【PSU】朝起きたら自キャラになってたSSスレ2

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423名無しオンライン:2007/01/27(土) 01:37:07.61 ID:yIbGykiZ
2月19日、ホルテスシティ近くの野営基地にて

今朝は不吉な夢で目が覚めた
愛するパルムが長年侵略にさらされるのを見てきたからだろうか
私は雪空の下、野営基地の中を歩き回った
兵士たちは皆傷つき疲れ、目に絶望の色を漂わせていた

そのとき、初めてその少女を見た。少女は、カレンと名乗った
ニューマンの娘で、ライフルの扱い方すら知らない
カレンはパルムを救うつもりだと言った
兵士の心から闇が消えた

カレンの声は確信に満ち、我々はその一言一句に聞きほれた
カレンには、我々が失ってしまった信念があった

カレンは私たちに、パルムの王太子が匿われている海底基地へ連れて行ってほしいと頼んだ
海底基地への道は戦いで引き裂かれ、至る所に敵がいる。多くの兵士が命を落とすだろう
しかしカレンの為に、我々はもう一度死に立ち向かうつもりだ
42457@保守:2007/01/28(日) 02:49:44.21 ID:fwCNTsdt
長い静寂に感じられた。時間にしては、それ程でもないだろうが。

ヒートのオノは、俺の腹部を捉えていた。寸止めってやつだ。
俺は、自分の手元をゆっくりと見てから、槍の先を見た。

槍は、ヒートの喉元に突きつけられていた。こっちも寸止めってやつだ。
ヒートがオノをゆっくりと下ろした。俺も槍をゆっくりと下ろす。

「へぇ・・・やればできるじゃねぇか」
「へへ、アンタもやるな」

戦友と書いて「とも」と読む、か。こいつとは気が合いそうだ。
しかしこの男、見れば見るほどガチムチビースト。顔も渋い。
一部のマニアックな者が見れば「ウホッ」ものだろう。
無論、俺にそんな趣味は無い。俺が好きなのは──

「はいはい、そこまでね。で、どうなの?ヒート」
「俺を本気にさせやがった。まぁ、あの人の推測通りだな」
あの人・・・という事は、このヒートという男も「あの人」では無いということだ。
「・・・なぁ、ずっと気になってたんだが、「あの人」って一体誰なんだ?
 イーサン達もずっと「あの人」や「あの御方」と呼んでいたが」
「それは、会えばわかるさ。あと、さっきから聞こえてると思うが、俺はヒートってんだ」
「ああ、何度も聞こえてきたし知ってる。俺はアルってんだ」
「ああ、あの人から聞いているし知ってる。まぁ、ついて来い」
ヒートは豪快に笑うと、屋敷の中に入っていった。
フィルが近付いてきた。
「アル。中に入って」
いきなり呼び捨てとは・・・しかし、何故かエロイ響きに聞こえたのでいいとしよう。

西洋風の豪華な屋敷。この近未来的なコロニー内で浮きまくっている。
しかし、なぜ西洋風屋敷。あの人とやらに訊けばいいか。

屋敷の大きな扉をくぐり抜ける。そこには──
「デジャブか、これは」
中の造りは、とてもPSU的というかなんと言うか。
そう、現実世界であのビルに入った時のような。
ビル・・・?

俺は、大事な事を忘れていた。
譬え、PSUの世界に入り、訳が分からなくなっていたとしても、だ。
激しい自己嫌悪に陥りそうになったが、何とか持ちこたえる。
あのビルに入ったのは何故か。
あの装置に飛び込んでまで、こちらに来たのは何故か。
それは、あの男勝りなロリっ子隊長の為ではなかったのか。
髭の男・・・無玄の事もあったが、みい隊長を助け出すために、飛び込んだ筈だ。
もう一人捕まっていた気がするが、気のせいだ。

「・・・どうかしたの?」
立ち尽くしたままうつむいていた俺に、心配してくれたのか、フィルが話しかけてきた。
改めてフィルを見る。今まで気付かなかった俺は馬鹿なのだろう。何でこんな重要な事を・・・。
42557@保守:2007/01/28(日) 02:51:13.68 ID:fwCNTsdt
フィルのパーツは、パトリエル・トルソではないか!
はだけたパーツから、胸の谷間が顔を覗かせている・・・これは、かなり・・・エロイ。
「うぅむ、これは・・・」
「大丈夫?」
そんな事を考えている場合では無かったな。

「・・・いえ、ちょっとデ・ジャヴィゥウを、ね」
あの人、とやらなら、みいの場所を知っているかも知れない。
いや、あれだけの情報を掴んでいたのだ。絶対に知っている。
それを、絶対に聞き出してやる。
「はぁ・・・?」
「そんな事よりフィルちゃん、家の中だし、その仮面を外さないか?」
フィルは、何から驚いたらいいのか分からない、というな仕草をした。
それを読み取れる俺は凄い。というか、何なんだ、この俺の切り替えの早さは。
顔を見たいという欲求に負けたのか。いや、キャストに変わったせいに違いない。

「そうね・・・」
へ?ま、まさか。見せてくれるのか!
「あ、勘違いしないでね?これは、色々と事情があって着けてるの」
「そうなんスか」
「えぇ、そうなの。あいつらの手先が何処に紛れているか、わからないしね」
あいつらというのは無玄の仲間か、それとも別の・・・。
フィルは、これまたエロイ手つきで、首の後ろに手を持っていった。

外そうとしているのがよく分かる。でも、外れないのもよく分かる。
「あれぇ・・・おかしいなぁ」
何とか外そうとしている姿が、可愛らしいというか、エロイ。
「ねぇ、ちょっと・・・」
これはもしや、そういう展開なのか・・・そういう展開なのか。
「こっちに来て、外してくれない?スイッチみたいなのが、あるはずだから」
そういう展開だ。フィルはゆっくりと後ろを向いた。
待て、落ち着け俺。と、キャストになったせいか、強力になった理性が前に立ちはだかった。
以前の俺ならすぐに飛びついて・・・それだと、只の変態ではないか。
もしかしたら、俺は試されているのかも知れない。
これは何かのテストで、俺の力量を計るために──

「ねぇ、まだ?」
その声は反則だ。俺は、通常ではありえない速度で、フィルの後ろに移動した。
後ろに立ってわかったが、フィルは思ったよりも小柄なようだ。だが、それ程小さい訳でもない。
このマスクと、肩パーツ、そして胸の大きさの印象のせいか、気付けなかった。
「スイッチ、スイッチっと」
そんな事を、フィルに聞こえるように言いながら、つま先立ちをしてみる。
そこから見えた風景は(以下、長くなるので省略)

