1 :
名無しオンライン:
2 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:22:14 ID:rnfcbijO
刻一刻と迫る終わりの鐘、真紅は愛用の時計の進みを少々酷に感じていた。
ドールにとって、持ち主に抱かれる時間は何物にも代え難い至福の時。
それをこの手で幕引きしなければならないという悲劇。
「……仕方ない、と目を瞑る事は逃げる事に他ならないわ」
しかし、と時計の蓋を閉じる。
何よりも大切なのは物事の切り替え。
例え姉妹の至福を荒らす事になろうとも、予め決められた事は守らなければならない。
それが自分のミーディアムならば尚更の事。
「翠星石、JUMを呼んできて」
まるで処刑の許可が降りたのかと疑わんばかりの目つきで翠星石は階段を駆け上がっていく。
少々揉める事になる事は覚悟の上。
それでも、守らなければならないものがある。
「御茶の時間くらい、そろそろ覚えてほしいものね」
蒼星石はくすりと笑った。
見抜かれているであろう事を思うと、面白くはなかった。
3 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:23:08 ID:rnfcbijO
翠星石の目。その輝きはまさしく狩人の目そのものだった。
正確には狩人と言うより猟犬や狼と言った方が的は得ているかもしれない。
「ひーっひっひっひ、薔薇結晶だか薔薇宰相だか知らねぇですけど、この翠星石に目をつけられてJUMに抱かれようなんざちゃんちゃらおかしいですぅ」
もし許されるのならば、意地悪姑や嫉妬深い部活の先輩と言う表現も悪くはない。
それ程までに翠星石はこの瞬間に喜びを感じていたのだから。
「ほぉれ! でてくるですぅ!」
階段を駆け上がり、全身に快感を漲らせながら前足で蹴散らした扉の向こう側。
翠星石の表情は賭博の現場に踏み込んだ熱血刑事のまま固まった。
「……こ、れは」
そこには薄紫に彩られた結晶の柱が幾重にも連なり、壁を形取っていたからだ。
一瞬呆気にとられる翠星石だが、必至に壁を叩いてJUMの名を呼ぶ。
無情にも返事は無かったが、それは中と音が繋がっていないかJUMが返事の出来る状態にないと言う事だ。
「こ、こうしちゃおれんですぅ! JUMの貞操どころか命の危機ですぅ!」
蒼星石の庭師の鋏なら。
そう思いつくや否や翠星石は回れ右をし、飛ぶ鳥を落とす勢いで階段を降りていく。
4 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:25:17 ID:rnfcbijO
おk、板を誤爆した
削除依頼いってくる
5 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:35:10 ID:rNltTNAq
なんと言う良スレ
6 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:35:24 ID:IbGGrBHu
このまま続けてもらっても一向に構わんが
7 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:36:19 ID:YoSKu3WG
(´'ω'`) n
⌒`γ´⌒`ヽ( E) GJ!
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(
8 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:42:45 ID:rNltTNAq
(*゚∀゚* )
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{:.:.. .:.. . .:.:::ト、:.:.. . . . .:.:;!、::.. . . . ... .:.::..:::::::_;;.ゝ、..:| ..:ノ :. ヾ、
/`''' 、,,,___:ノ \::. :.....:.:ノ::..`'ー::.....;;;_;;:.-‐''....:...:::,>'=、 .::i :.::}
