合物よりもシクロアルカンは
立体配座の自由度が少ないことである。鎖状アルカンはC-C単結合の周りで
ほとんど自由に回転が可能であるが、シクロアルカンでは立体配座がかなり
制限される。たとえば、シクロプロパンは幾何学的に、固定した構造をもった
平らな分子に制限される。環を切って開くことなしに、C-C結合を回転する
ことはシクロプロパンではできない。環状構造であるために、シクロアルカン
は二つの面、"上"面と"下"面をもっている。したがって、置換シクロアルカン
には異性体が可能である。たとえば、1,2-ジメチルシクロプロパンには二つの
異性体が存在する。一方の異性体では二つのメチル基が環の同じ側にあり、結
合を切断しないかぎり互いに変換できない。ブタンとイソブシンのような原子
の結合順序が違う構造異性体とは異なり、二つの1,2-ジメチルシクロプロパン
では結合の順序は同じであるが、三次元的な方向が異なる化合物は立方異性体
と呼ばれる。1,2-ジメチルシクロプロパンはシス-トランス異性体と呼ばれる
特殊な立方異性体である。接頭語のシスとトランスはこれらを区別するために
用いられる。
後英語も
argue 主張する
arrange 打ち合わせる
vary 異なる
ceremony 儀式、式典、祭典
product 製品、生産物、産物
adventure 冒険
compare を比較する
costume 衣服、服装
script 台本
shoot (映画、写真などを)撮る、撮影する、撃つ、放つ、(植物などが)芽を出す
industry 産業
mystery ふかかいな、不思議なこと、神秘的なこと、秘密、なぞ
feature 特徴、特色、顔の一部、を呼び物にする、(新聞、雑誌が)を大きく扱う
後物理も
ボイルの法則 pV=一定
シャルルの法則 V=V0(1+βt) Vはt℃のときの体積、β=1/273は気体の体膨張
率である。
E 全エネルギー
力学的エネルギー保存則
E=1/2m|V|2+U(r)=定数(時間によらない)
注:2は|V|の二乗のことであり、2倍ではない。
E=1/2m[V(t)]2+mg[y(t)]=mgh
k=ω2m
分子の対掌性の原因:キラリティー
その鏡像と同一ではなく、したがって一対の鏡像異性体として存在する化合物は
キラルであると言われる。キラルな分子とその鏡像(鏡像異性体)を手に取り、
原子全部が一致するように一方を他方の上に置くことはできない。ある化合物が
キラルなのかそうでないのかは、どのようにしたら予測できるのだろうか。ある
化合物が対称面をもてばキラルではない。対称面というのは、一方の半分が他方
の半分の正確な鏡像になるように、分子または物体の中央を通って切断する面で
ある。たとえば、フラスコは対称面をもっている。フラスコを半分に切ると、一
方の半分は他の半分の正確な鏡像になる。しかし、手は対称面をもたない。手の
一方の”半分”は他方の”半分”の鏡像ではない。
どのような形であっても対称面をもつ分子はその鏡像と同一であり、したがって
非キラルまたはアキラル(achiral)である。すなわち、プロパン酸、CH3CH2CO2Hは
配列すると対称面を含み、したがってアキラルであるが、乳酸、CH3CH(OH)CO2Hは
どのような立体配座でも対称面をもたず、キラルである。
有機分子における最も一般的な(それだけではないが)キラリティーの原因は
たとえば乳酸の中央の炭素原子のような、四つの異なった基に結合した炭素
原子の存在である。このような炭素はキラル中心(chiral center)または立体
中心(stereocenter)と呼ばれる。キラリティーは分子全体の性質であるが、立
体中心はキラリティーの原因である点に注意せよ。複雑な分子では立体中心を
見つけるのに訓練を要する。なぜならば四つの異なる基がある炭素に結合して
いることが、必ずしもすぐに明らかになるとは限らないからである。相違が必
ずしも立体中心のすぐ隣にはっきりと現れるとは限らない。たとえば、5-ブロ
モデカンは四つの異なる基がC5(*をつけた)に結合しているからキラルな分子で
ある。ブチル置換基はペンチル置換基に非常に似ているが、同一ではない。相
違は立体中心から四炭素離れるまで明らかにならないが、やはり相違はある。
シクロヘキサンについて
置換へキサンは天然に広く存在するため、最も一般的なシクロアルカンである。
ステロイドや多くの薬剤を含む膨大な数の化合物がシクロヘキサン環を含んでいる。
たとえば、コレステロールは六員環三つと五員環一つをもっている。
メタンの構造の説明に用いたのと全く同じ種類の混成により、どのようにして
炭素原子が他の炭素原子と結合して炭素鎖や環をつくり、膨大な数の化合物を
可能にしているかを説明することができる。エタン、C2H2は炭素-炭素結合を
含む最も簡単な分子である。エタン分子は、二つの炭素原子がおのおののSP3
混成軌道のσ型重なりによって互いに結合すると考えて描くことができる。
各炭素上の残り三つのSP3混成軌道は、水素の1s軌道と重なって六つのC-H結合
をつくる。エタンのC-H結合は少し弱いけれども、メタンの結合と類似している。
[メタンの438kJ/molに対してエタンは420kJ/mol(100kcal/mol)である]C-C結合は
154pmの長さであり、376kJ/mol(90kcal/mol)の結合力をもっている。エタンの
すべての結合角は四面体角の109.5°に非常に近い。
H2分子の結合は理解しやすかったが、4価の炭素原子をもつ有機分子の場合は
やや複雑となる。まず始めに、最も簡単なメタン、CH4の場合を考えよう。炭
素は原子価殻に4個の電子[(2s)2(2s)2](注かっこの外側の2は二乗のことである。)
をもっており、水素と4本の結合をつくることができる。メタンにおける四つのC-H
結合はどんな性質をもっているのだろうか。炭素は結合のために2種類の軌道(2sと
2p)を用いるので、メタンのC-H結合にも2種類の結合がありそうに思われる。
実際にはメタンの四つのC-H結合はすべて等価であり、これらは空間的に正四面体の
四つの頂点の方向を向いている。いかにしてこれを説明したらよいのであろうか。
この問題に対する答えは1931年Linus Paulingによって与えられた。Paulingは一つの
s軌道と三つのp軌道を組合わせる、すなわち混成すると、四面体の各頂点の方向を向いた
四つの等価な原子軌道をつくることができることを示した。これらの四面体の頂点方向を
向いた軌道は、一つのs軌道と三つのp軌道の組合わせによってつくられるため、sp3混成
軌道(sp3hybrid orbital)とよばれる。sp3の中の上付きの数字3は混成軌道をつくるのに各
型の原子軌道がいくつ組合わされたかを示すもので、その軌道を占める電子の数を表すもの
ではないことに注意せよ。
混成:sp2軌道とエテンの構造
sp3混成は最も一般的なものであるが、それだけではない。たとえばエテン(エチレン)、
C2H4を見てみよう。エテンの2個の炭素原子は四つの電子を共有して二重結合で結ばれて
いるときのみ4価となりうることは100年以上前から知られていた。さらに、エテンは平面
形であり、109.5°ではなくほぼ120°の結合角をもっている。炭素の四つの原子価殻軌道す
べてが組合わさって四つの等価なsp3混成軌道ができる。今これとは別に、使用できる三つ
の2p軌道のうちの二つだけと2s軌道を組合わせることを考えてみよう。この組合わせからは
、sp2混成軌道(sp2hybrid orbital)とよばれる三つの混成軌道が生じ、混成に使われなかっ
た2p軌道の一つは変化せずに残ることになる。三つのsp2軌道は互いに120°の角度をなして
同一平面にあり、残りのp軌道はこのsp2平面に対して垂直に立っている。二つのsp2混成の炭
素原子が近づくと、sp2-sp2の正面の重なりで強い結合をつくることができる。同時に、混成
に関与しなかった各炭素上のp軌道も、真横からの重なりで相互作用することができる。正面
からの重なりはσ結合を与え、真横からの重なりはπ(パイ)結合を与える。σ型のsp2-sp2の重
なりとπ型の重なりの二つの組合わせで4個の電子を共有し、C=C結合ができることになる。σ
結合の電子は、核間を中心とする領域に存在し、一方π結合の電子は原子核を結ぶ線の上下の
領域に存在していることに注意せよ。
エテンの構造を完成させるためには、残っている炭素のsp2軌道四つと四つの水素原子
とをσ結合させればよい。このようにしてでき上がったエテン分子は平面構造をもって
おり、H-C-HとH-C=Cの結合角は約120°である。二つではなく四つの電子を共有するこ
とにより生成するため、期待されるようにエテンの炭素-炭素二重結合はエタンの単結
合より短くて強い。エタンのC-C結合が154pmの結合距離と376kJ/molの結合力をもつの
に対し、エテンのC=C結合の長さは133pmであり、その結合力は611kJ/mol(146kcal/mol)
である。
混成:p軌道とアセチレンの構造
2個および4個の電子を共有することにより単結合、二重結合をつくることができるのに
加えて、炭素は6個の電子を共有することにより三重結合をつくることができる。アセチレン
、C2H2でみられるような三重結合を説明するためには、第三の混成軌道、sp混成軌道(sp
hybrid orbital)が必要になる。これまでのような二つまたは三つの2p軌道との組合わせでは
なく、炭素の2s軌道を2p軌道一つだけと混成させることを考えてみよう。その結果、二つのsp
混成軌道が生成し、二つのp軌道は変化せずに残る。これら二つのsp軌道は直線形であり、x軸
上で互いに180°離れている。残る二つのp軌道は、y軸とz軸上にあり、互いに直交している。
エーンジーーーーンスレになりました
エンジーーーン
98 :
爆音で名前が聞こえません:2007/11/18(日) 19:06:08 ID:8O88gM6M0
エンジーーーーーン
二つのsp混成した炭素原子が互いに近づいた場合、おのおのの炭素のsp混成軌道が
正面から重なり、強いsp-spσ結合を形成する。さらに各炭素原子のpz軌道は、側面
から重なってpz-pzπ結合を生じ、二つのpz軌道もこれと同様に重なり合ってpy-pyπ
結合をつくる。結果として、一つのσ結合と二つのπ結合(全体として炭素-炭素三重
結合)ができることになる。残る二つのsp混成軌道は二つの水素とσ結合して、アセチ
レン分子が完成する。sp混成からわかるように、アセチレンは180°のH-C≡C結合角を
もった直線分子である。C≡C結合の長さは120pm、結合力は835kJ/mol(200kcal/mol)で、
どの炭素-炭素結合よりも短くて強い。
極性共有結合:電気陰性度
これまでは、化学結合をイオン結合または共有結合のどちらかとして考えてきた。
たとえば、塩化ナトリウムはイオン性である。ナトリウムから塩素に電子が移動して、
反対符号に荷電したNa+イオンとCl-イオンができ、これらが静電的な引力で結ばれる。
これに対して、エタンの炭素-炭素結合では、電子が対称に分布しており、したがって
共有結合である。二つの結合電子は二つの等価な炭素原子によって等しく共有される。し
かし、多くの結合は真にイオン性でも真に共有結合でもなく、二つの間のどこかにある。
このような結合は極性共有結合(polar covalent bond)とよばれるが、これは共有電子が一
方の原子に強く引きつけられていることを意味する。結合の極性は、共有結合中の電子をど
の程度引き付けるかという原子本来の性質である電気陰性度(electronegativity)に起因している。
周期表の左側にある金属元素はあまり電子を引き付けないが、周期表の右側にあるハロゲンや他の
反応性の高い非金属元素は電子を強く引き付ける。一般則として、似たような電気陰性度をもつ原子間の
結合は共有結合で、電気陰性度の差が2単位以内の原子間の結合は極性共有結合、電気陰性度が2単位以上
異なる原子間の結合はほとんどイオン性である。たとえば、炭素と水素は似たような電気陰性度をもつの
で、炭素-水素結合は比較的非極性である。しかし、炭素と酸素、フッ素、塩素のようなより陰性な元素と
の間の結合は極性共有結合である。このような結合に含まれる電子は、炭素から電気的により陰性な原子の
方に引き寄せられており、炭素が部分的な正電荷(δ+で示す)を、より陰性な原子が部分的な負電荷(δ-)を帯びる
(δはギリシャ語のデルタ)。例として、クロロメタン、CH3Cl中のC-Cl結合を示す。炭素と電気陰性度が小さい元素
との間の結合は、炭素が部分的な負電荷を帯び、もう一方の原子が部分的な正電荷を帯びるように分極する。メチル
リチウム、CH3Liのような有機金属化合物が良い例である。クロロメタンやメチルリチウムの表示では、結合の極性の
方向を示すのに矢印が使われていることに注意せよ。約束により電子はこの矢印の方向に動くことを表す。矢印の元の
部分は電子不足(δ+)で、先は電子豊富(δ-)である。結合を極性にさせる原子の能力を問題にするときには、誘起効果
(inductive effect)という用語がしばしば使われる。誘起効果とは、隣接する原子の電気陰性度に応じて結合中の電子が
移動することである。リチウムやマグネシウムのような金属は、電子を誘起的に供与するのに対して、酸素や塩素などの
陰性元素は電子を誘起的に引き寄せる。誘起効果は化学反応性を理解するうえで大きな役割を果たしており、この本全体に
わたって、多種多様な化学現象を説明するために頻繁に使われる。
酸と塩基:BrФnsted-Lowryの定義
電気陰性度や結合極性と関連するもう一つの重要な概念は、酸性度と塩基性度である。
すぐ後で、有機分子の酸-塩基的性質がそれらの化学の多くを説明する手助けになること
を学ぶ。酸性度を定義するにはおもに二つの方法-BrФnsted-Lowryの定義とLewisの定義-がある。
最初にBrФnsted-Lowryの定義からみていこう。BrФnsted-Lowryの酸は水素イオン(H+)を与える物
質であり、BrФnsted-Lowryの塩基は水素イオンを受取る物質である。[中性の水素原子から価電子
がとれると水素核(プロトン)だけになることから、プロトンという名前がH+の同義語としてよく
使われる。]たとえば、気体の塩化水素を水に溶かすと、HClはプロトンを供与し、水がそのプロト
ンを受取ってオキソニウムイオン(H3O+)と塩化物イオン(Cl-)を与える。酸HClがプロトンを失って
生じた生成物である塩化物イオンはその酸の共役塩基(conjugate base)とよばれ、塩基H2Oがプロト
ンを受取ったとき生じた生成物のH3O+はその塩基の共役酸(conjugate acid)とよばれる。
有機・無機化学は好きだが、当たり前のことが説明されてると情報の可用性が失われて萎える。
情報の整理までで終わらないで是非整頓まで行って欲しいと思う。
異なる酸はプロトンを与える能力に差がある。HClのような強い酸はほとんど完全に水
と反応するが、酢酸(CH3CO2H)のような弱い酸はほんのわずかしか反応しない。ある酸
の水溶液中における正確な強さは酸性度定数(acidity constant,Ka)で表される。一般
化した酸HAの水中における反応に対して、酸性度定数、Kaは次式で表される。
HA+H2O⇔A-+H3O+ Ka=[H3O+][A-]/[HA]
ここで、かぎ括弧[]はそこに示された化学種のモル濃度(mol/L)を表す。強い酸は右に
偏った平衡をもち、したがって大きな酸性度定数をもつが、一方弱い酸は左に偏った
平衡をもち、小さな酸性度定数をもっている。個々の酸のKa値は非常に広い幅をもって
おり、最も強い酸の約1015から最も弱い酸の10-60まで広がっている。H2SO4,HNO3
およびHClのような普通の無機酸は102〜109の範囲のKa値をもっており、ほとんどの
有機酸は10-5〜10-15の範囲のKa値をもっている。経験を積むと、どの酸が"強く"て
どの酸が"弱い"か(相対的なものであることを常に忘れないこと)に対するおおまかな感
じがつかめるようになる。酸の強さは通常pKa値で表すことが多いが、このpKaは酸性度
定数の対数に負の符号を付けたものに等しい。pKa=-logKa
強い酸(大きなKa)は小さなpKaをもち、弱い酸(小さなKa)は大きなpKaをもつ。
酸の強さとその共役塩基の塩基性の強さの間には逆の関係があることに注意せよ。
強い酸の共役塩基は弱く、弱い酸の共役塩基は強い。この逆の関係を理解するには、
反応中に酸性水素に何が起こるかを考えるとよい。強酸とは容易にそのH+を失うものであると
いうことは、その共役塩基がプロトンを強く保持しており、したがって強塩基であるということを
意味する。たとえば、HClが強酸であるという事実は、Cl-がプロトンを強く保持せず、弱塩基であると
いうことを意味する。一方、水が弱酸であるということは、OH-はH+を強く保持しており、強い塩基で