フィルの顔は所謂、凛々しい顔立ちだった。そして、美しく黒い髪。
「手間を掛けてしまったわね。さぁ、早く行きましょう」

少し進んだところに、扉があった。無論PSU式の。
この先に「あの人」とやらが居るようだ。
屋敷の外装を見ても、現実の人間だろうという事はわかった。
イーサンやマガシをも動かせる者。
俺は少し、緊張してきたようだ。

{続く・・・}
426名無しオンライン:2007/01/28(日) 04:30:19.15 ID:mQqIN6e2
F5   F5   F5   
  F5   F5   F5
┐  ∧,∧  F5
| (   )    F5
 ̄ ⊂/ ̄ ̄7 F5
427名無しオンライン:2007/01/28(日) 11:14:41.74 ID:ZKD/G/Nu
チロルじゃだめだった
F5買いに行ってきマース
428名無しオンライン:2007/01/28(日) 13:51:04.50 ID:uUMmFphC
F5が壊れるやべぇww
429名無しオンライン:2007/01/28(日) 21:22:02.83 ID:YHvstt50
朝起きて鏡見たら自キャラのビス♂になってた。驚く暇もなく支度して飯食って学校へ向かった
途中どうしてもトイレに行きたくなったので公園へ寄った。
するとそこのベンチに濃い緑のパーツで身をまとったカーツがいた。突然目の前でメットと胴体を外し
430名無しオンライン:2007/01/28(日) 21:29:09.27 ID:9QDRsUz8
神投下
431名無しオンライン:2007/01/30(火) 01:04:50.82 ID:Lv3Zux9d
僕が8歳のとき、妹が生まれた。
それと同時に、母が死んだ。
こいつのせいで母さんが死んだんだ。そんな風に妹のことを恨んだこともあったけど、
今はそれが無意味だって知っている。
僕が17歳のとき、父が過労で死んだ。
僕がもっと父さんを支えられていれば。そんな風に自分を責めたこともあったけど、
今はそれが無意味だって知っている。
父さんが死んだ後、僕は高校を中退して働き始めた。
あれから6年。
僕、宮村真治 23歳。妹、宮村塔子 15歳。
妹が大学に出て、独り立ちできるまで支え続けること。
それだけが意味のあることだと信じて今まで生きてきた。
不思議と青春を犠牲にしたことへの悔いはなかった。
もともと何かしたいことがあったわけでもない。
むしろ、誰かのために生きることが心地いいとさえ思えた。
僕たちのために死ぬまで働き続けた父も、こんな気持ちだったのかもしれない。
生活は決して豊かではないけれど、僕は自分のことを不幸だとは思わない。
たぶん塔子も同じ気持ちでいてくれていると思う。
これからも兄妹2人でうまくやっていけるだろうと信じていた。
あんなことが起こるまでは。
432431:2007/01/30(火) 01:05:23.11 ID:Lv3Zux9d
つい10日程前から奇妙な事件が話題になっていた。
体が少しずつゲームのキャラクターの姿に変わっていくという突拍子もない事件。
最初は顔や目、耳など細かい部分が変化していき、徐々に身長や体つきがバーチャル世界のそれに変わっていく。
その変化の様子を追っていくような番組もできた。
いかつい筋肉質の男性が徐々に可憐な少女になっていく様はとても奇妙で、塔子と2人で笑いながら見ていたのを覚えている。
でも、番組開始から5日後。僕たちの笑顔は凍りついた。
完全にゲームキャラクターとなったその人物は、カメラに向かってポーズをとったり、飛び跳ねて見せたり、
その人間離れした、かわいらしい姿を視聴者に存分に披露していた。
だが、彼女がカメラに微笑みかけたその瞬間、まるで粉砂糖のように体が崩れ、そして消えた。
CGか何かだろうと、なにかの演出だろうと思ったが、翌日のニュースでそれを否定せざるを得なくなった。
消えたのは彼女1人ではなかった。
体がゲームのキャラクターに変化し、5日後、完全に変化した後、消滅する。
その奇病は多くの人間の背筋をゾッとさせた。
だが、僕にとってはどうということはなかった。
奇病にかかった人間の共通点は、PSUというゲームをやっていたこと。
僕はゲームをまったくやらないし、塔子もその手のものにはさして興味がないようにみえた。
だから、それほど心配はしていなかった。
他人事だったんだ。僕たちには関係ないと。
433431:2007/01/30(火) 01:06:58.60 ID:Lv3Zux9d
いつもの朝だった。
塔子より30分はやく起きて、顔を洗って朝食の準備をする。
準備が終わったら、妹が起きてくるまでコーヒーを飲みながら新聞を読む。
いつも通りの朝だった。
あと5分ほどすれば、騒々しく階段を駆け下りて、
「おはよう!」と元気よくリビングへの扉をあけるだろう。
でも、その日は10分たっても塔子は1階へ降りてはこなかった。
コーヒーを飲み終えてしまった僕は、このままでは学校に遅刻してしまう妹を起こすために
2階へとのぼり、手前の部屋の扉を軽くノックした。
「そろそろ起きないと遅刻するぞ。」
返事がない。もう1度ノックする。
「塔子?」
また返事はなかった。
ドアノブに手をかける。
以前同じようにいつまでも起きてこない妹を、部屋に入って起こしたことがあったが過去覚えがないほど怒られた。
塔子は自分の寝相を見られるのを極端に嫌う。
許せよ。心の中で呟いてドアノブを回す。
扉を開けると、塔子はベッドの上で体育すわりをし、うずくまっていた。
どうやらすでに起きている様だった。
「おい、起きてるならさっさと・・・。」
異変に気づき、言葉を止める。
泣いてる・・・?
「どうした?具合でも悪いのか?」
塔子は弱々しく首を振って、小さく、口を開いた。
「どうしよう・・・死んじゃうよ・・・私死んじゃう・・・。」
「おい、大丈夫か?」
ベッドに近づいて小刻みに震える妹の肩に触れたとき、気づいた。
長いストレートの髪から覗くとがった耳、そして、
「お兄ちゃん・・・私死んじゃうよ・・・っ!」
顔を上げ、涙を湛えながら僕を見つめる青い瞳。
「うそ・・・だろ・・・。」


妹が消えるまで、

後5日。
434名無しオンライン:2007/01/30(火) 08:31:50.48 ID:eoI/yh+3
あなたが……神か?
435名無しオンライン:2007/01/30(火) 08:41:07.20 ID:4XOcmMRb
  ∧_∧  +
 (0゜・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゜∪ ∪ +
 と__)__) +
436名無しオンライン:2007/01/30(火) 13:33:48.22 ID:XZ87f1l2
ネ申キタアーッ!
437名無しオンライン:2007/01/30(火) 17:16:18.27 ID:eAQNvGxi
神光臨期待age
438名無しオンライン:2007/01/30(火) 19:26:46.19 ID:YI9sYYIU
・・・はぁ、また昨日寝落ちしちゃったよ、PSUやると何故か眠・・・
ん?なんだろ、何かおかしい。
あぁいつもの自キャラがどうこう言う奴か・・・!?