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!ー: . /:::___;>┐ \:.. :! ,.-―:‐、:: ,,.:‐''´ . . :__;ノ.イ.:.:|
';.:../:::::/´、  ̄)ヽ. _,r―‐亠- 、!::::::::::::::|「: . . - '''´. : :丿.:/
ヽ!::::::{ :..  ̄ ̄厂:く__,.-‐'' ..|::::::::::::::|!:. . . .. ... - =_ヲ''ーヘ
なんと言う良スレ
9 :
名無しオンライン:2009/03/28(土) 23:55:57 ID:rNltTNAq
「蒼星石! 蒼星石ぃ!」
破竹の勢いで扉を開き、一目散に駆け寄る翠星石。
蒼星石が口を開くよりも早く、翠星石の両手が蒼星石の胸倉をむんずと掴む。
「蒼星石! そぉぉせぇぇせきぃぃぃ!」
己の混乱を発散させる為に蒼星石を揺さぶる。
不安や葛藤も手伝って、蒼星石の揺れは笑える域にまで達した。
「すすい、すいせき、翠星石! おちて、落ち着いて!」
「雛苺、紅茶が足りないわ」
「はいなのー」
雛苺がティーカップに紅茶を注ぐと、緩やかな螺旋がそこに描かれた。
雛苺がポットを持って一歩退くと真紅は目を細め、ティーカップに手を伸ばす。
口に運び、まずは一口含む。
温度はまずまず。
「……茶葉が開き切っていないわね」
「うゆー、ひなまだそこまで出来ないのー」
ちんぽ('ω'`)
11 :
名無しオンライン:2009/03/29(日) 00:13:49 ID:ltF6uY6Y
VIPでやれ
今からでも遅くない
スレタイにPSU付けて
続きかけ
寧ろここはMoEだろう
14 :
名無しオンライン:2009/03/29(日) 01:05:49 ID:dlcoOx+e
PSUに決まってんだろ春日('ω'`)
15 :
名無しオンライン:2009/03/29(日) 01:07:29 ID:uedAwr2d
PSU板に寄生してる他のカスゲーどもうざいな('ω'`)
さっさと氏ねばいいのに
16 :
名無しオンライン:2009/03/29(日) 01:17:33 ID:dlcoOx+e
だな('ω'`)
板名をPSU板に変えるべきだな ('ω'`)
(*‘ω‘)('ω'`)
19 :
名無しオンライン:2009/03/29(日) 11:16:42 ID:qxAkbQD1
はやく続きかけ
20 :
名無しオンライン:2009/03/29(日) 12:58:44 ID:qZJf/FDw
「真紅、ごめん。せっかくの紅茶だけど、JUM君の部屋に行ってくるよ」
紅茶に気を取られていた真紅が横を向くと、既に蒼星石は翠星石と並んで立っていた。
「何故?」
「JUM君の部屋に結晶の壁が出来てるみたいなんだ。少し行ってくる」
「結晶の壁……」
それは、力の発現。
冗談ではないと言う事の主張。
確かに、のんびりと紅茶を楽しむ空気ではない。
「……良いわ、私も行きましょう。雛苺は、そうね。六人分の紅茶を淹れておきなさい」
元気一杯のはいなのーを背に、三体のドールはJUMの部屋へ向け足を運ぶ。真紅を先頭に、その後ろに蒼星石、その横に翠星石。
階段を上がると、それはすぐに姿を現した。
「あれですぅ」
翠星石の指差す先。それは拒絶の意志か、外への挑戦か。
少なくとも部屋の外と中を確固たる意志の元に隔てている、その結晶壁。
薄紫色の美しいそれだが、重なり合っている為か向こう側は視認出来ない。
ちょっと待て
誤爆した張本人だけど何で削除されてねーの?
削除依頼したのにどういうこった
良スレ発見
23 :
名無しオンライン:2009/03/30(月) 20:01:35 ID:7VEoLQB9
わっふるわっふる
このスレ消すなら全部消さなきゃになるんだぜ
25 :
名無しオンライン:2009/03/30(月) 20:18:44 ID:yZtSveyR
期待age
続きマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
27 :
名無しオンライン:2009/03/31(火) 00:09:08 ID:ZT7hMM/H
