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123 ◆nu123wJPbk :
ドアを開けると、小型のログハウスのような建物が並んでいる、キャンプ場のような風景が目に入る。
エリアチェンジのブラックアウトの向こうには、こんなのどかな景色が広がっているわけだ。
ゲートを通る時にガードが怪訝な顔をしたのは、私がヒュームなのにサンドリアに所属しているからだろうか。
何しろサンドリアは、エルヴァーンと言う種族そのものに価値があると言わんばかりなのだから。
「さてと」
ドラギーユ城前の広場に出て、わざと声に出す。
アトルガン効果か人気のないそこで聞く声は、自分でも無理をしていると分かった。
旅の基本は情報収集と腹ごしらえ。そんな話をどこかで聞いた。衣食は足りているから後は情報だ。
人が集まるところ・・・南サンドリアの競売前?いや、ほとんど寝バザーだから無駄だろう。
「・・・っと」
「あ、ごめんなさい」
背中への不意の衝撃と言葉。声の出所は・・・上?
見上げると、銀髪のエルヴァーンがこちらを見ていた。
「大丈夫でした?」
純白に黒の刺繍が施されたエラントの裾を払いながらの問いに、私はこくりと頷く。
うわ、でか・・・と思ったことは口と顔に出さないように注意して。
優しげな表情の彼は困ったような顔であれ?と呟き、少し間を置いてから私を呼んだ。
「シオン?」