「アッーーー!!」

・・・まぁ良くある事か。
とりあえず鏡を見ておこうと洗面所に足を運ぶ。
「さて、いったいどのキャラになったのか楽しみだ」
1stの見吉風ヒュマ男か、2ndのエロカワイイニュマ子か、はたまた3rdのロリビス子かもうwktkだぜ。

洗面所に到着し、鏡に手を付いてをまじまじと見つめ一言。

GH-101「わたしになまえをつけてクダサイ」
439GH450:2007/01/30(火) 21:53:03.94 ID:JzILCOvM
 間合いを詰める事はしても、自ら飛び込んでいくことはしない。
そもそも現実での戦闘経験なんてそれこそ昔やった授業でやった
剣道でしかない。それでも、あくまでも試合であって、実戦でもない。
試合うことと命を張ることの間には決して越えられない壁がある。
 ――が、それは相手とて同じ事。頭で戦うしかない。
「だらっしゃああぁぁぁっ!」
 向こうからぽっちゃりめの女が飛び蹴りをかましてくる。綺麗な
ドロップキックだ。もしかしてプロレスラーかもしれない。
 私は自分の勢いを殺すと、軽く屈んで構えを作る。そして揃え
られた両足の打撃ラインから外れ、手に持つレイピアで思いっきり
足を打ち上げる。気のせいか、ライジングストライクのフォームに
なったようだが、アーツの発動方法が未だよく把握出来ていないので
そこは気にしない。
「ちょ、ちょっとぉーっ!」
 足を引っ張り上げられた女は上半身を回転軸として一回転、二回転
、床に後頭部直撃でお陀仏となった。なんという倒され方。ショッカー
もかくやというところだ。
440GH450:2007/01/30(火) 21:53:20.44 ID:JzILCOvM
「白兵戦に高さはいらないのよ!」
 挌ゲーのように勝利ヴォイスを吐き捨て、前を向く。
 人数バランスのおかしいこの戦いは自動的に一人あたり十人近く
片付けなくてはならない。言い換えれば、一人あたり十人を相手に
しなくてはならない。さらに言えば、律儀にも一度に一人でかかって
くるようなおばかさんは鉄砲玉以外にいないはずだ。
 ビス子とキャス男のコンビが私に狙いを定めたのも、それゆえの必然
だろう。
「一本じゃ――!」
 とっさにうなじへ手をかざす。変異する前にパレットに入れていたのは
なんだったか。ちょうど20分ぐらい余裕があったから、ハゲでもやってた
はずだ。……そうだ、それで回線落ちだったか寝落ちしたんだ。ということ
は、あれがあるはず――!
「来なさい、ムクフィト!」
 それがそうと確認する暇もなく、敵の拳と爪を受け止める。機械質むき出し
の長い柄が、煌くフォトンの打撃を吸収していた。体重ののったいいパンチ
なのにそれほど響かなかったのは、偏にふさふさの絨毯のおかげだ。
441GH450:2007/01/30(火) 21:53:31.48 ID:JzILCOvM
 武器変更の光が収まれば、そこには氷44%の蒼い槍が。奇跡のように
私に授けられた、相棒が。
 ――ドゥース、ロバットォ!
 敵に連続攻撃を受けるとマズい状況なら、さらに後ろに下がれない状況なら
どうするのが正解か、私の脳はそれを瞬時に判断し、刹那の後には豪槍を
紫の軌跡を描きながら振り回していた。とび蹴り女より大きく、そして力強く、
一、二三、四――
「どおっ!?」
 五振り目で二人は吹き飛び、少し遅れて来ていた変異者たちを巻き込んで
壁に衝突した。ああ、伝統をぶち壊した罰だの何だの言っておきながら、私も
立派な器物損壊罪だ。……まあ、勝手に飛んで行きまして言おう。
「よぉ、どうよ」
 グッダ・ガンドを敵に向けたまま、I’LLが話しかけてきた。
「どうもなにも、楽しかないわ」
「じゃあ何か、嫌なのか、つまんねえのか」
「そんなこと別に言ってないでしょう、っと!」
442GH450:2007/01/30(火) 21:53:42.16 ID:JzILCOvM
 カードの弾を払い落とす。犯人は既に杖を構えていて、大きな岩石が生まれた。
21以上のディーガだが、私は特に対処には走らない。何故なら、
「ちょっとあんたたち、あたしに援護まかせっきりってどういうことなのよ!」
 イヴのレーザーが即座にそれを破壊するからだ。ついでだというように、青い
光線が放ったフォースの肩を打ち抜く。
「ファイガンナーじゃないんだから、あなたは支援のほうが向いてるのよ!大体
あなたマシンガンは性に合わないって言ってたじゃなぁい!」
「確かにそうだな」
「ちょ、I’LLも味方するの!?」
 叫びながら、グッレ・ナッパムに持ち替えて密集地帯へ爆撃を送り込んでいる。
流石に大臣なだけあって、手際と効率がいい。
「まあなんだ、タイプ合わない武器は持つのも無理だって分かっただろうよ。変更
の仕方がわからねえんだ、そんなに突っ込みたかったら、姫が売るほどダガー
持ってるから貸してもらえ」
「あ、それもいいわ……」
「だめですよ?」
443GH450:2007/01/30(火) 21:53:53.14 ID:JzILCOvM
 言い終わる前に、三人ほどを巻き込んで舞姫がアンガ・ドゥカレガで壁に叩き
つけていた。
 すぐさまイヴの下へ寄ると、
「この間の少年の件で裁判に口利きしてあげたじゃないのよ」
「あらあら、それは袖の下で解決したはずじゃありませんか? それにあれは
お願いというより単なる希望的観測を口にしただけですけど……本当なら見返り
が行き来することがおかしいような気もしますわ」
「いや、あの、それは……」
 閣僚内のパワーバランスが垣間見えた気がしたが、別に政治の世界へ飛び込む
つもりはないので、
「いつもあんなかんじなの?」
「そんなかんじだ。ほら、次行くぞ」
 ドン、と背中を押され、ささやかな疑問を追いやりながら、私は巨槍を携えて再び
状況を開始した。
444GH450:2007/01/30(火) 21:55:35.84 ID:JzILCOvM
どうも、わたしです。
ええと、やっぱり戦闘描写は苦手です。
でも、まいた種ですから、がんばって書きます。

