1 :
既にその名前は使われています:
FF11の世界観を使って小説を書くスレッドです。
長いものは、まとめて書いてからコピペするのがいいでしょう。
短編の方が、感想はもらいやすいみたいです。
またイラストなどの創作も良いようです。
エロは荒れるの禁止の方向で。
イラストのupロダ↓
http://tune.ache-bang.com/〜vg/outitem/up/upload.php
あと、知らない方もいるようなので注意書き。
ネ実では、圧縮足切りというのがありまして
50前後あたりのスレッドから、下のスレッドが
定期的(?)にばっさり切り取られます。
順位が下なら、保守してても情け容赦なく落とされますので
常時ageでおながいします。
2
3 :
既にその名前は使われています:04/12/16 12:15:52 ID:UaB06h9w
過去のアドレス知ってる方がいましたら、
貼ってくださると嬉しいです。
頻繁に落ちるようなら、そろそろ移住先を決め手もいいかも。
4 :
既にその名前は使われています:04/12/16 12:29:28 ID:dH9BmIDV
afafa
5 :
既にその名前は使われています:04/12/16 12:30:04 ID:UaB06h9w
PART3は、どこまで進んだのかな?
深夜帰宅して、覗いたら落ちてたから・・・Orz
昼まではたしかにあったはず。
じゃ、おれは出かけるので、
有志の方、出来れば保守をお願いしますm(_ _)m
6 :
既にその名前は使われています:04/12/16 12:32:57 ID:+5el/+nT
6だったら
順位が一番下でも、sage保守がちゃんと出来ているなら、圧縮来ても
落ちないんじゃない?
>>1 そうやって圧縮間際に1人くらいで保守してた人いたし。
確か圧縮判定が始まってから、最終書き込み時刻の
一番最近のスレから50スレが生き残る…だったと思う。
あと「全スレ一覧」の下のところに「過去ログ倉庫」に行けるけど
壷持ちでなくても、以前のスレが幾つレス付いたかまでは見れるよ。
そのスレタイトルクリックすると、「過去ログ〜」って出て内容見れないけど…。
で探してみようと思ったけど、前スレのタイトル覚えてないので
Ctrl+Fも出来ないのでした…^^;
8 :
既にその名前は使われています:04/12/16 16:15:45 ID:HP+c3+v3
9 :
既にその名前は使われています:04/12/16 17:40:05 ID:owqp2ILF
3稿は、305までレスは確認したんだがな。
その先みてねー
10 :
既にその名前は使われています:04/12/16 17:57:29 ID:dH9BmIDV
11 :
既にその名前は使われています:04/12/16 17:59:07 ID:owqp2ILF
てか、誰か過去ログ持ってる?
俺通しで読んでねーのよ
12 :
既にその名前は使われています:04/12/16 20:42:20 ID:HP+c3+v3
くぽー
13 :
既にその名前は使われています:04/12/16 20:48:35 ID:aRr2/0A+
15 :
既にその名前は使われています:04/12/16 22:10:03 ID:owqp2ILF
あんまし、このスレと関係ないんだけどさ
お勧めのファンタジー小説あったら教えてくれんか?
(ハリーポッターとか指輪物語とかそんなん)
なんかNHK見てたら無性に読みたくなった
17 :
既にその名前は使われています:04/12/16 23:55:40 ID:+PLUT9RW
>>16 そのままズバリ指輪物語がいいんでないの?
厨臭くて良いんならロードス島戦記とか関連のソードワールド系とか…アルスラーン戦記とかが良い気がする。
19 :
既にその名前は使われています:04/12/17 01:35:49 ID:9sFmMZ/h
>>16 ,へ ぶっちゃけ指輪はそれほど面白いと思えませんでした。
___/__ヽノ__ ハリーポッターは評価以前に読んでませんし……。
! ノノノ)))) 私が読んでるのはユーモアファンタジーばかりなので、
ノリ! ゚ ヮ゚ノ.! あまり参考にならないかも知れませんが、
/つc[_]と) /~ ̄) 巻を追う毎に性教育じみた展開が広がっていくP・アンソニィの
~/´i≡iヽ、 / /"´ 『魔法の国ザンス』シリーズとか、手に入らないかも知れませんが
G・コスティキアン『ある日どこかのダンジョンで』なんか、
ライトで楽しいと思いますよ。
20 :
既にその名前は使われています:04/12/17 01:39:49 ID:M60BQIJy
指輪はシルマリルとかホビットの冒険とかセットで読むとおもしろいぞ。
設定が緻密だから深く読める。
なぜNHK見てファンタジー小説が読みたくなるのか聞きたい
22 :
既にその名前は使われています:04/12/17 02:53:32 ID:lb5U5wDT
>>16 世界的に有名な王道っぽいやつなら、
指輪物語、ゲド戦記、ナルニアあたりかな。
ナルニアはまだ読んでないけど、
ゲドはちょっと哲学的雰囲気のあるような作品だった。
指輪は
>>20氏の言う通りホビットの冒険とセットで読むのがいいと思う。
あとアメリカのファンタジーなら
「リフトウォーサーガ」とか「魔法の王国売ります」とか読んだような気がする。
良くも悪くもアメリカ的だった。それが味かも。
日本産ならロードスとかアルスラーン、グインサーガとかかな。
ロードスは軽く読める感じ、グイン60巻あたりで挫折。軽く読むのは無理。
さらに古典になるとロード・ダンセイニの「妖精族の娘」とか「魔法使いの弟子」、「影の国の物語」とか面白かった。
あと作者は忘れたけど、「最後のユニコーン」てのも良かったかな。
エンデあたりも探ってみると好みのが見つかるかも。
23 :
既にその名前は使われています:04/12/17 02:56:34 ID:G0+DYkrr
ギャグ満載のものが読みたかったら、富士見文庫系の外伝ものがオススメ
それはファンタジーなのか?と聞かれたら困るがw
24 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/17 03:04:37 ID:lb5U5wDT
>>14 ありがとう。
前スレで物語の矛盾について質問した者です。
遅いですが、前スレで答えて下さった方、ありがとう。
参考にして書き直してみます。
物語の完成度をあげるには、手間を惜しんだらいかんということですな。
あと、矛盾から話を発展させるというのは、今まで気づきもしないことでした。
夜釣りの話でちょっと試してみまする。
>>19-22 dクス。とりあえず指輪物語あたりに手を出してみようと思います。
>>21 ニュースで最近の子供はゲーム離れが進行してて、かわりに
ファンタジー小説が流行になりつつあるとかなんとか云々。
子供が本の面白さとか喋っててそれがなんか妙に新鮮だった。
テレビゲームやるより面白いとか言って部屋の隅から埃かぶったFFみせてたっけw
>>25 最近ファンタジー小説そんなにブームなんだね
指輪は導入部分で挫折しないようになw
28 :
既にその名前は使われています:04/12/17 07:36:24 ID:FmhSJ5aZ
指輪は高校の時、3回読み込んでやっと面白いと思った記憶がある。
1回目はなんだかよく分からず、気に入ったとこだけ読み込み。
他はなんとなくで飛ばしまくり。
2回目はどうにか通しで。でも、まだよく分からなかった。
3回目通しで読んで、「うわ、こんな緻密で面白かったのか!」と。
自分で言うのもなんだが、俺ガキの頃から相当本は読む方。
それでも3回必要だったわけで、緻密ゆえに難しいところがあると思われ。
他にお勧め・・・魔法の国ザンス、パーンの竜騎士シリーズ(これちょっとSF)、
あとライト系に入るんだろうが、河原よしえの砂の民の伝説かな?
いわゆるライト系ファンタジーとは毛色が違って、面白いぞ。
29 :
既にその名前は使われています:04/12/17 07:56:07 ID:QTUcFJ8O
個人的にコメディ要素が無いとダメ。全く読む気がしない。
小説に限らず、あらゆるメディアの物語について言える。
30 :
既にその名前は使われています:04/12/17 08:17:28 ID:XryBrNZF
SS投下してもいいんでしょか。
31 :
既にその名前は使われています:04/12/17 08:23:04 ID:FmhSJ5aZ
32 :
既にその名前は使われています:04/12/17 09:54:06 ID:pql5pE03
指輪は過大評価の典型かもしれぬ。
トールキンは設定厨なだけでストーリーテリングの才能はあまりないからなあ。
他にもいろんな作品が読める現状で、敢えて読むほどじゃない希ガス。
33 :
既にその名前は使われています:04/12/17 10:22:14 ID:QTUcFJ8O
>>ストーリーテリングの才能
英語で書かれた作品およびそれをそのまま直訳したものに、それを求めるのは酷
英語は科学論文の記述には最適だけど
小説にはあまり向かない言語だと思う
日本語の方が柔軟(悪く言えば曖昧でそれゆえに科学の記述には向かない)
34 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/17 12:34:40 ID:lb5U5wDT
指輪は原作発表の当時も、評価がもめたみたいだね。
絶賛と、さして評価すべきところはない凡作っていう、
ふたつの意見に別れてたみたいなことが後書きに
かいてあったような気がする。
日本ではさらに翻訳の問題があって、評価が混乱してるのか・・・・。
35 :
既にその名前は使われています:04/12/17 12:37:17 ID:trXpH5qR
※指輪物語を楽しく読めない方へ※
作中のシーンを想像する時は、ホビットをタルタルに置き換えてみましょう。
それだけで大分楽しめるはず。
36 :
既にその名前は使われています:04/12/17 13:28:40 ID:5/2P1jTf
35
ありがと!
37 :
既にその名前は使われています:04/12/17 14:23:36 ID:4LVheanH
>>35 ヒュム内「糞タルの癖に指輪持ってんじゃねーwww
これは俺がもつべきwww」
…とか考えたが、エル狩がかっこよすぎるので却下か。
中の人層化入りしやがったけどなー…orz
38 :
30:04/12/17 15:18:25 ID:ueP9u+Ek
世界最大の商業都市国家、ジュノには、毎日多くの商人、冒険者が集まる。国内最大の取引場、下層競売前となれば、その混雑は筆舌に尽しがたい。
「にいちゃん、残念だけどそれはここじゃ扱えないね。珍しい品だけどさ」
競売職員が男に答える。男は、腕に不思議な色の大きな卵を抱えていた。
「そう、か。わかった」
―さて、これ、どうするべきか。
卵は、男がシャクラミの地下迷宮にて、骨細工のための材料を採掘していたときに偶然掘り返した物である。彼にはそれが飛竜の卵だということはわかったが、育てるつもりもない。競売にかけようかと思ってジュノに来たものの、見事にもくろみは外れてしまった。
―ああ。息子にでも、あげようか。
そう男が思い付いたとき、彼は突然声をかけられた。
39 :
30:04/12/17 15:40:22 ID:ueP9u+Ek
「ねえ、あなた」
男が声に振り向くと、そこには紫色の鎧を着けた美女が立っていた。身長は170センチほど、背にはそれより長い槍をさしている。
見覚えはない、ヒュームの女性だ。
「何か・・・?」
「その卵、必要ないのなら譲っていただけない?」
「・・ふむ」
少し悩んだが、やはり彼は先程思い付いた考えが既に気に入っていたので、断ることにした。
「申し訳ないが、息子にでもあげようかと思っているんだ。なんならシャクラミにいけば掘れるかもしれんぞ」
女はそれを聞いて少しイライラした様子を見せがら答えた、
「その卵じゃなきゃだめなの。お金は払うわ」
「ふうむ・・・しかし・・・ぐ!?」
突然女の形相が変わった。殺気がふくれあがり、それをまともに喰らった男がよろめいた。
「わからずやね・・・そこまで嫌だというなら、殺してでも 奪い取るっ!」
女が槍を抜く。あたりがざわめいた。
―街中で!?狂って・・・!!
「光よ奪えっ!フラッシュ!」
「うあっ」
異様に眩しい光が走った。女、周囲の人々が思わず目を押さえて蹲った。
―今だ!
男は狂った女から逃げるべく、人混みの中に紛れ込むように走り出した。
40 :
30:04/12/17 15:42:10 ID:ueP9u+Ek
読みづらいし文章おかしい・・・
携帯からっていうのもありますが、スレ汚しすいません・・・
携帯からかい!!!
42 :
既にその名前は使われています:04/12/17 15:44:05 ID:trXpH5qR
無理すんな
43 :
既にその名前は使われています:04/12/17 15:49:21 ID:azA4d/vv
あぁ〜タルタル戦士の続きが読みたい・・・
44 :
既にその名前は使われています:04/12/17 18:45:53 ID:FmhSJ5aZ
>>44 タルタル戦士は夢を見る、だっけ?
あそこの白魔道士のヤツが、俺好き
45 :
既にその名前は使われています:04/12/17 21:36:53 ID:2BclYHJw
保守
46 :
既にその名前は使われています:04/12/17 21:48:58 ID:Z0GYRTUJ
なんか続きを期待されてる人がいるようなのでアップしづらいですな。
つーか早く続き書いてあげれ。
47 :
既にその名前は使われています:04/12/17 22:30:40 ID:lb5U5wDT
age
48 :
既にその名前は使われています:04/12/17 23:08:15 ID:2WhEcz7V
>>46 よーし、「熱砂の戦士アンティ仮面」の第三部・外伝を……
49 :
既にその名前は使われています:04/12/17 23:17:25 ID:f6MhImfc
タルタル戦士は夢を見るか、懐かしいな。
同じ作者が、外伝っぽいのを書いていた記憶があるが、、、レッドナントカ??だっけ。
白魔導士は、白の探求者かな。
あれは、今も続いてるんだが、後半になっていくにつれて登場人物が多くなってきて
どんな奴だったか、さかのぼるのが大変(´・ω・`)
『世界の中心で、愛撫される』
白血病に冒されいていく女子高生・アキが、犯されてイク。
はたしてサクちゃんはサックを着けてくれるのか?
