121 :
名無しさん@いい湯だな:
友人たちは、息つく暇も無い日常へ帰っていった。
ゆうべ私の隣で、彼女の憂いを帯びた横顔が呟いた。
「このまま、何処かに行ってしまいたい…」
天井の染みを見上げながら、行こうか、何処かへ…と私は云った。驚いた顔をして彼女が私を見た。
根利のバイパスから桐生市を抜け、東北道から都内に入り湾岸沿いのホテルに行こうとしたが、ふと思い直した。
私は都内の喧騒に触れるのを躊躇した。泡沫の夢が覚めてしまうようで…
彼女を乗せて国道17号を走る…。
伊香保温泉の看板が見えた。夢二の描いた儚げな女性が彼女とだぶる。
私は伊香保に向けてハンドルを切った…。