って、ソリフォース発掘に喜んでる450が言ってた。
450よ、今それは値下がりしてるんだぞ……
44557@凡人:2007/01/31(水) 02:42:50.13 ID:yQ0YjlQC
GJ!ここは神の多いインターネッツですね。
凡人ながら、続きをこっそり投下。
44657@凡人:2007/01/31(水) 02:43:29.32 ID:yQ0YjlQC
そこに居たのは、見知った顔だった。直接会った事は無かったが。
そして、ある意味納得した。
「やぁ、君がアル君だね。まぁ、掛けてくれ」

その者は、椅子を指差して言った。
・・・。・・・・・。

「な、中さん、中さんじゃないっすか!」
「どうも僕です。中 裕二です」
「・・・どうして中さんがこっちへ?」
「それが実は・・・」
PSUキャラクターに変わってしまうという異常事態。
中はその時、それの対応に追われていた。
しかし、ある時だった。中は、「見吉の野望」に気付いてしまった。
どうするか悩んでいた時、偶然、PSU内へ渡る方法を見付けてしまった。
自分自身、半信半疑だった。本当にそんな事が可能なのか。

それから数日、ついに見吉が中に対し「野望」を打ち明け、仲間にならないか、と誘ってきた。
中は内容を聞き、驚愕した。そして、断った。
そのせいで中は、見吉に命を狙われる事になった。
そして、中は必要な物を持ち出し、イチかバチかで、PSU内へと渡ったのだ。
自分の携わったゲームとはいえ、最初は勝手がわからなかった。
ここから色々と大変だったようだが、それはまた別の物語。

ゲーム内でプロテクトを掛け、少しだけデータを改変し、見吉に対抗する準備入った。
そして、仲間を集めた。ガーディアンズ内、同盟軍内など、各所の信用出来そうな者を引き入れた。
見吉の仲間が、どこに隠れているかわからない。今まで、事を慎重に運んできた。
だが、髭の男が現れた。想定外の存在だった。
その男、無玄はエンドラム機関の残党を使い、現実世界の人間を攫ってくる事を始めた。

「しかし・・・なぜ」
「・・・ん?」
「西洋風の屋敷を?」
「そっちか。いやぁ、僕はこういうところに、一度は住んでみたくてね」
「それだけッスか?」
「ああ、それだけ」
「しかも、外装だけ」
「内装も手を加える、となると面倒なんだよ。それに、こちらのほうが色々と便利だしね」
しかし、目立ち過ぎはしないのか。

見付けてくれ、といわんばかりの外装だった。
「データが改変出来るのなら、簡単に終わるんじゃないんですか?」
「改変といっても、本当に少しの事だからね。ある特定のものを改ざんしたり、
 勝手にキャラクターの思想を変えたりも出来ないんだ」
しかし、本当に中さんだ。なぜ、中さんなんだ。

「そういえば、どうやって俺の事を?」
「我々は常に、ネットの状態を監視しているのだ。異変があったらすぐにわかるようにね」
「では、俺以外の人の事も・・・?」
「ああ、その通りだ。しかし、あの無玄という男、一体何を・・・」
「あの、じゃあ、俺の知り合いの事も──」
中が手で制した。
「焦るな、その話もする。まずは、見吉の野望について聞いてくれ」
44757@神に期待:2007/01/31(水) 02:44:56.77 ID:yQ0YjlQC
見吉の野望・・・それは──
「世界征服?!そんな馬鹿げた話・・・」
「ああ、馬鹿げている。だが、見吉は本気だ」
「いくらSEEDを使っても、そんなことは・・・」
「考えても見たまえ。もしも、ラスボス級のSEEDフォームを何十体も現実世界に引きずり出してみろ。
 核兵器でも使わない限り、まとめて潰すことは出来ないだろう。例えその場にいるものを潰しても、
 このPSUから更に引き出せる。全て潰す事が出来てもその頃には、人が住める場所が残っているやら」
「そ、そんな話・・・」
「只の例え話さ。そうはならないかも知れない。というより、そうはさせない」
少し前の事だが、日本の自衛隊がその自衛権を持って、SEEDフォームと交戦した。
だが、SEEDフォームに現代の兵器は、余り通用しなかったのだ。
だから変異した人々を集め、SEEDフォームと対抗する事になった。

そんなSEEDフォームが、しかもラスボス級ともなれば、変異した人々でも・・・。

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事は、順調に運んでいた。
「どうだ、酒井君。そちらの状況を伝えてくれ」
「こちら酒井。現在地はモトゥブの砂漠です。砂漠一帯の敵キャラクターの洗脳に成功しました」
「そうか、良くやってくれた。酒井君は引き続き、各地の敵キャラを操れるようにしておいてくれ」
見吉はにやりと笑い、近くの端末に目をやった。
つい先日の事だった。見吉達は、PSU内へと侵入する方法を見付けた。
それで分かった事があった。例えキャラクターに変わっていなくても、PSU内に入れば
キャラクターのような力が手に入る事を。調整方法は判明していないが、いずれ・・・。

端末に通信が入った。
「見吉さん、応答願います」
節政だった。彼はどことなく、ルー大柴に似ている。
「どうした、節政君。何か問題でも?」
節政には、主にガーディアンズコロニーを調べさせていた。
ガーディアンズの動向調査。そして、プロテクトを掛けた者の調査。
「それが、変なんです。こんなものがある筈は・・・」
「変とは、どういう意味だ?」
「ガーディアンズコロニー内に、西洋風の建物があるんですよ。こんなもの、
 PSUの設定上ありえません。画像を送ります」
すぐに端末へとデータが送られてきた。確かに、西洋風の豪華な屋敷だった。
その場にある筈の無いもの。あるとすれば、持ち込んだということか。
プロテクトを掛けている者。その可能性が一番高かった。
しかし、なぜこんな目立つものを・・・。しかも、何故西洋風。まぁ、そんな事はどうでもいい。
「節政君。そこはガーディアンズに見付かりそうな位置か?」
「いえ、人通りも全く無く、ガーディアンズの専用区域からも離れています」
「よし、ならば使えるものを使い、すぐに攻めろ!相手に逃げる暇を与えるなよ」
「!・・・。了解しました。すぐに、ですね」
これでいい。先手必勝だ。あんな建物、現実世界の人間しか使わないだろう。
例え、プロテクト掛けた者でなくとも、絶対に手掛かりになる。
見吉は確信していた。

