ここはネオク共闘場。
低マーのモニ糞どもがクソに沸くウジのように、集まっている。
当のギガス周辺にも、近接のモニ糞がたかる。
奴らが着ている服や鎧、スキル上げのために浪費される武器や弾薬、触媒。すべてが資源の無駄でしかない。
それに劣らぬほど腐ったフルプレートの本気狩りパンダや、ダッチワイフどもが地震を巻き起こす。だが、姿を見るだけで嫌悪感を催すもにもにした矮躯の生物よりは幾分マシだった。
俺はと言えば、そんなクソ虫どもにリザやヒールを撒き散らす、負けず劣らずのクズ野郎だ。
スキルあげのための魔法をもらって、ゴミどもが口先だけの礼を述べる。聞き流すだけだ。てめえらが怪我を負い、死んだ数だけ俺のスキルあげのチャンスが増える。それだけのことだ。
やがて共闘の被害者たるギガスが倒れた。次のギガスが沸く場所へ、ハイエナどもが群がっていく。
そんな中で、一匹のもに子の姿が目に付いた。どうやら本気狩りのクソのせいで起こった地震に巻き込まれたようだ。身に着けている忍者服のところどころが千切れ、赤い血がにじんでいる。
俺は哀れみを覚えた。もに糞ごときに着込まれる忍者服に。
当のもに糞は寸足らずの醜い末端肥大の両腕を広げて、崖を上っていく。その仕草につばを吐く。奴は途中で立ち止まった。
「狸寝入りの術〜」
もに糞はそう口にすると、腹を切るしぐさをして地にひれ伏した。ハラキリミミックという技だ。
むかっ腹が立つ。反吐が出る。
「狸寝入りの術〜」
一回では回復し切れなかったのか、もに糞が同じ動作を繰り返す。
俺の視界が赤く染まった。内なる声が俺に囁きかける。ぶちのめせ。あいつを黙らせろ。
「もにぐひゃあ!」
少し遠くから声が聞こえた。崖の下。顔面を強かに打ちつけたもに糞がのた打ち回っている。
どうやら俺は無意識のうちに、もに糞を崖から蹴落としてしまったらしい。
問題を起こすのは得策ではない。俺の中で誰かがそう言った。だが、自分をとめることができなかった。怒りが俺の胃の辺りをチリチリと焦がしている。
俺はゆっくりともに糞に近づいていった。泥と涙にまみれた顔で、ゴキブリ以下の生き物が俺を見上げてくる。俺たちと同じく二つの目、鼻と口。赤い血。似たような生物のはずなのだ。
「何するもにかぁ!?」
「狸寝入りの術がもう一度見たくてね。でも、怪我してなきゃやってくれないだろう?」
「だからって蹴り落とすことはないもにぃ!」
言葉もしゃべる。こちらの言うこともちゃんと理解する。
なのに、なぜこうも腹立ちを覚えるのか。
「ひどいもに! 何でこんなことするもにぐへぇ!」
最後まで聞いてやることができず、俺はつま先を倒れたままのもに糞の鼻先にめり込ませていた。
「もにぎゃひぃぃぃぃ! 痛いもにぃ!」
もに糞が転げまわる。
俺は後悔していた。こんなゴミ虫の血で買ったばかりのドゥーリンブーツが汚れてしまったことを。このままでは、もに糞の血で染まったブラッドアーマーになってしまう。
「ほうら、やってみろよ? 狸寝入りの術って奴をさぁ」
うずくまったもに糞の腹に背に、つま先をぶつける。何度も何度も。やがて、もに糞は動かなくなった。
死体の着ていた忍者服でつま先の血反吐を拭い、俺はもに糞にリザレクションをかけてやった。生き物は大切にしなきゃいけないと、お袋が言っていたのを思い出したからだ。
「う……」
糞もに子が意識を取り戻す。目が合った。瞳がすっかりと怯えきっている。
「いやもにぃ……。もぉ許してもにぃ……」
俺は満面の笑みを浮かべ、一歩前に出た。
「ひっ……!」
水音が聞こえた。糞もにの股間の辺りを中心に、湯気を上げる水溜りができている。
「許すも許さないもないだろう? 俺はもう何もしやしない」
汚物に興味を失った俺は、踵を帰した。
共闘のクソガキどもは、とっくに向こうのギガスを倒し終え、新たに沸いた固体に群がっている。誰も自分のスキル以外のことには興味を示さない。
「もう何もしないぜ。……俺はな」
もう一度つぶやいてみた。俺の脇をチェインメイルのもに汚が走り去っていく。それを追うようにノッカーやオルヴァンの群れが近づいてくる。
MPKという奴だろう。クズが群がる共闘場に、最低のクズが現れたというだけだ。
俺は舌打ちとともにテレポートを唱えた。
「いっ、嫌もに! たすけてもにぐぎぁああああああ!」
転移する直前に、汚物の声が耳を突いた。