誤爆でもスレ立てたんなら最後まで投下しろよ
中途半端が一番カス
28 :
名無しオンライン:2009/03/31(火) 00:33:00 ID:nIc9/0Ld
/⌒ヽ⌒ヽ
Y
八 ヽ __________
( __//. ヽ,, ,) /
丶1 八. !/ < これを最後に暫く姿を消すとしよう。
ζ, 八. j \
i 丿 、 j  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 八 |
| ! i 、 |
| i し " i '|
|ノ ( i i|
( '~ヽ ! ‖
│ i ‖
| ! ||
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| | | |
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| ! | |
_ | | ‖
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, ノ \ / |
| ヽ / |
/ Y \ / Y \
/ | | \、
ノ / \ ヽ
,! | \ !、
│ / | `!、
/"γ\ _/ ξ⌒―‐' ̄\、 ,/ ̄\ \
μuuULヽ__――――── ̄ ̄ ̄`――´\、ノ "\
/ \ ,__Ξβ \
! __,―'~― ̄ |
| / /
\ ,__、,/ /
` __., ―――'' ̄ ̄ ̄ ̄ " ̄ ̄ ̄ ̄ ̄____/
「こんな壁、人様の家に立てるもんじゃねえですぅ」
「確かに。ちょっと礼節の弁えが欠けているみたいだね」
静かに言い放った蒼星石は何処からともなく“庭師の鋏”を振り抜いた。
美麗な光沢を誇るそれは蒼星石の一振りの元、目の前の空間を上下に分かつ。
一瞬遅れて『ィィン』と不快が響いた。
「相変わらず見事だわ」
僅かに傾斜をつけて断たれた結晶は自身の重みによって少しずつ左にスライドし、やがて家全体を揺らして崩れ落ちた。
「ねえ、真紅の使っている棚ってどっちに置いてあったかな」
「向かって左よ」
「……ごめん。もしかしたら、もしかするかもしれない」
弱弱しく笑う蒼星石。
真紅は小さく溜息をつくと、翠星石に目を配る。
翠星石は突撃の許可が下りたとばかりに下半分となった結晶壁によじ登り、向こう側へ飛んだ。
30 :
名無しオンライン:2009/03/31(火) 00:56:39 ID:A0xRqBy/
世界が唐紅に染まる頃、水銀燈はとある病院の屋上に佇んでいた。並んでいるベンチに腰を掛け、空を見上げる。
空は雲一つ無い、夕暮れの模範とも言える空。
「……」
完璧な。この上ない。こうあるべき。
一面の紅、最上の夕焼けがそこにはあった。
一度見てしまえばもう他の夕暮れが物足りなくなる程の美景。
「……はっ」
しかし水銀燈は自嘲気味に笑う。
完璧な完全に美しさなどありはしないと信じているからだ。
欠けているところがあるからこそ、秀でた部分が際立つ。
一面の白よりも、黒に囲まれた白の方がより白いのだ。
「……」
水銀燈は風に乱された髪を手櫛でとき、ヘッドドレスの片端を結び直す。
風はやや冷たく、夜の到来を感じさせた。
「いい加減に出てきたらぁ」
それが合図だったかの様に一匹の黒猫がベンチの手摺りの下を潜り抜け、その姿を現した。
水銀燈の直ぐ横に身体を寝かせ、太ももに顎を乗せる。
それに対し、水銀燈は露骨に顔を顰める。
どかす為に手を掛けようとしたその時、
「ちょっとぉ、あんたの汚ない――」
そこに左目が無い事に気がついた。
目を瞑っている訳でもなく、本来左目があるべき場所に薄い肌色の皮膚が覗いている。
他に大きな外傷がある訳でもなく、大きな傷を受けてそれが治ったという訳でも無さそうだ。
つまり。
つまり、そういう事だった。
「……」
黒猫は顎をしっかり乗せると、満足したかのように尻尾を振り始める。
まるで数年来の友に会ったかのような仕草。
その目が。
あるはずのない目が水銀燈を捕える。
まるで見えているかのように。そこに目があるかのように。
そして、ぺろりと舌を見せた。
「私は――」