あることを意味する。
一般に、プロトンが強い酸から強い塩基の方に移動するということは、ある酸はそれより
大きなpKaをもつあらゆる酸の共役塩基にプロトンを供与することを意味する。逆にある酸の
共役塩基はより小さなpKaをもつあらゆる酸からプロトンを引き抜く。水(pKa=15.74)は酢酸(pKa=4.76)より
弱い酸であるので、水酸化物イオンは酢酸イオンより強くプロトンを保持する。酸-塩基の反応性を予測する
簡単な方法は、反応が起こるためには生成物が出発物より安定でなければならない、ということを覚えておく
ことである。言い換えると、生成する酸と塩基は、出発物の酸と塩基より弱く反応性に乏しい必要がある。たとえば、
酢酸と水酸化物イオンとの反応において、生成物の共役塩基(酢酸イオン)は出発物の塩基(水酸化物イオン)より弱いし、
生成物の共役酸(水)は出発物の酸(酢酸)より弱い。
後の章で述べる反応の多くは、有機酸や有機塩基を含んでいる。有機酸の特徴は、正に
分極した水素原子(正電ポテンシャルマップで青)が存在することである。有機酸には、
おもに二つの種類がある。一つはメタノールや酢酸のような化合物で、酸素に結合した
水素原子(O-H)を含んでいる。もう一つはアセトンのような化合物で、C=O結合の隣の炭素
に結合した水素原子(O=C-C-H)を含んでいる。これらが酸性を示す理由については、後に説明する。
有機塩基は、H+と結合できる孤立電子対(静電ポテンシャルマップで赤)をもつ原子が
存在することが特徴である。トリエチルアミンのような窒素を含む化合物が最も一般的な
ものであるが、酸素を含む化合物も十分強い酸と反応するときは、塩基として働く。ある種の
含酸素化合物は、ちょうど水と同じように、状況に応じて酸としても塩基としても働くことが
できることに注意せよ。たとえば、メタノールやアセトンは、プロトンを供与するときは酸と
して働き、その酸素原子がプロトンを受取るときは、塩基として働く。
酸と塩基:Lewisの定義
Lewisの酸、塩基の定義は、プロトンを与えたり、受取ったりする物質に限定されない点で、
BrФnsted-Lowryの定義と異なっている。Lewis酸は空の原子価軌道をもっていて、電子対を受取る
ことができる物質であり、Lewis塩基は電子対を供与する物質である。供与された電子対は、新しく
できた共有結合中でLewis酸とLewis塩基の間で共有される。Lewis酸はプロトン供与体だけでなく、
他の多くの化学種も含んでいる。すなわち、プロトン(H+)は塩基に結合するとき空の1s軌道を満たす
ために電子対を受取るのでLewis酸である。AlCl3のような化合物も、空軌道を満たすためにLewis塩基
から電子対を受取るので、Lewis酸である。Lewis塩基-Lewis酸と結合をつくるのに使うことができる
一対の孤立電子対をもつ化合物-の定義はBrФnsted-Lowryの定義と似ている。
酸-塩基反応をよく見て、それらがどのように書かれているかに注目しよう。
最初の反応では、Lewis塩基の水が電子対を用いて、分極したHCl分子からH+を
引き抜いている。二番目の反応では、Lewis塩基がアルミニウムの空の原子価軌道に
電子対を供与している。両方の反応で、電子に富んだLewis塩基から電子が不足している
Lewis酸へ電子対が流れる方向が、矢印を用いて示されている。曲がった矢印は常に、矢印の
根元の原子から矢印の先端の原子へと電子対が移動することを意味する。反応中の電子の流れを
示すのに、この曲がった矢印がこの本で以後ひんぱんに使われることになるであろう。
有機化学は炭素化合物について学ぶものである。歴史的には無機化学と有機化学に分けられていたが、
この分類には科学的な根拠はない。原子は、軌道とよばれる特定の領域に存在する負に荷電した電子に
より囲まれた、正に荷電した原子核から成り立っている。異なる軌道は異なったエネルギー準位と形をもって
いる。たとえば、s軌道は球形であり、p軌道は亜鈴形をしている。化学結合には、イオン結合と共有結合の二つの
基本的な種類がある。イオン総合は無機塩に一般的にみられるもので、反対符号の電荷の間の静電的な引力で結ばれている。
有機分子にみられる共有結合は、原子の間で電子対を共有することによりつくられる。電子の共有は、二つの原子が接近し、
その原子軌道が重なり合うときに起こる。原子軌道が正面から重なることによって生じる結合はσ結合とよばれる。
p軌道が側面から重なることによって生じる結合はπ結合とよばれる。
有機化学において結合を形成するために、炭素は混成軌道を使う。単結合だけができる場合は、
炭素は四面体構造をもった四つの等価なsp3混成軌道をもつ。二重結合を形成する場合には、炭素は
平面構造をもった等価なsp2混成軌道三つと、混成していないp軌道一つをもつ。三重結合を形成する
場合には、炭素は直線構造をもった二つの等価なsp混成軌道と、二つの混成していないp軌道をもつ。
原子の電気陰性度が原因で電子を非対称に共有するため、有機分子はしばしば極性共有結合をもっている。
たとえば、酸素が炭素よりも強く結合電子を引き付けるので、炭素-酸素結合は極性である。これに対し、
炭素-金属結合は炭素がほとんどの金属より強く電子を引き付けるので、逆方向に分極している。
BrФnsted-Lowryの酸はプロトン(水素イオン、H+)を供与することができる物質であり、BrФnsted-Lowryの
塩基はプロトンを受取ることができる物質である。ある酸の強さは酸性度定数、Kaで表される。Lewis酸は
電子対を受取ることができる物質である。Lewis塩基は孤立電子対を供与することができる物質である。酸素
や窒素を含む多くの有機分子はLewis塩基である。
化学結合の性質
原子はなぜ結合するのだろうか?結合はどのように記述したらよいのだろうか?なぜという疑問に
答えるのは比較的簡単である。原子が単独でいるよりも、結合により生じる化合物の方が安定(エ
ネルギーが少ない)だから原子は結合するのである。化学結合が形成されるときは常にその化学系から
エネルギーが出ていく。逆に、化学結合が切断されるときはエネルギーがその系に供給されなければ
ならない。言い換えると、結合の形成はエネルギーを放出し、結合の切断はエネルギーを吸収する。
どのようにしてという疑問に答えるのはより困難である。それに答えるには原子の性質についてもっと
詳しく知らなければならない。我々は経験的観察を通して、最外殻、すなわち原子価殻(valence shell)
に8個の電子をもつ(オクテット)18(8A)族の希ガス元素-ネオン(2+8)、アルゴン(2+8+8)、クリプトン
(2+8+18+8)-が特別に安定であることを知っている。また、多くの典型元素の化学は、すぐ近くにある
安定な希ガスの電子配置をとろうとする性質によって支配されることも知っている。たとえば、1(1A)族の
アルカリ金属は、最外殻にある1個のs電子を失うことにより、希ガスの電子配置をもった陽イオン(カチオン)
になる。一方、17(7A)族のハロゲンは電子を獲得して、希ガスの電子配置をもった陰イオン(アニオン)になる。
この結果生じたイオンは我々がイオン結合(ionic bond)とよんでいる静電的な引力により、Naclのように化合物
中で結びついている。周期表の中央部の元素はどのようにして結合をつくるのだろうか?例として、天然ガスの
主成分であるメタン、CH4についてみてみよう。炭素[(1s)2(2s)2(2p)2]が4個の電子を獲得したり失ったりして
希ガスの電子配置になることは非常に難しいので、メタンの結合はイオン性ではない。実際には炭素は電子を獲得
したり失ったりするのではなく、電子を共有することによって他の原子と結合する。
G.N.Lewisにより1916年に初めて提唱されたこのような電子を共有することによる結合は共有結合(covalent bond)
とよばれ、共有結合により結ばれている中性の原子の集団は分子(molecule)とよばれる。
分子中の共有結合を表す最も簡単な方法は、原子の価電子を点で表すLewis構造すなわち
点電子構造(electron-dot structure)を用いるものである。たとえば、水素は一つの点
(1s)をもち、炭素は四つの点[(2s)2(2p)2]、酸素は六つの点[(2s)2(2p)4]をもっている。
原子がすべて希ガスの電子配置-ほとんどの元素はオクテット(八つの点)、水素は2個-を
とったとき安定な分子が生成する。原子がつくる共有結合の数は、何個の価電子をもって
いるか、またはオクテットを完成するのにさらに何個の価電子が必要かによる。
1個、2個、3個の価電子をもつ原子はおのおの1本、2本、3本の結合をつくるが、4個以上の
価電子をもつ原子は、sおよびp準位の原子価殻を満たし、それにより安定なオクテットをつくる
のに必要な電子の数だけ結合をつくる。すなわち、炭素は4個の価電子[(2s)2(2p)2]をもっており、
CH4のように四本の結合をつくることによりその原子価殻を満たす。窒素は5個の価電子[(2s)2(2p)3]を
もっておりNH3のように3本の結合をつくり、酸素は6個の価電子[(2s)2(2p)4]をもっていて、H2Oのように
2本の結合をつくる。結合に使われない対をなしている価電子は非結合電子対(nonbonding electrons)また
は孤立電子対(lone-pair)とよばれる。たとえば、アンモニアの窒素原子は3本の共有結合で5個の価電子のうち、
3個を水素と共有し、残る2個の価電子は孤立電子対としてもっている。
114 :
爆音で名前が聞こえません:2007/11/24(土) 18:33:13 ID:X693ZoDY0
コピペ乙
先に言われた(′・ω・`)
トラックトラックリフトも個人的に辛い
Lewis構造は電子をあたかも帳簿をつけるのと同じように書くことができ、存在する価電子の数を
頭に入れておくことができるので便利である。より簡単な方法は、Kekule構造すなわち線結合構造
(line-bond structure)を用いるもので、この線結合構造では、共有結合に含まれる2個の電子を単に
原子間の1本の線で表す。線結合構造を書く場合、孤立電子対は記入しないことがあるが、それらが存在
していることを記憶している必要がある。
共有結合の生成:原子価結合法
原子の間の電子の共有は、どのようにして起こるのだろうか。原子価結合法(valence bond theory)によれば、
二つの原子が互いに接近し、一方の原子の電子一個をもった軌道と、もう一方の原子の電子一個をもった軌道が
重なるときに、結合が生成する。たとえば、H2分子では電子を一個ずつもった二つの1s軌道が重なることにより
H-H結合ができる。H↑(1s)+↓H(1s)→H↑↓H(H2分子)
この反応2H・→H2の過程で436kJ/mol(104kcal/mol)のエネルギーが放出される。生成物のH2分子は436kJ/molだけ
出発系の2H・より少ないエネルギーをもっているから、生成物は出発物より安定であり、新しいH-H結合は436kJ/molの
結合力(bond strength)をもっているといえる。別な表現をすれば、このH2分子を切断して二つのH原子に分けるためには
436kJ/molのエネルギー(熱)をH-H結合に与えなければならないことになる。[便利なように、エネルギーはキロジュール(kJ)と
キロカロリー(kcal)の両方で示すことにする:1kJ=0.2390kcal;1kcal=4.184kJ.]H2分子中で二つの原子核はどのくらい近づくのであろうか。
ともに正に荷電しているので、二つの原子核が接近しすぎると互いに反発しあう。しかし遠くに離れすぎると、結合電子を共有できなくなる。
したがって、最も結合の安定化を大きくする最適な核間距離があることになる。この最適距離は結合距離(bond length)とよばれる。水素分子の
場合、結合距離は74pmである。すべての共有結合は一定の結合力と結合距離をもっている。水素分子中の軌道は引き伸ばした卵のような形をしており、
H-H結合の中心を切断した断面は円形のようにみえる。別のいい方をすると、H-H結合は軸対称である。共有電子が、二つの核間に引いた仮想的な線を中
心にして対称的に存在するこのような結合は、σ(シグマ)結合とよばれる。
官能基
化合物をその反応性で組分けする構造上の特徴は官能基とよばれる。官能基(functional group)は大きな分子の一部分であって、
特有の化学反応性を示す。化学的には、ある官能基はそれをもつすべての分子中でほぼ同じ挙動を示す。たとえば、最も簡単な官
能基の一つに炭素-炭素二重結合がある。炭素-炭素二重結合の電子構造はそれを含むあらゆる分子において本質的に同じであるので、
その反応性も同じである。炭素-炭素二重結合をもつ最も簡単な分子であるエテンは、ペパーミント油に含まれている。外見的にはより
複雑な分子であるメンテンと同じ反応を行う。たとえば、両者ともBr2と反応して、臭素原子が二重結合の各炭素に付加した生成物を与える。
有機分子の化学は、分子が大きいとか複雑であるとかに関係なく、含まれる官能基によって決まる。
炭素-炭素多重結合をもつ官能基
アルケン、アルキンおよびアレーン(芳香族化合物)はすべて、炭素-炭素多重結合をもっている。
アルケンは二重結合を、アルキンは三重結合をもっており、アレーンは炭素原子の六員環中で交互になった
三つの二重結合と単結合をもっている。構造が似ているために、これらの化合物は化学的にも似ている。
陰性原子に単結合した炭素をもつ官能基
ハロゲン化アルキル、アルコール、エーテル、アミン、チオールおよびスルフィドはすべて、陰性原子-ハロゲン、酸素、
窒素、硫黄-と単結合で結ばれた炭素原子をもっている。ハロゲン化アルキルはハロゲン(-X)に結合した炭素原子をもち、
アルコールはヒドロキシ基(-OH)に結合した炭素原子を、エーテルは同じ酸素に結合した二つの炭素原子を、アミンは窒素に
結合した炭素原子を、チオールは-SH基に結合した炭素原子を、またスルフィドは同じ硫黄に結合した二つの炭素原子をもっている。
いずれの場合も結合は極性であり、炭素原子は部分的に正電荷(δ+)を帯び、陰性原子は部分的に負電荷(δ+)を帯びている。
炭素-酸素二重結合(カルボニル基)をもつ官能基
炭素-酸素二重結合は、有機化学の中で最も重要ないくつかの化合物中に存在する。これらの
化合物は多くの点で似ているが、カルボニル基の炭素に結合している原子の種類によって異なる
性質を示す。アルデヒドはC=Oに結合した水素を少なくとも1個もっており、ケトンはC=Oに結合した
2個の炭素を、カルボン酸はC=Oに結合した炭素1個と-OH基を、エステルはC=Oに結合した炭素1個と
エーテル性酸素を、アミドはC=Oに結合した炭素と窒素を1個ずつ、さらに酸塩化物はC=Oに結合した
炭素1個と塩素1個とをもっている。カルボニルの炭素原子は正の部分電荷(δ+)を、酸素は負の部分電荷
(δ-)をもっている。
アルカンとアルキル基:異性体
エタンに含まれる炭素-炭素結合は、炭素のsp3混成軌道がσ型に(正面から)重なって生じることを学んだ。ここで、
3個、4個、5個、あるいはそれ以上の炭素原子を炭素-炭素単結合で結び合わせると、アルカン(alkane)とよばれる大きな
分子群をつくることができる。アルカンは飽和炭化水素とよばれることもある。炭化水素(hydrocarbon)とはこれらが炭素と
水素だけを含んでいるためであり、飽和(saturated)というのはC-CおよびC-H単結合だけを含み、したがって炭素当たり可能な
最大数の水素を含んでいることによる。アルカンはCnH(2n+2)の一般式をもつ。ここでnは任意の整数である。アルカンはまた
”脂肪”を意味するギリシャ語aleiphasに由来して脂肪族化合物(aliphatic compound)とよばれることもある。動物脂肪がアルカンに
似た長い炭素鎖を含んでいることを学ぶ。ここで、炭素と水素が結合してアルカンをつくる方法について考えることにしよう。1個の炭素と
4個の水素からは一つの構造(メタン、CH4)だけが可能である。同様にして、2個の炭素と6個の水素の組合わせは一つ(エタン、CH3CH3)だけ、
また3個の炭素と8個の水素の組合わせも一つ(プロパン、CH3CH2CH3)だけが可能である。しかし、もっと多くの数の炭素と水素が結合すると
2種以上の分子をつくることができる。たとえば、C4H10の分子式をもつ分子をつくるには二つの方法がある。四つの炭素が1列に並ぶことも
できるし(ブタン)、枝分かれすることもできる(イソブタン)。同じように、C5H12の分子のつくり方には3通りあり、さらに大きなアルカンに
対しては幾通りもある。
ブタンのように炭素が1列に結ばれた化合物は直鎖アルカン(straight-chain alkaneまたはnormal alkane)とよばれ、
イソブタン(2-メチルプロパン)のように炭素鎖が枝分かれした化合物は分枝アルカン(branched-chain alkane)とよばれる。
