【故郷を】静香様に冷たく罵られたい122【離れて】

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598クーベルタン男爵さん
夏が来るたび思い出す。

 子供の頃夏休みになると、僕は毎年仙台のおばさんの家へ遊びにいった。
おばさんの家のお隣には胸はないけれど、目元の涼やかな綺麗なお姉さんが住んでいて、
ぼくは毎年そのお姉さんに会えるのを楽しみにしていた。
 ある日虫取りにいったとき、転んでヒザを大きく擦りむいてしまった。
おばさんの家に戻ったけど、誰もいなかった。仕方なく玄関の前に座ってボーっとしてると、
「どうしたの?ヒザから血が出てるじゃない。」
お隣のお姉さんだった。
「ちょっと転んじゃって、へへへ」僕はちょっとテレながら答えた。
「だれもいないの?ちょっとまっててね。手当てしてあげる。」
そう言うとお姉さんは家に入って、間もなく薬箱を手にしてもどってきて僕の前にしゃがんだ。
僕はドキドキした。お姉さんとこんなに近づいたのは初めてだったから。