『挿入する準備はできていた』
その先にはあるのは破滅であり崩壊。
挿れてしまえば、あとは果てるのみ。そんなことはわかっている。
それでも私たちは前へと進む。
『ハリー・ポッターとアヌス我慢の囚人』
とある刑務所で毎日のようにケツを掘られる囚人がいた。
通称シリウス・ブラック。あまりにも使いこまれたアナルがうっすらと黒ずんでいた為にそう呼ばれていた。
さすがの黒アナルも限界を超え、我慢しきれなくなったブラックは脱獄を試みることに…。
『彼のを またシャブろう』
東北の山あいの村に風と共に突如現れた少女。
奇抜ないでたちをした赤い髪の異形の少女は竜巻フェラで男を昇天させると、
いつのまにか姿を消していた。風の中から声が聞こえる「またシャブりに来るね」
『世界がもし100人のマラだったら』
世界がもし100人のマラだったら・・・
6本は まだ毛が生えておらず
13本は 穴に入ったことがない
72本は ハイネックセーターで顔を半分隠し
1本は なんらかの手術を受けている
4本は 勃ち上がるのに薬を必要とし
28本は 小便排泄以外に出番がなくなった
52 :
既にその名前は使われています:04/12/18 01:11:06 ID:XnwiIEYH
age
53 :
既にその名前は使われています:04/12/18 02:03:40 ID:3YoJG+J4
age
54 :
既にその名前は使われています:04/12/18 02:19:03 ID:omzqHRby
55 :
既にその名前は使われています:04/12/18 03:05:13 ID:ZHm+R8IO
age
56 :
既にその名前は使われています:04/12/18 04:09:39 ID:ZHm+R8IO
age
57 :
既にその名前は使われています:04/12/18 09:16:20 ID:XI0NyVz5
>>49 あれ、探求者まだ続いてたのか?!
昔誰かがまとめてくれたサイト見てるんだが、更新ないから
ストップしてるもんだとばっかり思ってたよ。
58 :
既にその名前は使われています:04/12/18 13:32:51 ID:ZHm+R8IO
age
59 :
既にその名前は使われています:04/12/18 15:19:12 ID:ZHm+R8IO
age
60 :
既にその名前は使われています:04/12/18 15:20:15 ID:ZHm+R8IO
77もスレがある・・・・
圧縮来そう・・・・
61 :
既にその名前は使われています:04/12/18 16:20:19 ID:ZHm+R8IO
保守
62 :
駄文書き ◆tM1C/CApAM :04/12/18 17:23:13 ID:XI0NyVz5
ごめ、トリップテスト。
なんとなく書きあがったから、保守代わりに投下。
思いつきでさらっと書いちまったから、駄作なのはご容赦。
---------------------------------------------------------
「お茶ですよ〜!」
少女の声が響き渡る。
よく通るその声は、薄暗い坑道の中で反響し、奥までよく聞こえた。
黙々とつるはしを振るっていた鉱山夫たちが、顔を上げる。
「おーい、こっちにも頼む!」
「は〜い」
暗い曲がり角からぴょこんと顔を出したのは、意外にもヒュムではなく、猫の耳を生やした子だった。
このミスラの子、鉱山夫のひとり、ガルカのドルグが拾った養い子だ。用事があって町を出て遠出した折に、遺体にすがりついて泣いているのを見つけたのだという。
少女はよほど怖い目に遭ったらしい。震えながらこの町へ連れて来られたあと、高熱を出して寝込み、治った時にはその時の記憶を失くしてしまっていた。
だから皆で口裏を合わせて、親は危険な場所へ行かなければいけなくなったため、ここへ預けていったことにしてある。
「はい、どうぞ」
「おう、いつもすまねぇな」
慣れているのだろう。猫耳の少女は手際よく狭い坑道を移動しながら、
まだ暖かいお茶を鉱山夫たちの水筒に注ぎ分け、干し肉を手渡していく。
一通り渡した後、少女はひときわ厳めしい顔のガルカにまとわりついた。
「今日はね、晩ご飯ダルメルのお肉なの。
今朝ダルザックさんが冒険から帰ってきて、おみやげに塩漬けくれたのよ?
もうね、ちゃんと朝からシオヌキしてるんだから!
でもちょっとしかないから、大羊のお肉足さないとダメかなぁ。焼いたらいい? シチューがいい?」
大きな手が、猫耳の頭を優しく撫でる。
「ラディー、お前の好きになさい」
「うん!」
身を翻し、ぱたぱたと軽く少女が駆けてった。
「まさかあんたが女の子、それも異種族の子を、あんなに可愛がるとはなぁ」
「あの子はいい子だ」
彼は一言、ぶっきらぼうにそう答えると、お茶を飲んで干し肉をかじった。
その日もいつもと同じだった。
養い親のドルグは、近年再開発されたツェールン鉱山に出かけ、養い子のラディーは洗濯と掃除とに追われる。
午後からはコウモリのねぐら亭のおかみさんの所へ行って、いつも通りお茶と干し肉の用意に大忙しだった。
実は午後のお茶の費用、国の方から出ている。
もっとも慈愛や慰労の精神などとは無縁で、鉱山夫の不満を少しでも和らげるための政策だ。
ただ猫耳の少女は、そんなことはもちろん知らない。
大好きな養い親が働く鉱山に、手伝いとして堂々と入って顔を見られ、お茶を届けられるのが
嬉しいと言うだけだった。
それと、ほんのちょっとだが手伝い賃がもらえる。それを貯めてちょっとしたものを買ったり、
養い親にプレゼントしたりするのは、何よりの楽しみだった。
「こんにちは〜!」
宿屋の下働きに手伝ってもらい、鉱山入り口までの長い坂を、お茶と干し肉を持って登る。
「おう、いつもありがとな。連中待ってるから、早く行ってやってくれ」
「は〜い!」
いつもどおり鉱山に入り、十字路を左へ折れ、石畳からむき出しの土に地面が変わる辺りだった。
突然の轟音。そして衝撃。
思わず頭の上の両耳をおさえて、しりもちをつく。
お茶を入れたヤカンが転がって、甲高い音を立てた。
「な、に……?」
恐る恐る立ち上がる。とても嫌な予感がした。
ぴくり、と猫の耳が動く。
ミスラの聴覚は、他種族とは比べ物にならないほど鋭い。
その耳が、奥から聞こえる音と声とを捉えていた。
「落盤だっ!」
「早くそこの岩をどけろ!!」
走り出す。
「ドルグ、ドルグっ!」
暗い坂道を駆け下りてたどり着いた広間は、さながら野戦病院だった。
何人ものヒュムが、血だらけのまま横たわり、うめき声を上げている。
頑健なガルカたちはもう少ししっかりしていたが、それでも血だらけなのは変わりなかった。
「あ、あ……」
足が震える。
「ラディー、今日は帰りなさい。ここにいたら危ない」
鉱夫の誰かが言っていることも、耳に入らない。
頭がずきずきと痛む。
「ラディー、大丈夫か? 家まで連れてってやろうか?」
心配した声には答えず、少女はぽつりと漏らした。
「ママ……」
そうだ。忘れていた。
あの時も、こんな風にみんな血だらけで――。
もう日が落ちて、暗くなりかけた頃だった。
場所はどの辺だったのだろう……?
ともかく隊商は、道を急いでいた。もう少し先にある、アウトポストと呼ばれる駐屯地近くまで行って、夜を過ごすためだ。
だが、たどり着く事はなかった。
「ヤバイ、亀のヤロウだ!」
誰かが叫ぶ。
チョコボ車が止まり、男たちが武器を手に取る。
金属のぶつかり合う音がし、チョコボの甲高い声がそれに重なった。
「ラディー、あなたはここに隠れてなさい」
ローブに身を包んだ、ミスラの女性が立ち上がる。
「ママは?」
「ママは白魔道士だもの、行かなきゃ」
音を立てちゃダメ、そう言い残して母親は出て行った。
言いつけどおり、息を殺して荷台の隅に隠れる。
何かを切り裂く音。悲鳴。
怖くて怖くて、耳をしっかり押さえて目をつぶって、終わるのをひたすら待つ。
だから、気づくのが遅れた。
それでも気配を感じて避けられたのは、ハンターとして優れた、ミスラの子だったからだろう。
とっさに”何か”を感じて、箱の陰から飛び出す。
同時に冷たく重たい剣が、隠れていた箱を粉砕した。
剣と盾とを構えた、大きな亀。
その黒い姿が、目に飛び込んでくる。
「ひっ……!」
声にならない声を上げて、それでもラディーは動いた。
そうしろと、頭の中で何かが告げたのだ。
俊敏な動きで亀の剣をかいくぐり、そのままの勢いで荷台の外へと飛び出す。
――地獄、だった。
さっきまで一緒にいた隊商の仲間が、血だらけで倒れている。
腕と、下半身のない姿で。
そこにも、そしてあそこにも。
「あ、あ……」
さすがにすくみかけたところへ、声が飛んだ。
「ラディー、逃げろっ!」
まだ生きていた者が、少女の方へと視線を向けた亀に立ち向かい、叫ぶ。
「早くっ!!」
それが彼の最後の言葉になった。
亀の剛剣が振るわれ、首が中を飛ぶ。
「やっ――!」
自分でも何を言っているか分からぬまま、それでもラディーは走り出した。
「逃げろ」という言葉が、幸いにも頭の中に残っていたのだ。
ぐちゃりと踏んて足を滑らせた物は、果たして何だったのか。
確かめる間もなく、少女は体勢を立て直してまた走る。
亀が、追ってきていた。
「やだよう……」
だがここでも、ミスラという種族が幸いした。
ただでさえ俊敏で夜目の効く種族の、それも身の軽い子供を、鈍重な亀は追いきれなかった。
本能的に安全な場所を求め、手近な崖を軽々と這い登る。
剣が届かない高さまで来て下を見ると、まだ諦めきれないのか、亀がこちらを見上げながら吠えていた。
が、重い甲羅を背負った彼らに、切り立った崖を登れるわけもない。
力を振り絞って、更に上の岩棚まで登り、亀裂の隙間に隠れる。
亀はそのあともしばらく吠えていたが、ついに諦めたらししい。静かになったところでそっと下を覗くと、もう何もいなかった。
やっと安心してうとうとと眠り、陽が昇ってから、どうにか崖を降りる。
そのままふらふらと、だが亀には用心しながら辺りを歩き回り、やっとラディーは何かがくすぶる煙を見つけた。
――何も、なかった。
たどり着いた場所には、隊商の残骸だけ。
皆が引き裂かれていて、辺りは血でぬかるんで……。
わぁわぁ泣きながら、皆の名前を呼んで回ったが、動く者はなかった。
やがて、ローブを着たミスラを見つける。
「ママ!」
ゆすったが、やはり動かない。
「ママ起きてよ! ねぇ逃げようよ! ママ、ここ危ないよ……」
そう、思い出した。
あの時ずっと泣き続けて、やっと皆が死んだのだと理解して、今度は自分を責めた。
ひとりだけ戦う事もせず、ママのように魔法を使うこともせず、逃げてしまった自分を責めた。
泣きながら責めて責めて責め続けて――辛くて辛くて、ドルグに拾われたあと、今度はその記憶を封じ込めてしまった。
なんて自分はひどいんだろう、そう思う。
何もしなかった上、忘れてしまうなんて。
ぎゅ、と握られた手に力がこもる。
――その時。
ふわり、と何かが少女に触れた。
(誰も、あなたを責めたりしてないから)
はっと顔を上げる。
たくさんの、透き通った影が見えた。
「ママ……?」
それだけではない。
たくさんの、懐かしい顔。
影たちが、口々に言う。
ラディーが助かって良かった。戦った甲斐があった。
お前を死なせたら、死んでも死に切れなかった。俺たちのことは気にしなくていい……。
「みんな、怒って……ないの?」
くしゅんと耳と尻尾を垂らして訊ねる少女に、影たちが優しく笑う。
怒るもんか。そんなことあるはずがない。そう、口を揃えて言った。
そんなヤツがいたら、俺がぶん殴ってやる。お前、もうぶん殴れないだろ。あ、そうか。
皆の昔と変わらぬ軽口に、ラディーもくすりと笑う。
すっ……と、母親が歩み出た。
(ほら、目をつぶってママに合わせて)
言われるままに目をつぶる。
(そう、上手。そのまま心を澄ませて、光を捉えて――)
あとは簡単だった。
導かれるように、軽く広げられていた手が片方上げられる。
「――ケアル!」
目の前でうめいていたヒュムを、柔らかい光が包んだ。
「っつ……おぉ?!」
彼が驚いて傷をさする。
「すごい、血が止まってる!」
「ラディー、お前魔法が使えたのか?!」
当の少女はワケが分からず、目をぱちくりさせていたが――すぐに事態をのみこんだ。
(ママからの、プレゼント。ゴメンね、これだけしかなくて)
(ううん!)
