テレビが報道する速報や、インターネット上で絶え間なく配信されるニュースなど、
速いスピードで次々に情報が流れ込むと、人間の脳は適切な反応を示すことができず、
特に若者らの道徳観念への悪影響が懸念される――との研究結果を、米南カリフォルニア大の社会学者らがこのほどまとめた。
チームでは研究に協力するボランティアを募り、脳スキャンを使ってニュースへの反応を観察した。
実際のニュースの中から、取り上げられた人物の人格や腕前に感心させるような話題と
、身体的または社会的苦痛への同情を誘うような話題を選んだという。
その結果、脳は他人の身体的苦痛には素早い反応を示す一方、相手への称賛を
示すまでには時間がかかることが分かったという。データなどの詳細は近く
、米科学アカデミー紀要PNAS)電子版で発表される。
研究チームでは「情報のスピードが速すぎると、脳はそれを消化しきれず、
他人の気持ちなどに対する感想が希薄になってしまうようだ。若者らの道徳的判断力は、ニ
ュースなどを含めた社会経験の積み重ねで形成される。テレビやネットの速報に頼り過ぎていると
、きちんとした道徳観念が育たず、何を見ても無関心な状態に陥る恐れがある」と主張する。
チーム責任者のアントニオ・ダマジオ氏は「特に時間がかかるのは相手を認め、称賛する反応だが、
これは人間性の決め手となる深い感情。われわれが善悪を判断するうえで、実は重要な要素となるのが称賛の感情だ」
と指摘。若者らの判断力低下を防ぐために、ニュース報道のスピードを抑える必要があると結論付けている。
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200904180001.html