{続くような気はする}
448343:2007/01/31(水) 09:59:25.56 ID:G8lp6q0M
「……女の人?!」
私は驚愕した。ヒロ君と一緒にこちらに向かってくる金属質な足音は紛れもなくキャストの足音。
しかも足音から察するに背丈の小さなキャスト♀だ。
「なん…で……」
なんでヒロ君と一緒に歩いているのか。
そりゃ、ヒロ君の交遊範囲は広いから、そういう友達がいるのは知っているし、
もともと女性キャラクターの多いPSUの事、自然と女性キャラクターの友人が増えるのもわかる。
でも……、でも今まで一度も「女性キャラクター」が一緒に部屋に来る事なんてなかった。
これは一体どういう事なんだろう。
私は再び二人の方に耳を傾ける。
『いつも通り?』
例のキャスト♀がヒロ君に声をかける。なんて甘ったるい声をしてるんだ。
しかし、私の思考はヒロ君の台詞で停止する。
『そそそ。腕くんだり、上目遣いに『ヒーロくーん』とか甘えてみたり…』

最初、私は聞き間違いかと思った。
しかし私のキャストとしての聴覚は一言一句間違いようもない事を今までの経験から知っていた。
「腕を……くんだり、甘えて……みたり…」
もはや何も聞こえてはこない。何やら相手が話しているが、そんなものは雑音にしか聞こえない。
私に聞こえるのはヒロ君の信じられない言葉を繰り返し再生する頭の中の声だけだ。
私の知らないところで、ヒロ君がそんな事をしている。
全身の力が抜け、私はその場にへたり込む。
信じられない、信じたくない。そんな感情が渦巻いていた時に更なるヒロ君の発言が私を襲った。
『さぁ行こう、リーナ。彼女にちゃんと紹介しなきゃ』
紹介!?一体その女の何を私に紹介するというのだろう。
「ま、まさか!」
449343:2007/01/31(水) 10:00:02.89 ID:G8lp6q0M
「ごめん。君には黙っていたけど新しく彼女が出来たんだ」
「どぉ〜もぉ〜。リーナで〜す。うふっ」
「やっぱりロリッ娘は最高だよね!」
「あんたみたいな〜、でっかいキャストより〜、私の方が何倍もイケてるっていうか〜。私らチョーお似合い?」
「ははは、こいつぅ」
「ねね、ヒロ〜。こんなつまんないとこより〜、もっと楽しいとこ行って〜、楽しいことしよ〜」
「そうだね、それじゃ、さよなら」

「きゃあああああああああああああ!!」
サクッ
なんておぞましい未来なのだろう。
思わず突き出してしまったスピアがベッドを真っ二つにしていたが、そんなものは大事の前の小事。
もちろんヒロ君がそんな事をする人じゃないのはわかっているし、信じている。
しかし…リーナというキャスト♀がどういう人物かわからない以上、最悪の状況が頭から離れない。
「……リーナ…」
おぞましい想像をさせる諸悪の根源の名前を口にする。
「リーナ…ん?リーナ??」
名前を呼んで、ふと記憶の中からある人物が浮かんでくる。
──シリーナ・レイ
私がログインしていた頃、一度だけ一緒にミッションに行った事がある。
ロリなキャスト♀な姿をしていながら、男勝りな口調でヒロ君とずっと話していた。
その間、私はヒロ君から離れたところで、寂しく原生生物を屠っていたのだ。
それに、ヒロ君が私を訪ね、いろいろ話をしてくれている中にかなりの頻度で登場するその名前。
「……ふ……ふふふふ」
私の中から生じる得体の知れない感情で、笑いを抑える事が出来ない。
これは…怒り?それとも喜び?どちらでも無いようで、そのどちらでもある様な不思議な感情。
彼女は挑んできたのだ、この私に。
「ヒロは俺のもんだからな!」
頭の中のシリーナ・レイが私に挑戦状を叩き付けている。
そう、これはヒロ君を賭けての戦い。
本妻と泥棒猫の、夫を賭けた戦いなのだ。
「ふふふ、いいでしょう。レイさん、返り討ちにしてあげますわ。ふふふふふふ」

暗い部屋で一人笑うキャスト♂。その周りに不気味なオーラが見えるのは気のせいだろうか。
気のせいではないことは、彼女の思い込みは度を超えて激しいのだった。
450343:2007/01/31(水) 10:00:46.58 ID:G8lp6q0M
「なぁ…彼女の部屋っていうのは……もしかして、あれ…か?」
俺が指差した方向には扉が一つ。
「そうそう。よくわかったねー」
「いや、なんとなくなんだったんだが…。なぁ?」
「ん?」
「お前の彼女って……殺し屋かなんか?」
「『私の背後に立つな』って感じ?」
「いや、『うわーん』って泣きながら踵落しで切り刻む系」
「そりゃ怖い。けど全然違うよ?なんでそう思うのさ」
「いや…なんとなく」
あの部屋から俺の全身が粟立ってくる気配が襲ってくる。とは言えなかった。
これが殺気ってやつか?というか、俺ピンポイントで狙われてる?
「あ、そっか。なるほどなるほど」
何かヒロが気づいた様に呟く。
「リーナ、武器出しといて」
は?武器?
「様子見で、なんで武器が必要なんだよ」
「ほら、不測の事態に備えるっていうか、昔の人は言いました。『いくぞ英雄王』」
「『武器の貯蔵は十分か』って、お前の彼女は金ぴかなのか?!王の財宝なのか?!我って書いてオレって読むのか?」
「いや、白だよ」
「色は聞いてねえ!!しかもこの流れ、さっきもやったぞ!」
「ノリのいいリーナって好きよ。っていうか詳し過ぎ?」
「ほっとけ」
いちいち突っ込む立場も考えようだ。しかし、武器…か。
「武器を出すのは、仕方ない理解しよう。でもよ」
「何?」
「武器って、どうやって出すんだ?」
なんだか時間がひどく経っているようだが、思えば俺がこの姿になって一週間も経っていない。
その間も様々な事に振り回され、こんな事にも気が付かなかった。
「あ、そっか。リーナはまだ知らなかったんだね。
学園では実戦訓練もあるから、今のうちに覚えておいた方がいいよ」
実戦訓練?何でもありだな、この学園。
はてはストーリーミッションまで出てきそうだぞ。
「あ、それ実装予定、今教官探してるとこだってさ」
あ、そうですか。
451343:2007/01/31(水) 10:02:05.58 ID:G8lp6q0M
数分後。
俺の両手は鮮やかな光に包まれたナックルを握っていた。
ヒロの話だと、ナノトランサーがどうのこうの言っていたが、半分も理解できなかった。
まぁ、出来たからよしとしよう。俺は実践派…なんだろうさ。
「あいかわらずナックル好きだね」
ヒロが俺の姿をみて、あきれた様に言う。
「当たり前だ。漢は拳で語るもんだろ」
「ロリキャストだけどね」
「心が漢ならいいんだ」
そう、俺の所持している武器はほとんどがナックルになっている。
一応遠距離用にハンドガンもあるが、はっきり言って性に合わない。
PSUを始めてナックルを買った時から、一貫してこのスタイルだ。
もちろん、敵を吹き飛ばすなんて事は一人の時しかやらない良心は持ってる。
それにしても、
「やっぱり、しっくりくるなぁ」
初めて武器を手にしたというのに、あまり違和感がない。
まるで長年使い込まれた愛機の様に、ぴったりと俺の手に吸い込まれている。
これなら実戦訓練とやらも問題なくいけそうだ。
「それじゃ、彼女の部屋にいくよー」
そういうヒロの手には白く光る両手杖が握られている。
一体なんなんだ?
そんな疑問が解消されないまま、ヒロの彼女の部屋に着く。
452343:2007/01/31(水) 10:02:47.82 ID:G8lp6q0M
ピーンポーン
インターフォンを押すと、やけに現実的な音が鳴り響く。
ヒロはインターフォン前に立ち、中の反応を伺っていた。
すると、なぜかインターフォンではなく、横の扉が音も立てずスライドする。
ありゃ?彼女って引きこもり中なんじゃないのか?
ふと部屋の中を覗いてみるが、真っ暗で何も見えない。
「誰もいな…」
い。と言いかけた時、キャストである俺の目が部屋の奥に白い何かいるのを捉える。
目を凝らして見ようとした時、突然光が俺に向かってきた。
「っ!!」
眩しさのあまり、腕を上げ目を覆う。
ッギン!!
上げたナックルに鋭い衝撃が走る。
突然で、しかも強大な衝撃に尻餅をついてしまった。
なんだ、なんだ!なんだぁぁ!??
いきなりの展開に頭がついてこない。いや、体はたまたま動いただけで、実際俺自身がついていってない。
一体何が起こったのか、解説をくれ!
…まぁ、ここには解説者はいない訳だし、自分で見るしかない。
おそるおそる衝撃が走った方向を見ると、ナックルがべっこり凹んでいる。
「………!?なんだこりゃあああ!」
俺の命の次の次の次に大事なナックルに一体何が!?
「……ふふふふ、よく止めましたね、さすがレイさん」
初めて聞く声。どっからどう聞いても男声だが、口調が女…まさか!
「誰だ!てめぇ!」
見上げるとそこには全身白いキャスト♂がスピアを構えて立っていた。
背は高め、体つきは…やや細いか。しかしあの特徴的な顔は…。
「俺の彼女以外いないじゃん…」
肩を竦ませるヒロ。やっぱしそうかよ!
「なんで彼女が俺を攻撃するんだよ!」
そしてなんでお前はそんなに冷静なんだ!
「それは……自分の胸に……ききなさいっ!!」
白いキャストが俺に向かって再度攻撃を仕掛けてくる。
「うぉっ」
間一髪転がって避ける。…本気かよ!
「さぁ……」
白いキャストがスピアを構え直し、俺に向かって言った。
「…さぁ!ヒロ君を賭けて勝負よ!泥棒猫!!」