大好きなママに、心の中で答える。
(大丈夫、魔法使えば、ママといつもいっしょだもん!)
それから少女はケアルを唱えて唱えて、魔力を使い切っては座り込み、回復するとまた唱えて。
「こりゃ驚いたな、ひどい事故だと聞いたんだが」
ヒュムの医者がようやく駆けつけてきた頃には、とりあえず皆、応急手当は終わった状態だった。
「あの子が魔法が使えたんでさぁ」
「けが人に、片っ端からケアルかけてまわったんだ」
鉱夫たちが、口々に言う。
思わぬ事態に、派遣されてきたヒュムの医者はいたくプライドを傷つけられたようだったが、それでも思いなおして手当てを始めた。
当の本人は疲れたのだろう。養い親の腕の中で、既に眠りこけている。
「ドルグ、今日はもういいからあがれや。お嬢ちゃん、早くベッドで寝かしてやりな」
「すまないが、そうさせてもらう」
養い親のガルカは、その腕に小さなミスラの養い子を抱えて、鉱山を後にした。
数日して採掘が再開された時、少女の一日は前にも増して忙しくなっていた。
養い親のドルグはいつもどおり、近年再開発されたツェールン鉱山に出かけ、養い子のラディーもいつもどおり洗濯と掃除とに追われる。
だがその後お昼まで、商業区にある魔法屋のタルタルのところで、白魔法の勉強が始まったのだ。
もっともその白魔道士が言うには、ラディーには確かに白魔法の才能はあるものの、ここで学んでも使えないだろうということだった。
この子は理論より本能で魔法を使う少数派で、呪文を覚えることがイコール使えるにはならないのだという。
とはいえ勉強自体は無駄にはならないだろうと、彼は気前よく教師役を引き受けてくれた。
――ただえさえこの国では珍しいミスラの子で、しかも珍しいタイプの魔道士だったことが、興味を引いただけらしいが。
ともかくラディーにしてみれば大変だ。急いで洗濯と掃除を済ませ、魔法屋へ勉強に行き、帰ってきてお昼を食べて、今度はお茶を用意して……なのだから。
幸いそれでも当人は、けっこう楽しいらしい。夜になって食卓に着くと、養い親にあれこれと今日教わった事をご機嫌で話していた。
今日もお茶を配りに来て、ヤカンを持ってシッポをゆらゆらさせながら走り去る少女の後姿に、鉱夫のひとりが言った。
「まさかあんたが、あの子に魔法を習わせるほど、可愛がるとはなぁ」
「あの子には才能がある」
養い親はぶっきらぼうに言い、お茶を飲んで干し肉をかじる。
「はは、ちげぇねぇや!」
同僚たちが声をあげて笑った。
END
79 :
既にその名前は使われています:04/12/18 18:01:58 ID:ZHm+R8IO
職人きた〜ヽ(`Д´)ノ
楽しく読ませてもらいましたm(_ _)m
80 :
既にその名前は使われています:04/12/18 18:57:27 ID:h/J9E6Uq
あげ
81 :
デュミナス・ヴァナディール 1/10:04/12/18 19:26:51 ID:DdbBsCa7
流れ出した砂時計は、私の手の中で、時の流れを静かに鳴らしている。
「ん……砂時計は、確かに動いてる。
ここがデュミナスって事は、間違いないわね。それにしては……」
違和感を拭えない。砂時計を使って転移してきたここに、戦場の切迫した空気はない。
南サンドリアのモグハウス前は、耳鳴りがするほど静まりかえっている。
デュミナス名物の石像やモンスターは、どこにもいない。仲間の姿も。
「ここ、デュミナスよね?にしては、普通に陽が昇り始めてるけど。
もしかして砂時計が壊れてるとか……ねぇ、コーネリア?」
「砂時計に破損があれば、作動すらしないはずです」
ウィスパーボイスと共に、サンドリアと過去に悔いを残す幽霊が現れた。
死してなお、裏世界に潜む闇の王討伐に働く女……コーネリアの足下から
沸き立つ金色の泡は、使い魔のように四方へ散り、街路へ、裏路地へ飛び込んでいく。
「……探ってみましたが、南サンドリアに存在するのは私たちだけのようです」
「そんな……私と一緒に、五十人近い仲間がデュミナスに入ったのよ?誰もいないなんて」
「原因は不明です。確かなのは、ここが暗き闇に落ちた異世界、いつと知れない過去という事」
金髪の幽霊と私は、無人の城下町を歩きながら、デュミナスとの違いを数えた。
「空の色も空気も澄んでるし、獣人に占拠された感じじゃないわね……」
街の外へ通じる門を塞いでいるはずの、闇の障壁がない。いよいよデュミナスらしくない。
門の外から、金色の泡がコーネリアの元へ戻ってきた。主人を困惑させる知らせをもって。
「冒険者よ。どうやら、このデュミナスは、ロンフォールへ続いているようです」
82 :
デュミナス・ヴァナディール 2/10:04/12/18 19:28:48 ID:DdbBsCa7
「うおおっ?」
城壁の外に出た途端。私は耳を喧噪に塞がれ、思わず後ずさった。
「な、なによこの人の数はっ?」
むせ返るような群衆の熱気。道化師らしい人々と観衆の笑い声が、
抜けるような青い空に響いている。
「なんてお祭り騒ぎ……ザルカバードにまで響いてそうね」
ハロウィンのキャンペーンでも、三国に集まる人間はたかが知れている。だというのに、
城門から見渡せる限り、西ロンフォールの森に冒険者があふれかえっている。
私が知る限り、ヴァナディールでこんな大規模なイベントが起こったことはない。
誰もが冒険を忘れたように。クエストやミッションの苦労は誰からも聞こえない。
ロンフォールの森で、思い思いに雑談を交わし、あるいはただ、風景を眺めている。
冒険者にとって、ヴァナディールで時間を過ごすことが、何にも代え難いというように。
「街に人がいないと思ったら。外でイベントをやってたのね。
ねぇコーネリア。デュミナスの時代って、こんなに平和だったの?」
「闇に落ちた世界と、過去は同意です。この光景は遠い過去に違いありません、が」
金色の泡をあちこちへ飛ばしながら、コーネリアは油断無く辺りをうかがっている。
「この世界に、デュミナスの影はおろか、闇の王の存在も感じません」
コーネリアの体を、すれ違った冒険者の肩がすり抜ける。彼女は物憂げに笑った。
「この世界に私がするべきことはない証拠ですね」
「コーネリアになくても、私にはあるってことね。この世界に呼ばれた意味が」
83 :
デュミナス・ヴァナディール 3/10:04/12/18 19:29:55 ID:DdbBsCa7
人混みを逃れて、私たちは城壁の影で着替えをすませた。
どういうわけだか知らないけど、お祭りに参加している人々はみんな軽装なのだ。
冒険者らしい人にしても、初期装備に毛が生えたような防具しか着ていない。
「アダマンキュイラスなんて着てたら、目立ってしかたないっての」
理解できない状況下で注目されるなんて、敵陣の中でインビンジブルを使うくらい自殺行為だ。
「初期装備を持ってて助かった……っと。おまたせ、コーネリア」
着替えている私をマントで覆ってくれてたコーネリアは、小さく頷いた。
「冒険者よ。砂時計の機能は、時間を越えて冒険者を派遣する力。
ヴァナディール・サンドリアへの道筋は、私があなたたちを必要としたから、
開けました。だから」
「同じように、誰かが私を必要として、この世界へ導いたってこと?
だったら、砂時計を使った仲間も一緒に来るはずでしょ。どうして私だけ」
愚痴りながら、遠くで賑わうお祭り風景を眺める。
「石像と獣人に占領された街を開放しろ、って話なら目的はわかりやすいのに。
こんなお祭りの中で何をしろっていうの?」
途方にくれて見上げたサンドリアの城壁には、旗が揚がってない。
バストゥークから来たというガルカの話が聞こえたけど、彼の口からは、
誰もが熱波にうんざりするセルビナ海岸の暑さは語られない。
レベル30を越えた冒険者は、ソムログを歩く時に敵に見つからないルートがない、と泣いている。
「インビジ系の魔法がない世界ってわけじゃ、ないわよね。使ってるタルタルはあそこにいるし」
84 :
デュミナス・ヴァナディール 4/10:04/12/18 19:31:22 ID:DdbBsCa7
城門からラテーヌへ伸びる林道のそばに座り、そのタルタルはサンドリアの城門を
見上げていた。
彼は身じろぎひとつせず、肩に載せた何かを構えるようなポーズで自分を取り囲む
群衆を向いている。
「インビジを使って隠れてるタルタルがそんなに珍しいのかしら」
透明のタルタル前には、数十人のタルタルが横並びで座っている。彼らの後ろには
更に大勢のパフォーマーが、それぞれに芸を展開している。
「まるで子供をあやしてるみたい」
ロンフォールのお祭り騒ぎを目指してやってきた旅人は、透明のタルタルがここに
いると聞いていたのか、汚れた装備で坂道を登ってくる。
「冒険者よ。あなたの砂時計を貸して下さい」
「ん、いいよ……って、コーネリア。時計を捨てれば、元の世界へ帰れるのよね、私。
ここはデュミナスに違いないんだから」
「おそらくは。しかし、あなたがこのデュミナスから脱出すれば、何も変わることは
ないでしょう」
そう言いつつ、コーネリアは砂時計の頭を人差し指で叩いた。
「私に負わされた責任は多いってわけか……って、何やってるのコーネリア」
コーネリアが触れた砂時計の頭は、青白い花を咲かせていた。いや、それは
とても小さなルーン文字で構成された、魔法陣。
コーネリアは、魔法陣に問いかけるように、私が知らない言語を唱えた。
85 :
デュミナス・ヴァナディール 5/10:04/12/18 19:32:31 ID:DdbBsCa7
「砂時計に留まる人の思いは、この時代を覚えていたようです」
そう言ったコーネリアの視線は、砂時計が咲かせる魔法陣に落ちたまま。
「この世界は近く、転生の時を迎えます。
ガルカだけではなく、人もミスラも……獣人も」
コーネリアの話を、素直に受け取れない。転生についての知識は、
バストゥークのガルカから聞きかじって、一通りは知っている。
「転生って、死んだ人が生まれ変わることを指すんでしょ?
コーネリアがどうやって得た情報か知らないけど、それって」
「ヴァナディールの歴史には、わずかな空白があります。
全ての存在が、その時を忘れていた時間。長くを生きるガルカにさえ、
その間の記憶はないと言います。
空白の時間を繋げる石碑があると聞いたことがありますが……どこにあるのか」
「誰もが忘れた、時間の空白、ね。
だったら、このお祭り騒ぎは、転生の前祝いってこと?」
「ええ。皆、それぞれに転生が訪れることを知っているようですから」
私の軽口を、コーネリアは真剣な顔で肯定した。
「って、うそ?冗談で言ったのに、私」
「生けとし生けるもの、全てが死に絶えるに等しい状況が、すぐに起きます。
砂時計の砂が落ちきる、あと三日と数時間の間に」
聞こえる祭囃子が、急に悲しく感じられた。
86 :
デュミナス・ヴァナディール 6/10:04/12/18 19:33:45 ID:DdbBsCa7
「私がこの世界に呼ばれたのって、転生を食い止めろってことなの?」
途方に暮れたまま、人気のない東ロンフォールの森を歩く。
デュミナスが闇の王の影響を受けた世界と考えるなら、サンドリアに
留まっていても仕方ない。ザルカバードへ向かい、転生の原因を探すつもりだった。
「……無理のようですね」
コーネリアは呆れたように、ラングモント峠を眺めている。
種族装備すら持っていないレベルの冒険者が、峠ヘ飛び込む順番待ちの列を
作っていた。
洞窟の奥から響いてくる断末魔の叫び。突入した冒険者が全く帰ってこないあたり、
洞窟の入り口には死体の山が築かれているだろう。
「転生の前に腕試し、っていっても無謀すぎるわ、あれじゃ。
テレポヴァズは不思議な力でかき消されるし……どうしたもんだか」
やりきれない気持ちで、サンドリア城を振り返った。その私の視線に、赤い鎧の
一団がひっかかった。
「うわ。久しぶりに見た」
彼らを何と呼んでいただろう。全身を赤い甲冑で包んだ騎士団。その装備は、
炎の色をしたオーラを纏って、王国の騎士とは全く違う威厳を放っている。
東サンドリアを流れる川に足を浸し、赤の騎士団が十人以上も集まって
何かを話し込んでいた。
87 :
デュミナス・ヴァナディール 7/10:04/12/18 19:35:24 ID:DdbBsCa7
「引き留めてごめんなさい。赤の騎士なら、ご存じかと思って。
これから起こる転生の原因」
騎士団の打ち合わせが終わるのを待って、私は騎士をひとりつかまえた。
いぶかしそうにする騎士に、私は荷物から装備を取り出した。
愛用のアダマンキュイラス、レリック装備。私の銘を入れた片手剣。
この世界の誰も、装備していないアイテム。その数々に、騎士は驚きの声を上げた。
『すごいものだな。実用を考えれば、ジャッジ装備の効果が味気なく思える』
騎士は、私のヘラクレスリングにひとしきり感心し『なるほど』とひとつ頷いた。
『君が未来の冒険者だと信頼しよう。ようこそ、カオスへ』
騎士は私と握手すると、自らアーメットのフェイスガードを上げ、素顔を見せてくれた。
口元を髭で覆われた丸顔は、いかつい鎧とはひどくアンバランスで、人なつっこい。
寝不足なのか、充血した目は疲れていて、彼の仕事の過酷さを悟れた。
『どうだ。君にしたら、物足りなく思えるだろう?