左手を猫の顔面に掛け、全力で振り払う。猫は空中で二回転した後着地した。
まるで両目があるかのような華麗な着地。
「ジャンクなんかじゃない! 一緒するんじゃないわよぉ!」
激昂する水銀燈。
しかし黒猫の方は酷く落ち着いている。
毛を逆立てる訳でもなく、尻尾を緩やかに揺らしながら水銀燈を見上げている。
その“両目”で。
「……」
それはほんの数秒の間だった。
水銀燈と黒猫の目が合い、互いに互いの目を見たまま屋上を通り過ぎる風を身に受ける。
完成しないジグソーパズル同士の、偶然の邂逅。
初めて見る、同じ目をした存在。
欠落を背負いながら生まれ、それでも投げ出さず諦めずただ己の信念本能の為に抗い続ける事を止めなかった、同志。
他に誰も何も入る余地のない、それを知る者のみが足を踏み入れ得る世界。
「……」
先に動いたのは黒猫の方だった。
まるで敬意を払うかのように軽く頭を垂れると、回れ右し、尻尾を高々と掲げながら出入り口のドアへと消えていく。
水銀燈はそれを見届けると軽く俯き、少しの間辺りの静寂を噛み締める。
次の瞬間周囲に響き渡る程の大声で笑った。
その笑いのほとんどを自嘲が占めていたが、笑わなければ壊れてしまう。そんな気がして水銀燈は高々と笑い続ける。
笑い終えたときに精神的に酷く落ち込むであろう事は分かっていたが、今は笑う以外考えられなかった。
日は着々と沈み、夜が目を覚ます。
一体のドールの乾いた笑いはしばらくの間止む事は無かった。
「騒々しいな」
部屋に突入した翠星石が見たものは、いつも見ている背中だった。
机に向かい格闘しているJUM。
伸長の都合上見えないものの、不機嫌そうな唸り声からして机の上にはノートと教科書が並んでいるに違いなかった。
「騒々しくもなるですぅ! あの眼帯あんちくしょうは何処行きやがったですか!」
「……」
答えないJUMに追撃を放ちながらベッドの下や棚の隅々、天井に至るまで入念に探すも見当たらない。
「おかしいですね……。わぁかったですぅ! 翠星石の気迫に負けて退散し――」
違和感。
机に向かうJUMの背中に、翠星石は妙な違和感を覚えた。
机に伏しているJUMが、妙に大きく見える。
違う、机が小さいのだ。いや、そうでもない。
「JUM」
「……何だよ」
伸長差から見えないとでも思ったのだろうか。
JUMの胸に抱かれる形で薔薇水晶は隠れていた。
「そこを退くですぅ!」
背中に飛び掛かり、胸の中に縮こまる薔薇水晶に手を伸ばす。
しかしその手は素早く弾かれ、翠星石は墜落した。
「……邪魔、しないで」
JUMの肩からのそりと顔を出す薔薇水晶。
氷のような無表情のまま、翠星石を見降ろす。
「黙るです薔薇水晶! いったい何を企んでやがるですか!」
薔薇水晶を指差し吠える翠星石の後ろから、真紅と蒼星石が結晶壁を攀じ登って現れた。
「棚は無事のようね。クンクン人形にも傷一つないようで安心したわ」
「良かった。僕も一安心だよ」
薔薇水晶に背を向け、崩れ落ちた結晶壁の行方に安堵する二人を尻目に翠星石は続ける。
「いいから離れやがれですぅ! JUMもそんな奴振り落とすですぅ!」
JUMは顔を顰め、「無茶言うなよ」とだけ返す。
翠星石が憤怒の形相と化し、今にも飛び掛かろうとしていたその時。
真紅が手に持つステッキで翠星石を制し、薔薇水晶と対面した。
「薔薇水晶。別にあなたが何処で何をしようと勝手だけど、JUMは私のミーディアムなの」
無言で真紅の目を見る薔薇水晶。
その様子を見守る蒼星石と翠星石。
強制的に戦場とされてしまったミーディアム。
「もうこれ以上余計な説明はいらないでしょう。この家に住みたいのならのりと交渉して頂戴。ただし、JUMと過度に接触する事は許さないわ」
「……どう、して」
ここにきて薔薇水晶が口を開く。
「JUMは私のミーディアムだとさっきから言ってるでしょう。危険に曝す訳にはいかないわ」
「……そう」
蒼星石は翠星石を抱えて横に跳び、真紅は出入口に向かって転がりそれを回避した。
JUMは衝撃と騒音に驚愕し、椅子を回して振り向いたときには既に部屋が原型を留めていなかった。
縦横無尽に薄紫の結晶が生え、部屋の空間を滅茶苦茶に断ち切っている。
まるで質の悪いアスレチックの様に。
