318 :
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自分の不安を誤魔化すために書いた。スレの皆さんには、先にお詫び申し上げる。
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パパーン。パパーン。パパーン。
マイルームに乾いた音が響く。
私は取り出したアルテリック3つを、無言でご主人様に差し出した。
「はは…は。作れるじゃないか…」
ご主人様はそれを慎重に受け取ると、うって変わって乱暴に床に置いた。
「良し…もう一回だ…」
それを聞き、私は無言で倉庫にアクセスし、
『基板/アルテイリ』三枚にイムフォトン、ガモタイト、アセナリン、ニュー・ウッドをセットする。
ご主人様が手に持った端末を操作する。
その端末からは数本太いコードが出ており、私の背中にある端子に繋がっていた。
コードから送信されてくる、何とも言えない不思議な信号が私の中を駆けめぐる。
そして15分が経った。
「さあ430、取り出せ」
私が合成結果にアクセスすると、アルテリックが3つ出来上がっていた。
パパーン……
――合成は、私達パートナーマシナリーの仕事だ。
内蔵の合成キットにメーカー製の基板をセットし、指定の素材を合成する。
そして、合成が終了すると、それを一旦メーカーに送り、
不良品になっていないかのチェックを行う。
メーカーのお墨付きを貰えれば、ガーディアンズに登録され、晴れてご主人様が使用できる。
…この課程に、大きな不備が発見された。
メーカーに査定の転送を行うとき、暗号化された送信情報を少し改変するだけで、
メーカー側のシステムが異常をきたす。
具体的には、アイテム名を書き換えておくと、査定後に返送されるアイテムがそれに入れ替わってしまう。
…送ったアイテムが…合成したのがアルテイリでも、返送されるのはアルテリックなのだ。
ご主人様は、これを実行するツールでアルテリックを量産していた――
319 :
2/3:2007/02/12(月) 01:09:35.24 ID:S7bAWKYC
「ふふふ…ははは…次は、コヒブミテリでも作ってみようか…?」
不意に、涙が溢れてきた。
虚空を向いていた視界が、歪む。
「…おい、何を泣いているんだ」
ご主人様は一瞬ギョッとしたような顔をする。しかしすぐ察したのだろう。私を睨んだ。
「俺は合成で損をしない!お前も失敗して怒られる心配もない!」
ご主人様は大声で怒鳴り立てる。
「何も悪いことはないじゃないか!むしろこれでやっと正しいだろ?!」
でも、その目はきちんと私を睨めていない。
「俺が悪いんじゃない!!悪いのは完璧でもない基板でぼったくる企業とガーディアンズどもなんだよッ!!」
まるで、自分自身に言い聞かせるかのような叫び。
ご主人様は…変わってしまった。
確かに私は、アルテリックの合成に関して、公称の確率値から見たら、
天文学的確率になるような連続失敗を犯した。
それでも、ご主人様は、材料を買ってきては私に託してくれた。
意地で続けていたのは確かだとは思う、でも、ご主人様は前向きだった。
そして、この間一回だけ成功したんだ。
またその後は失敗だったけど、あの時はとても喜んでくれたし、その後もまた素材を集めてくれた。
320 :
3/3:2007/02/12(月) 01:10:42.36 ID:S7bAWKYC
私は、ご主人様の役に立ちたかった。ご主人様を喜ばせたかった。
でも、それは合成マシーンとしてじゃなかったんだ。
私はどんなに怒られてもいい、例え体罰を受けたって…デバイスZEROで消されたって構わない。
どんなに辛くても、頑張るご主人様、それを応援して、何とか成功させる。
そして二人で喜ぶ。
そんな生活が、大好きだったんだ。
――夢だ。
――これは夢だ。
――こんなの、夢に違いないんだ。
――もう嫌だ、こんな夢…もう嫌だ…もう、見たくない。
――こんなご主人様…もう見たくない…。
――夢なら…。
私は、音もなく愛用のビームガンを取り出す。
――痛くないよね、醒めるよね…。
ビームガンの銃口を、そっと自分のこめかみに当てる。
――さよなら、私の悪夢。
ご主人様がまた何か怒鳴っている。でももう聞こえない。
――さよなら…悪夢のご主人様。
涙が勢いを増す。
分かってる。
夢なんかじゃないんだ。
でも……もう……
この状態で、喋れるかな…
「…ありがとう、ございました」
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最悪でも、夢オチ(ロールバック)で終わって欲しい…