両者の間の相違は、直鎖アルカンのすべての炭素を結ぶ線は一筆書きで描けることである。しかし、分枝アルカンの場合には、
すべての炭素を結んでいる線を一筆書きで描くことはできない。二つのC4H10分子のように、同じ分子式をもっているが、構造が
異なる化合物は、ギリシャ語の”同じ部品でつくられる”を意味するisos+merosから異性体(isomer)とよばれる。異性体は同じ
数と種類の原子をもっているが、それらの原子の配列法が異なっている。原子の結合の仕方が異なっているブタンとイソブタンの
ような化合物は構造異性体(constitutional isomer)とよばれる。原子が同じ順序で結ばれている化合物であっても、別の種類の異
性現象が可能なことがあることを、すぐに学ぶことになる。あるアルカンは多くの方法で書き表すことができる。たとえば、ブタンと
よばれる炭素4個の直鎖アルカンは、5種類の構造のうちどの構造で書き表してもよい。これらの構造はブタンに対する特別な三次元構造
を意味するのではなく、単に原子の結合を示しているにすぎない。実際には、化学者が分子中のすべての結合を書くことはほとんどなく、
普通はブタンを短縮構造(condensed structure)、CH3CH2CH2CH3またはCH3(CH2)2CH3で書き表す。このような表示法では、C-C結合とC-H結合は
書かないで、”あるものとされる”。炭素に3個の水素が結合していれば、それをCH3と書き、2個の水素が結合していればCH2と書く、などである。
さらに簡単にするには、ブタンはn-C4H10と書き表される。ここでnは直鎖(normal)のブタンを意味する。
直鎖アルカンは鎖に含まれる炭素原子の数によって命名される。歴史的な語源をもつ最初の四つの化合物、
メタン、エタン、プロパン、ブタンを除いて、アルカンの名前は炭素の数により、ギリシャ数字に基づいて
命名されている。接尾語-アン(-ane)はその分子がアルカンであることを示すために名前の末尾に付けられる。
アルカンから水素原子を一つ取除いたときの残りの部分構造は、アルキル基(alkyl group)とよばれる。アルキル基は
もとになるアルカンの接尾語-アン(-ane)を-イル(-yl)に置き換えて命名する。たとえば、メタン、CH4から水素原子を
1個取去ると、メチル基(methyl group)、-CH3ができ、エタン、CH3CH3から水素原子を取去るとエチル基(ethyl group)、
-CH2CH3ができる。同様に、n-アルカンの末端の炭素から水素原子を1個取除くと一連のn-アルキル基が生じる。
末端炭素から水素を取除くことによりn-アルキル基ができるのと同じように、内部炭素から水素原子を
取除くことにより分枝アルキル基が生じる。3炭素のアルキル基には二つ、4炭素アルキル基には四つが可能である。
アルキル基の命名に関してさらに説明を要する用語として、C4アルキル基に用いた接頭語のsec(第二級)とtert(第三級)は、
枝分かれした炭素原子に結合している他の炭素原子の数を表している。第一級(primary;1°)、第二級(secondary;2°)、第三級
(tertiary;3°)、第四級(quaternary;4°)の四つの可能性がある。
この本全般にわたって一般的なアルキル基を示すのにRという記号が用いられる。R基は
メチルであってもエチルであっても、あるいは他の多数のアルキル基のどれであってもよい。
Rは、特定するのが面倒であるような、分子の残りの部分(Rest)と考えてよい。
分枝アルカンの命名法
純粋な有機化合物がごくわずかにしか知られていなかった初期の時代には、新しい化合物は発見者によって
勝手に命名されていた。したがって、尿素(urea)、CH4N2Oは尿(urine)から単離された結晶性物質であることから、
また精神安定剤のバルビツル酸は発見者の友人Barbaraにちなんで名付けられた。19世紀になって、有機化学がだんだん
発展するにつれて、化合物の数も増加し、有機化合物の系統的な命名法が必要となってきた。この本で用いる命名法は、
国際純正および応用科学連合(IUPAC;アイユーパックと読む)によって定められたものである。IUPAC命名法では、化合物名は
接頭語、母体名、接尾語の三つの部分をもっている。母体名は分子中の主炭素鎖を選択し、何個の炭素が含まれているかを表す。
接尾語はその分子が属する官能基群を示し、接頭語は主炭素鎖上の種々の置換基の位置を表している。後の章で新しい官能基が出てきたら、
その都度それに適用できるIUPAC命名法を示すことにする。それに加えて、巻末の付録Aで有機化合物の命名法全般について概説し、二つ以上の
官能基を含む化合物をどのように命名するかを示してある。ここでは分枝アルカンをどのように命名するかをみていこう。すべてではないが、ほ
とんどの複雑な分枝アルカンは、つぎの四つの段階で命名することができる。
段階1 母体になる炭化水素を見つける。
a)分子中の連続した最も長い炭素鎖を見つけて、その鎖を母体の名前として用いる。最長鎖はいつも明瞭であるとは限らず、”角を折れ曲がる”ことも必要である。
b)長さの等しい二つの炭素鎖が存在する場合は、なるべく多くの分枝点があるものを母体に選ぶ。
段階2 主炭素鎖中の原子に番号をつける。最初の分枝点に最も近い端から始めて、母体の炭素鎖の炭素原子に番号をふる。
最初の分枝は、正しい番号付けではC3で起こるが、正しくない付け方ではC4で起こる。
段階3 置換基を見つけて番号を付ける。各置換基に、母体の炭素鎖上でそれらが付いている位置に従って番号を付ける。二つの
置換基が同一炭素に付いている場合は、二つの置換基に同じ番号を付ける。常に置換基の数とその名前の数は同一でなければならない。
段階4 名前を一語で書く。異なった接頭語を切離すためにハイフンを、また番号を切離すために
コンマを用いる。もし二つ以上の異なった側鎖があれば、それらをアルファベットの順に並べる。
同一の置換基が複数個あった場合には、ジー(di-),トリー(tri-),テトラー(tetra-)などの接頭語の
どれかに使う。しかし、これらの接頭語はアルファベット順に並べるときには考えにいれない。
アルカンの性質
アルカンはしばしば”小さな親和力”を意味するラテン語parum affinisからパラフィン(paraffin)ともよばれる。
パラフィンという名前はその化学的挙動を適切に表している。というのは、アルカンは他の分子との化学的親和力が
ほとんどないし、ほとんどの試薬に対しても不活性である。しかし、適当な条件下では、アルカンは酸素、塩素および他の
いくつかの物質と反応する。アルカンとO2の反応は、アルカンが燃料として用いられるとき、エンジンやかまど内で燃焼する
際に起こる。二酸化炭素と水が生成物としてでき、多量の熱が放出される。たとえば、メタン(天然ガス)はつぎの式に従って
酸素と反応する。CH4+2O2→CO2+2H2O+890kJ(213kcal)
アルカンとCl2の反応は、二つの混合物を紫外線照射(hνで表される。νはギリシャ文字のニュー)したときに起こる。
二つの反応物の相対的な量と反応が行われた時間により、塩素によるアルカン水素の置換が繰返し起こり、塩素化生成物の
混合物ができる。たとえば、メタンは塩素と反応してクロロメタン(CH3Cl),ジクロロメタン(CH2Cl2),トリクロロメタン(クロロホルム,CHCl3)および
テトラクロロメタン(四塩化炭素,CCl4)の混合物を与える。
CH4→Cl2→CH3Cl+HCl
hν ↓→CH2Cl2+HCl
Cl2 ↓→CHCl3+HCl
Cl2 ↓→CCl4+HCl
Cl2
訂正
×CH4→Cl2→CH3Cl+HCl
○CH4+Cl2→CH3Cl+HCl
hν
分子量が増えるに従って、アルカンの融点と沸点は規則的に高くなる。平均のC-C結合のパラメーターはすべてのアルカンでほとんど同じで、
その結合距離は154±1pm,結合力は355±20kJ/mol(85±5kcal/mol)である。炭素-水素結合の結合力もほとんど一定で、それぞれ109±1pmと400±20kJ/mol(95±5kcal/mol)である。
>>131表を間違えたので訂正
CH4+Cl2→hν→CH3Cl+HCl→Cl2→CH2Cl2+HCl→Cl2→CHCl3+HCl→Cl2→CCl4+HCl
エタンの立体配座
すでに、アルカンのC-C結合は二つの四面体方向を向いたsp3軌道がσ(シグマ)型に重なることによってできることを学んだ。
今度は、このような結合の三次元的な配列を考えてみよう。一方の炭素についた水素と他方の炭素上の水素は空間的にどのような
関係になっているのであろうか。σ(シグマ)結合は二つの原子軌道が正面から重なって生じることがわかっている。その結合の断面は
円のように見えるので、炭素-炭素単結合の周りで回転が可能となる。水素の空間配置のいかんにかかわらず、C-C結合における軌道の
重なりはまったく同じである。単結合の周りの回転によって生じる原子の空間配置の違いは、立体配座(confor-mation)とよばれ、それらは
互いに速く相互変換しているので単離することはできない。
化学者は異なる立体配座を二つの方法で表示する。木びき台表示(sawhorse representation)はC-C結合を斜めの方向から眺め、
C-H結合をすべて示すことによって、空間的な関係を表す。Newman(ニューマン)投影式(Newman projection)はC-C結合を一方の端から見て、
二つの炭素を一つの円として表現する。手前の炭素に付いた結合は、この中心に届く線で表され、後方の炭素に付いた結合は円周までの線で示される。
回転が可能であると今述べたばかりであるが、実際にはエタンにおいて完全に自由な回転がみられるのではない。実験によると、回転にはわずかな(12kJ/mol;2.9kcal/mol)障壁が
あり、ある立体配座は他のものより安定である。最もエネルギーが低く安定な配座は、六つすべてのC-H結合が互いに可能な限り遠くに離れたものである。[Newman投影式でみると
ねじれている(ねじれ形配座;staggered conformation)]。最もエネルギーが高く不安定な配座は、六つのC-H結合が最も接近しているものである。[Newman投影式で重なって
いる(重なり形配座;eclipsed conformation)]。エタン分子の約99%がねじれ形に近い配座をとっており、たったの1%くらいが重なり形に近い配座をとっているにすぎない。
エタンにおける結合回転の障壁は、回転角に対してポテンシャルエネルギーを目盛ったグラフを描くとわかりやすい。
エネルギーが極小になる形はねじれ形配座に対応し、エネルギーが極大の形は重なり形配座に対応している。この障壁は、
重なり形配座で接近して存在する二つの水素が交差して通り越すとき、C-H結合の電子雲の間に生じるわずかな反発が原因である。
エタンに当てはまることはプロパンやブタンおよびあらゆる高級アルカンにも当てはまる。どんなアルカンでも、最も優勢な(安定な)立体配座は
すべての結合がねじれ形の配置になっているものである。
化学結合の表し方
これまでに用いてきた構造では、原子の間の線は共有結合にあずかる二つの電子を意味している。
しかし、すべての結合や原子を書くのは繁雑であるので、化学者は非常に単純化した骨格構造(skeletal structure)という書き方の
簡略法を工夫した。骨格構造の書き方の規則は簡単である。
・炭素原子は普通書かない。代わりに、2本の線(結合)の交点、およびそれぞれの線の端は炭素原子とみなす。強調したり、はっきりさせるために炭素原子を書くこともある。
・炭素に結合している水素原子は省略される。炭素の原子価は常に4であるので、各炭素に対する正しい水素の数は頭の中で補うことになる。
・炭素と水素以外のすべての原子は書かなければならない。(省略できない)
シクロアルカン
今までは鎖状アルカンについてのみ述べてきたが、炭素原子の環を含む化合物も存在することは100年以上も前から知られていた。
このような化合物はシクロアルカン(cyclo-alkane)または脂環式(脂肪族環式)化合物[alicyclic(aliphatic cyclic)compound]とよばれる。
シクロアルカンは-CH2-(メチレン)単位の環から成っているので、(CH2)nまたはCnH2n(H2ではない)の一般式をもっており、骨格構造の書き方では多角形で表される。
置換シクロアルカンは、鎖状アルカンに用いたものと似た規則により命名する。ほとんどの場合、二つの段階があるだけである。
段階1環内の炭素原子の数を数え、対応するアルカンの名前に接頭語シクロ-(cyclo-)を付ける。環上に置換基がある場合には、シクロアルキル置換アルカンではなく、
アルキル置換シクロアルカンとして命名する。
段階2置換シクロアルカンに対しては、置換基が付いている点から始めて、合計数が最小になるように環上の置換基に番号を付ける。異なった置換基が二つ以上存在する場合には、
アルファベット順が最も早いものから番号を付けはじめて、つぎの置換基の番号ができるだけ小さくなるように環に番号を付ける。
あげよう
シクロアルカンにおけるシス-トランス異性
シクロアルカンの性質はほとんどの点で鎖状、非環式アルカンのものとよく似ている。
どちらも非極性であり、ほとんどの試薬に対して化学的に不活性である。しかし、重要な違いも
いくつかある。一つの違いは、鎖状化合物よりもシクロアルカンは立体配座がかなり制限される。
たとえば、シクロプロパンは幾何学的に、固定した構造をもった平らな分子に制限される。環を切って
開くことなしに、C-C結合を回転することはシクロプロパンではできない。環状構造であるために、
シクロアルカンは二つの面、”上”面と”下”面をもっている。したがって、置換シクロアルカンには
異性体が可能である。たとえば、1,2-ジメチルシクロプロパンには二つの異性体が存在する。一方の異性体では
二つのメチル基が環の同じ側にあり、他方ではこれらが反対側についている。二つの異性体は安定な化合物であり、
結合を切断しないかぎり互いに変換できない。ブタンとイソブタンのような原子の結合順序が違う構造異性体とは異なり、
二つの1,2-ジメチルシクロプロパンでは結合の順序は同じであるが、原子の空間的な結合方向が違っている。原子の結合の
順序は同じであるが、三次元的な方向が異なる化合物は立方異性体(stereoisomer)とよばれる。1,2-ジメチルシクロプロパンは
シス-トランス異性体(cis-trans isomer)とよばれる特殊な立体異性体である。接頭語のシス(cis-,ラテン語で”同じ側に”)と
トランス(trans-,ラテン語で”交差”)はこれらを区別するために用いられる。
種々のシクロアルカンの立体配座
有機化学の初期の時代には、シクロアルカンは化学的に大きな驚きをもたらした。問題は、もし炭素が109.5°の
結合角をもとうとするならば、シクロプロパンやシクロブタンはなぜ存在できるのだろうかということである。要するに、
シクロプロパンは60°に近い結合角をもった三角形をしていなければならず、シクロブタンは約90°の結合角をもった四角形を
していなければならない。それにもかかわらず、これらの化合物は現に存在し、まったく安定である。最も一般的なシクロアルカンについてみていこう。
シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン
シクロプロパンは60°のC-C-C結合をもった対称な分子である。正常な109.5°の四面体角からのこのずれのため、分子に
結合角のひずみ(angle strain)が生じ、そのエネルギーが増大するとともに、ひずんでいないアルカンよりもずっと反応性が
高くなっている。六つのC-H結合はすべて、隣の結合とねじれ形ではなく重なり形になっている。シクロプロパンのC-C-C結合角が109.5°の
正常な値から60°にゆがめられていることに対する最も簡単な説明法は、シクロプロパンは曲がった結合をもつと考えることである。
直鎖のアルカンでは、重なり合う軌道が互いに直線的に向かい合うように二つの原子が配置しているとき、結合の効率が最大になる。しかし
シクロプロパンでは軌道が直線上で互いに向かい合うことはできず、少し角度をもって重ならなければならない。このように軌道の重なりが悪い結果、
シクロプロパンのC-C結合は反応性に富むことになる。シクロブタンとシクロペンタンは平面ではなく、少し折れ曲がった形をしている。折れ曲がるため、
C-C-C結合角は平らな場合よりわずかに小さくなる。しかし同時に、折れ曲がることにより環が平面のとき存在する隣のC-H結合との重なり形相互作用が少なくなる。
シクロヘキサン
置換シクロヘキサンは天然に広く存在するため、最も一般的なシクロアルカンである。
ステロイドや多くの薬剤を含む膨大な数の化合物がシクロヘキサン環を含んでいる。