…なんだそりゃ?
よくわからないまま、オープンコンバット?
453343:2007/01/31(水) 10:06:01.57 ID:G8lp6q0M
すばらしい作品が次々と上げられている!
喜び8割、自分のつたなさに嘆き3割。…あれ?
何故か戦闘シーン突入の装いですが、なぜこんな展開になったのか私にもわかりません。

間延びしてきましたが、もう少々おつきあいいただければ、と思います。
454名無しオンライン:2007/01/31(水) 17:40:20.55 ID:E+Jsh/4M
彼女の妄想具合がとてもよかったです(笑)

続き楽しみにしてますよ〜。
455名無しオンライン:2007/01/31(水) 23:21:13.41 ID:rx9FD7p3
あれ?いつのまにか作品ラッシュが…神ラッシュが…
うわぁあわqあwせdrdftgyふじこlp;@F5F5F5F5F%f%F%55f%F%
456431:2007/01/31(水) 23:45:51.87 ID:8PHidZza
いつもとは違う重苦しい朝食。
塔子は目玉焼きの黄身をつぶして、それが白身に流れ出る様子をじっと見ていた。
とても食事が出来る心境ではないのだろう。
僕も、ひどく頭が混乱していた。
しかし、空腹を満たすために胃の中に食べ物をおさめ続けている。
こんなときにも食欲がでる自分が腹立たしかった。
「たぶん。ミキちゃんの家に行った時だと思う。」
塔子がポツリと、口を開いた。
「面白いゲームがあるからって、少し遊ばせてもらったんだ。」
「そうか。」
どんな言葉をかければいいのかわからなかった。
塔子はうつろな目で、目玉焼きを箸で細かく千切っている。
こんな顔をみるのは、父が死んで以来だろうか。
「食べないのか?」
「うん。」
僕の顔を見ずにこたえる。
「じゃあ、片付けるよ。」
「うん。」
塔子の前の食器を僕の食器に重ね、流し台に運ぶ。
蛇口をひねって水を出したが、すぐに止めた。
食器を洗う気分にはなれなかった。
ぬれた手をタオルでぬぐって、塔子の前に再び座る。
「とりあえず、病院にいこう。」
僕のこの言葉に塔子がやっと顔を上げた。
「病院?」
「もしかしたらなんとかなるかもしれないだろ。」
「・・・うん。」
また、うつむいてしまった。
「行きたくないか?」
「・・・うん。」
「どうして。」
「どうしても。」
席を立って、塔子の後ろにまわり、その小さな頭に手を置く。
「行くだけ行ってみようよ。」
しばらくの沈黙の後、塔子はゆっくりと立ち上がった。
「着替えてくる。」
そして、おぼつかない足取りで2階の自分の部屋へと戻っていく。
457431:2007/01/31(水) 23:47:01.74 ID:8PHidZza
病院にいったところでどうにかなるものではないだろう。
それはわかっていた。
だけど何かにすがりたい気持ちでいっぱいだった。
10分ほどして、1階へと降りてきた塔子はニット帽を深くかぶって、顔を隠していた。
渋る塔子を半ば無理やり車にのせ、僕たちは病院へと出発した。
塔子は無言で助手席に座り、ぼぅっと遠くを眺めていた。
僕も口を開かなかった。
病院につくまで、車内を沈黙が支配していた。
病院の待合室は非常に込み合っていて、独特の活気に包まれている。
あまり病院にお世話になったことはないが、平日の午前中でもこうも混むものなんだろうか。
長いすに座って、順番を待つ。
その間も僕たちは口を聞かなかった。
程なくして順番がきたが、立ち上がろうとした僕を塔子が制した。
「私、1人でいってくるから。お兄ちゃん待ってて。」
僕の返事を待たず、塔子は診察室の中へと消えていった。
458431:2007/01/31(水) 23:48:24.00 ID:8PHidZza
塔子はたった5分で出てきた。
「ダメだった。」
このときの塔子の表情を僕は一生忘れないだろう。
絶望と憤りを必死で押し殺して、精一杯作った笑顔。
僕は塔子が病院に来たくなかった理由にやっと、やっと気づいた。
「帰ろうか。」
「うん。」
塔子を車に乗せて、エンジンをかける。
塔子はニット帽をさらに深くかぶって目を隠して、唇をかみ締めていた。
肩が小刻みに震えていた。
僕は、塔子にわざわざ死刑宣告を聞かせてしまったんだ。
何度も何度も心の中で自分を罵った。
自然とアクセルペダルを踏む足に力が入る。
なんとかなるわけがないってわかってた。わかってたんだ。
なのにお前は絶対死ぬんだぞって、そんなこと聞かせなくてもよかったんだ!
家につくと、塔子は疲れたからとすぐに自分の部屋に戻ってしまった。
昼をすぎても、夜になっても塔子は自分の部屋から出てこなかった。
僕は、元気付けてあげるどころか、塔子を絶望の淵に叩き落したんだ。