各国を繋ぐ交通手段は、まだ開通していない。バストゥークの跳ね橋は
意味もなく動いているだけだ。
おまけにギルドが活動していないから、簡単な装備や食事すら作れない状態なんだ』
「だから、あれだけお祭り騒ぎしてるのに、花火がひとつも上がってなかったんですね」
『ほぅ、花火ね。……予定になかったな。
いやいや、うちの事情でね。
それより……そうか。転生の原因を知りたいか』
88 :
デュミナス・ヴァナディール 8/10:04/12/18 19:36:53 ID:DdbBsCa7
『確かに君の言うとおり。これから転生の前準備が始まる。
全ての冒険者には、一旦休んでもらう』
「まるで、騎士さんが転生させるような……」『似たようなものさ』
赤い甲冑の騎士は、細い目をさらに細めて笑うと、話を続けた。
『俺達は、ヴァナディールに生きる全冒険者の望みを、最も良い形で叶える。
君の言う転生に関わっていて当然だろう?』
私は、自然に頷いていた。……なぜだか、騎士の言葉に、思い出したことがある。
『転生の後、生きたいと望む全ての冒険者の希望を叶える。
彼らにはより広い世界と、自由を与えよう。君が知る世界の始まりだよ』
やっと始まるんだ、と騎士は言った。
『だから、今日はヴァナディールの終わりではないよ。
長い長い、永遠に続く冒険の始まりだ。だから皆、待ちこがれている。終わりをね』
ヴァナディールの始まりを、目撃する幸運。騎士は言う。全ての冒険者は
それを期待していると。
まだ始まっていない。不完全なこの世界は、冒険者と共に終わりを迎え、転生を待つ。
『君がするべき仕事はないよ。我々のスケジュールは滞り無く進んでいる』
しかし、と騎士は私に真正面から向き直った。
『私には、君に聞きたいことがある。
君がこれから死ぬとしたら、転生を選んでくれるかい?
まだヴァナディールで生きたいと望んでくれるか?』
89 :
デュミナス・ヴァナディール 9/10:04/12/18 19:37:51 ID:DdbBsCa7
夕暮れに染まるサンドリアの空に、祭囃子が響いている。
「冒険者よ。あと二十分で、砂時計の効力は失われます」
「そう。ったく、結局、私がここへ何のために呼ばれたのか、わからなかったわ」
東サンドリアのお祭り騒ぎに戻ってきて、ただ時間が過ぎるのを待つ。
終わりを待つ、人々の喜び。新しいヴァナディールの始まり。
残り少ない時間を生きる人々の期待を応援できると、私の仲間は何人言えるだろう。
「彼に、私の姿は見えなかったようですね」
砂時計を手に、コーネリアは群衆を眺めている。
転生を待つ冒険者に囲まれて、赤い甲冑の騎士は何やら礼を言っている。
「人気あったのねー、あの人。知らなかった」
「……冒険者よ。どうしてあの時、騎士にあんな答えを出したのです?」
そう聞いてきたコーネリアは、ひどく神妙な顔をしている。
「ん?私があの髭面に言ったこと、気に入らなかった?」
「あなたの考えに口出しするつもりはありません。
しかし、彼が期待していた答えは」
「わかってるわよ、そんなこと。
カオスにタイムスリップしたせいか、転生前の記憶が戻ってるんだから」
誰もが待ちこがれていた時間がやってくる。
他の場所にいる仲間と、リンクシェル会話が通じないという声があちこちから響いた。
遠くから津波が押し寄せるように。サンドリアへ終末が訪れる。
90 :
デュミナス・ヴァナディール 10/10:04/12/18 19:42:25 ID:DdbBsCa7
「終わった……わね」
サンドリアの丘陵を抜ける風に、冒険者達の髪はなびかない。
凍ったように動きを止めた群衆は、幻だったように次々と消えた。
アダマンキュイラスを着込んだ私は、サンドリアの城壁を斜め前から
眺める辺りへ、ゆっくりと歩み寄った。
「どうするつもりです、冒険者……シェリーよ。砂時計の効力はもう」
「ちょっと待ってね。よーく目を凝らさないと見えないんだから」
インビジで姿を隠したタルタルは失せている。パフォーマーが囲んでいた
辺りには、銃のような形をした不可視の物体が転がっていた。
コーネリアは金の泡で銃を照らし、その形を露わにした。
Vana'diel Windと銘が刻まれたそれは、銃口をガラスで塞がれている。
「銃ではないようですね。砂時計とは比べ物にならない、
大勢の人々の念が……いえ。今もまだ、どこからか念を注がれています」
「ご名答、コーネリア。転生を待ちきれない魂がこれに宿ってるの。
だから、終わらせないと」
私は剣を抜いた。
「転生の後、待ち受ける世界にあるのは、騎士が言うような希望だけじゃないわ。
だけど……だけどね」
いつかまた、迎える終わりの時にもお祭り騒ぎになればいい。
転生の終わりにある幸せを願い、私は剣を振り下ろした。
91 :
既にその名前は使われています:04/12/18 19:43:40 ID:h/J9E6Uq
βの話か
おもしれえええ
92 :
既にその名前は使われています:04/12/18 20:09:02 ID:h/J9E6Uq
ほしゅ
93 :
既にその名前は使われています:04/12/18 20:40:36 ID:q50rhB9Y
βをデュナミスとしたのか…面白いな
94 :
既にその名前は使われています:04/12/18 20:42:03 ID:h/J9E6Uq
ほしゅ「
95 :
既にその名前は使われています:04/12/18 21:35:15 ID:zsBl6E5p
おもしろかった!
96 :
既にその名前は使われています:04/12/18 22:20:15 ID:uxiEYYj6
神
おもろかった
97 :
既にその名前は使われています:04/12/18 23:33:16 ID:ZHm+R8IO
面白い。文章もうまいし。うらやましい。
ただ、俺は最近始めたので
いずれやってくるサービス終了の話をしてるのかと思ってた。orz
βのときの終わりってこんなんだったんだ。
Gustaberg
我は突き進む 荒れ果てた荒野 未だ見ぬ土地へと
我は突き進む 灼熱の砂漠 極寒の雪原
青い空の下 風を切り我は 未だ見ぬ土地へと
父なる大地と母なる海のもとに
想いを馳せる明日も 今日という明日を生き
過ぎ去りし日々に別れ告げ
前に進み行くは時と我が命よ
我は突き進む 果てしない大地
日が昇りやがてまた沈みゆき
日が昇りやがてまた沈みゆくと
雨もやがて止み 夜が明け朝がきて
広大なこの世界を再び歩いてく
99 :
既にその名前は使われています:04/12/19 01:23:08 ID:qjEt8KxR
あげとくか
100 :
既にその名前は使われています:04/12/19 02:10:53 ID:sADJ5wvf
〜竜の錬金術師 第5話 心の力〜
竜騎士はギルドの黒板に練成陣のサンプルを書き込んだまま手は止まっていた。
その練成陣には竜の姿らしきものが描かれている。
部屋の外の気配に気付くと竜騎士は素早く黒板を消し扉を開けた。
部屋の外にいた人物は、いつぞやのガルカであった。
仕事熱心な同僚のタルタルがいるのだが、ガルカとの仕事量の違いで悩んでいる彼を救いたいとの事だ。
タルタルとガルカの力量差は大きく、深く考え込んでいた時アズィマがつるはしを持って現れた。
これはサーメット製のつるはしで、コレさえあれば砕けない岩は無いとアズィマはそのつるはしを渡すと、ガルカは大喜びで帰っていった。
数日後、タルタルは鉱石をガンガン掘りまくり元気になったようでガルカはお礼に訪れていた。
喜んでいるガルカを見て竜騎士はサーメット製つるはしのレシピを聞くと、アズィマはこう答えた。
「そんなモン作った覚えはないでヨ、サーメットチップスが勿体無い…フェッフェッフェッ」
それを聞いていた周りの錬金術師達も目をそらし、しばらくの間沈黙が続いたという。
101 :
既にその名前は使われています:04/12/19 02:11:08 ID:l+dWzSbI
100げと保守
102 :
既にその名前は使われています:04/12/19 05:07:08 ID:qjEt8KxR
hoshu
103 :
既にその名前は使われています:04/12/19 07:57:07 ID:l+dWzSbI
保守
104 :
デュミナス・ヴァナディール:04/12/19 13:00:01 ID:BWx9Xq6U
読んで頂けてありがたかったです。
>>97 東ロンフォールでGM十人ほどが、川の中でたむろしてたり、
エリアサーバーが順に落とされていく様とか、大体が実話です。
105 :
既にその名前は使われています:04/12/19 13:36:43 ID:X3xfMYXk
あげ
106 :
既にその名前は使われています:04/12/19 14:08:24 ID:H2+tEoDa
age
107 :
既にその名前は使われています:04/12/19 14:29:16 ID:H2+tEoDa
なんかスレ数ふえたみたです。
一応報告です。age
876 名前: ( ゚Д゚) ◆wcNULLPOTE Mail: 投稿日: 04/12/19 14:20:52 ID: 8OxVE3Nn
>>874 保持数96で、128で圧縮になるらすぃ
108 :
既にその名前は使われています:04/12/19 15:46:56 ID:CYG0dBiT
age
109 :
既にその名前は使われています:04/12/19 18:06:11 ID:H2+tEoDa
age
110 :
既にその名前は使われています:04/12/19 19:00:07 ID:X3xfMYXk
ほす
111 :
既にその名前は使われています:04/12/19 21:46:23 ID:REgnINXa
hosyu
112 :
既にその名前は使われています:04/12/19 22:55:36 ID:H2+tEoDa
age
113 :
既にその名前は使われています:04/12/20 01:52:58 ID:xNK1biip
age
114 :
既にその名前は使われています:04/12/20 05:12:47 ID:xNK1biip
age
115 :
既にその名前は使われています:04/12/20 07:31:39 ID:HHawBYof
藻前ら保守するんなら、ついでに感想書くなり批評するなりしてやれや。
職人たち、それが一番喜ぶんだから。
反応なきゃ、やる気もなくなるぞ。
ついでにage
116 :
既にその名前は使われています:04/12/20 07:38:16 ID:7qPpfzhY
おもしろい
面白いからどんどん書いてくれ
117 :
既にその名前は使われています:04/12/20 07:39:19 ID:7qPpfzhY
初代スレの119のかただったから
同僚が死んだり仕事やめたりしたあの話の続きみたいですが!
118 :
既にその名前は使われています:04/12/20 12:00:41 ID:Ub96MfBP
ひとまず保守
119 :
既にその名前は使われています:04/12/20 12:16:22 ID:xNK1biip
竜のたまごをうばおうとする女竜騎士の話の続きが気になるage。
あと、競売をみていて行方不明なるミステリーを書くっていってた人は
どうなったんだage・・・・・・。
120 :
既にその名前は使われています:04/12/20 15:13:29 ID:zKHE0P9b
あげ
121 :
既にその名前は使われています:04/12/20 17:46:10 ID:xNK1biip
age
122 :
既にその名前は使われています:04/12/20 19:12:51 ID:hxlhZGV1
>>115 だなw
1スレに少し書いたが感想なかったのでもう書かねえw
俺の文才がないだけだし、淘汰されるのもまた良し
「こんな場所で俺にからんでくる奴がいるとは…!」
そう呟きタロンギ渓谷の細道を駆ける1人のタルタル。
険しい道を疾走しながらも、魔導師姿の彼は状況を冷静に分析することは怠っていない。
”相手も魔導師か。視界の悪いこの場所だと不覚をとりかねん。……この場所なら!”
しばらく走った後、見晴らしのいい広場に出た彼はその中央まで進むと振りかえり立ち止まる。
辺りに広がる静寂。
数分の後、背後に感じたかすかな気配を見逃さず振りかえった瞬間もう彼の右手には魔力が
集中し光球が完成している。が、その魔法が放たれることはなかった。自分の数倍の魔力で
作られたであろう大きさの光球が目前に迫るのを確認した直後、彼は意識を失った。
騒々しく開けられた扉の音に、室内で魔法の訓練に勤しんでいた魔導師達は一斉に非難の目を無礼な訪問者に向けた。
しかし当の本人はまったく気にせず大きな足音を立てながら奥へと進んでいく。やがて『院長室』と書かれた部屋の
前に辿りつき、さきほど同じように騒々しく扉をあけると同時に今度は大きな声で叫んだ。
「大変です!また被害者がでました!!」
室内いたのは2人のタルタル。そのうち眼鏡姿のタルタルが立ちあがると言葉に怒りをこめて答える。
「ノックくらいしろ。会議中だぞ。」
「あ、アジドマルジドさん!また口の院の魔導師が何者かに襲われました!」
アジドマルジドと呼ばれたそのタルタルは、伝令のその言葉に一瞬眉をしかめたが、慌てた様子は見せず問い直す。
「…ちょうどその話をしていたんだ。状況は?」
「はい!被害者は口の院黒魔導師団第1部隊所属ククルモクル!タロンギで意識を失って倒れている所を発見されました!