「おい! 何やってんだよお前!」
猛然と講義するJUMに対し、一仕事終えた達成感から涼しげな表情で答える薔薇水晶。
「邪魔者、いなくなった」
「ふざけんな! おい! 真紅! 皆!」
呼んだかい、と鋭い断ち筋が煌めき、部屋を占拠していた結晶の柱が数本倒れる。
その向こう側から翠星石を抱えた蒼星石が顔を見せる。
「僕達は大丈夫だよ。それより真紅の方――
言葉はそこで途切れる。
庭師の鋏が円を描くように振るわれ、正面から襲い来る結晶の槍を弾いた。
蒼星石はまるで演舞の様に身体を捌き、至る所から飛び交う結晶矢を叩き落として翠星石を守る。
数多の同時攻撃を捌く為の円運動の所為でシルクハットが床に落ちた。
「おい! やめろ!」
時の進みが止まったかの如く、結晶による攻撃はぴたりと止んだ。
JUMに抱かれていた薔薇水晶はゆっくりとJUMと顔を合わせ、呟くように言う。
「……JUMが言うなら、止める」
――
「今度は上手く出来たようね。偉いわ雛苺」
わーい、と両手を挙げて飛び回る雛苺。
埃がたつからやめなさいと怒られ、空気が抜けたように萎んだ。
「それで、結局あなたはこれからどうするの」
台所のテーブルにつく面々。
JUM、その隣に薔薇水晶。そしてそれらの正面に位置している真紅の隣には蒼星石と翠星石。
翠星石は親の敵を見るような目付きで薔薇水晶を睨んでいる。
「……JUMの、傍に居る」
「黙るですこのいかれぽんたん!!」
薔薇水晶が答えるや否や、翠星石の罵声が飛んだ。
「お前がこの家にいる限り枕を高くして眠れんですぅ! とっとと出ていくですぅ!」
畳み掛ける様に、その怒濤の攻めはJUMにも及ぶ。
「JUMもJUMですぅ! そいつはJUMの言う事なら聞くです、JUMが一言出てけと言えば万事解決ですぅ!」
吐き捨てるように言われ、JUMは隣に座る薔薇水晶を見る。
同時に、薔薇水晶もJUMの方を向いた。
「だとさ」
「……」
薔薇水晶は無表情のままJUMを見詰める。
助けを求める訳でも無く、許可の一言を乞う訳でも無く。
ただただJUMの目を見詰め続ける薔薇水晶の口が、僅かに開かれた。
「……JUMが言うなら、出ていく」
まるで“次の時間は自習です”と言われた生徒の様に、翠星石は渾身のガッツポーズをとる。
ついに親の敵である鬼の首をとったと言わんばかりに。
「JUM」
そこに、真紅が口を開く。
「此処にいる誰が決める訳でもない。貴方が決める事よ」
貴方に従う。
ドールズ全員の目線が一点に集中した。
JUMに九個の目が向けられる。
JUMは自分に視線が集中する事が好きではなかった。
否応なしに判断を迫られる状況も嫌いだった。
期待に添えないかもしれない事が何より怖いからだ。
「……」
逸らしそうになる目をぐっと堪える。
すると、見えてくるものがあった。
「……」
同じ人が作った人形であるにも関わらず、目が全く違うのだ。
個々に作りが分けられているという意味ではなく、その目が訴えている意志の違い。
淡々と指示を待つ蒼星石の目、今何が起きているのか分からずおろおろしている雛苺の目。
薔薇水晶に鋭い目線をちらちら向けながら、「追放」を懇願する翠星石の目。
真紅の目は、息子の成長の瞬間を見守る母親の目だった。
「……」
隣を見ると、そこには無表情としか思えない薔薇水晶の目がある。
何も感じられない、ただの目。
ふと視線を真紅に向けると、真紅は目を閉じた。
“あなたが幕を引きなさい”
再び薔薇水晶の目と向き合う。
深い落とし穴を連想させるその目。
あまりにも深く、底を見通せる気がしない。
「……」
薔薇水晶はただひたすらにJUMを見詰める。
JUMの頭の中に、ついさっきまで自分に向けて薔薇水晶が言った言葉が蘇る。
そのどれもが無表情のままに放たれた、そのままの意味の言葉だ。
肌に痛みを感じて横を向くと、翠星石が凄まじい目付きで睨んできている。
ここで「出ていかなくても良い」と言えばどうなるか分からない。
薔薇水晶がここに残るに値し得る理由、具体的なメリットが存在しない。
「残りたがっているから」では納得出来るものも納得出来ない、誰も賛同しない。
そもそも自分は薔薇水晶に残ってほしいのか。
薔薇水晶が出ていく事で、“毎日”が戻ってくるなら。
