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実名攻撃大好きKITTY:
「王様は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りま
せぬ。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)
を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后
さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。
このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者
には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字
架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」
聞いて、メロスは激怒した。「呆(あき)れた王だ。生かして置けぬ。」
メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城
にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。
調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなって
しまった。メロスは、王の前に引き出された。
「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに
、けれども威厳を以(もっ)て問いつめた。その王の顔は蒼白(そうはく)
で、眉間(みけん)の皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。
「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。
「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。「仕方の無いやつじゃ。