手口は今までと同様、強力な魔法を正面から1発!ですが、1週間ほど安静が必要なものの、命に別状はありません!
以上、口の院黒魔導師団第6部隊配属予定のハックルリンクルが報告しました!」
「前回までと同じ、か。」
報告を聞き終わったアジドマルジドはそう頷くと、部屋の中央、院長席に座っているもう1人のタルタルに向き直り話しかけた。
「これで今月に入って5人目の被害者です、院長。」
院長と呼ばれたのは一見優雅な雰囲気を漂わせるタルタルの淑女。だが彼女から発せられる言葉と威圧感がそんな雰囲気を
一瞬でかき消してしまうことは、口の院の魔道士のみならずこの国の人間ならば誰もが知るところであり、それは今回も同様であった。
「………口の院に喧嘩を売るとは、この私に喧嘩を売るのと同じ。私の恐ろしさを知らない者には、その罪の重さを充分に
思い知らせてやらねばなりませんわね。オーホホホ!!」
自分の報告から何かとんでもない事件が引き起こされるのではないかと、ハックルリンクルは不安げな表情のまま
高笑いを続ける最高司令官を見つめていた。
126 :
深緑の国の魔道士3+ ◆PezZpD8PV. :04/12/20 20:49:57 ID:RaHpFst2
〜次回予告〜
口の院に忍び寄る姿見えぬ敵。独自に調査を開始したアジドマルジドがたどり着く真実は…!
---
ごめんwとりあえずうpできるとこまでで保守がてらかきこww
・・・最低でも週1くらいのペースでは続けてオチまでつなげますんで【ゆるしてください】(´・ω・`)
まあ、誰も続き気にならなければ(以下略
127 :
既にその名前は使われています:04/12/20 21:01:16 ID:HHawBYof
>>126 感想とチョト違うが。
前のスレにも書いたんだが、Web上ってのはエラく読み辛いんよ。
特にこの手の、スレ形式は読みづらさ抜群。
>>124とか見ると、分かると思う。
あと自分で読む場合、文章知ってて読み辛さが半減するんで、それも計算に入れたほうがいい。
1文=1段落くらいだと、見やすいかな?
ともかく文章、小分けにすると吉。
だーっと書ける場所なら、かなり緩和されるんだがな〜。
読む側は、フォント小さくすると行間出来て、読みやすくなる場合アリ。
試してみるといいかも。
>>127 なるほど、確かに読みづらいですね。。
ご指摘ありがとうでした。以後その点も注意してみます。
129 :
既にその名前は使われています:04/12/20 23:44:40 ID:Ub96MfBP
今日あったことを一人称で綴れば、
それらしき話の出来上がり。
そういうのもありかなと思う。
130 :
既にその名前は使われています:04/12/21 01:55:51 ID:i/0P15Y9
>>127 文章の内容にも寄るかもしれないな。
あまりにも区切りすぎてしまうと切れ切れの印象を持ってしまう。
小泉首相の会見みたいなイメージな。(あれは意図があるから是非は問わないが)
改行されてしまうほどに長いと確かに見難いが、←1
そのバランスとるのも腕の一つかもしれないな。←2
個人的には各文の長さにメリハリがあると見やすいと感じる。←3
1と2みたいに同じような長さが続いてしまうと見づらいが、
2と3みたいに差があると、という感じで。
個人的には小フォントで入りきれるくらいが丁度いいと思う。
中フォント基準にすると一文の長さが短く感じられるんだよなぁ・・・。好みの問題だが。
131 :
既にその名前は使われています:04/12/21 02:14:50 ID:IgXbYkvi
なるほど。ではいろいろなケースを取り混ぜて書いてみましょう。
132 :
既にその名前は使われています:04/12/21 02:32:42 ID:UQBrylmm
GMが取り締まる規約違反とは、特定の人物やグループに対して、誹謗中傷や、精神的苦痛を与えるような言動のことです。
単純に嫌がらせを取り締まるということではなく、あくまで「社会通念上」許容しがたい行為に関して断固たる姿勢で臨むという事を意味しています。
FF11って、MPKやエモしまくり、TELLしまくりなんかも、ぜーんぶ正当なんだね。
言葉で不愉快なことをいわれているのであれば、ブラックリストへいれてみてください。
行動で行われているのであれば、「その場を立ち去ると良い」でしょう。
こんなくそげ辞めた方がよくない?ジョブバランスなんていくらとったって、将来どうなるか見えてるじゃん。これ。
今度から、邪魔なPTいたらさ、戦闘中に間に入ったりするわけ。
そうすりゃ、こっちは無罪。
人を悪い方向に向かわせるための言い訳を、規約で与えるとはさすが。
133 :
無銘の聖剣 1/2:04/12/21 02:45:25 ID:IgXbYkvi
『待たせたな、修復完了だ。
コレがボロボロだった、元レリックソード』
ズヴァール城の入り口に居座るゴブリンは、約束通りの仕事をした。
闇に堕ちた世界で拾った、無銘の古びた剣。
ゴブリンは、宝石や魔法耐性のある金属を使い、これを見事に修復した。
肩に積もった雪など気にもしない様子で、彼は自分の仕事を誇っている。
私は、戻ってきた元レリックソードで宙を薙いだ。北の凍てつく大気が、鈍い音で裂ける。
「……確かに、若干、剣が軽くなったわね。
でも切れ味は相変わらずみたいだけど?」
『おいおい、嬢ちゃん。高レベルの冒険者にしちゃ見る目がないな。
嬢ちゃんが拾ってきたのは、闇に沈んだ世界の魔剣だ。
故に、その真価は闇の中で発揮される。
デュミナスの闇を吸わせりゃ、剣がどうなるか……修復した俺にもわからんよ』
「信用するわ、あなたを。
この世界で、デュミナスの武器を修復できるのは、あなただけらしいし」
『ひいきにしてくれよな』
マスクに覆われたゴブリンの顔は、笑っているだろうと思った。
満足な仕事をした職人の声は、ギルドで聞き慣れている。だから、ゴブリンの素顔が
見えなくても、私には察しが付いた。マスクの下の、笑顔が。
『それより嬢ちゃん……お前さんに聞きたいことがある』
134 :
無銘の聖剣 2/2:04/12/21 02:46:40 ID:IgXbYkvi
『闇の王は、冒険者に倒されたらしいな』
本当か?と、ゴブリンは声を潜めて聞いてきた。
私が肯定すると、ゴブリンはズヴァール城内郭へ続く道を振り返った。
『それにしては、闇の王の影響がここに残っているようだが?』
「いろいろあってね。殺されたって死ねない奴が、この世にはいるってことよ。
……なんなら、一緒に王の間へ行く?剣を直してくれたお礼に、あなたの
目の前で闇の王を倒して見せるけど」
『よせ。そんなことをしたら仲間に殺される。
まぁ、俺が聞きたいのは別の話だ。
……嬢ちゃん。お前さんは、その剣で何を斬る?』
ゴブリンは魔物らしからぬ真剣な気配で、私を見上げている。
『嬢ちゃんが拾ってきた剣は、鍛えれば鍛えるほど強くなる。
バストゥークの職人が夢にも見ないほどの名剣に育つだろう。
この魔剣で、嬢ちゃんは何をする。獣人の殲滅か?』
「まさか。そんなの、冒険者の仕事じゃないわ。
それに、闇の王を倒した段階で、私たちの敵は魔物じゃなくなったの。
みんな、誰よりも強くなりたいと思ってる。他人と競争してるだけよ。
私はそんなんじゃなく、自分と仲間を守る力がほしいだけ」
『冒険者の敵は冒険者か。……嬢ちゃんは変わり者らしいが』
俺が生かされている理由はそれか、とゴブリンは低く笑った。
135 :
既にその名前は使われています:04/12/21 02:56:05 ID:IgXbYkvi
できるだけ改行してみたつもりですが。
ウェブで読みやすくするのは難しいですね。。
136 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/21 03:24:56 ID:9Vsgddbl
>>135 うんにゃ、読みやすかったです。
文章うまい人はうらやまし〜。
>>129 リプレイとかいうやつですな。
おもしろそう。
137 :
既にその名前は使われています:04/12/21 07:23:51 ID:iM6Pl5yX
あげ
138 :
既にその名前は使われています:04/12/21 07:37:37 ID:WV/V95Tx
>>135 言い方悪かったかな。
>>127の言ってる事に加えて、『改行して、行間空けてみよう』ってことなんだわ。
↓例えて言うとこんな感じ。
『待たせたな、修復完了だ。
コレがボロボロだった、元レリックソード』
ズヴァール城の入り口に居座るゴブリンは、約束通りの仕事をした。
闇に堕ちた世界で拾った、無銘の古びた剣。
ゴブリンは、宝石や魔法耐性のある金属を使い、これを見事に修復した。
肩に積もった雪など気にもしない様子で、彼は自分の仕事を誇っている。
私は、戻ってきた元レリックソードで宙を薙いだ。北の凍てつく大気が、鈍い音で裂ける。
「……確かに、若干、剣が軽くなったわね。
でも切れ味は相変わらずみたいだけど?」 (後略)
『おいおい、嬢ちゃん。高レベルの冒険者にしちゃ見る目がないな。 (後略)
139 :
既にその名前は使われています:04/12/21 07:50:16 ID:iM6Pl5yX
俺は行間空けないで欲しいほうだな。
行間空いてると安っぽく見えるし。
140 :
既にその名前は使われています:04/12/21 07:52:22 ID:B6aqkHid
改行が増えて困る環境の奴もいるわけで
僕は彼女からの別れの手紙が届いて、僕の同僚はウィンダスティーを
まずそうに飲んだ。
僕と猫はとても美味しいサーモンのムニエルを出す店で出会った。
猫は冒険者で、僕は色々な料理を食べてお金を貰っている仕事をしていた。
僕と猫は次の日にまた会い、語り合い、おおいに食べ、sexをした。
僕の同僚が死んだ。
Remoが住んでいた家が燃えていた。炎は両隣も飲み込もうと
していた。炎は赤く燃え上がり、黒い煙を吐く。魔道士たちが到着し、
消火活動をはじめる。
「完全な鎮火には時間がかかりそうね。魔法の火みたいだから」
と、猫は揺れ動く炎を見つめて瞳をキラキラさせながら言った。
家から大きな爆発がおき、青白い炎の柱が一瞬できて、そして
しばらくしたあと、もう一回大きな爆発音がした。
「火薬の燃える音と臭い。あの家で花火でも作っていたのかしら。それとも・・・」
僕は彼の家をじっと見つめる。遠くで飛空挺が飛び立つ音が聞こえる。
朝。空は曇っている。白い部屋。何もない。僕と事務の小人だけだ。僕は彼女に
数日分の給料をすこし多めに渡した。小人はそれを両手で受け取った。
「すこしいいかな。二、三言いたいことがあるんだ」
と僕は言った。
「はい、なんでしょう」
と小人は言った。
「今日まで本当にありがとう。君はとても優秀だった。助かったよ。そして君に
おそらく最初で、最後の小言を言わせてもらう。年長者らしくね。いいかい、
人生で一番大切なものはなんだと思うかい?それは信頼だ。信頼される人に
なるんだ。人を信頼するんだ。特に若いころはね。そして若いうちに多くの
種類の人と出会い、臆さず話すんだ。君が将来どのような職業につくことに
なっても、この信頼、信用の重要さはかわらない。お金は二の次だ」
小人は僕にうなずいてみせた。
「いいかい」
と僕は言った。
「大切なものは信頼だ」
僕は小人と別れたあと、猫が住むモグハウスがある方向へ歩きはじめた。
僕はモグハウスのドアを叩いた。しばらくして猫が顔をだしてきた。
「釣りをしよう」
と僕は言った。
「わかったわ」
と猫は言った。
猫はモグハウスに戻り、釣り竿とカバンを持って
出てきた。僕と猫はウィンダス港にある釣りギルドに向かい、
僕はそこで釣り竿と餌を買った。そして二人で東サルタバルタへ
歩いていった。南の海岸に腰をおろし、竿をたらす。僕たちの
ほかに釣り人の小人が2人いた。僕は言った。
「今日、仕事を辞めたんだ」
145 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/21 08:11:25 ID:rKBoAgy3
「僕は色々な料理屋を紹介する雑誌を友人と作っていたんだ。
その友人が先日死んだんだよ。雑誌を作ることは僕一人でも
続けられるけれど、彼がいないと楽しくないことに気づいたんだ」
「その友人はどのような人だったの?」
146 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/21 08:13:32 ID:rKBoAgy3
Remoは幼馴染みだった。物心つくころには隣にいた。12歳くらいの頃、
学校から帰ったあと、彼は毎日僕を誘って街の近くの荒廃した山へ
連れて行った。そこが僕らの遊び場だった。そこで毎日飽きずに
忍者ごっこをしていた。その山に蜂を飼って蜜蝋を作り生計を立てていた
初老の男が住んでいた。その男とふとしたことで知り合い、僕たちが
蜜蝋を作る手伝いをするお礼として、男は色々なことを教えてくれた。
男は忍者だった。割いた竹で火を焚く方法から、梵字が書かれた
人の形をしている紙を使い自らの幻影を作る術まで、付き合いの
あった3年間の間、僕たちに教えてくれた。一部の高位忍術までも
教えてくれたのだ。男にしてみれば暇つぶしのついでにやったこと
だろう。しかし僕たちはその出来事を通じて『僕たちは本当の忍者の
弟子である』という甘い果物のような2人の秘密を持ったのだ。
147 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/21 08:15:06 ID:rKBoAgy3
僕の家の隣は空き家だったのだけれど、そこに鋼鉄銃士の
家族が引っ越してきた。その鋼鉄銃士の娘は僕と同い年で、
とても魅力的で、行動的で、勉強もできて、にっこり笑うと
えくぼができるかわいらしい子だった。僕と彼女はすっかり
意気投合し、僕は彼に彼女を紹介した。しばらくして甘い
果実は3人で食べることになった。そして僕と彼は彼女に恋をした。
148 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/21 08:16:46 ID:rKBoAgy3
結果から言うと僕は彼との戦いに勝利した。その勝因は今から
してみれば彼より僕のほうが魅力的だったというのではなく、単純に
将来就きたい職種が近かったことだとと思う。彼は政治に興味を持った。
僕と彼女は魔法を学びたかった。彼は士官学校に入学し、僕と彼女は
より高度な魔法を学ぶために上級の学校に入った。彼は僕と彼女より
2年早く社会に出て、大手の新聞社に就職した。その1年後、彼女が
小さな法律事務所の内定を取った頃、彼は新聞社を辞め、ウィンダスへ
旅立つ準備をしはじめていた。そして僕を誘ってきたのだ。
僕はその誘いにうなずいた。二人で山を越え、船に乗り、峡谷を抜け、
ウィンダスへたどり着いた。
149 :
既にその名前は使われています:04/12/21 08:16:54 ID:/8VRgAiK
つまらんな俺もプロだけど話にならん
150 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/21 08:18:27 ID:rKBoAgy3
ウィンダスでの仕事は大変厳しかった。2,3年は雑誌が
まったく売れなかった。返品されてきた雑誌を自分たちで
鍋で煮て攪拌し、薬品を入れインクを分解させ、製紙して
使いなおした。軌道に乗ったのは購買層をウィンダスに住む
バストゥーク人に絞り、政治的な記事を載せるのをやめ、
完全な料理雑誌にした頃からだった。
151 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/21 08:20:20 ID:rKBoAgy3
ウィンダスに住むバストゥーク人の多くは国に家族をおいて単身赴任という
形で仕事をしにきている。自然外食になるのだけれど、おいしい料理屋を
本格的に紹介したり、簡単でお手軽にできる料理の作りかたを載せている
バストゥーク人向けの雑誌は不思議なことになかったのだ。
僕とRemoはとても忙しくなり、学生の小人を一人雇った。小人はとても
優秀で、事務のほかに多くの雑務をやってくれた。僕たちは度々3人で
仕事のことや将来の夢や明日つくる料理のことを語り会った。とても充実していた。
152 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/21 08:21:14 ID:rKBoAgy3
僕は泣いていた。水平線をじっと見つめながら泣いているのだ。
「とても充実していたんだ」
と僕は言った。
「しかし彼はもういない」
猫が左手を僕の腰に回しそっと抱き寄せ、右手で僕の髪をいじりはじめる。
「彼はもういないんだ」
僕は泣いていた。猫の胸の中で泣いていた。
119キター
スレ落ちるたびに粗筋オツカレ
>>149 1行でこれだけ突っ込み所のある文が書けるなんて
流石プロと思いました。
154 :
既にその名前は使われています:04/12/21 14:23:51 ID:L7ZlqRa9
あげ
155 :
既にその名前は使われています:04/12/21 14:30:11 ID:4ou05Yoo
神光臨!?
