【凍て付く】静香様に冷たく罵られたい11【微笑み】

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670クーベルタン男爵さん
今日は静香様の練習日。
ブレードカバーを外して氷の上に出るとき、静香様が言った。
「今日はね、マリリンが遊びに来ることになっているの」
おれはブレードカバーを受け取りながら答えた。
「マリリン……あのペアの金メダリストですか?」
「そうそう、あのソロジャンプは最高だったわ……ってそれはマリニンじゃないの、おバカさん」
静香様はおれの頬をつねった。
「カーリングのマリリンよ。トリノの選手村で友達になったの」

練習を見学していると、ぽよんぽよんした女子がアリーナに入ってきた。
「静香さーん! 来ましたよー!」
彼女が叫ぶと、静香様はそちらに滑り寄った。
「マリリン! 久しぶりねえ」
「静香さん、お元気そうで何よりです」
静香様はフェンス越しにマリリンを抱きしめると、そのふくよかな顔に頬ずりした。
「マリリンかわいいわマリリン」
おれは体を押しつけ合う2人を見つめながら、あの間に挟まれたらどんなに気持ちいいだろうと妄想していた。
「静香さん、おやつタイムにしましょう」
マリリンが言うと、静香様はにっこり微笑んだ。
「ええ、そうね。そうしましょう」
マリリンは小さなレジャーシートを敷いた。
「さあ、名梨さんもどうぞ」
「わーいわーい」
ちゃっかり2人に挟まれてしまおうとド真中に座ったおれを、静香様が蹴飛ばした。
「だめよ。このシートは2人用なの」
「そんな……」
おれは八畳島の別荘に誘われなかったのび太のように半泣きになった。