「……」
薔薇水晶に出ていけと言うだけで全てが丸く収まる。
皆が納得するだろう、誰も反対しないに違いない。
なら、何故今自分は言い淀んでいるのだろう。
そう考えながらJUMは薔薇水晶の目を見詰め続ける。
深く濃い色の奥に答えを求めて。
「出ていけ」
翠星石は一切声を発する事なく両手を天井へ向け突き上げ、天を仰ぐ。
蒼星石は静かに紅茶へ手を伸ばし、雛苺はまだおろおろと視線を泳がせている。
真紅だけが、目を閉じたまま微動だにしない。
「話はついたですぅ。ほぉれとっとと出てくですこの――」
「ただし」
翠星石の万歳がぴたりと止まる。
「穴だらけになった俺の部屋を、元通りに直してからだ! それが終わるまで逃げるなよ」
真紅がにやりと笑う。
翠星石は万歳の体勢のままばたりと前方に倒れた。
「このチビ人間! どういう事ですか!」
「どういうも何も、壊したものを直してから出て行くのは当たり前だろう。人形に弁償させる気か?」
「ぐぬぬぬぬぬぅ……」
ふと真紅の方を向くと、真紅は廊下の方に目を配った。
「変われば変わるものね」
廊下に出るなり、真紅はそう呟いた。
「僕もびっくりしてるんだよ。まさかあいつが」
「貴方の事を言っているのよ」
「僕?」
真紅は数歩先に歩むとくるりと向き直り、JUMを正面に捉える。
「出会った頃の貴方なら何かしらの理由を付けて逃げ出していたはずだわ。よく皆の目を見る事が出来たわね」
「別に……そんなんじゃないさ。実際に僕の部屋が一番被害出てる訳だしな」
「確かに、答え自体はそれ程評価出来るものでもないわね。悪く言えば逃げだわ」
JUMが頭を掻く。
自分でも分かったいた。部屋の修繕など、それ程年月が掛かる事でもない。
問題を先送りにしたに過ぎないのだ。
「仕方ないだろ……あれしか思いつかなかったんだから」
「という事は貴方は薔薇水晶に残ってほしいのね」
「……卵から生まれて、動くものに出会わないで育ってきた雛鳥みたいだった」
「なかなか面白い表現だわ」
「一度抱き上げてやっただけなのに」
真紅は目を瞑ると「十分過ぎるわ」と言った。
「暖かい手の中でしっかりと抱きしめてもらう。人形が惚れるには申し分ない理由よ」
視線を感じて後ろを振り向くと、半開きのドアから片目がひょっこりとこちらを覗いていた。
END
うはwwwwwwwwwwwwwww
投下完了wwwwwwwwwwwwwwwwwww
45 :
名無しオンライン:2009/03/31(火) 01:38:34 ID:ZT7hMM/H
うはとかいいから早く続き書け(´'ω'`)
画像まだか('ω'`)
47 :
名無しオンライン:2009/03/31(火) 02:16:23 ID:JI9Lm+7s
ほ
48 :
名無しオンライン:2009/03/31(火) 03:57:53 ID:cGIIV91L
続き期待
わっふるわっふる
50 :
名無しオンライン:2009/04/01(水) 00:33:31 ID:d+KzHmFd
wktk( ゚д゚ )
どこの誤爆だwwww
教えてくださいorz
久々にローゼン見た
53 :
名無しオンライン:2009/04/02(木) 02:06:14 ID:Ufq1N1fw
続きまだなの
ヤスヒロに挿絵描いてもらえ
55 :
名無しオンライン:2009/04/02(木) 22:59:11 ID:Ufq1N1fw
良いスレage
早くしろ
挿入絵って意味だろ
ばらしーに挿入するんだよ
59 :
名無しオンライン:2009/04/03(金) 22:13:24 ID:QPWbEMpF
ってかENDって書いてあんじゃん
もう投下ないだろjk
ヤスは写真は撮るけど絵は描かないぞ
61 :
名無しオンライン:2009/04/07(火) 20:10:50 ID:GciVTGGD
いつか続きがくると願って期待age
62 :
名無しオンライン:2009/05/27(水) 20:03:11 ID:+/vzs4V5
まだあんのかコレ
ついでにあげてみようか
なんぞこのすれ
64 :
名無しオンライン:2009/06/30(火) 19:11:58 ID:DKqzdVWQ
age
65 :
名無しオンライン:
ぬまこのおしっこのみたい