たとえば、コレステロールは六員環三つと五員環一つをもっている。
シクロヘキサン環は平面ではなく、いす形配座(chair conformation)とよばれるひずみのない三次元的な形に折れ曲がっている。
この立体配座では、C-C-C結合角はほぼ理想的な109.5°の四面体角になっている。結合角のひずみがないうえ、隣合ったC-H結合が
ねじれ形になっているため、いす形シクロヘキサンにはC-H重なり形のひずみもない。いす形配座はつぎの3段階で書くことができる。
段階1右下に傾斜し、互いに少しずれた2本の平行線を引く。これはシクロヘキサンの四つの炭素原子が一つの平面上にあることを意味する。
段階2四つの炭素の平面の右上に一番上の炭素を置き、結合を結ぶ。
段階3一番下の炭素を中央の四つから成る平面の左下に置き、結合を結ぶ。一番下の炭素原子との結合は、一番上の炭素との結合と平行になる
ことに注意せよ。
シクロヘキサンを見るとき、下側の結合は手前にあり、上側の結合は後方にあるということを覚えておく必要がある。もしこの
取り決めがなされていないと、逆が正しいと錯覚しかねない、はっきりさせるために、この教科書に出てくるシクロヘキサン環は
すべて、読者に近いことを示すため手前の(下側の)結合を太線で書いてある。
シクロヘキサン環のアキシアル結合とエクアトリアル結合
シクロヘキサンがいす形配座をとる結果、多くの重要なことが起こってくる。その一つは、
2種類の環上水素-アキシアル配置(axial position)とエクアトリアル配置(equatorial position)-が存在する
ことである。いす形シクロヘキサンは環に垂直(環の軸に平行)な6個のアキシアル水素と、大まかな環の平面
にある(赤道の周りの)6個のエクアトリアル水素をもっている。シクロヘキサンの各炭素はアキシアル水素と
エクアトリアル水素を1個ずつもっており、シクロヘキサン環のどちらの面も、交互に並んだアキシアル水素と
エクアトリアル水素を3個ずつもっている。たとえば、シクロヘキサン環の上側の面が1,3,5の炭素上にアキシアル
水素をもっていれば、2,4,6の炭素上にはエクアトリアル水素をもっている。下の面はこれとまったく逆となり、1,3,5の
炭素上にエクアトリアル水素を、2,4,6の炭素上にアキシアル水素をもっている。
アキシアル結合:各炭素に1個ずつ、6個のアキシアル結合は平行で、交互に環の上と下にある。
エクアトリアル結合:各炭素に1個ずつ、6個のエクアトリアル結合は3組の平行線から成る。各組の
結合は環の二つの結合とも平行になる。エクアトリアル結合は環の周囲の面に交互に現れる。
シクロヘキサンの構造を議論するときに、シス-トランスという用語を使わなかったことに注意すること。
環の同じ面の二つの水素は、それがアキシアルかエクアトリアルかにかかわらず、またそれらが隣合っているかいないかに
かかわらず、常にシスである。同様に、環の反対側の面についている水素は、常にトランスである。
どくどくタワー⇒DDT⇒橋本真也
泣けてきたので水面蹴り
シクロヘキサンの配座の動きやすさ
いす形シクロヘキサンが、アキシアルとエクアトリアルの2種類の結合をもつため、一置換シクロ
へキサンには二つの異性体があると考えるかもしれない。しかし、実際にはシクロヘキサンの立体配座が
室温で動きやすいため、メチルシクロヘキサンやブロモシクロへキサンは1種類しかない。二つのいす形シクロ
へキサンが容易に相互変換し、その結果アキシアル位とエクアトリアル位が変換される。いす形配座のこの相互変換は
通常環反転(ring-flip)とよばれる。シクロヘキサンの環反転でアキシアル位とエクアトリアル位が相互変換する。
中央の四つの炭素原子を固定しておいて、両端を反対方向に折り曲げることにより、いす形シクロへキサンを環反転させることができる。
一つのいす形におけるアキシアル置換基が環反転したいす形ではエクアトリアルになり、逆もまた同様になる。たとえば、アキシアルの
メチルシクロへキサンは環反転の後、エクアトリアルのメチルシクロへキサンに変わる。この相互変換は室温で速く起こるので、アキシアルと
エクアトリアル異性体をそれぞれではなく、相互変換している混合物しか単離できない。アキシアルとエクアトリアルのメチルシクロへキサンは
素早く相互変換するが、これらは同じように安定であるわけではない。エクアトリアル配座はアキシアル配座より7.6kJ/mol(1.8kcal/mol)だけ安定であり、
これはある瞬間にメチルシクロへキサンの約95%がエクアトリアルのメチル基をもつことを意味する。このエネルギー差はアキシアルのメチルシクロへキサンが
C1上のメチル基とC3およびC5上のアキシアル水素原子の間に不利な立体的(空間的)相互作用をもっているためである。このいわゆる1,3-ジアキシアル相互
作用(1,3-diaxial interaction)は7.6kJ/mol(1.8kJ/mol)の立体ひずみ(steric strain)を分子にもたらすが、これはアキシアルメチル基と近くのアキシアル水素が
非常に接近することによっている。
メチルシクロへキサンで正しいことは、他の一置換シクロヘキサンすべてに当てはまる。
置換基はアキシアルよりもエクアトリアルの方が常に安定である。当然のことながら、立体
ひずみの大きさはアキシアル置換基の大きさが増大すると増加する。
化学余話 ガソリン
多くのアルカンが植物や動物界に存在している。たとえば、キャベツの葉を覆っているワックスは
ノナコサン(C29H60)を含んでおり、カリフォルニアのシェラネバダ山脈でよく見られるジェフリー松の
樹脂はヘプタン(C7H16)を含んでいる。しかし、アルカンの最も豊富な供給源は、世界中の天然ガスと石油である。
古代に積もったこれらの自然堆積物は、主として海洋産の植物や動物の分解物から成る。天然ガスはおもにメタンから成るが、
エタン、プロパン、ブタンも含まれている。石油は炭化水素の複雑な混合物であり、利用する前に別々の留分に分けて精製する
必要がある。石油時代は、ペンシルベニア州タイタスビルの近くで、世界で最初に油井の掘削が行われた1859年の8月に始まった。
原油は沸点に従って分留されるが、おもに求められたのはガソリンではなく高沸点の灯油であった。読み書きが普及しはじめ、
人々はロウソクの明かりよりもっとすぐれた明かりを欲しがっていた。ガソリンはランプに使うにはあまりにも蒸発しやすく、最
初は不要の副産物と考えられていた。しかし、このような初期の時代から世界は大きく変化し、いまや価値があるのは灯油ではな
く、ガソリンである。
精製はまず、沸点によって原油を三つの留分、直留ガソリン(沸点30〜200℃)、
ケロセン(沸点175〜300℃)、燃料油またはディーゼル燃料(沸点275〜400℃)に
分別蒸留(分留)することから始まる。最後に減圧蒸留すると、潤滑油とワックスが
得られ、タール状の残留物であるアスファルトが残る。
原油の蒸留はガソリンを製造する工程の第一歩にすぎない。直留ガソリンは直鎖アルカンの比率が高く、
エンジンノックとよばれる現象のために燃料として劣ることがわかっている。普通の四気筒の自動車エンジンでは、
ピストンが下降する際に燃料と空気の混合物をシリンダーの中に導き、ピストンが上昇する際に、この混合気体を圧縮する。
この圧縮が終わる寸前にスパークプラグによってこの混合物に点火されて燃焼が起こり、ピストンを下降させクランクシャフトを
回転させる。しかし、全部の燃料が同じようによく燃えるわけではない。もし不適当な燃料を用いると、スパークプラグが点火する
より前に、シリンダー中の熱い表面により、制御できない燃焼が始まる。エンジンノックとして気付くこの早期点火は、クランクシャフトに
不規則な力をかけたり、エンジン温度を上昇させることにより、エンジンを傷めることになる。
燃料のオクタン価は、そのアンチノック性を判断する目安である。古くから直鎖アルカンは分枝化合物よりはるかにエンジンノックを起こしやすいことが
知られていた。燃料として特に不適当なヘプタンのオクタン価を基準値の0とし、2,2,4-トリメチルペンタン(一般にイソオクタンとして知られている)の
オクタン価を100と定める。直留ガソリンは燃料として劣るので、石油化学者は品質の高い燃料をつくる種々の方法を工夫した。接触分解は高沸点のケロ
セン部(C11〜C14)をガソリンとしての用途に適する小さな分子に”分解”する。この工程はシリカ-アルミナ上で、400〜500℃の温度で行われ、主生成物は
C3〜C5の軽炭化水素である。これらの小さな炭化水素はポリマー化とアルミル化により触媒を用いて再結合され、有用なC7〜C10のアルカンを与える。
リホーミングとよばれるもう一つの方法は、C6〜C8アルカンをベンゼンやトルエンのようなアルカンよりかなりオクタン価が高い芳香族化合物に変えるものである。
まとめと重要語句
官能基は大きな分子の中にある特徴的な化学反応性をもった原子あるいは原子団である。官能基は、
それを含むすべての分子においてほとんど同じようにふるまうので、有機分子の反応は、官能基によっておもに決定される。
アルカンはCnH2n+2の一般式をもつ一群の飽和炭化水素である。アルカンは官能基をもたず、化学的にかなり不活性である。
直鎖型と分枝型があり、一連のIUPAC命名法によって命名される。最も単純なアルカンを除き、アルカンにはすべて、同じ
分子式をもちながら構造が異なる化合物である異性体が存在する。ブタンとイソブタンのように、同じ分子式をもつが、原子の
結合順序が異なる化合物は構造異性体とよばれる。軌道が正面から重なってできるため、C-C単結合の周りでは回転が可能である。
したがって、アルカンは素早く相互変換している多数の立体配座のどれかをとっている。ねじれ形配座は重なり形配座よりも安定である。
シクロアルカンは炭素原子から成る環を含み、CnH(2n)の一般式をもっている。シクロアルカンではC-C結合の周りで
自由に回転することはできないため立体配座の動きが制限されており、このため、二置換シクロアルカンにはシス-トランス立体異性体が存在する。
シス異性体では二つの置換基が環の同じ側にあり、トランス異性体では、置換基が環の反対側に存在する。天然に広く存在するため、シクロヘキサンは
あらゆる環状化合物の中で最も一般的なものである。シクロヘキサンは、結合角がすべて109°に近く、隣合ったC-H結合がすべてねじれ形になった、折れ
曲がったひずみのないいす形配座をとっている。いす形シクロヘキサンには、アキシアルとエクアトリアルの2種類の結合がある。アキシアル結合は上下の
方向を向いており、環の軸に平行である。エクアトリアル結合は環の赤道面の周りの帯の中に存在する。いす形シクロヘキサンはアキシアル位よりもエク
アトリアル位が相互変換する環反転を行う。環上の置換基はアキシアル位よりもエクアトリアル位の方が安定である。
モル濃度と分子量の関係(おさらい)
M=モル数/V
モル数=溶質のグラム数/分子量
M=溶質のグラム数/分子量×V
溶質のグラム数=M×V×分子量
規定度(normality)単位:eq/L N
溶液1L中に含まれる溶質のグラム当量数
N=W/eqw×1000/V (W/eqw)=グラム当量数、eqw=式量/n、n:反応単位数(eq/mol) N=n・M
ミリグラム当量
滴定分析では、ビュレットを使う→多くても滴定量50mL。
使用する濃度は、一般に扱いやすいように0.10N前後。
この滴定剤の中に入っている物質のグラム当量数は?
0.050L×0.10eq/L=0.0050eq=5.0meq
グラム当量数で表すより、その1000分の1の単位、ミリグラム当量(meq)で表した方が便利。
ミリモル
モルも同じように1000分の1の単位であるミリモル(mmol)で扱うと便利。
ミリグラム当量やミリモルは、数mL単位の溶液を扱うとき、すなわち、滴定分析に適している。
グラム当量やモルは数リットルの溶液を扱うときに適している。
小さい単位の呼び方
d(デシ)=10-1、c(センチ)=10-2、m(ミリ)=10-3、μ(マイクロ)=10-6、n(ナノ)=10-9、p(ピコ)=10-12
f(フェムト)=10-15、a(アト)=10-18
例
0.0050L中に0.0020eqを含む溶液の規定度はいくらか?
普通は上のように言わない。
5.0mL中に2.0meqを含む溶液の規定度はいくらか?
2.0meq/5.0mL=0.40meq/mL=0.40eq/L
0.40eq/Lと表していいか?ダメ!!0.3995〜0.4004を意味するから、適当じゃない。
0.40=0.395〜0.404を意味するから、ほぼ適切。(1000分の1の単位で統一されていれば、濃度の値は変わらない。)
例
H2C2O4・2H2Oの63mgを含む溶液が40mLある。モル濃度と規定度を求めよ。式量は126.1
1)モル、グラム当量で考えた場合(これが正しい解き方)
M=(0.063÷126.1)×(1000/40)=1.2×10-2M
N=(0.063÷(126.1÷2))×(1000/40)=2.50×10-2N
2)ミリモル、ミリグラム当量で考えた場合(この教科書のオススメの解き方)
M=(63÷126.1)÷40=1.2×10-2(mmol/mL)=1.2×10-2M
N=(63÷(126.1÷2))÷40=2.5×10-2(meq/mL)=2.5×10-2N
混ぜて利用してはダメ
力価(タイター) T
特殊な濃度
その溶液量とちょうど反応しあうに足りるだけの相手の試薬の重量を表したもの。(自分の溶質じゃない!)
今はほとんど使われず、バイオ関係では使用される。
塩酸1.00mlが水酸化ナトリウム4.00mgと反応するなら、塩酸の水酸化ナトリウム力価は、4.00mg/mLと表すことができる。
T=4.00T(NaOH)
塩酸がどのくらいの水酸化ナトリウムと反応するのか簡単にわかるので便利。ただし、相手が水酸化ナトリウム以外の場合は、計算が複雑になる。
例
4.00mg/mL(NaOH)Tの塩酸を用いて、25mLの水酸化ナトリウム溶液を滴定したら6.00mLを必要とした。
その溶液に入っている水酸化ナトリウムのmg数は?
4.00mg/mL×6.00mL=24.00mg
加える前の式量濃度は?
(24.00mg÷40.00mg/meq)÷25mL=0.025F
力価と当量の関係
T=相手の溶質のグラム数÷溶液の量
N=相手の溶質のグラム数÷(溶液の量×当量)
N=T÷当量
T=N×当量
たとえば、塩酸の水酸化ナトリウム力価が4.00mg/mLならば、その規定度はいくらか?
水酸化ナトリウムのグラム当量が40mg/meqであるので、N=4.00÷40=0.1meq/mL=0.1N(相手の溶液の規定度)
例
0.120NのHClのNH3力価とBaO力価を求めよ。
T=0.120meq/mL×17.0mg/meq=2.04T(NH3)
T=0.120meq/mL×153.3/2(反応単位数は、価数の2)mg/meq=9.2T(BaO)
もう一つ別の力価(おまけ)
滴定分析ではもうひとつ別の「力価」とよばれる特殊な濃度の表示法がある。それは規定係数f(ファクター)。
標準溶液の濃度が、表示濃度の何倍に相当するかを表す。(おおよその濃度×f=正確な濃度)
1.010=0.1010N(0.1Nの表示濃度の1.010倍である)
1.000=0.1000N
0.0988=0.0988N
1.01=0.0101N(0.01Nの表示濃度の1.01倍の場合)
1.005=0.2010N(0.2Nの表示濃度の1.005倍の場合)
表示している濃度の何倍を示している値である。当然、ファクターだけをみて実際の濃度を出すことはできない。
実験では使用される。濃度と混合されることがあるので注意。
NV=N'V'の式にあてはめるには、標準溶液の濃度が正確でないと意味がない。しかし、さまざまな理由から、正確な濃度の溶液を作ることは難しい。
多くの機器分析では、標準溶液を用いて濃度を決める。滴定だけでなく、分析するには標準溶液についての知識が重要。
溶液の標定
標準溶液の濃度を正確に決定する操作を標定という。純度の高い物質を正確に秤量して、一定体積にして標準溶液にすれば、
かならずしも標定をする必要はない。しかし、一次標準物質という純粋な状態をとっている物質の種類は少なく、滴定に用いる
ことができるとは限らない。そのため、標定が行われる。
中和滴定で標定が行われる訳
・塩酸・・・原液が会社ごとに濃度がまちまち。生産された日によっても異なる。しかも揮発して
濃度が変化する。
・水酸化ナトリウム・・・市販品の純度がまちまち。表面が炭酸ガスによって炭酸ナトリウムに変化
するので純度が変化していく。空気中の水分による潮解性もあり、重量も変化する。
(他の滴定でも、同様な理由や価格的な点から、標定がよく行われる。)
標定方法
滴定と同じ操作。試料中の目的物質のかわりに、一次標準物質を正確に溶解した溶液(一次標準溶液)の
一定量に対して行なわれる。計算もNV=N'V'式。
「(例)水道水中の塩化物イオンの量を測りたい!