妹が消えるまで、

後4日。
459名無しオンライン:2007/02/01(木) 05:30:53.63 ID:pXIKlW/J
物語の更新の仕方がスゲェ斬新。
超GJ( ̄∀ ̄)b
460名無しオンライン:2007/02/01(木) 13:22:17.73 ID:n6G2Lv5J
SSとリアルタイムが同じ時刻に……


テラwktk
461名無しオンライン:2007/02/02(金) 19:42:53.57 ID:M+NAu8RC
>>158
(*´Д`)感動した!!
462431:2007/02/04(日) 02:24:51.02 ID:pUZhhM7r
カーテンを開けると、外は憎たらしいほど晴れ渡っていた。
頭が、重い。
どれだけ眠れただろうか。
疲れが全く取れていない。
服を着替え、1階へと降りて、洗面所に入り、鏡の前に立つ。
目の下にはひどいクマができていた。
冷たい水で顔を洗っても、頭の靄は晴れない。
キッチンに立ち、ふと、流し台に汚れた皿が重なって置かれていることに気がつく。
そういえば、昨日の朝食を片付けていなかった。
時計を見る。塔子が起きてくるまでにはまだ時間がある。
だが、朝食の準備を中断して、食器を片付け始めようとしたとき背後から階段を下りる足音が聞こえた。
振り向くと、塔子が立っていた。
「おはよう。」
「あぁ、おはよう。」
朝の挨拶をかわして、いつもの席につく。塔子は、制服を着ていた。
「学校、いくのか?」
「うん。」
大きな欠伸をして、こたえる。塔子もあまり眠れなかったのだろう。無理もない。
「あんまり変わらないうちにみんなに挨拶しておこうと思って。それとなく。」
挨拶。その言葉に胸が絞めつけられる。
弱々しく微笑んでみせる塔子の顔は、少しだけ色が白くなった。
463431:2007/02/04(日) 02:25:18.73 ID:pUZhhM7r
「メシくうか?」
「うん。さすがにおなか空いちゃった。」
「待ってろ。すぐ作るから。」
「うん。」
洗い物をやめ、冷蔵庫をあけ食材をとりだす。
「あ、お兄ちゃん。ついでに牛乳とって。」
「コップは自分で取れよ。」
「は〜い。」
塔子は立ち上がって、食器棚からキレイなガラス製のコップを取り出すと、僕から受け取った牛乳をなみなみとそこに注いだ。
昔から牛乳が大好きだった。おいしいそうに飲んでいる。
僕はフライパンを火にかけて油を引き卵をおとして、トースターに食パンを2枚つっこんだ。
あと何回、塔子のために食事を作ってやれるだろうか。
一見、塔子は立ち直ってるように見えた。無理をして、そう取り繕っているんだろう。
せめて塔子の友達が、塔子にいつもどおり接してやってくれることを願ってやまない。
そうすれば、塔子も幾分か救われるだろうと思う。
焼きあがったパンと目玉焼きを皿に乗せてテーブルまで運ぶ。
牛乳をすでに2杯飲み終えた塔子は、今か今かと食事の到着を待っていた。
「いただきま〜す。」
パンにジャムをぬって、口いっぱいに頬張る。食欲が出てきたんだ。よかった。
「今日、兄ちゃんも仕事いってくるからさ。家のカギ持ってくの忘れるなよ。」
「うん。わかった。」
昨日僕は、仕事を無断で休んでしまった。
携帯に何件も職場からの着信履歴が残っていたことに気づいたのが夜中の11時だった。
そんな時間に電話をかけるわけにもいかず、結局連絡はまだ取っていない。
いくら気が動転していたとはいえ、間抜けなことをしてしまった。
「ごちそうさま。」
僕がパンを半分ほどかじったところで、塔子は食事をすべてきれいに平らげてしまっていた。
よほど腹が減っていたんだろう。
食器を流し台に持っていき、塔子は洗面所へと入り、僕が食事を食べ終えた頃にリビングに戻ってきた。
「もう行くのか?」
カバンを持って玄関へ向かう塔子を呼び止める。
「うん。このくらい早くでれば電車空いてると思うから。」
ニット帽を手にとって、昨日と同じように顔が半分隠れるほど深くかぶる。
「そっか。気をつけろよ。ハンカチもったか?」
「うん。もった。いってくるね。」
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
塔子を玄関まで見送って僕も身支度を整える。
僕もできるだけ早めに行った方がいいだろう。
戸締りをしっかりして家をあとにする。
464431:2007/02/04(日) 02:27:51.50 ID:pUZhhM7r
徒歩で10分ほど、小さな工場が僕の職場だった。
今にもつぶれそうに見えるが、いくつか特許を持っているためしばらくその心配はないらしい。
工場の前を通り過ぎて隣にある事務所の中へ入る。
社長が1人、机に向かって書類の整理をしていた。
扉を閉めると、その音に社長が顔を上げた。
「おぉ、真治君!」
社長は書類を机の上に放り投げると僕の方へ駆け寄ってきた。
「あの、昨日はすみませんでした。」
「いいよいいよ。それよりなんかあったのかい?塔子ちゃん大丈夫?」
父の親友だった社長はうちの家庭事情を少なからず知っている。それに、今まで僕が仕事を休むときはかならず塔子が体調を崩したときだった。
僕の昨日の無断欠勤はなにか塔子にあったんだと思ったんだろう。
その顔には不安の色がありありと浮かんでいた。
「いえ・・・あの・・・はい。」
「もう心配で心配でねぇ。電話もでないし・・・。事故とかじゃないよね?入院とかしてないよね?」
「いえ、入院はしてないです。」
「そうか、よかった。」
父が亡くなってからは社長が塔子を実の娘のように可愛がってくれた。そして、高校を辞めた僕を、ここに拾ってくれた。
この人に、塔子のことを話さないわけにはいかないだろう。
「あの・・・社長。」
「ん?なんだい?」
でも、なんて言えばいいかわからなかった。
「いえ・・・無茶を言ってるのはわかってるんですが、すみませんがあと5日・・・いや、4日ほど休ませていただけませんか?」
「4日?」
社長の顔色が変わった。
「もしかして、塔子ちゃん・・・。」
無言の僕の様子をみて、社長は悟ったようだった。