156 :
一人で、1:04/12/21 16:49:42 ID:mOsXfsAd
俺の名はソロ。
名前の通り、たった一人で戦い続ける孤高の男。
そんな俺は今、大ピンチに陥っていた。
そこは入り組んだ天然の迷宮。
自生する植物は素っ気なく、ただ立ちこめるは硫黄にもよく似た臭い。
所々にある水溜まりに生命の鼓動は感じられず、たまの広場には石の柱が障害物となり視界を遮る。
そうここは・・・ダングルフの涸れ谷。
俺の目の前にいるのは、ゴブリンブッチャー。
そう俺はそのブッチャーに追われているのだ。
157 :
一人で、2:04/12/21 16:50:49 ID:mOsXfsAd
1時間前。
バストゥークのガードは俺の顔を見た途端、そのくたびれた顔をさらにくたびれさせた。
「お前は・・・」
だが、俺はそんなことは気にしない。
いつも通り、
「シグネットを頼む」
ガードの顔からは溜息が出る。
「相変わらず独りか」
「余計なお世話だ」
「仲間を作った方が良くないか?」
「うるさい」
「ホームポイントでお前を見る回数が増えて憂鬱だ」
「知らん」
「・・・・死に過ぎだ」
その一言でプチッ、と。
来た。
158 :
既にその名前は使われています:04/12/21 16:51:13 ID:V57dU5UT
c
159 :
一人で、3:04/12/21 16:51:51 ID:mOsXfsAd
「あー、そうだよ俺は死に過ぎだ!
この前だってやっと習得した魔法が使えなくなったさ!
ぶっちゃけ言うとエンサンダーが使えないさ!
死んだ回数も成人式間近ですとも!
悪いか死に過ぎで!」
「・・・落ち着け」
息を切らす俺にシグネットをかける彼。
気付けば周りのパーティがこちらを見ている。
「・・・・行ってくる」
俺はそう言うと歩き出す。
その背中に、ガードの彼はいつものように言った。
「ホームポイントの辺りはバザーしないように言っておく」
で、この様だ。
背後から追いかけてくるゴブリンから逃亡する俺。
折を見て唱えるケアルだけが命綱。
ドレインを唱えられてない奇跡にも乗っかって俺は逃げていた。
160 :
一人で、4:04/12/21 16:52:44 ID:mOsXfsAd
「クソックソッ! 本当に! 俺は!」
目の前に大きな段差。
あそこを降りれば誰かがいるかもしれない。
もしくはゴブリンが諦めるかもしれない。
「ツいてないぜっ!」
思い切って飛び降りる。
そして無事着地。周りを急いで確認した。
(いた!)
視界の端に一人のタルタル。装備からしておそらく白魔道士。
後ろのゴブリンは喜々として追いかけてくる、だがまだ望みはある!
「助け・・・・」
てください、と繋ごうとする。
だが、俺の中の何かがそれを邪魔した。
「・・・俺は助けは請わねえ」
そうだ。俺は一人で戦うと決めた。
今更、今更引き下がれるか!
「連続魔!」
俺を縛る魔法の鎖が外れ、呪文の羅列がゴブリンを包み込んだ。
「でぃりゃあああああ!」
161 :
一人で、5:04/12/21 16:54:49 ID:mOsXfsAd
「成人式、おめでとう。ソロ」
「嬉しくねぇ」
「その祝いとして呪符デジョンと呪符リレイズをくれてやろう」
「いらねぇ」
「おめでと〜、死亡二十回目〜」
「殴るぞ」
「じゃあな」
そう言うと巻物二つを投げつけて奴は歩いていった。
そして・・・・
「きっちり戦績ポイント持ってきやがった・・・・」
俺の名はソロ。
名前の通り、たった一人で戦い続ける孤高の男。
そして、未だにエンサンダーが使えない赤魔道士だ。
改行多すぎた・・・orz
163 :
既にその名前は使われています:04/12/21 17:12:01 ID:WV/V95Tx
>>162 おもしろかったよ〜。
改行多いか? なんとも思わなかったが。
164 :
既にその名前は使われています:04/12/21 19:02:08 ID:slDx+6TG
165 :
既にその名前は使われています:04/12/21 19:06:33 ID:slDx+6TG
119サン続きキボンヌ
166 :
既にその名前は使われています:04/12/21 19:08:51 ID:slDx+6TG
赤まどうしの人へ
お話ありがとう
逃げる途中でケアル使うと追いつかれてよりピンチになれる件について。
167 :
既にその名前は使われています:04/12/21 21:56:26 ID:zgWujnXE
>>139 ハゲドウ
行間開けるのは舞台というか、場面が大きく変わったときだけでいいと思う
行間開けたところでそこまで読みやすくなるわけでもない
(むしろ、行間開けすぎることでテンポや流れが途切れることも多いし)
限度はあるが作者の好きなように書くほうが一番じゃないかな
168 :
既にその名前は使われています:04/12/22 01:44:51 ID:0cAlLu1M
保守
169 :
既にその名前は使われています:04/12/22 02:21:41 ID:+HdAXBd6
119の作品はトリビューンに載せるべき。
170 :
既にその名前は使われています:04/12/22 03:06:31 ID:P8A7/TDa
age
171 :
既にその名前は使われています:04/12/22 05:42:11 ID:Fmt24XXq
落とすには惜しい
172 :
既にその名前は使われています:04/12/22 07:47:59 ID:2RiKbxkw
age
173 :
既にその名前は使われています:04/12/22 11:52:32 ID:QoonUCk1
age
174 :
既にその名前は使われています:04/12/22 12:29:07 ID:2RiKbxkw
175 :
既にその名前は使われています:04/12/22 14:31:05 ID:P8A7/TDa
age
176 :
既にその名前は使われています:04/12/22 17:20:27 ID:P8A7/TDa
age
177 :
既にその名前は使われています:04/12/22 20:12:35 ID:PUHML9NQ
age
178 :
既にその名前は使われています:04/12/23 02:16:11 ID:iWBYv4/C
ほしゅ〜
179 :
既にその名前は使われています:04/12/23 03:33:11 ID:Hg0LOxYi
age
180 :
既にその名前は使われています:04/12/23 11:42:08 ID:u9kPawvz
保守
シーフのジョブアビリティ「絶対回避」に関する考察
暗殺者のことを英語でアサシンとも呼ぶ。アサシンはハシシを意味する。
かつて異国「アラブ」の暗殺者達は、こうした麻薬の摂取・服用により、
身体的・精神的に自我を別の高みに置き、事に及んだとされる。
その暗殺者たちをモデルにジョブスタイルが形成されたと思われる、この世界のシーフ達。
素早さと器用さ以外に然して特筆すべき身体的特徴のない彼らが、
「とんずら」「かくれる」等、生身で独自の驚異的な体術を成し遂げるのは、
彼らの中に脈々と息づく麻薬文化の発露と言えるだろう。
彼らの基本にして最後の奥義とされる「絶対回避」。
発動の歳に、彼らは事前に自ら仕込んだ麻薬を摂取し、常軌を逸脱した眼力を引き出すのである。
この麻薬はミスラ族に伝わる秘伝の即効性神経毒で、イフリートの釜に生息する希少な蠍の爪を元に精製される。
致死量は極めて低く、連続使用は使用者の生命活動に深甚な影響を及ぼす為、
再使用に少なくとも2時間の間を要求されるようだ。
我ら錬金術師の間でも、未だこの神経毒の調合法は明らかにされていない。正に彼らの秘伝と言うべきか。
尚、近年骨細工ギルドにより開発された装備品の中には、この蠍の爪を素材とする物がある。
ただ普通に装着しただけでも、その強烈な毒性は皮膚を介して使用者を冒し、
先述した「絶対回避」に近い肉体的特徴を、継続的に引き出す。
その効果から、特に忍者に愛用者が多いが、
その忍者に往々にして短命な者が多い統計データは、骨細工ギルドにより隠蔽されている。
Sieglinde
183 :
既にその名前は使われています:04/12/23 14:09:43 ID:Hg0LOxYi
>>181-182 設定の解釈か、こういうのもおもろいね。
でも、これ読むと二時間アビはみんな麻薬使ってるように思えるね^^;
ソウルヴォイスとか麻薬でハイになってそう。
185 :
既にその名前は使われています:04/12/23 14:37:29 ID:hr7fV3zt
そうすると百烈ってどう考えてもクスリで自分の
リミッターを解除してるっぽいな…
186 :
既にその名前は使われています:04/12/23 20:14:54 ID:Hg0LOxYi
age
187 :
既にその名前は使われています:04/12/24 01:24:17 ID:pFVNLhZ7
保守。
188 :
既にその名前は使われています:04/12/24 03:01:41 ID:Bw20v9Ko
寝る前に保守。
189 :
既にその名前は使われています:04/12/24 10:20:47 ID:pFVNLhZ7
保守
190 :
既にその名前は使われています:04/12/24 13:16:22 ID:nqSY1sfJ
ほし
191 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/24 15:00:30 ID:J+Sx4GwI
保守。
192 :
既にその名前は使われています:04/12/24 15:25:30 ID:Bw20v9Ko
吹き荒れる保守の嵐。age
今まで(
>>123-125)のあらすじ:
シャントット院長時代の口の院にて、魔道士が何者かに襲われる事件が発生。報告を聞いたアジドマルジドは…。
---
アジドマルジドが口の院を出て自宅に到着したのは、もうじき日付も変わろうかという深夜だった。院長が適当だと下の人間が大変だ。
まあ自由に動き回れるのは悪くないが。。などと考えながら自宅のドアを開けた彼は、目に飛び込んでた物体に呆気にとられつつ呟く。
「…なんだこりゃ。」
それは、一見ただのカカシのような、しかしその中身はウィンダス連邦において口の院の魔道士団に次ぐ戦力であろう、
カーディアンと呼ばれる魔道兵器。しかし、玄関から台所、果ては居間に続くまでいたる場所に転がっているそいつらは
どれも未完成であり、今のところはただの邪魔な障害物でしかない。通路に横たわるカーディアンをまたぎなが台所に入ってきた彼は、
キッチンに図面とカーディアンの部品を広げて黙々と組み立て作業を続けている妹の姿を見つけ、再度尋ねた。
「なんだこりゃ。」
「…カーディアンよ、お兄ちゃん」
「そんなの見ればわかる!なんでこいつがこの家にあるんだ!」
「……しょうがないじゃない!」
予想しなかった妹の剣幕に思わず後ずさるアジドマルジド。
「予算がおりたからカーディアンの部品を大量購入したはいいけれど、まさか貸し倉庫の契約が先週で切れてたなんて!!」
「…それで、手の院工房長のアプルルさんがひきとって帰ってきた、ってわけか。」
頭の回転の早い兄は、相手を刺激しないようゆっくりと自分自身と妹に言い聞かせた。それを聞き妹もまた黙って作業に戻る。