硝酸銀溶液を使って測定したい。しかし、濃度がわからない。
正確な塩化ナトリウム標準溶液を使って硝酸銀溶液濃度を求める。」
すでに濃度が測定されて保証された市販品も各種ある。ただし、この場合、試薬とちがい使用期限があるので注意。
一次標準物質の条件
(1)純粋な形で得られること。
→不純物が少ないこと。
(2)手ごろな値段で入手できること。
→不純物が少ないと価格が高い。
(3)安定であること。
→変質しないこと。
(4)乾燥が容易であること。
→吸湿性、昇華性、含水塩は不可。
(5)当量が大で、重量測定の誤差を最小限に抑えられること。
一次標準試薬の例
・中和滴定・・・フタル酸水素カリウム、スルファミン酸、ヨウ素酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、
トリスヒドロキシメチルアミノメタン
・酸化還元滴定
・沈殿滴定・・・純粋な塩(NaCl、KClなど)
・錯生成滴定・・・純粋な塩、炭酸カルシウム、亜鉛など。
日本工業規格K8005に定められている。
標準溶液にするには
・正確に重量を測定すること。
天秤の操作による測定まちがい。秤取するときの注意など。
・正確に溶解すること。
ビーカーでの溶解。正しいメスフラスコの取り扱い。適正な温度など。
第2回目の「操作を行うときの注意(1)、(2)」などに従い、行うこと。
一次標準と二次標準
・一般には、一次標準溶液を用いて作成した二次標準溶液を用いて滴定する。
・しかし、精密に測定したい場合は、二次標準溶液を用いず、一次標準溶液で行なう方が良い。
・二次標準溶液で行なうと誤差に誤差が重なって、不正確になるから。
例題1(中和滴定の例)
炭酸ナトリウムNa2CO3(式量106.0)は、中和滴定の一次標準試薬。Na2CO31molに対し、HClのH+が2mol必要。
Na2CO3の当量は、106.0/2=53.00
HClのNVと量り取ったNa2CO3は一致の関係。N×30.23=0.3542/53.00
N=0.2211meq/ml
例題2(酸化還元の例)
シュウ酸ナトリウムNa2C2O4(式量134.0)は、酸化還元滴定の一次標準試薬。C2O4(2−)は電子2個を失って、CO2へ変化。
Na2C2O4の当量は、134.0/2=67.0
KMnO4のNVと、Na2C2O4量+滴定しすぎた量は一致する。N×45.12=285.6/67.0+1.74×0.1032
N=0.0985meq/ml
例題3(沈殿滴定の例)
塩化ナトリウム(式量58.44)は、沈殿滴定の一次標準試薬。
AgNO3とNaClとKSCNは、すべて1対1対1で反応するから、当量は分子量をそのまま用いてよい。
AgNO3の量=NaClの量+KSCNの量
N×50.00=228.6/58.44+12.56×0.0986
N=0.1030meq/ml
例題4(キレート滴定の例)
CaCO3(式量100.09)は、キレート滴定の一次標準試薬。EDTAとCa(2+)は1対1(キレート滴定、沈殿滴定の場合は、モル濃度で考えた方がよい)
CaCO3は、500mlから50mlを分取しているので、10分の1の0.04148gと反応している。→このように、実際には試料を溶解したものを分取していることが多いので注意すること。
M×40.34=0.04148/100.09
M=0.01027mmol/ml
新書に入ります。
エネルギー科学の基礎
現代社会はエネルギーの大量消費によって支えられている。日本でも産業、運輸、および民生の3分野で消費されるエネルギー量は過去50年間で
20倍近く増加した。エネルギー消費の増加に伴って最初は公害といった形で現れた人的被害と地域レベルでの環境への悪影響は今や酸性雨や地球の
温暖化といった「地球環境問題」といわれるレベルにまで到達している。この章では本書の内容のほぼ1/3を占めるエネルギーに関連する章の理解を
深めるために必要なエネルギーのついての基礎的な知識について解説する。
物理的エネルギー
我々が利用するいろいろなエネルギーに対しては熱エネルギーとか運動エネルギーといった異なる名称のエネルギーが存在しているが、
これらのエネルギーの本質は全く同等なものである。エネルギーをその物理的性質に着目して考えるとき、物理的エネルギーと呼び、ここ
では物理的エネルギーが従う法則について説明する。
熱と仕事
堅い木どうしをこすり合わせて摩擦によって火を起こしたり、水を加熱して作った水蒸気でものを動かすことができること、つまり、仕事と熱が
お互いに転換が可能であることは古くから知られていた。しかし熱と仕事は本質的には同等のものであって、今の単位でいえば1カロリーの熱がほぼ
4.2ジュールの仕事に相当するという熱の仕事当量についてのマイヤーとジュールの研究は1842年に別個に発表された。それ以前は熱を担うものとして
熱素というものがあり、その量によって物体のもつ熱エネルギーが決まったり、熱素の移動によって熱の移動が起こったりするという考え方が支配的であった。
しかし仕事当量の発見以降は物質のもつ熱エネルギーは、その物質を構成している原子・分子の運動・振動・回転といった力学的エネルギーに由来するものである
という考え方が受け入れられるようになった。後にはある物質のもつ熱エネルギーはその物質の温度に直接関係しているということが理論的に示された。
エネルギー保存則
いま滑車を使って荷物を持ち上げる場合を考える。荷物を持ち上げるときに使ったエネルギーは実際には荷物を持ち上げるのに使われたエネルギーと
滑車とロープの間の摩擦熱にかわり、滑車と、ロープ、荷物を一つの集まり、系、と考えると、系の外部から加えられたエネルギー量は荷物を持ち上げるのに
使われた力学的エネルギーの量(位置エネルギーの差)と摩擦に消費された熱エネルギー量の和に等しくなる(エネルギーが保存される)。熱エネルギーを扱う物
理学の領域を熱力学というので、エネルギー保存則は熱力学の第1法則とも呼ばれる。気体を加熱して膨張させると、加えられた熱エネルギーは一部が気体を膨張
させるための仕事に使われ、残りが気体のもつ熱エネルギー(内部エネルギー)の増加に使われる。加えた熱エネルギーをq、膨張に使われた仕事量をw、内部エネルギーをEとすると、エネルギー保存則は以下のように表される。
q=w+△E
ここで△Eは熱を加える前後の内部エネルギーの差を表す。もし外部からの熱の出入りがなく(これを断熱過程という)気体を膨張させると内部エネルギーの一部が膨張の仕事に使われるので、内部エネルギーが減少して気体の温度が低下する。
水蒸気を含む空気の塊が大気中を上昇すると断熱膨張が起こって温度が下降し、水蒸気が水や氷になると雲ができる。
問1高さ1kmのところにある10℃の水滴が地上まで落下したときに、地上では何℃の水になっているかを計算しなさい。ただし、水滴のもっていた位置のエネルギーは
すべて熱エネルギーに転換されたと仮定し、重力加速度gを9.8m・s-2および水の比熱を75.4J・K-1・mol-1としなさい。(答12.3℃)
位置エネルギー→熱エネルギー
E=mgh m:物値(kg)g:9.8(m/s2)h:高さ(m)
m=1kg,h=1×103mよりE=9.8×103(kg・m2・s-2)=9.8×103(J)
水の比熱をpとすると、p=75.4(J/K・mol)上昇した温度を△t(K)とすると、1000/18(mol)×△t(K)×75.4(J/K・mol)=9.8×103(J)
△t=(9.8×18)/75.4=2.34Kよって、12.3℃となる。
エントロピー
熱いお湯に水を加えると水温は下がり、コーヒーに入れたミルクは時間がたてば、かき混ぜなくても均一に混ざる。お湯を放置しておくと温かい部分と冷たい部分に分かれたり、コーヒーとミルクが分離したりすることは
決して起こらない。自然に起こる変化(自発的な過程)には一定の方向があり、逆方向には変化しないことを自然の変化の非可逆性という。自然に起こる変化の方向を表すものとして熱力学ではエントロピーSという量を用いる。
エントロピーは熱量をq、熱力学温度をTとするとS=q/Tで定義される物理量で、エントロピーを使って自然の変化の方向を表すと「自発的な過程ではエントロピーが増大する」となり、これを熱力学の第2法則という。温度Tで起こったある変化が△qの熱量の移動を伴うとき、
エントロピーの変化△Sは次式で与えられる。△S=△q/T
温度Thの高温の物体Aと温度Tiの低音の物体Bを接触させると自然に物体Aから物体Bへ熱量が移動して両者の温度は同じになる。
このとき移動した熱量を△qとすると物体Aでのエントロピー変化△SA,物体Bでのエントロピー変化△SB,およびそれらの和△SA+Bはそれぞれ
△SA=-△q/Th,△SB=△q/Ti,△SA+B=△q(1/Ti-1/Th)>0となって、この自発的な熱移動では全体のエントロピーは増加することになる。
しかしこのままでは自発的な過程でエントロピーが増加する理由が明確ではないので、もう少しエントロピーについて考えてみる。
ボルツマンはエントロピーを物質を構成する原子や分子の配列の仕方に関連すると考えて、次式を導いた。S=klogW
ここでlogは自然対数、kはボルツマン定数、Wは原子や分子の配列についての場合の数を表す。このようにして定義されたエントロピーを
統計力学的エントロピーと呼び、S=q/Tで定義される熱力学的エントロピーと同一のものである。この考え方によれば自発的な過程は原子・分子の
配列の組み合わせの大きい方向に進むことになる。
拡散現象を使ってもう少し具体的に説明しよう。最初は容器AにN個の気体分子が入っていて、同じ容積の容器Bは真空であったとする。中央のコックを開けると容器Aの分子が
容器Bに拡散してゆき、最終的には左右の容器に同数の気体分子が含まれることになる。最初の状態ではすべての分子は容器Aにあるので分子の存在する場所の組み合わせの数は
1通り、拡散が終了した状態では1つの分子は容器AまたはBのどちらかに存在するので、存在する場所の組み合わせの数は2通りで、N個の分子については2N(2のN乗)通りとなる。
したがって拡散に伴うエントロピー変化△Sは△S=klog2N−klog1=Nklog2>0となってエントロピーは増大したことになる。この場合、気体自身のもつエントロピーについては考
慮していない。ある純粋な物質のもつエントロピーは以下のように考えられる。温度Tにある純物質は温度に対応する熱エネルギーをもっているが、それはその物質を構成する個
々の分子のもつ、運動、振動、回転エネルギーによるものである。それぞれのエネルギーには多くのエネルギーレベルがあり、分子はそのエネルギーレベルのどれか1つに配置されている。
0Kではすべての分子は最も低いエネルギーレベル(基底状態という)に存在するために配置に関する場合の数の合計は1となり、もう少し正確に言うと、「0Kでは純物質の完全結晶の統計力学的エントロピーは0」となる。
これを熱力学の第3法則という。温度が上昇すると分子の各エネルギーレベルへの配置についての組み合わせの数が増大するために物質のもつエントロピーも増大する。純物質のもつエントロピーは一般的には固体、液体、気体の順に増加し、
複雑な構造をもつ分子で構成されている物質ほど大きなエントロピーをもつ。
純物質と完全結晶
他の成分である不純物を全く含まない物質を純物質といい、純物質の作る結晶で結晶中に原子または分子の存在しない場所(空孔という)がない結晶を
完全結晶という。どちらも仮想的なものであって、現実には存在しないと考えられている。もし、結晶中に不純物や空孔が含まれていると、それらが
結晶格子中で存在する場所についての組み合わせがあり、エントロピーが0にならない。
自然に起こる変化は時間の経過とともに一方にしか進まないので、変化の方向を示すエントロピーは「時間の矢」であると言うこともできる。
ミルクをコーヒーに入れて放置すると、エントロピーの増大する方向へ、すなわち時間がたてば両者は均一に混ざり合う。しかしエントロピーは
均一に混ざり合うまでにどのくらいの時間が必要かについては何も指示をしない。エントロピーは時間の矢であっても時計にはならないということである。
問2分子の配置についての温度による分子配置の変化の中で温度が高くなったときの分子の配置についてのlogWを計算しなさい。
分子は合計で16個ある。(答温度A,12.4;温度B,18.4)
分子16個0K,W=1(レベル1に16個)
AKレベル3 2個、レベル2 5個、レベル1 9個
W=16C2・14C5・9C9=120・2002・1=240240
logW=lnW=ln240240=12.4
BKレベル5 1個、レベル4 2個、レベル3 3個、レベル2 4個、レベル1 6個
W=16C1・15C2・13C3・10C4・6C6=16・105・286・210・1=100900800
logW=lnW=ln100900800=18.4 よって、温度A=12.4,温度B=18.4
物質とエネルギー
19世紀まではエネルギーと物質は全く別個のものであって、変化の前後ではそれぞれが独立に保存されるものであると考えられていた。しかし1904年に
発表されたアインシュタインの特殊相対性理論では物質そのものもエネルギーの一形態であり、静止している物体のもつエネルギーEはE=m0c2(m0:物体の静止質量,c:高速)で与えられるとされた。
例えば1gの物質がすべてエネルギーに転換されるとm0=1×10-3(kg),c=2.998×108(m・s-1)なので、E=8.99×1013(kg・m2・s-2)=約90(TJ)といった、石油約2千トンを燃焼させたときに得られるエネルギー量に
相当する膨大な量のエネルギーに転換されることになる。これは信じがたい話に聞こえるかもしれないが、核分裂や核融合といった原子核の関与する反応のエネルギー収支の研究からその正しさが証明された。
経済的エネルギー
地震や台風のもつエネルギー量は莫大なものであるが我々がそれを利用することは今のところ全く不可能である。
むしろその被害の復旧のためにエネルギーを投入している。このようにエネルギーは存在していてもそれが実際に
利用できるかどうかは別で、我々が利用するエネルギーを考えるときには価格、生産、消費といった経済学用語を
用いることから、それを経済的エネルギーと呼んで物理的エネルギーと区別をする方が便利である。物理的エネルギーは
保存されるのでエネルギー不足といったことは起こり得ないが、経済的エネルギーは不足したり、そのためにエネルギー危機が
起こったりすることは十分考えられる。
エネルギーの分類
我々のエネルギーの利用法を考えてみると化石燃料のようにそれ自身に大きなエネルギーの蓄えられているものや太陽光のように
エネルギーの供給量がほぼ無限に近いものを用いて、それらのもっているエネルギーを自分たちに利用しやすい形に加工して使用することが多い。
例えば電気は化石燃料を燃やして水蒸気を発生させ、発電機を回すことで得られる。このようにエネルギーは、(1)我々の利用するエネルギーの源となるものと、
(2)実際に利用するエネルギーの形態、の2つに分けられ、前者を一次エネルギー、後者を二次エネルギーと呼ぶ。一次エネルギーはその性質から下のように分類することができる。
分類
自然系・・・(エネルギー源)地熱・バイオマス・水力・風力・太陽光・太陽熱・波力(更新性)
化石系・・・(エネルギー源)石油・石炭・天然ガス(非更新性)
核系・・・(エネルギー源)ウラン・水素(非更新性)
一次エネルギーはさらに、(1)一度使っても自然の力でまた同一のものを得ることができるか、またはエネルギーの供給が永続的に行われる自然系の
更新性エネルギーと、(2)使用してしまうと他の物質に変化してしまい再利用ができない非更新性エネルギーとの2つに分けられる。非更新性エネルギーはさらに
そのエネルギー源が原子のもつ核エネルギーである核系と、化合物のもつ化学エネルギーである化石系の2つに分けられる。核系のエネルギーは核分裂や核融合の際発生するエネルギーを、
化石系は燃焼させたときに放出される熱エネルギーを利用する。
自然系のエネルギーは地球内部でのウランやトリウムの核壊変のエネルギーに起源のある地熱および主に月との引力に基づく潮汐を除いてはすべて
太陽が地球に放射する太陽光エネルギーに起源がある。地球が吸収した太陽光エネルギーは植物を育て(バイオマス)、雨を降らせ(水力)、風を起こし(風力)、波を
立てる(波力)。現在はそれらのエネルギーを高効率で利用できるように技術開発が行われている。
>>195に情報追加。
分類
自然系・・・(エネルギー源)地熱・潮汐・バイオマス・水力・風力・太陽光・太陽熱・波力(更新性) 潮汐を追加。
コラム1
エネルギーの単位
エネルギーについてのSI単位はジュール(kg・m2・s-2)であるが、非SI単位としてさまざまな単位が習慣的に使われている。
(1)熱エネルギー 熱エネルギーの単位は伝統的にカロリー(cal)が使われてきた。1calは4℃の水1gを1℃温度を上げるのに必要なエネルギーと定義