「そうか。塔子ちゃんがねぇ・・・。」
社長は腕を組んで悲しげに目を伏せた。
「うん。仕事のことは気にしなくていいから。ずっと塔子ちゃんのそばにいてあげなさい。」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げる。
「それにしても嫌な世の中だねぇ・・・。沢田君も今日でやめちゃうし・・・。」
「沢田さんが?」
それほど仲が言い訳ではなかったが小さな職場だ。まったく面識が無いわけじゃない。
沢田さんが今日でやめるなんて知らなかった。
「どうしてやめるんですか?」
「それがねぇ・・・。う〜ん。」
社長の様子をみて、僕も悟る。沢田さんも・・・そうなんだ。
胸を鷲づかみにされたような感覚に襲われる。
「とりあえず、仕事は大丈夫だからね。今日はもう帰りなさい。」
「・・・はい。」
もう一度社長に頭を下げて事務所をあとにする。
塔子に、沢田さん。・・・僕の周りをこうも狂わせる。何様だ・・・PSUってやつは!
この憤り、どこにぶつければいいんだよ・・・。
465431:2007/02/04(日) 02:30:10.84 ID:pUZhhM7r
「あ、宮村君じゃない。」
不意に声をかけられる。目の前には見知らぬ女性が立っていた。
「無断欠勤なんて勇気あるよね。社長オロオロしてたわよ。面白かったんだから。」
でも、この声には聞き覚えがあった。
「沢村・・・さん?」
「あぁごめん。わからなかった?」
僕にニッコリと微笑んでみせたその顔には、僕の知っている沢村さんの面影は全く残っていなかった。
「どう結構美人になったでしょ?」
ポーズをとって不自然なほど整ったボディラインを強調する。
無理、してるんだ。明るい人ではあったが、こんなことをする人ではなかった。
「何日目ですか?」
「え?」
唐突に投げかけられた僕の質問に、目を丸くする。
「変わって、何日目ですか。」
「・・・4日目、かな。」
心臓が、跳ねた。じゃあ、沢村さんは・・・。
「そんな顔、しないで。できれば笑って送って欲しいんだ。」
沢村さんの笑顔には、言葉では形容しがたい悲しみが宿っているように見えた。
「今日でやめるって。」
「うん。今日中に書類整理しちゃって、明日は家でゆっくりするつもり。いつ消えるかわからないからさ。」
「そう・・・ですか。」
「家族にはなんていったらわかんないから知らせてないし、彼氏もいないから寂しいもんよね。あはは。」
こんなとき、かけるべき言葉を僕は持ってなかった。
「宮村君、もう帰っちゃうの?」
「あぁ、はい・・・。しばらく仕事休むんです。」
「そう・・・じゃあこれでお別れだね。」
「はい・・・。」
うつむく僕の頭を、沢村さんが軽くこずいた。
「いたっ。」
「笑ってよ。最後なんだからさ。」
「すみません・・・。」
精一杯、笑ってみせる。でもひきつっているだろう。
「うん。まぁいっか。じゃあ、ね。」
「・・・はい。それじゃあ。」
2人はその場をあとにした。
もっと、何か言うことがあった気がする。いや、あるはずだ。でもなんていえばよかったんだろう・・・。
あんな最後で、よかったんだろうか・・・。
466431:2007/02/04(日) 02:32:17.94 ID:pUZhhM7r
家にもどると、玄関に靴が一足脱ぎ捨てられていた。塔子がもう帰ってきているようだった。
「あ、お帰り。」
「もう帰ったのか。」
「うん。なんて言おうかずっと考えてたんだけど・・・。思いつかなかったから帰ってきた。」
「そうか。」
「友達には手紙、書くよ。学校いくの、やっぱり怖いや。」
「うん。うちにいろ。」
はにかむ塔子の顔をじっと見つめる。いずれ塔子も沢村さんのように他人のようになってしまうのだろうか。
「どうしたの?」
「いや。」
たぶんなってしまうんだろう。そして・・・。
頭を振って考えを追い出す。今はまだいい。考えなくていい。
「あ。」
そうだ、いいことを思いついた。
「塔子、ちょっとまってろ。」
「どうしたの?」
階段を駆け上がって、自分の部屋に飛び込む。
確か机の引き出しのなかに・・・あった。
塔子の高校の入学式のときに買ったばかりのデジカメを取り出して1階へ駆け下りる。
「塔子、ちょっとそこに座れ。写真とろう。」
「写真?いいよそんなの〜。」
塔子は写真があまり好きじゃなかった。だからそれほど塔子の写真は家にはない。
「いいから、座れ。」
「でも・・・。」
「とらせてくれよ。」
「・・・うん。」
観念した塔子はソファーに座りカメラに向かって小さく微笑んだ。
母に、よく似ている。
せめて塔子の姿が塔子じゃなくってしまう前に、
この愛らしい姿を1枚でも多く残しておいてやりたかった。

妹が消えるまで、

後3日。
467GH450:2007/02/04(日) 11:06:03.30 ID:ijG96NkV
し、視覚デバイスの洗浄液で前が見えません!
GJ!
468名無しオンライン:2007/02/04(日) 17:38:29.67 ID:7qCCBEf+
なんてこった…このSSからは溢れ出す文才が感じ取れるぜぇ!


つまりGJ。
469431:2007/02/04(日) 22:58:50.69 ID:pUZhhM7r
おぁぁ!なんとなく読み直してたらえらい事に気づいた!
途中から沢田が沢村になっとる!
沢村は俺の友人だw沢田に脳内変換お願いしますw
なんどもチェックしたのになんで気づかなかったんだよorz
あと最初のリアルタイム云々ってのは偶然なんだ
期待に応えようとは思ったけど無理だったんだ ごめんw
470名無しオンライン:2007/02/05(月) 00:33:43.70 ID:ZxEUzsIW
その発言俺だ、軽はずみな発言だったぜ。スマン
471名無しオンライン:2007/02/05(月) 04:41:39.47 ID:BEvMCZb+
最近の流れはヤバい。神が大杉る。
そしてスレの要領が気になるところなんだぜ。落ちませんように!!
472名無しオンライン
>>471
500KBが見えてきたら次スレ立てれば良いじゃない