ドクオとDDR の巻
ある日の昼休み。
音ゲーで意気投合して以来、昼食を一緒に食べるようになったブーン、ドクオ、ツン子、ジョルジュの4人。
教室のテレビには、「笑っていいとも」が映っている。
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■■-っ「特技はダンスダンスレボリューション?ちょっとやってみせてよ。」
(。;;;;;;;゚;;д;.;..;゚;;;・)「アイヤイヤー」
■■-;っ「ちょwwww放送デキナスwwwwwwww」
(。;;;;;;;゚;;д;.;..;゚;;;・)「ユーアーマーベラス!!」
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ξ;゚听)ξ「ちょっと…あれは酷いわね……」
(;゚∀゚)「うわー、これはキモい…wwwwww」
( ^ω^)「え?なんだお?何をやってるんだお??」
( ゚∀゚)「あれはダンスダンスレボリューションをやってるんだろう。まぁ、酷いもんだが…」
( ^ω^)「ダンスダンスレボリューション!!聞いた事あるお!!」
ξ゚听)ξ「いつも行ってるゲーセンにもあるのよ、知らなかった?」
(;^ω^)「え?それは初耳だお!是非やってみたいお!!!」
( ゚∀゚)「じゃあ帰りにやってみようぜ。オレもあんまやった事ないんだけど。」
('A`)「DDRか………」
( ^ω^)「お???ドクオどうしたお???」
('A`)「あ、いや、ちょっとね…。」
ξ゚听)ξ「なによドクオ、気になるじゃないの。話しなさいよ。」
('A`)「いや、いいよいいよ、しょうもない話だし…。」
( ゚∀゚)「なんだ、やけに暗いじゃんか。」
( ^ω^)「そんな事言わないで話すだけ話してみるお!きっとスッキリするお!」
('A`)「いや、吐いてスッキリするようなもんでもないんだが…。」
ξ゚听)ξ「煮え切らないわね!話しなさいって!」
('A`)「わ、わかったよ…聞いた後に笑わないでくれよ…。」
あれは、DDRが稼動してまだ間もない頃だった…
オレが小学校5年の頃だったかな。
オレさ、昔いじめられてて、登校拒否してたんだよね。
家に引きこもってゲームしたり、マンガ読んだり、暇を持て余してた。
流石に家にいるだけじゃつまらなくなって、ゲーセンに行くようになったんだ。
昼くらいならいじめっ子もいないし、お金もおこづかい貯めてたからある程度あってさ。
[小5のドクオ]
('A`)「あれ?新しいゲームが出てる。ダンスダンスレボリューション?」
How To Play!!
('A`)「なるほど、曲に合わせて矢印を踏んで踊るのか。」
('A`)「ちょっと恥ずかしいけど…誰もいないし、やってみようかな。」
つミ○○ チャリンチャリン
('A`)「と、取りあえず簡単なのを選ぼう…」
NORMAL 『BUTTERFLY』
Ay, Ay, Ay, I'm your little butterfly〜♪
('A`)「っと、こ、これは…難しい…」
('A`)「し、しかし……面白い………!!」
それからはダンスダンスレボリューションにすっかりハマって、毎日汗かいてやりまくったよ。
幸い時間はあるし、上達するのに時間はかからなかった。
でもな、元々体力もなかったし、どうしても途中でバテたりしちゃうんだ。
それが悔しくて余計にやるんだけど、やっぱり無理なもんは無理で…。
そんなある日のことだった。
('A`)「チクショー、リトルビッチの連打が踏めない…」
('A`)「よっしゃ、もう1回だ!!」
グイグイ
('A`)「ん?なんだ?何か引っ張られたような…気のせいか。」
グイグイグイグイ
('A`)「なんだ?………後ろは誰もいないし……って、ん???」
(*゚ー゚)「おにいちゃん、アタシもやりたいでしゅ!」
('A`)「おおおお?ちっこい子がいたのか、ゴメンゴメン…。」
(*゚ー゚)「さっきからじゅんばんをまっていたでしゅ。ひっぱったのにきづいてくれないでしゅ。」
(;'A`)「ごめんね、気付かなかったんだ; 順番待ってたんだね、どうぞどうぞ。」
その子はピョンと飛び乗り、ちっこい背でボタンを操作してゲームを始めたんだ。
これがその子との出会い。
その子は一生懸命に体を大きく振ってパネルを踏んでた。
子供の割には上手いなぁ、なんて関心してた。
でも、体が小さすぎて大きく回るステップでいつもミスるんだ。
(*゚ー゚)「ふぅふぅ、おわったでしゅ…。」
('A`)「上手いねー、前からやってるの?」
(*゚ー゚)「まえにすんでたとこでやってたのでしゅ。さいきんひっこしてきたばかりなんでしゅ。」
('A`)「ああ、そうなんだ。普段は見かけないからどこから来たのかと思ってたよ。」
(*゚ー゚)「でもまたすぐひっこすんでしゅ、いつもそうなんでしゅ。」