されている。ジュールとの換算は1cal=4.184Jである。
(2)電力量の単位 家庭の積算電力計を見るとそこには使用した電気の単位としてkWhと書いてあるはずである。SI単位への換算は以下のようになる。
1kWh=1×103×A×V×(60×60)s=3.6×106CV=3.6×106J=3.6MJ
(3)核エネルギー 原子核の関与する反応のエネルギーの単位にはeV(エレクトロンボルト)が使われる。eは電気素量、Vは電圧なので、SI単位への換算は以下のようになる。
1eV=1.6022×10-19C×V=1.6022×10-19J
ただし、この値は原子核1つについての数であるから1モルの原子核に対して計算するときはアボガドロ数の6.022×1023をその数値にかける必要がある。
(4)光のエネルギー 光はその波長λに対応するエネルギーをもっている。1つの光子のもつエネルギーEはE=hc/λで与えられる。ここでhはプランク定数(6.626×10-34Js),cは
光速(2.998×108m・s-1)である。光子のエネルギーも1モルの光子について求めるときには6.022×1023をかける。
(5)莫大な量のエネルギー 全世界の年間エネルギー消費といった莫大なエネルギー量を表すときにQが用いられる。1Q=1018BTUであるが、BTUとは英熱量単位(British Thermal Units)で
1BTUは1ポンドの水の温度を1°F上昇させるのに必要なエネルギーすなわち1.054×103JなのでSI単位への換算は以下のようになる。1Q=1.054×1021J
エネルギー利用の歴史
エネルギーは熱、動力、光の3つの分野で使用される。それらのエネルギー源の変遷は下のようにまとめられる。新しいエネルギー源への移行はある時期を境にして短期間に起こったというわけではなく、徐々に移行する場合が多く、場合によっては現在でも古いエネルギー源と
新しいエネルギー源が共存していることもある。その様子は国や地域によって異なり、主に個々の国の産業構造や当○資源の存在量の違いによって決まる。逆に自国内における資源の存在量が産業構造の転換の時期を左右したこともある。
エネルギー源の変遷
熱源→バイオマス(薪炭)→石炭→石油→ウラン、天然ガス→
動力源→人力→畜力(牛、ラバ、馬)→水力、風力→石炭(蒸気機関)→石油(内燃機関)、電力(モーター)→
光源→バイオマス(木、動植物油)→石炭ガス→灯油→電気(白熱灯、蛍光灯)→
熱源
人類史のほとんどの期間および現在の発展途上国の多くでは熱源をバイオマスに依存している。バイオマスから石炭への移行は19世紀初頭にイギリスで始まり、ついでヨーロッパ、19世紀後半にアメリカで起きた。
日本では20世紀の前半が移行期に当たる。イギリスは17世紀からすでに森林資源が枯渇し始め代替となる燃料が必要であったが、産業革命を機にしてすでに日常生活で使用されていた石炭への転換が急速に進んだ。
アメリカや日本は木材資源の枯渇というよりは産業上の要請から石炭への移行が進んだが、逆に日常生活ではまだ薪炭が使用されていた。石炭から石油への移行は内燃機関の発達に伴って液体燃料を使用する産業が
急速に拡大したためで、先進国では石炭がまだ豊富に存在するにもかかわらず、ほぼ20世紀中頃に完了した。また発電用の熱源として1950年代に原子力発電用のウランが登場した。天然ガスはその燃料としての優れた
特性(高い単位重量当たりの発熱量の大きさ、大気汚染のもととなる不純物の少なさ)をもつので、現在ではいくつかの領域で石油からの移行が急速に進みつつある。
動力源 人類が最初に利用した動力源は人間そのものであった。古代社会では強制労働や奴隷という形で人間が人間を使役した。人間は動力源としての出力は小さいが、
家畜と比べると安価な動力源であった。家畜は人間よりはるかに大きな出力を持っていたが、働かせるには人間に必要な食料の何倍もの食料が必要なため、農業生産力がかなり
高くなるまでは限られた分野でしか使用されず、人力と畜力の共存する時代が長い間続いた。特に馬は維持費が高いために長い間戦争にしか使われず、18世紀に入って農業や輸送の分野で
本格的に使われるようになった。粉ひきや繊維工業の分野では水力(最初に動力源として使われた記録はBC100年)や風力(同じく12世紀)が使われ始めるようになり、関連した産業が川沿いの町で発達
するようになったが、この2つの動力源は気象現象に依存するために供給が不安定で、限られた役割しか果たせなかった。19世紀になると石炭を燃料とする蒸気機関が発明され、産業が発達するにつれて
それまで水力や風力に頼っていた分野で徐々に置き換わりが起こり、やがて繊維産業や交通・輸送の分野など多くの分野で蒸気機関が使用されるようになった。19世紀末の液体燃料を利用する内燃機関(ダイムラーと
ベンツによるガソリンエンジン、ディーゼルによるディーゼルエンジン)の発明は、アメリカでは大油田の発見と相まって、すぐに農耕用のトラクター、自動車そして航空機にと利用が拡大し、交通・輸送の分野での石油の
消費量が増大した。また石油の生産・輸送のコストの低さも石炭から石油への転換を促すことになった。発電機は1834年にロンドンで試作され、電気を利用するモーターが電車や工場の小型の動力源としてさまざまな分野で利用されるようになった。
光源 照明用の光源には長い間木が使われていたが、ろうそく、菜種油、鯨油などの油脂類の屋内用の光源としての利用が徐々に広まっていった。
19世紀には鯨油の消費量が大きくのび、アメリカは捕鯨の中継基地として日本に目を付け、開国を迫ったことが江戸幕府を弱体化させる契機ともなった。
都市の照明には1815年にロンドンで石炭工場から配管されたガス灯がともなった。ガス灯は一旦設備が整えば小さいコストで照明ができるので、欧米の各都市、そして日本へと広がっていった。
電気の大規模な照明への利用は1875年のパリ北駅が最初である。電球はフィラメントがカーボンから耐久性に勝るタングステンに変わるとともに家庭用および都市用の照明として普及していった。
現在は白熱灯よりもエネルギー効率の良い蛍光灯が照明の主流を占めている。
産業革命に伴って蒸気機関の利用が広まり、1880年ごろには主要なエネルギー資源が薪炭から石炭へシフトした。石炭は1910年代に消費のピークを迎え、
1960年代の後半に石油に置き換わった。石炭の時代が約80年間続いたことになる。石油の消費量は1970年代半ばにピークに達し、最近は天然ガスの消費量が増大している。
このままの傾向が続けば、いずれは主要な一次エネルギーが石油から天然ガスへ置き換わることになる。石炭が消費量のピークを迎えてから石油に置き換わるまでほぼ50年かかっているので、石油から
天然ガスへのシフトも同じ期間を要するとすれば、2020年ごろには石油から天然ガスへのシフトが起こると予想される。1950年代に登場した原子力の発電容量の伸びは1990年代に入って頭打ちになっており、
自然系エネルギーである薪炭や水力発電の寄与は1桁台にとどまっている。
エネルギーの変換
一次エネルギーを二次エネルギーに変換したり、使用目的に応じて二次エネルギー間で変換することが行なわれる。エネルギーはある一定の
割合でしか他のエネルギーに変換できないために、変換できなかった部分はすべて熱エネルギーに変化してエネルギー保存則が満たされる。
その熱エネルギーの大部分は利用されることなく排熱となって環境中に放出される。エネルギーの変換効率ζをζ=目的の形に変換されたエネルギー量/変換前のエネルギー量
と定義すると、エネルギーAをエネルギーDに変換するために3つのステップを経たときには目的のエネルギーDに変換される割合は1−ζ1ζ2ζ3となり、もし各ステップのエネルギー変換効率が
0.60であったとすると最終的な変換効率ζtは0.216となって、最初のエネルギーの約80%が熱エネルギーになってしまう。このことはエネルギーを使用するときは変換のステップ数はなるべく
小さくすることおよび高効率でエネルギー変換が可能な技術の開発の重要性を示している。
カルノー効率
熱機関のエネルギー効率を知ることは19世紀の産業界にとっては重要なことであった。フランスの科学者カルノーは
作業物質(エネルギーを移動させる物質)に理想気体を用い、可逆的な膨張と圧縮を行なうサイクルを考えて熱機関の理論効率を導き出した。
(1)最初(P1,V1,T1)の状態にあった1モルの理想気体を外部よりエネルギーを加えて等温のまま(P2,V2,T1)まで可逆的に膨張させる。
この過程では△E=0(理想気体の内部エネルギーは温度のみに依存する)なので吸収した熱量はすべて気体の膨張のための仕事に使われる。したがって
q1=w1=∫(V2V1)pdV=RT1∫(V2V1)dV/V=RT1log(V2/V1)
(2)次にこの気体を外部よりエネルギーの出入りのない断熱状態で可逆的に(P2,V2,T1)から(P3,V3,T2)まで膨張させる。
この過程ではp2=0なので、膨張に必要なエネルギーは内部エネルギーの変化に等しくなり気体の温度は低下する。T1>T2
w2=−△E=−Cv(T2-T1) Cv:定容モル比熱
(3)さらにこの気体を(P3,V3,T2)から(P4,V4,T2)まで可逆的に等温圧縮させる。このときも△E=0なので
q3=w3=∫(V4V3)pdV=RT2log(V4/V3)
(4)最後にこの気体を断熱圧縮させて最初の状態(P1,V1,T1)に戻す。この過程ではq4=0なのでw4=−△E=−Cv(T1-T2)となる。
このサイクルでは高温で得たエネルギーq1がw=w1+w2+w3+w4の仕事に変換されたので変換効率はζ=w/q1={RT1log(V2/V1)+RT2log(V4/V3)}/RT1log(V2/V1)となる。
理想気体では(V2/V1)=(V3/V4)なので、ζ=(T1-T2)/T1となる。このようにして求めた効率をカルノー効率という。
問3電気自動車は排ガスの出ない「環境に優しい」乗り物であると考えられている。電気自動車が今のガソリン車に置き換わるにはそれらのエネルギー変換効率も
考慮しなければならない。発電の効率を40%とし、ガソリンエンジンの効率を25%とすると、電気自動車に搭載するモーターに求められる効率は何%以上でなければならないか。
ただし、上記以外の変換効率は皆等しいものと仮定する。(答63%)
Q→ζ1=0.25→ガソリンエンジン⇒0.25Qが使用される。
Q→ζ2=0.40→発電→ζ3=?→モーター(電気自動車)⇒0.40×ζ3×Qが使用される。
0.40Q×ζ3>0.25Q
ζ3=0.25/0.40=0.625≒0.63 故に63%以上の変換効率が必要になる。
エネルギーと環境
エネルギーの使用は環境へさまざまな影響を与える。メソポタミアでは潅○施設の維持の動力源を人力に頼っていたために
戦争などによって人力の供給が断たれたときに、農地は塩害のために荒廃し都市を支える食料生産が不可能になって、文明は砂漠の中に埋もれてしまった。
森林資源が熱源の主要な部分を占めていた時代には過剰なエネルギー消費は森林の乱伐を招き、多くの地域で森林が消滅し岩むき出しの荒れ地や砂漠に変わっていった。
その跡は古い文明のあった世界各地で見ることができる。エネルギー使用の最も大きな環境への影響は化石燃料の使用と同時に始まった。石炭の使用は大気を汚染し、川を汚し、人々の健康をむしばんだ。
そして今でも続く化石燃料の大量消費は今では酸性雨や地球の温暖化といった全地球的な問題にまでその影響を広げている。現在使われている一次エネルギーの環境への影響を下にまとめて示す。化石燃料の環境への影響は、
他の章でさらに詳しく説明することにして、ここではエネルギーの転換に伴う環境への影響、熱汚染について簡単に説明する。
エネルギー使用の環境への影響
一次エネルギー--環境への影響-------------------------------------------現在のエネルギーコスト
石油・・・・・・輸送時の海洋汚染・燃焼による大気汚染と地球の温暖化--------比較的安価
石炭・・・・・・採掘時の生態系の破壊・燃焼による大気汚染と地球の温暖化----石油より高価
天然ガス・・・・大気汚染への影響は小さい。輸送時および燃焼による地球の温暖化---石油と同程度
水力・・・・・・土地利用の変更--------------------------------------------石油より安価
原子力・・・・・放射性物質の事故による環境への放出・核廃棄物の漏洩--------化石燃料より高価
バイオマス・・・森林破壊?------------------------------------------------最も安価
太陽光・・・・・ほとんどなし----------------------------------------------化石燃料より高価
風力・・・・・・風車からの騒音--------------------------------------------化石燃料より高価
潮汐・・・・・・海岸生態系への影響景観の悪化------------------------------化石燃料より高価
地熱・・・・・・蒸気からの大気汚染物質の放出------------------------------極めて安価
核融合・・・・・重大な熱汚染----------------------------------------------未完成の技術
発電の効率は35%程度で、残りの熱エネルギーは環境中に放出される。発電所ではその排熱は冷却水に使用されている水に移される。このために、取水時より高温に
なった放流水は温排水と呼ばれ、発電所の立地場所が川であれ海であれ放出口の周辺の生態系を乱すことになる。特に魚類は変温動物であるために、生息のための最
適な温度環境の幅が狭く、その生態は温排水によっても大きく影響される。また温排水のために本来の産卵時期でないときに、産卵が起こると幼魚が成長できないと
いったことも起こる。温排水の問題を避けるためには温排水をいったん人工の冷却池に導いたり、冷却塔を使うなどの対策も立てられている。またその温排水を逆に
利用して、地域の暖房などに利用する場合もある。また大都会では車からの高温の排気ガスや照明などの排熱によって気温が上昇し、人口密度の高い都市の中心部よ
り郊外の方が気温の低い都市特有の温度分布ができ上がる。これをヒートアイランド現象と呼ぶ。真夏になると都心では夜になっても気温が40℃以下に下がらないと
いったことも観測されている。
問4ある火力発電所の発電能力は1日当たり4.2×1010kJで、発電量の2倍が廃熱として放出される。
もし冷却水として20℃の河川水を毎日2×109dm3ずつ使うとしたら冷却水の温度は何℃になるか、また
この川の水量を1日当たり1010dm3とすると、下流の水温は何℃上昇するかを求めなさい。ただし、水の
密度を1.0kg・dm-3,比熱を4.2kJ・K-1・kg-1としなさい。(答冷却水:30℃,川の水:2℃)
密度:1.0kg/dm3(ζ)、比熱:4.2kJ/K・kg、河川水:2×109dm3(V) 河川水の2×109dm3を2×109kgに変換
V=2×109dm3=2×109×1.0(dm3×kg/dm3)=2×109kg t℃上昇するのに必要な熱量(Q1)を求めると
Q1=2×109×t×4.2(kJ) 廃熱の量(Q0)はQ0=4.2×1010(kJ)×2
Q1=Q0になることから、2×109×t×4.2=4.2×1010×2
t=10(℃) 20℃+10℃=30℃ また、下流の水温は2×109×t×4.2=1.0×1010×2
t=0.23×10=2.3 t=2.3(℃)
よって冷却水の温度は30℃になり、下流の水温は2℃上昇する。
コラム3(書き忘れ:カルノー効率がコラム2)
発電の効率
現在電気は主に火力発電によって生産されているので火力発電におけるエネルギーの変換効率を調べてみよう。
電気を生産するプロセスは下のようになる。最初に石油をボイラーで燃焼させて、燃料のもつ化学エネルギーを
水蒸気のもつエネルギーに変換する。このときの変換効率は0.88となる。次にその熱エネルギーでタービンを回転させて機械的エネルギーに変換する。
このときにはカルノー効率がきいてくるので変換効率は0.45程度になる。最後に機械的エネルギーは発電機によって効率0.99で電気エネルギーに変換される。
このようにして得られた電気エネルギーは消費地に送電される際に10%程のロスがでる。したがって火力発電の全効率は0.35となり、最初の石油のもっていた
化学エネルギーはほぼ2/3が廃熱となって環境に放出される。このように水蒸気の力でタービンを回転させて発電する方法を汽水発電といい、原子力発電も石油の
化学エネルギーに代わりウランの核エネルギーを用いる汽水発電である。
石油、酸素(化学エネルギー)→ボイラー(ζ=0.88)→水蒸気(熱エネルギー)→タービン(ζ=0.45)→機械エネルギー→発電機(ζ=0.99)→電気エネルギー→送電(ζ=0.90)→消費地(ζt=0.35)