「ところで、晩飯は…」
遠慮がちに尋ねたアジドマルジドを振り返ることもなく、アプルルは作業を続けたままテーブルの上を指差した。
そこにあるのは裸で転がっている数個のサルタオレンジ。
「…ああ、また部品の数が足りないわ!どーなってるのかしら!!」
何か言おうとした口を閉じ彼は黙ってテーブルについた。向かいの椅子には完成間近のカーディアンがチョコンと座っている。
「………お前も食うか?」
返事はない。軽いため息をつきながらアジドマルジドはサルタオレンジの皮を剥きはじめた。
「アジドマルジドさん!お時間いいですか!?」
そういって口の院の一角にあるアジドマルジドの個室のドアを大きな音で開けて入ってきたのはハックルリンクルだった。
あの日、この事件の5人目の被害報告をこのハックルリンクルが行ったとき、シャントット院長の対応は拍子抜けするものだった。
『犯人は口の院の魔道士を狙っているのでしょう?』
『そのようですね』
『だったらそのうち私のところにもノコノコと顔を出すに違いありませんわね?』
『…かもしれませんね』
『でしたら、そのときにこの私がじきじきにとっ捕まえてあげますわ!オーホホホ!』
と、口の院としての対応は「何もしない」ということであった。これを聞いていたハックルリンクルはたまらない。
先の大戦で黒魔道士団を率い最前線で数々の戦果をあげ”連邦の黒い悪魔”と敵味方から畏怖されたこの院長ならば、
確かに謎の襲撃者を撃退することはできるだろう。また、その横にいる、院長の一番弟子であり若くして天才の名を
ほしいままにする口の院次期院長(たぶん)も可能に違いない。
しかし、なんとか口の院に入ったばかりの自分にそれができるとは思えない。
だからといって襲撃者が見逃してくれるとは限らない。
目の前が真っ暗になったとき、『調べてほしいことがある』と声をかけてきたのはその次期院長だった。
196 :
深緑の国の魔道士7:04/12/24 17:45:55 ID:rx2dvOt5
「アジドマルジドさんの言った通り、今までの被害者と同等もしくはそれ以上の能力を持つ口の院の魔道士を調べました。」
そういって差し出されたリストをアジドマルジドはじっくり眺めた。リストといっても名前があるのは全部でたった8人。なかなかの人材不足だ。
「…あの、アジドマルジドさん、本当に、この中に犯人が?」
おそるおそる尋ねるハックルリンクルを見て、アジドマルジドは自分も考えをまとめるようにゆっくりと話しはじめた。
「…もし犯人がヤグードなら、被害者はみんな命はないだろう。だが、みんな気を失っていただけで命に別状はない。
そして、被害者は全員それなりのレベルの魔道士で、みな魔法1発でやられてる。つまり、相手はかなりのレベルの魔道士であり、そして
口の院の魔道士の能力をかなり細かいところまで把握しているはずだ。こういった状況から考えると、もっとも怪しいのは、こいつらさ。」
そう言いアジドマルジドはリストをひらひらと動かして見せる。それを見て、ハックルリンクルは観念したように言葉を続けた。
「…その8人の中で、事件のあった日のアリバイがはっきりしていないのは、1人だけでした。」
「ほう。誰だ。」
身を乗り出してきたアジドマルジドの顔色を伺いながら、ハックルリンクルはもう1枚の書類を懐から大事そうに取り出し手渡す。
その内容を見た瞬間、さすがの若き天才もその表情は曇り、頭を抱え込み、喉の奥から絞り出すような声で短く呟くのがやっとのようだった。
「………院長。」
〜つづく〜
197 :
既にその名前は使われています:04/12/24 23:30:11 ID:mc7Br3sC
保守
198 :
既にその名前は使われています:04/12/25 01:58:34 ID:xXVR9g6x
む。職人乙。
199 :
既にその名前は使われています:04/12/25 07:45:39 ID:XlJbegZ8
乙
200 :
既にその名前は使われています:04/12/25 12:32:36 ID:IupoLNM0
age
201 :
既にその名前は使われています:04/12/25 13:48:53 ID:HQfl6Pib
202 :
既にその名前は使われています:04/12/25 15:26:41 ID:Kzt6N8oP
はやく〜age
203 :
既にその名前は使われています:04/12/25 16:54:45 ID:IupoLNM0
保守
204 :
既にその名前は使われています:04/12/25 19:54:12 ID:XlJbegZ8
あげ
205 :
既にその名前は使われています:04/12/25 20:03:39 ID:Xjvo0l3p
206 :
既にその名前は使われています:04/12/25 22:07:57 ID:G68pBhJV
207 :
既にその名前は使われています:04/12/26 02:29:02 ID:9TjbcTsZ
age
208 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/26 05:22:18 ID:+NtAmS9q
魚は一匹も釣れなかった。僕と猫はあのとても美味しいサーモンの
ムニエルを出す店に魚を食べに行った。
「旅に出ればいいと思うの」
店の一番奥まった2名用テーブルでウィンダスティーを飲みながら猫は言った。
「あなたは旅にでれば何か変わると思うの」
「さあ、どうなんだろう」
と僕は食べかけのムニエルを見つめながら言った。
「急なんだけれど、わたしは旅の仲間の一人と明日ウィンダスを出るの。
マウラにいかなければいけない。あなたも一緒にいけないかな」
猫は僕をじっとみつめる。僕は何も言わない。僕は店員にカモミールティーと
シナモンクッキーを注文した。しばらくしてカモミールティーが運ばれてきて、
僕はそれを一口飲んでためいきをつく。
「たぶん僕はいかないだろう」
「明日8時、森の区競売の三番窓口あたりで待ってる」
209 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/26 05:23:59 ID:+NtAmS9q
猫と別れ、僕は家に戻った。そしてベッドの上に寝そべり、
両手をみつめる。とても綺麗だ、と僕は自分の両手を見て
思った。気づかなかった。僕の両手はこんなに綺麗だったのか。
指は細く、しなやかで、傷もない。爪は短くよく整えられている。
肌は白く、青い血管が透けてみえる。
ベッドから起き上がり、書斎から青銅の箱を持ってくる。
鍵をあけ、その中から短剣を出し、じっと見つめた。
刃こぼれがひどく、使い物にならないだろう。柄は錆びた
鉄の臭いがする。僕は短剣を箱の中に入れ、青銅の箱を
もとにあった場所に戻した。
210 :
既にその名前は使われています:04/12/26 05:49:00 ID:ZGbhCkZE
待ってましたage
211 :
既にその名前は使われています:04/12/26 16:52:46 ID:LtwNrRfg
age
212 :
既にその名前は使われています:04/12/26 18:41:06 ID:ZGbhCkZE
あげ
今まで(
>>123-125)のあらすじ:
口の院魔道士を襲う犯人はシャントット院長!?疑惑を確かめるべくアジドマルジドが考えた策は…。
---
「あらあらまあまあ。今日は出席者が少ないことですわね。」
「他国への訪問、修行、病欠、、理由はいろいろですが、7人ほどしばらく会議は欠席です。」
口の院の定例会議。参加者の顔ぶれをみて不思議な顔をした院長にアジドマルジドはそう答える。
それを聞いたシャントットもそれ以上深くは追求せず、会議は始まった。
進行役としてアジドマルジドは議題を読み上げながらも、心はすでにこの会議にはなく
昨夜のハックルリンクルとの会話を思い出す。
『俺と院長以外の高レベル魔道士にはしばらくウィンを離れてもらう。』
『ええ、ってことはアジドマルジドさんがおとりに!?……でもそれって、わかりやすすぎませんか?』
『この短い期間に5人も立て続けに襲うような、短絡的な犯人だ。標的が1人だけになればそいつを選ぶだろう。
で、お前の役目は院長の監視だ。俺のことより自分の心配をしたほうがいいぞ。』
『え、ええ!?そんな!こわい!!無理です!!!』
『居場所をおさえておくだけでいい。口の院にいるのか、自宅にいるのか、ウィンダスを出たのか、がわかればいいんだ。簡単だろ?』
『…………うう、わかりました!こうなったら最後までつきあいます!』
『よし。気をつけろよ。昔サンドリアのスパイを院長が発見したとき、そいつは生きながらにして…』
『き、聞きたくありません!』
「…では今日の会議はここまで。」
シャントットの声が会議室に響く。それを聞き会議室を出ようとしたアジドマルジドに、参加者の1人が声をかけてきた。
「そういえば今週の補給物資配布当番が休んじゃってますけど、どうしましょう?」
「ああ、俺が代わる事になってる。」
院長にも聞こえるように、アジドマルジドは心持ち大きめの声で答えた。
「私は確かに納品しました!ちゃんと確認してください!」
おそらくはリンクシェルで会話しているのだろう妹の声を聞き、アジドマルジドは「ちょっと出かけてくる」という言葉を飲み込んだ。
そのまま玄関のドアを開け黙って家を出ようとしたアジドマルジドだったが、背後から呼び止められる。振り向くとリンクパールを
口元から離した妹が玄関まで出てきていた。
「お兄ちゃん、でかけるの?」
「ん、ああ。ちょっと補給物資を届けてくる。」
「こんな夜更けに?わざわざお兄ちゃんが?」
「人手不足なんだよ。先に寝てろ。」
「ふーん…いってらっしゃーい。」
そんなやりとりのあと、また妹はリンクシェル会話に戻る。もし、注意深く兄の格好を見ていれば、その服装がタロンギやブブリムを
歩き回る装備ではないことに妹は気づいたかもしれない。愛用のブラッククロークを身につけ、兄はウィンダスを後にした。
だが、そんな周到な準備をよそに、その日も、その翌日も、何も異常のない日が続いた。思い違いだった?と考えはじめたアジドマルジド。
しかし、6日目の今夜のブブリムからの帰り道、アジドマルジドの持つリンクシェルからハックルリンクルの声が響いた。
「アジドマルジドさん!たった今、シャントット院長がどこかへ行きました!」
「どこだ。」
「わかりません!ただ、自宅の裏庭から、テレポの詠唱が聞こえてきました!アジドマルジドさんは今どこですか!?」
「そうか。お前はそのままそこで待ってろ。」
問いを無視してアジドマルジドはそう答えるとリンクシェルを離し、周りを見渡す。遠くに見えるのはタロンギにある謎の巨大な白い建造物。
建造目的・建造者などすべて不明だが、テレポメアのワープ先としては広く知られている場所だ。もちろん、ここに院長が現れるとは限らない。
ただの外出かもしれない。しかし彼はゆっくりと建造物に向かい歩き出しながら考えた。
217 :
深緑の国の魔道士12:04/12/26 19:04:08 ID:LtwNrRfg
…もし、院長が犯人だったならば。この先にいるのならば。そのとき、俺は勝てるのか?