(;'A`)「え?そうなの?両親のお仕事の都合か何かかな。」
(*゚ー゚)「うち、おかあしゃんいないでしゅ。おとうしゃんおしごとたいへんで、いつもおひっこしばかりでしゅ。」
(;'A`)「え、あ、あ、ごめん…。(お母さんいないのか…)」
(*゚ー゚)「すぐにひっこすからようちぇんのてつづきをしてない、っておとうしゃんがいってたでしゅ。」
(*゚ー゚)「おりゅすばんちゅまんないから、あそびにきたんでしゅ。」
('A`)「そうかー、じゃあ、お兄ちゃんと一緒に遊ぼうか!!」
(*゚ー゚)「はいでしゅ!もっとこれであそぶでしゅ!!」
その子は「しぃ」って名前だそうだ。
しぃちゃんはとても活発な女の子で、いつも走り回ってた。
しぃちゃんは普段暇だし、オレも時間余ってたし、お互いに丁度いい遊び相手になったんだよ。
いつも遊ぶのは、決まってダンスダンスレボリューションだった。
しぃちゃんがいつもお金持ってたのは、たぶんお父さんが持たせてくれてるんだろう。
そのうちお互いにアドバイスをするようにもなった。
('A`)「しぃちゃんはやっぱり大きな回転とか苦手だねぇ。」
(*゚ー゚)「おにぃちゃんはたてにいっぱいふむところでだめになるでしゅよ。」
('A`)「そうなんだよなぁ、連打が苦手なんだよなぁ。」
(*゚ー゚)「だからりとるびっちがうまくできないのでしゅよ。」
('A`)「体力つけるしかないかなぁ。」
(*゚ー゚)「がんばってれんしゅうするでしゅ!!」
('A`)「そうだね!!もっと頑張ろう!!」
でも、そんな日も長くは続かなかった。
ついにしぃちゃんがまた引っ越す事になった。
それを聞いた時はショックだったよ。
かわいい妹ができたみたいだったのに、ちょっとの期間でもう会えなくなるなんて。
しかも急な話で、もう2日後には出ちゃうんだとか。
(*゚-゚)「もうあそべなくなるんでしゅね……」
(;'A`)「そ、そんなことないさ!またいつか会えるよ!こうやって遊べるよ!」
(*゚-゚)「もうイヤでしゅ、いつもともだちとおわかればかり、キライでしゅ…;」
(*TOT)「うわぁぁぁぁぁぁあぁん!!!!!」
(;;'A`)「おおお、おいおい泣かないでくれよ…。」
(*T-T)「グスン、きょうは、グスン。帰るでしゅ…」
(;'A`)「しぃちゃん………」
無力なオレは、泣きながら走って帰るしぃちゃんをただ呆然と見つめていた…
翌日、毎日のように通っていたゲーセンには行かなかった。
いや、正確には行けなかった。
行った所でゲームなどする気はでない。しぃちゃんにも顔向けできない。
今日もそこにしぃちゃんがいるかどうかすら分からない。
しかし、思い出すのはしぃちゃんの事ばかり…
かと言って今更、オレに何ができる。
引っ越しを止められるワケもない。
結局何もできないまま1日が過ぎてしまった………。
今日はしぃちゃんが引っ越してしまう日。
何時から引っ越すのだろうか。どこに引っ越すのだろうか。全く分からない。
ただ、分かっているのは、しぃちゃんが引っ越しを望んでいない事。
ただ、分かっているのは、オレがしぃちゃんに何もしてあげられないという事。
………本当にそうか?
このままでいいのか?
このまま何もしなかったら、後悔しか残らないんじゃないか?
ただただ現実から逃げてきた、今までのままで終わってしまうんじゃないか?
そう思った瞬間、体は勝手にゲーセンに向かって走り出していた。
着いたゲーセンにはしぃちゃんがいた。
(*゚ー゚)「やっぱりきてくれたんでしゅね。」
('A`)「しぃちゃん………。」
(*゚ー゚)「おわかれをいいにきましたでしゅ。」
(*゚ー゚)「いままであそんでくれてありがとうでしゅ。」
('A`)「………。」
(*゚ー゚)「もうおとうさんが、くるまのなかでまってるでしゅ。」
(*゚ー゚)「さようならでしゅ………。」
ゲーセン入り口のすぐそばには車が止めてあった。
ここから見える車内では、お父さんらしき人が手でしぃちゃんを呼んでいた。
もう時間がない。
('A`)「しぃちゃん!!ちょっとだけ待って!!」
(*゚ー゚)「なんでしゅか?」
そう言ってオレは、ダンスダンスレボリューションをプレイしている人に200¥を手渡した。
('A`)「すいません!!この200¥で、このゲームだけ譲って下さい!!」
( ´д`)「え???あ、ああ、いいけど。」
ちょうど3曲目を選択している途中。譜面はマニアック。これしかない。
('A`)「しぃちゃん!!最後に、オレが、どうしてもクリアできなかった『PARANOiA』をクリアするから!!」
('A`)「絶対クリアするから!!見ててくれ!!」
(*゚ー゚)「おにぃちゃん………。」
PARANOiA………
どんなに頑張っても、どんなに頑張っても、全く越せなかったPARANOiA。
元々体力はそんなにないし、最後の連打はオレには厳しすぎる。
でも、今はやるしかない………!!
