大学とスポーツ
狂騒の「高校生選手」争奪戦
ジャーナリスト 岡 邦行
”第二の石川遼”を出すな
今、大学入試担当者の間で密かに囁かれている言葉だという。
「実は、プロゴルファーの石川遼(当時杉並学院高3年)は
スポーツ推薦枠で今期春に明大に入学することが決まっていた。
ところが昨年夏過ぎに石川の父親が突然、
『明治より早稲田の方が遼には相応しい』と言い出した。
しかし早稲田のスポーツ推薦は締め切られていたため、再び
父親が明大に入学させたいと言ってきた。ま、明大としても
8月末にスポーツ推薦は締め切っていたんだが、世界で活躍
する石川遼のネームバリューを考えれば、最大の”広告塔”に
なるしね。
そこで特別枠で入学させるため、試験官がゴルフ場に出向いて
面接し、合格通知を発送した…」
と、明治大学関係者が事の経緯を説明する。が、新年を迎えても
石川側が入学手続きをすることはなく、マスコミを通じて
一方的に”大学進学拒否宣言”をしてしまった。早い話が
明大は18歳の石川遼に振り回され、ソデにされてしまったのだ。
石川自身が大学進学をどう考えていたかは定かではないが、
以来、”第二の石川遼”を出すな、というのが、各大学の入試担当者の
合言葉になっていることは確かだ。
今や、少子化により大学経営が危機に直面していることは周知の
とおり。そのため、多くの大学は次々と「スポーツ推薦入学制度」を
設け、優秀な高校生選手獲得に躍起になっている。入学後は学業より
もむしろ、グラウンドで活躍し、広告塔として大学の存在をアピールして
もらえば、多くの受験生を確保することができる。そんな構図があるからだ。
ZAITEN 2010年9月号
http://www.zaiten.co.jp/zaiten/201009.shtml