地球環境の成り立ち
宇宙から見た地球は美しい。暗い宇宙空間に青く輝く姿に多くの宇宙飛行士は地球に対する畏敬の念さえもち、「何らの目的や意志なしに、
偶然によってこのような美しい星ができ上がるはずがない」といった感想をもつそうである。この地球の美しさは地球に豊富に存在する水によ
るものである。恐らくは全くの偶然によってでき上がったこの星で30数億年前に生命が発生し、気の遠くなるような長い時間をかけて生物が進化し、
約500万年前に人類の祖先が誕生した。それ以降人類はその知的能力をもって自然を理解し、自然を利用することによって文明を築き上げてきた。この章では
人類の繁栄を可能にした現在の地球環境がどのようにして成立したかを概観する。
宇宙の進化と元素の合成
我々をとりまく自然は100数種の元素から構成されている。これらの元素が様々な化合物を構成し、気体、液体、および固体の形で我々の身のまわりに存在する。
これらの元素は今から約150億年前と推定されている宇宙の誕生とその後の恒星の誕生と死に伴って作り出されたと考えられている。
ビックバン理論
1929年にハッブル(米)は銀河系に属さない星雲が地球から遠ざかりつつあること、すなわち宇宙は現在膨張しつつあり、星雲の後退速度vと星雲までの距離dの間には
v=H0×d
の関係が成立することを発見した。H0はハッブル定数と呼ばれ、その逆数は宇宙の年齢に相当するので、現在求められているH0=7.5×10-7/年から宇宙の年齢は約150億年と
見積られている。この膨張する宇宙に対する理論的な説明は1948年にガモフらによって与えられた。この理論は進化論的膨張宇宙論(ビッグバン理論)と呼ばれ、宇宙は当初超高
温・超高密度の状態にあったが、ある時に何かをきっかけに宇宙が膨張を始め、膨張に伴って宇宙の温度が下がり、最初に存在していた物質に様々な変化が起きて現在の宇宙が
でき上がったという考え方である。この理論によれば現在の宇宙の温度は7Kであると予測された。この予言は1965年にテレビの受信機の改良実験中にペンチアスとウィルソンに
よって宇宙の温度として2.7Kが観測されたことによって確かめられた。ビッグバン理論とその後の研究に基づく宇宙の歴史の概略は下のようにまとめられる。これらのできごと
のなかで元素の起源を考える上では原子核の合成および揺らぎの発生と銀河の形成が重要である。
宇宙の歴史
時間(秒)---------温度(K)-----できごと
0----------------------------ビッグバン
10-8------------1014-----クオーク・レプトンの時代(素粒子の時代)
10-8〜10-6----1013-----ハドロン・レプトンの時代(素粒子の時代)
10-4〜1--------1012〜1010----陽子・電子・中性子の時代
1〜103---------108------原子核の合成(主にヘリウム4まで)
103〜1012-----104------プラズマの時代
1012〜1015---------------揺らぎの発生と銀河の形成
1017-------------2.7-------現在
銀河の後退速度とドップラー効果
波としての性質をもつ光や音の発生源が観測者に対して移動していると、観測者には発生源より放出された波長とは
異なる波長が観測される。いま観測者に対して速度vで遠ざかっていく発生源から放出された波長μの光は観測者には
波長μ'の光として観測される。μ'=μ(1+v/c) c:光速
したがって観測される光の波長は発生源より放出される光の波長より長くなる。可視光では長波長側は赤色なのでこの
現象をスペクトルの赤方偏移と呼ぶ。
恒星の進化
宇宙空間は完全な真空ではなく、気体と微細な粒子(密度はH原子として10〜100個/cm3;組成は水素76%、ヘリウム22%および、原子番号3以上の元素2%)からなる星間物質が存在する。
宇宙の一部で星間物質が超新星の爆発のような何らかのきっかけで凝集し密度の高い部分ができ上がると重力によって周辺の星間物質が引き寄せられて、密度が103個/cm3程度の暗黒星雲が形成され、この中から恒星が生まれる。
その後の恒星の進化の道筋はその質量によって異なり、太陽より質量の大きい恒星の進化の様子を下に示す。
(1)凝集がさらに進んで密度が上昇すると、星の温度が上昇し赤外線を発する赤外線星が誕生する。星間物質は重力によって凝集するので、星間物質のもっていた重力のエネルギーが凝集に伴って熱エネルギーに転換される。その結果、星の
温度が上昇して星は膨張し、重力と膨張力のつり合った状態になる。
(2)粒子密度が107個/cm3程度まで成長すると星は赤色矮星となって中心の温度は107Kまで上がる。
(3)赤色矮星の中心部では水素からヘリウムへの核融合反応(水素燃焼)が起こり、温度がさらに上昇し赤色矮星は赤色巨星に向かって進化していく。
太陽との質量比が3.5以下の恒星は赤色巨星の最後の段階でも次に始まるヘリウム燃焼の起こる温度(108K)に達さず、外側の物質が逸散して中心部が
白色矮星となってその一生を終わる。太陽は赤色矮星で恒星としての一生を終えるが誕生から死までの期間は約100億年と計算されている。
恒星の一生
自己収縮開始(10K)→赤外線星→赤色矮星(107K)→◎H燃焼→赤色巨星(108K)→He燃焼→赤色超巨星→CO燃焼→白色巨星(109K)→Fe生成反応→燃焼終了(3−5×109K)→重力崩壊→超新星爆発(8<R<10)
-------------------------------------------------------------↓--------------------------↓-------------------------------------------------------------------------↓----------------------
---------------------------------------------------------爆発(R<3.5)----------------爆発(3.5<R<8)---------------------------------------------------------------------ブラックホール(R>10)--
-------------------------------------------------------------↓-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------白色矮星---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
>>223訂正
×超新星爆発(8<R<10)→ブラックホール(R>10)
○重力崩壊→ブラックホール(R>10)
重力崩壊は8<R<10で超新星爆発、R>10でブラックホールになる。
◎は太陽を、Rは恒星の太陽に対する質量比を表す。
(4)質量比が3.5以上の恒星は温度がさらに108Kまで上昇し、内部ではヘリウムが炭素や酸素になる核融合反応(ヘリウム燃焼)が進行して赤色超巨星となる。
太陽との質量比が8までの恒星は核融合が終了する段階で中心部から爆発して消滅する。
(5)質量比が8以上の恒星ではさらに炭素や酸素の核融合反応(C,O燃焼)が起こって温度が109Kに達して白色巨星になる。白色巨星ではさらに核
融合反応が進んで温度が3〜5×109Kに達して、すべての原子核がエネルギー的に安定な鉄の原子核になって核融合が停止する。反応熱の発生が止まると重力によって星の
収縮が始まり(自己崩壊)、このために温度が急激に上昇して5×109Kに達する。質量比が10以上の恒星の場合には無限の重力崩壊が起こって中心部から光も脱出できないブラックホールになる。
質量比が8から10程度の星では自己崩壊の過程で大爆発を起こして周辺部は外部に向かって広がってゆき中心部は中性子から構成される電波を周期的に発するパルサーとなる。鉄より原子番号の大きい元素はこの自己崩壊の過程で生成する(r過程)。
核融合 原子核同士が反応して別の原子核に変化する反応を核融合という。人類は未だ地上で核融合を実現することには成功してはいないが、恒星の中で
起こるさまざまな核融合反応は膨大なエネルギーを生み出し、恒星の進化の原動力になっている。恒星中での核融合による元素合成の理論はB2FH理論と呼ばれる。
太陽で起こっている水素燃焼は4つの陽子からヘリウム4が生成する反応(PPサイクル)で、以下のような反応式が提案されている。
1H+1H→2H+{β+(陽電子)}+v(ニュートリノ)
2H+1H→3He+r
3He+3He→4He+21H
_____________________
41H→4He+{2β+}+2r+2v+24.6MeV
この反応によって放出されるエネルギーは水素1グラム当たり5.93×1011Jで、この量は同じ重さの水素の燃焼熱の121kJの約500万倍にもなる。
太陽系の起源
太陽系は中心にある太陽と9つの惑星、惑星に付随する衛星、火星と木星の間に存在する小惑星群および彗星群より構成されている。
太陽系がどのようにして形成されたかについては古代からの人類の最大関心事の一つであり、近代科学が成立した後も種々の学説が提案されてきた。例えば哲学者と
して知られるカントの力学的モデルによる星雲説(1775)や20世紀に入って展開された電磁気相互作用を軸にした太陽系起源論などが知られている。ここ
では微惑星説(サフローノフ,1969)に基づく太陽系形成のシナリオを簡単に紹介する。
太陽系の起源
揺らぎによる暗黒星雲の生成(1)→暗黒星雲の収縮→円盤状星雲(2)(原始太陽系星雲)→微粒子の成長と赤道面への沈殿→固体層の形成(3)→微惑星の生成→原始惑星の形成(4)→原始惑星の成長→原始太陽系の成立(5)
(1)約4.6×109年前に、星間雲が超新星爆発の衝撃波などをきっかけに収縮を始めた。
(2)中心部分は原始太陽となるが周辺の角運動量をもつ部分は遅れて収縮し、原子番号が3以上の重元素で構成されている微粒子(半径:0.1〜1μm)が
水素とヘリウム中に浮遊している状態の薄い円盤状星雲が形成された。凝集のため星雲の温度は一旦は上昇するがその後、地球付近では230K,土星付近では100Kまで冷却された。
(3)微粒子は衝突によって成長し、105年ほどたつとmmからcmの大きさに成長し、星雲の赤道面にはこれら微粒子の集積した固体層が形成された。
(4)固体層は力学的に不安定で、あるとき急激な固体層の崩壊が始まり、10年ほどで半径10km,重さ1018g程度の大きさの「微惑星」が約1012個ほど
できあがった。この「微惑星」は不規則運動の結果、直接衝突によって成長し、105年ほどで半径103km,重さ1021-25gほどの「原始惑星」に成長した。
(5)「原始惑星」は重力圏を拡大して「微惑星」をより多く併合するようになり、約106年後には地球サイズ(半径6,300km)に、107年後には木星の中心核の
大きさ(半径10,000km)にまでに成長し、原始太陽系が形成された。
地球型惑星の形成 地球は大気の保温効果によって衝突の際に発生した熱エネルギーが保存され2700K程度まで温度が上昇する。
その結果、地球は溶融し、中心部には還元された鉄やニッケルの芯が、外層にケイ酸塩のマントルという分別が起こった。
木星型惑星の形成 「原始惑星」の大きさが地球の10倍程度だと、その重力のために大気中の水素やヘリウムも惑星の中心に引きつけられ固化する。
その結果、惑星の周囲は真空に近くなり、惑星の質量が一桁上昇し、平均密度が減少した。この後、惑星をとりまく星雲ガスは吹き払われて現状の10-21g・cm-3の超真空状態になった。
この原因としては木星のような大型惑星の重力による影響や、太陽風などが考えられている。その結果、惑星や残っていた微惑星も星雲ガスの抵抗が減少したために、太陽の周囲を安定に
回転するようになり、微惑星は現在の小惑星や彗星になり、惑星の重力圏に存在していた微惑星は衛星になった。
元素の存在度
地球の地殻を構成している元素の存在度は宇宙の平均元素存在度とは大きく異なっている。地球誕生時に存在していた水素やヘリウムはすでに
逸散したことを考えても、酸素、ケイ素、および鉄の存在度が高く、宇宙の進化や中型の恒星では合成されないような鉄以上の原子番号の元素(例えば金、銀、ウラン)が存在する。
この事実は太陽系が誕生する以前に周辺で超新星の爆発が繰り返されたことを示す。
宇宙・地殻・海水・細胞の元素存在度
元素---------全元素中の割合(%)---------------------------------
-------------宇宙1)-------地殻1)------海水2)------生物細胞2)----
水素(H)-------77-----------0.14---------66------------63--------
ヘリウム(He)--21-----------<1×10-7--<0.002---------0---------
炭素(C)-------0.34---------0.04--------0.01-----------11--------
窒素(N)-------0.13---------0.020-------<0.002---------1---------
酸素(O)-------0.83---------47----------33-------------25--------
ナトリウム(Na)-0.0033------2.8---------0.3------------0.03------
マグネシウム(Mg)-0.061-----2.1---------0.03-----------0.02------
アルミニウム(Al)-0.0055----8.1---------<0.002---------0---------
リン(P)-------6.3×10-4--0.11--------<0.002---------0.2-------
イオウ(S)-----0.044--------0.026-------<0.002---------0.3-------
カリウム(K)---3.6×10-4--2.6---------0.006----------0.002-----
カルシウム(Ca)--0.0069-----3.6---------0.01-----------0.4-------
ケイ素(Si)------0.068------28----------<0.002---------<0.002----
鉄(Fe)----------0.058------5.0---------<0.002---------<0.002----
1)重量、2)原子数
地球の歴史と生物の進化
誕生直後の高温の地球は一切の生物の存在を許さないような過酷な条件下にあったが、冷却される過程で生成された海洋や大気中で
さまざまな物質が合成され、その中から生命が誕生した。その後の生物の活動は地球環境を変え、環境の変化が生物の更なる進化を促すといったように、
環境と生物は相互作用を繰り返しながら変化してきた。現在においてもその関係は変わっていない。生物にとって大気と水の存在は欠かせないもの」なの
で、まず海洋と大気の起源を、ついで大気と生物の進化について説明する。
海洋と大気の起源
地球上に存在する水の約98%は海洋に存在する。この海洋がどのようにして形成されたかは、地球大気の起源と関連していくつかの説がある。
いずれの説も地球の水の大部分は地殻を構成する含水鉱物に起源があることでは一致しているが、地球の歴史のどの時期に水が生成したかの推定が異なる。
ここでは微惑星説に基づく海洋および大気形成について説明する。
(1)水分を1%程度含む微惑星が集積して始源地球がある程度の大きさまでに成長すると衝突のエネルギーによって地表の温度が900Kほどになり、含水鉱物から水が脱離して
水蒸気を含む大気が形成され始めた。
(2)始源地球の成長がさらに進み地球が現在の地球のほぼ50%程度まで成長すると地球の表面付近の温度が
岩石の融点を越えて、原始地球の表面部分がマグマの海になった。その結果、大気中の水分の一部が逆にマグマの中に
溶け込むようになり大気中の水蒸気は100気圧前後で一定になり、やがて微惑星の衝突が終わると地球は加熱する熱源がなくなったために徐々に冷え始めた。
(3)大気の温度は水蒸気の温室効果のために最初はかなりの高温で、水はすべて水蒸気の形で存在していたが、地球が冷却されるにしたがってまずマグマが固化し、
マグマ中に溶解していた水の一部が大気中に移動した。
(4)冷却がさらに進むとついには水蒸気の一部が水になり、大量の雨となって地上に降り注ぎ、真水の海洋が形成された。
大気中に含まれていた二酸化イオウや塩化水素は海水に溶解して大気中から除かれ、海水は酸性を示すようになった。この酸性の海水は岩石と反応して