今になって考えてみれば、こんな事で何ができたのか疑問にも思う。
けどその時は、何かを伝えたい一心で必死になってた。
('A`)「しぃちゃん!!引っ越しは辛いかもしれない!!」
('A`)「でも…別れがあるから出会いもあるんだ!辛い事ばかりじゃない!」
('A`)「勇気を出して、1歩踏み出してくれ!!」
('A`)「オレがこれをクリアできたら・・・きっと次の場所でも楽しい事が待ってる!」
('A`)「オレと一緒に頑張ってくれ!!」
曲が始まった。
最初は簡単な足譜。ここでゲージを貯めて、中盤からラストに備える。
中盤。変則的な譜面が入ってきた。
2連縦踏みならまだ大丈夫。慎重に、落ち着いて。
ラスト手前。同時踏みと3連譜、同時踏みと5連譜の連続。。。
体力を削られ、ミスを混ぜながらも越していった。
問題はここからだ・・・。
左右に広がる縦連打の滝。
今までのオレなら足がまともに動かなかった。
でも、
今は、
しぃちゃんがいる!!
(*゚ー゚)「おにぃちゃん!がんばって!!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!
カーン!!!
('A`)「こ、越せた・・・」
('A`)「やったよ!しぃちゃん!しぃちゃん!!・・・・・・しぃちゃん!!??」
ついさっきまで後ろに聞こえた声援の主は、もうそこにはいなかった。
慌てて外に出た。
車もなかった。
(;'A`)「おかしい・・・さっきまでいたはずなのに・・・」
( ´д`)「あ、あの・・・・」
(;'A`)「あ、はい?」
( ´д`)「さっきから1人で何を言ってたんですか?しぃちゃんとか、なんとか・・・」
(;'A`)「ええ?いたでしょ?踊ってた後ろに、小さな女の子が・・・」
( ´д`)「いや、最初から1人でしたよ・・・」
(;'A`)「そんな………バカな………」
ゲーセンの店員に聞いても、そんな子をみかけた記憶はないという。
オレはいつも1人で踊ってたらしい。
どんなに聞いて回っても、しぃちゃんの記憶があるのはオレ1人のようだった。
オレは気付いた。
きっと、天使か誰かが目の前に現れて、
生きる事を投げかけていたオレに、ゲームを通じて、『逃げ出さない』事を教えにきていたんだと。
しぃちゃんへの思いが、自分自身に対するエールに代わっていたんだ。
翌日から、勇気を振り絞って学校に行く事にしたんだ。
流石に最初は怖かったけど、段々と、ゆっくりと和らいでいった。
しぃちゃんにあれだけ言ってて自分が行動できなかったら申し訳ないからね。
小学校では色んな友達ができた。
そして中学でブーンと出会い、ツン子と出会い、
高校に入ってジョルジュと出会い、
音ゲーともまだまだ付き合っている。
きっと、これからも続いていくんだと思う。
今でもダンスダンスレボリューションで遊ぶ時は、しぃちゃんの事を思い出しちゃうんだ。
ありがとう、ありがとう、って想いながら。
('A`)「まぁ、そういう思い出があるんだよ。」
( ^ω^)「・・・・・・・・・・。」
ξ゚听)ξ「・・・・・・・・・・。」
( ゚∀゚)「・・・・・・・・・・。」
(;'A`)「な、なんだよ。妄想ロリコン乙とか言うんだろ、信じられるわけないもんなぁ・・・」
( ^ω^)「ドクオ。」
(;'A`)「ん?なんだよ・・・。」
( ^ω^)「学校終わったら早速ダンスダンスレボリューションやりに行くお。きっとしぃちゃんが待ってるお。」
('A`)「・・・・・・・・・・。」
ξ゚听)ξ「な、なによ・・・ああ、ちょ、ちょっと、トイレ行って来るわ!」
ξ゚听)ξ「べ、別に、グスン、泣いて、なんか、グスン、ないんだからね!!」
('A`)「・・・・・・・・・・。」
( ゚∀゚)「きっと、しぃちゃん、今のお前見て微笑んでると思うぜ。」
('A`)「・・・・・・・・・・。」
('A`)「みんな・・・・・・・・・・・。」
('A`)「ありがとう・・・・・・・・・・・・・・・。」
( ゚∀゚)「ああ!もう昼休み終わっちまうよ!!」
( ^ω^)「あ!本当だお!ジョルジュ!放課後すぐにゲーセンだお!」
( ゚∀゚)「おうよ!ドクオもだぞ!絶対行くぞ!!」
('A`)「・・・・・・・・・・・・・もちろん!!」
(*゚ー゚)「おにいちゃん、よかったでしゅね!!!」
ドクオとDDR の巻 完