中和され、岩石からは、ナトリウム(Na+),カリウム(K+),カルシウム(Ca2+),マグネシウム(Mg2+)といった金属イオンが放出されたが、Ca2+やMg2+は
海水中に溶け込んだ二酸化炭素と反応して不溶性の炭酸塩を形成し海水から除かれた。大気中に含まれていた二酸化炭素はほとんどが海水中に移動し、最終的には
窒素を主成分にした(酸素は存在しない)原始大気が形成された。海洋が形成された時期については、グリーンランドで発見された最も古い堆積岩が約38億年前のものなので、
それ以前である可能性が高い。
原始大気の進化
主に窒素と水蒸気から構成されていた原始大気がどのようにして現在の大気に変化したかは地球上での生物の進化と密接な関連がある。
ここでは原始大気中には存在しなかった、生物には必要不可欠な、酸素の消長について詳しく説明する。水蒸気を含む大気の上層は太陽からの
強い紫外線(UV)に曝されていて、水分子は次式のような分解反応を起こし酸素が生成する。
H2O+UV→H+OH
H+OH→H2+O
O+O→O2
このようにして生成した酸素は地表物質を酸化したりオゾン生成反応に利用されて消費され、約27億年前までは大気中の酸素濃度は現在の
1万分の1程度に保たれていた。地上も強い紫外線に曝されていたために、生物が存在しなかったが、ほぼ30億年前に海洋中に可視光を利用して光合成をする生
物が発生して次式のような光合成による酸素の生成が始まった。
6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2
初期に発生した酸素は恐らくは主に海水中に多量に溶解していた鉄イオンを酸化することによって消費されたが、海水中での酸化反応が終了すると水に不溶な
酸素は大気中に移動するようになり大気中の酸素濃度が増加し始め、約3.6億年前には酸素は今の濃度の約10分の1になった。このころには成層圏ではオゾン層が形成されて
地上には紫外線が届かなくなり、地上に生物が進出する条件が整った。まず植物がついで少し遅れて動物が地上に進出した。その後中生代の一時期に酸素濃度が大きく増加したが、
その後減少して約1億年前に現在の濃度になったと推定されている。
生物の進化
海洋中に生命がいつどのように発生したかについてはいくつかの説があるが、確実なことは何もわかっていない。最初の生物の発生以前には海洋や大気中で
複雑な化学反応が起こって生命の誕生に必要な物質が合成されたと考えられる(化学進化の時代)。やがて海水中に含まれる有機物を利用し生存のために必要なエネルギーを酸素を
必要としない代謝によって得る嫌気性生物が発生した。
29億年前には、海水中に溶解していた二酸化炭素と水から光合成によって生命の維持に必要な
糖を自ら合成し、エネルギー効率の優れた呼吸によってエネルギーを得る生物が発生した(シアノバクテリアの化石、ストロマトライトより推定)。
18億年前になると、細胞内に核を持つ真核生物が出現した。遺伝子が核に移動することによって外部からの○乱から保護されるので、真核生物の出現によって
高等生物への進化の道が切り開かれた。15億年前には多細胞生物が出現し、6億年前以降からは多くの動植物の化石が存在し、その生物が生存していた時代の年代や
地球環境がある程度確実にわかる古生代が始まった。それ以降の地質年代はその紀に繁栄した動植物の変遷によって分類されている。ある紀に繁栄していた生物が何かのきっかけで
起きた気候変動によって絶滅し、新しい環境に適応した種が次の紀で繁栄することになった。いずれにしろ生物は与えられた環境に応じて多彩な進化を行い、現在約3000万種の生物が
地球に存在している。
生物と環境の関係を考える上で重要なできごとは、(1)光合成をする生物の発生によって酸素が蓄積され、呼吸によって生命を維持する動物が発生したこと、および
(2)その酸素によって大気上層にオゾンを豊富に含むオゾン層が生成し、生物にも有害な紫外線が地表に届かなくなり、進化の舞台が海中だけではなく、地上にも広がったことである。
われわれ人類の直接の祖先は約500万年前に東アフリカで誕生したと考えられている。熱帯のジャングルで暮らしていたチンパンジーの一種が寒冷化のために
ジャングルを離れてサバンナで生活することを余儀なくされ、2本足で歩行することを始めた。自由になった両手の使用が大脳の進化を促進し、言語の使用および
技術的手段の利用という2つの能力を獲得した。このような能力を持っていたと考えられる人類はおおよそ150-200万年前に出現した直立原人(ホモエレクトス)で、
その後ホモサピエンスを経てネアンデルタール人、クロマニオン人(現世人類)と進化してきた。現世人類は黒色(ネグロイド)、黄色(モンゴロイド)、および白色(コーカソイド)人種に
分かれているが、この現世人類の起源については単一起源なのか(現世人類の共通の祖先が東アフリカで発生したというイヴ仮説)、またはいくつかの地域に起源があるという(多地域起源説)との
間で論争が続いている。
コラム1放射性同位体による年代測定
放射性同位体(ラジオアイソトープ,RI)は、一定の速度で壊変して他の元素に変わる。この速度定数を壊変定数λとよび、RIに固有の
値である。(壊変定数λとRIの半減期t1/2とはt1/2=0.693/λの関係がある。)RIのこの性質を利用して様々な試料の年代測定をすることができる。
その方法には大きく分けて2つの方法がある。
1.親核種の減少量を利用する方法 代表は14C法で3万年以下の古さの生物起源の試料の年代測定に利用される。14Cは半減期が5730年でβ壊変によって14Nになる。
14Cは宇宙線と空気を構成する分子との反応で放出された中性子と窒素の反応により生成し、酸素と反応して14CO2になる。14CO2は大気中のCO2と均一に混合して
光合成に伴って植物に取り込まれ、生物に固定された14Cは一定の速度で壊変する。現在の炭素1グラムは毎秒15.3個の割合でβ線を放出するので試料の炭素1グラムあたりの
毎秒のβ線の放出数をNとすると、試料の年代tは下記の式で与えられる。
t=19,000×log(15.3/N)
14C法の誤差はほぼ10%程度と推定されているが、これは過去の大気中における14Cの存在率が現在と異なることによって生じる。
2.親および娘核種の比を用いる方法 火成岩や隕石の年代測定に利用される。代表としてルビジウム(87Rb)-ストロンチウム(87Sr)法について説明する。
87Rbはβ壊変によって半減期488億年で87Srにかわる。1つの試料中に含まれる現在の87Srの量(87Sr)tは最初から存在していた非放射性起源の(87Sr)0と87Rbの壊変によって生じた
量(87Rb)t(eλt−1)の和になる。
(87Sr)t=(87Sr)0+(87Rb)t(eλt−1)
この式の両辺を放射性起源の同位体の存在しない86Srの量(86Sr)t(非放射性起源なので(86Sr)0と等しい)で割ると(87Sr/86Sr)t=(87Sr/86Sr)0+(87Rb/86Sr)t(eλt−1)となり、1つの
岩石試料中の構成鉱物ごとの(87Sr/86Sr)tを縦軸に、(87Rb/86Sr)tを横軸にとると、傾きが(eλt−1),切片が(87Sr/86Sr)0の直線になる。この直線を等時線(アイソクロン)と呼ぶ。
λは既知なので傾きから試料の年代を計算することができる。
コラム2文明をもつ星の数は?
雲をつかむような話ではあるが、銀河系内に人類と同じような高等文明をもつ星が他にあるかについて推定するための式としてドレイクの式(1960)が知られている。
ドレイクの式によれば、銀河系内に存在する高等文明の数Nは次のような式で与えられる。
N=Ns・fp・ne・fl・fi・fc・L/G
ここでNs:銀河系内に存在する恒星の数,fp:その恒星が惑星系を伴っている確率,ne:その惑星系で生物が生存可能な環境をもつ惑星の数,fl:その惑星に生命の発生する
確率,fi:その生命が人類のような高等生物に進化する確率,fc:その高等生物が他の星に通信を行えるような高等文明をもつ確率,L:高等文明の継続時間,G:恒星の寿命を
示す。Nの値を求めるにはそれぞれの変数に適切な値を入れればよいのであるが科学的な根拠をもつ数値はほとんどなく推定値を代入することになる。銀河系内の恒星の
数Nsは観測により約2000億個(2×1011)と推定されている。その恒星が惑星系をもっている確率fpは観察によって太陽系のような惑星系をもつ恒星がほとんどないので
確率は極めて低く、0.1〜0.0001程度と考えられる。
生物が生存可能な環境をもつ星の数neは太陽系で1であるので1とおく。生命に関する3つの項fl,fi,およびfcは生命は地球のような惑星であれば生命の誕生と進化は
必然のものと考えてすべて1とする。高等文明の持続期間Lは人類に関しても未来については予測不可能で計算する人によって様々な値を入れることができる。もし現在の人口やエネルギー、環境の
問題を完全にクリアできるとすると生物種の寿命として数千万年、それをさらにクリアするとして太陽系の残りの寿命50億年を入れることも可能である。ここでは何の根拠もないが1万年としておく。
最後の恒星の寿命Gは太陽クラスの星では100億年である。これらの数値を式に代入するとNの値は20から20000の間となる。Nの値がいくつであれ、現在までに我々が地球外の生物と接触したという記録は
残されていない。
物理に入ります。
熱力学第1法則 温度 温度計を用いて気温や水温を測るという行為は、日常生活の中でごく自然に行われていて、その行為の意味を深く考えるというようなことはない。
また、体に変調をきたして発熱した子供の額に母親が手を当ててみて、「熱がある!」ということもよく見られる光景である。このような行為や、熱があるという言い方にだれも
疑問を差しはさむことはなく、ごく自然に行われている。しかし、これらの行為や言葉の意味をはっきりさせることが、熱学にとっては出発点なのである。温度を測るためには温度計を用いる。
もっとも、われわれの経験をもとに、自分の体温を基準にして外気や水の温度を見当つけたり、高温の物体の色を見てその温度を判断したりすることができないわけではない。しかし、わずかな温度の違いを
区別することはできない。そこで、ガリレイ(Galilei,G.)のプリミティブな温度計を発端として、温度を数値的に表現する手段としての温度計がいろいろ考案され、作られてきた。そして、およそ100年かかって、
セルシウス(Celsius,A.)の温度目盛の発明に至って、液体温度計(水銀温度計,アルコール温度計など)は、一応の完成を見た。
温度を測るうえで最も基本的なことは、同じ温度、あるいは熱平衡の状態の存在である。外からの熱の出入りのない空間で温冷の度合の異なる2個の物体を
接触させておくと、温かい方の物体は次第に冷え、冷たい方の物体は温まって、やがて十分時間がたつと、それぞれの物体の温かさあるいは冷たさは、変わらなくなる。
このような状態になったとき、2つの物体は熱平衡の状態にある、あるいは熱的に釣り合っているという。またこのとき、2つの物体は同じ温度であるという。ただし、2つの
物体を接触させたときに、化学反応などは起きないものとする。
次に、3つの物体A,B,Cがあって、AとB,AとCがそれぞれ熱平衡の状態にあるときには、BとCもまた熱平衡の状態にある。
この経験的事実を熱力学における法則の1つとして取り上げ、熱力学第0法則という。この法則は当然のことをいっているようにも
見えるが、この法則をおくことによって、温度の意味が明らかになり、また、温度計を用いて温度を測ることが意味をもっている。
たとえば、目盛のついていない水銀温度計をある部屋に置き、熱平衡に達したときに水銀の先端に目盛をつけておく。その温度計を
他の部屋に移したときにもその位置で水銀の伸びが止まったとすると、この2つの部屋の空気の温度は同じであると考える。
温度計は、ある物体の状態の変化、たとえば、長さ、体積、電気抵抗、高温の物体が発する色などが温冷の度合の変化によって変わり、
同じ温度では同じ状態にあることを利用している。最もなじみ深いものは水銀温度計やアルコール温度計であるが、これらは、液体の体積が
温度にほぼ比例して膨張あるいは収縮することを利用している。そして、その変化を大きく表すように水銀やアルコールを内径の一様な細いガラス管に
封入してある。厳密には容器であるガラスの膨張や、水銀とアルコールの温度による体積膨張率の違いも問題にしなければならないが、いまそこまでは
立ち入らない。温度の基準として、ある特定の物質のある状態を温度の目安として定める。このように定めた温度を経験温度という。
温度目盛の定め方についてもいろいろ考えられるが、日常最も多く使われているものは、セルシウスが考案したセルシウス温度(略してセ氏温度)である。
セ氏温度は、1気圧における水の凝固点(氷点)を0℃,沸騰点を100℃としその間を100等分して、その1目盛を1度とする。0℃以下および100℃以上の温度に対しては
この目盛をそのまま拡張して用いる。一方、最も基本的な温度目盛は国際単位系(略称SI)の基本単位の1つである熱力学温度である。それは、「熱力学温度の単位ケルビンは、
水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。」と定められている。
ケルビン(記号K)は熱力学温度と熱力学温度間隔のいずれに対しても用いられる。実用上は再現可能な温度(定義定点)にそれぞれ数値を与え、
その間の温度値の決め方についてもそれぞれ指示した国際温度目盛を用いる。もちろん、この目盛を用いて測った温度の値は熱力学温度を示すように
定められている。セルシウス温度は、以前は前述のような温度目盛の定め方をしていたが、現在では、セルシウス温度tは熱力学温度TとT0との差t=T-T0に等しいと
定義されている。ただしT0=273.15Kである。なお、欧米諸国でいまなお用いられているカ氏温度目盛(記号°F)は、ファーレンハイト(Fahrenheit,G.D.)が提唱したもので、
氷点を32°F,1気圧[atm]における水の沸騰点を212°Fと定めている。
熱と熱量
体温が平常の値より高いときに、”熱がある”という表現をする。これは”体温が平常の値より高い”というべきであるが、誰もそうはいわない。
それでも誰にでもわかるということは、この言葉がある状態を指していて、その意味を取り違えることはないからである。
しかし、物理学における熱という言葉そのものの意味あるいは概念はこれとは異なり、ある物体の温度の高低に対して熱があるとかないとかいうことではない。
温度の高い物体はいわゆる”熱”をたくさんもっているようにも思われるが、その状態を保っているのであればそれだけのことである。また温度が低いとしても、何らかの
方法でそこからいわゆる”熱”を取り出すことができないわけではない。
古くは熱素の出入りに伴って温度の上昇・下降、状態変化などが起きると考えられていたが、物理学でいう熱はエネルギーの移動の1つの形態である。
温度が高いある物体Aと温度が低いある物体Bとを接触させたとき、Aの温度が下がり、Bの温度は上がり、やがては熱平衡に達する。このとき、2つの物体の間で
やりとりされたエネルギーを熱といい、そのエネルギーの量を熱量という。
熱量の単位としては、1cal(カロリー)がよく用いられる。これは、水1gの温度を14.5℃から15.5℃まで上昇させるのに必要な
量である(15℃カロリー)。温度を指定するのは、同じ1℃の上昇ではあっても、必要な熱量は厳密には温度によって少しずつ異なるためである。
calは実用上はたいへん便利であるが、厳密な議論には不向きなために、SIでは熱量の単位としてJ(ジュール)を用い、温度を指定しないカロリーに
対しては1cal=4.18605J
で換算することにしている。
熱の出入りに伴って、一般には物体の温度の上昇・下降が生ずる。質量mの物質に△Qの熱量が与えられて
温度が△T上昇したときC=△Q/△T を熱容量という。また、物質1gあたりの熱容量、すなわちC=C/m=1/m・△Q/△T
を比熱という。
熱力学では物質1モルあたりの熱容量もよく用いられ、これをモル比熱(分子比熱)という。熱容量、比熱、モル比熱の単位は、
それぞれcal/K,cal/g・K,cal/mol・K,またはJ/K,J/g・K,J/mol・Kである。
例題1.1 水当量hの熱量計に、比熱c1,質量m1,温度t1の液体が入れてある。この中に、t2に熱した比熱c2,質量m2の物体を入れて
よくかき混ぜたらt0になった。物体の比熱c2はいくらか。ただし、水の比熱をc0とし、熱量計と外部との間では熱量のやりとりはないものとする。
[解]物体の失った熱量はm2c2(t2-t0),液体と熱量計の受け取った熱量は(m1c1+hc0)(t0-t1)である。これらは等しいので、求める物体の比熱c2は
c2=(m1c1+hc0)(t0-t1)/m2(t2-t0)
となる。
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