魔道士としての才能を見出され物心ついた時より師事すること十数年。無茶な修行と理不尽な指導に命の危険にさらされたことも一度や二度では
なかったが、それでもついてきたのは彼女の魔力が本物だからだ。全盛期を過ぎたとはいえ、その存在は口の院はもちろんウィンダスにおいても
いまだとてつもなく大きなものとなっている。
…だが、いつかは越えねばならない存在だ。その日が思っていたより早くやってきたのかもしれない。
〜つづく〜
---
213の今までのあらすじのアンカーミスりました。正しくは
>>193-196となります。(´・ω・`)
〔+〕<私がどれだけ続きが読みたいかわかりますか
219 :
既にその名前は使われています:04/12/26 23:47:02 ID:oK1/u3Bm
あげとく
220 :
既にその名前は使われています:04/12/27 02:04:47 ID:XBzwWOyV
保守age
221 :
既にその名前は使われています:04/12/27 02:30:09 ID:zvTpKNxs
>>217 いいところで終わっとる・・・・・
age
台詞回しがうまいね。なんかかっこいい。
222 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/27 02:31:38 ID:wCHXW2Sj
その深夜。
「起きたまえ、Trilok君」
僕は眼を開けた。ベッドの傍に男が立っている。
「起きたまえ」
僕は上半身を起こし、その男を見た。黒いチュニックを着ている。
フードを下げ、鎖骨の辺りの留め金の部分に銀の髪飾りをつけている。
剃髪していて、頭部に刺青が見える。腰に棍棒を二つくくりつけていて、
盾は持っていない。その男は音もなく歩き、椅子に腰掛け、
オークテーブルの向かいを指差し言った。
「さあ、座りたまえ」
僕はベッドから起き上がり、言われるまま椅子に腰掛けた。
「まずは失礼を詫びよう。深夜、他人の家に断りもなく入ったことに対してね」
とその男は言った。
223 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/27 02:38:08 ID:wCHXW2Sj
「昼に君の会社に寄ったんだ。しかし、もぬけのからだった。
引き払ったあとだったんだ。私は君が彼の敵を討つために
旅立ったのかと思ってね。君の行く先を調べるためにこうして
君の家に来たってわけだ」
男は目をつむり、首をかしげるしぐさをした。
「しかし君はベッドの上で寝ていた。何事もなかったようにね」
「彼?だれのことです」
と僕は言った。
「Remoのことだよ。やれやれ、Remoも君を買い被っていたようだ」
「僕はRemoの事を何も知らない。僕にとってのRemoは、幼馴染みで、
同僚だった、というだけだ」
「ふん」
男は席を立ち、ドアの方向へ音もなく歩いていく。
「さよならだ」
「一つ聞きたい。Remoを殺した人の名前を知りたい」
と僕は男の背中に言った。背中は言った。
「知ってどうする?」
僕は何も言わない。言えない。
男はドアを開け、僕のほうを振り返り僕をじっと見つめた。
「Buick」
224 :
既にその名前は使われています:04/12/27 03:26:08 ID:k0MxIs2G
ふむむむ
225 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/27 05:37:53 ID:wCHXW2Sj
男がドアを閉める音が聞こえた。僕は僕の両手をじっと見つめる。
席を立ち、僕は行動を開始した。台所の下の戸棚からにかわを取り出し、
鍋の中にいれ火をかける。にかわの隣にあった水銀、イエローグローブの
卵巣から抽出した毒素の粉、砥石、バケツを出し、オークテーブルの上に
置く。ガラス管に水銀と毒素を入れ、その中に注意深く水のクリスタルを
落とし、ふたをしておいておく。書斎から青銅の箱を持ってきて、短剣を
取り出し僕は熱心に研ぎはじめる。柄にダルメルのなめし革を巻く。
溶けたにかわを短剣の刃に塗り、水銀と毒素が混ざり合った液体〜毒薬〜が
入っているガラス管の中に入れる。短剣を出して、鞘に収める。
226 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/27 05:39:59 ID:wCHXW2Sj
一度テーブルの上を片付け、ニレとモコ草で作った紙と黒インク、
自分の頭髪で作った筆を持ってくる。そして僕は一心不乱に人を
書くのだ。この世の人すなわち現臣・うつそみ・打蝉・虚蝉・空蝉・・・
ああ、世の中は、蝉の抜け殻のように仮のもので、はかないもの
なのだろう・・・空蝉とは人なのだ。僕は人を書いているのだ。
僕は人だ、人とは空蝉だ。そして空蝉は・・・僕なのだ。
僕はその紙に僕、と書いているのだ。僕は人で、彼女で、猫で、
Remoであの男で・・・
227 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/27 13:02:57 ID:wCHXW2Sj
7時半頃、森の区競売についた。そこにはチュニックを着て
大きなカバンを持った猫と、白い鱗状の鎧を装備し身の丈ほども
ある斧を背負った小人が待っていた。猫は僕を抱きしめ、小人は
左手をさしのべた。僕はその左手をかたく握った。
「Kohlo」
と小人は言った。
「Trilok」
と僕は言った。
そして僕は冒険者になった。
第一部 完
文章が変だったり言い回しがほとんど同じような感じになっちゃいました。
でも書いててちょっと楽しかったです。物語の最後まで構想のようなものは
あるのですが、ダラダラ長くなっちゃいそうなので一応終わり、ってことにしました。
感想など頂けるととてもとても嬉しいです。
ありがとうございました。
229 :
既にその名前は使われています:04/12/27 15:36:07 ID:tea1I4MS
淡々と話が進んでくようにみえるけど(あ、悪い意味じゃなくて)
それが逆に独特な雰囲気を出してておもしろい。
これの続きでもそうじゃなくてもいいけどこれからも書いていってくれると嬉しいね。
まぁなんだ、頑張っておくれ。
230 :
既にその名前は使われています:04/12/27 15:59:40 ID:62Tsb0rL
でもこれで長編書く人が一人になっちゃったな。
少し寂しい気も。
231 :
既にその名前は使われています:04/12/27 19:31:27 ID:Y+Oz7az/
おつかれさんでした
感想とか難しいけど第二部きながに楽しみに待ってます
232 :
既にその名前は使われています:04/12/27 21:58:19 ID:YAbs4Swg
age
233 :
既にその名前は使われています:04/12/28 00:26:49 ID:FZeHuKfE
おつかれさまです
食べ物が美味しそうだった。
続きもみたいです。ここじゃなくてもいいので。
まとめ作るとかいって忘れてました(´д`)
ログも一部抜けてるしなぁ・・・誰かログ持ってる人いませんかね(´・ω・`)
要らなかったらスレ汚しスマソ。
235 :
既にその名前は使われています:04/12/28 08:13:24 ID:+vnGvKqs
hoshu
236 :
既にその名前は使われています:04/12/28 13:34:52 ID:i6hlcfVD
199へ
一部完で二部がずっと始まらないって落ちにしないで
くれよ、つづきが気になるんだからさ。
237 :
既にその名前は使われています:04/12/28 19:04:37 ID:5ThWv/N7
>>234 とりあえず作ってみてから、ログの補完でもいい気がする。
別に保守とかだったらいらないでだろうし。
238 :
既にその名前は使われています:04/12/28 20:45:38 ID:YdeAb+c0
ほしゅて
239 :
既にその名前は使われています:04/12/28 21:41:51 ID:FZeHuKfE
足りないログが゛「保守」「age」とかかもしれないから
とりあえず作って〜
て事ですね
了解(・ω・)
241 :
既にその名前は使われています:04/12/29 03:49:04 ID:hJOZ/hhx
age
242 :
119全文コピペ:04/12/29 08:35:28 ID:fIGwSY8B
『人と人とが出会う時、最初から分かれるときのことなど考える人
はいないでしょう。人生はあまりにも別離に満ちています。出会っ
た分だけ、同等に、いえ、もしかして質量としてはもっと大きく、、
さよならが待っているのです。』
白い封筒に入っていたその手紙を、僕は水の区のレストランで
3回読み直してみた。相変わらず綺麗な字を書く。
「やっぱり離れていてはだめなんだよ。僕らの年ではね。愛を確か
め合わないと。君達は確かにお似合いだったよ。出会う時期が悪
かったんだ。お互いもう少し大人になっていれば違うと思うんだけれど」
目の前で食後のウィンダスティーをまずそうに飲んでいるremoが
子供に言い聞かせるように言う。
243 :
119全文コピペ:04/12/29 08:37:06 ID:fIGwSY8B
「そうなのかな。そうかもしれない。でも違うかもしれない」
「とにかく早く忘れることだね。もう1年以上会っていないんだろう。さあ、
お互い家に帰ろうか。店を出よう。混雑してきた」
調理ギルドが閉まり、そこで学ぶ学生がやってくる時間だ。椅子を窮
屈そうに後ろにずらし、隣でサンドイッチを食べている知り合いの小人
たちに会釈をしながら僕たちは席を立った。僕たちには椅子もテーブルも
ちょっと小さめだ。
僕たちはウィンダスに住んでいるバストゥーク人向けの雑誌を発行し
ている。雑誌といっても記事を書くのは僕とremoの二人、あとは事務を
してくれている小人の若い学生が一人。美味しい料理屋を紹介していれ
ばそこそこ売れる。なんてったってウィンダスは平和なのだ。
244 :
119全文コピペ:04/12/29 08:38:30 ID:fIGwSY8B
最近の僕たちの仕事は食べることだ。水の区、ウィンダス港を中
心に週4,5店下見する。アポイントメント無しで出向き、数品食べ、
時にはその場でシェフに談判するのだ。大体の小人たちは雑誌に
載ることを快く引き受けてくれる。小人たちの多くは陽気で、気さくだし、
それに自分の店をどう書かれようと売り上げに影響しないことを
知っているのだ。足を運んでくれる客の大多数である小人たちは
僕たちの雑誌を読まないのだから。
245 :
119全文コピペ:04/12/29 08:39:34 ID:fIGwSY8B
火曜日の暑い日だった。前日僕はちょっと大きい仕事が片付
いたので、その日一日は何も考えずに好きな本を読みながら
過ごす気になっていた。お昼頃に目覚め、熱めの風呂に入り、
たまっていた洗濯物を干し、季節外れの洋服を競売にだしたあと、
起きてから何も口にしていないことに気づき、家の近くの魚料理が
美味しいお店にでかけていった。そこは大通りからちょっと入った
ところで、雑多としていて、店主は小人のくせに(!)愛想が悪く、
いつも混んでいて、そしてサーモンのムニエルが抜群に美味しい
店なのだ。
お昼時は過ぎていたけれど店内は混雑していたので、僕は相席
することになった。店員に通された席は店の一番奥まった2名用の
テーブル席で、先に席に着いていた猫は店員に何事か言われたあと、
その店員にうなずいてみせた。そして僕に「どうぞ」と向かいの席を
すすめ、にっこり微笑んだ。
246 :
119全文コピペ:04/12/29 08:41:43 ID:fIGwSY8B
僕と彼女は愛し合っていた。愛し合っていたと思う。彼女の
眼差しは僕をどきどきさせたし、僕は彼女のために多くの時
間を割いた。学生の時から僕たちは付き合っていたし、彼女が
地元で就職し、僕が古い友人とウィンダスで小さな会社を興す
ことになっても僕たちは結婚するつもりでいたのだ。少なくとも
僕はそう思っていた。彼女はそこそこかわいいし、料理もうまくて、
常識も知っていた。勉強ができた。僕はどちらかというと実際的で
事務的な能力は自信があるのだけれど、学校の勉強は苦手
だった。彼女はパーフェクトだった。てっとりばやく言えば彼女は
僕のヒロインだったのだ。
そして彼女はいつも黒い本を持ち歩いていた。
たびたびその本を開き、熱心に読み、注意深く書き写していた。
彼女の黒い本は赤いアンダーラインがいっぱい引かれていて、
多くのページは手垢で少し黄色がかかっていた。
247 :
119全文コピペ:04/12/29 08:42:46 ID:fIGwSY8B
「魔法の成り立ちを一から説明しているものなの。私たちはフォー
クとナイフを扱うように魔法を使うけれど、それってとてもすごいこ
となのよ。」
「意味不明な記号の羅列で読んでいたら頭がおかしくなりそうだよ」
と僕は言った。
彼女はその「意味不明な記号の羅列」を1日に数ページづつ読み
下していった。
しかし僕は彼女がその黒い本を読破したかどうか知らない。もう関係
が終わった以上、知ることもないだろう。
248 :
119全文コピペ:04/12/29 08:44:01 ID:fIGwSY8B
名前:119(188訂正) :04/12/07 02:29:24 ID:yidzbyGv
「この本は知り合いのタルタルから譲ってもらってね」
と彼女は言った。
「魔法の成り立ちを一から説明しているものなの。私たちはフォー
クとナイフを扱うように魔法を使うけれど、それってとてもすごいこ
となのよ。」
「意味不明な記号の羅列で読んでいたら頭がおかしくなりそうだよ」
と僕は言った。
彼女はその「意味不明な記号の羅列」を1日に数ページづつ読み
下していった。
しかし僕は彼女がその黒い本を読破したかどうか知らない。もう関係
が終わった以上、知ることもないだろう。
249 :
119全文コピペ:04/12/29 08:45:57 ID:fIGwSY8B
「魔法のことを勉強しているんだ」
僕は黒い本に向かって声をかけた。
猫は一瞬口を半開きにして呆けた顔をして、そして口をむすび
微笑んでみせた。
「失礼。知っている本を君が持っていたんでね」
「ちょっと暇ができたから。一から学びなおしてみようと思って」
猫は本を閉じ、カップに残っていたウィンダスティーを飲み干した。
店員にまた同じものを頼むしぐさをしたので僕もカモミールティーと
シナモンクッキーを注文する。
「度々失礼だけれど、君は冒険者なのかな。その長剣はサンドリア制
だよね。悪くない剣だ」
「ええ。それも公認冒険者。実はさっき星の塔で認定書を交付された
ばかりなんだけれど。この長剣はあなたの言うとおり、サンドリアに
寄った時に手に入れたものね」
と笑いながら猫は言った。
250 :
119全文コピペ:04/12/29 08:47:10 ID:fIGwSY8B
「素晴らしいね。三国を回ったんだ」
「長旅だった。陸路は無理だから船旅でしょう。セルビナから高原を抜けて
サンドリアへ。そのあと南下してバストゥークへ。いろいろな町や国を見た
けれど、やっぱりウィンダスが落ち着くわ。特にこの店の料理。ウィンダスに
帰ったらすぐにここのお魚料理を食べようと思っていたの。バストゥークに
いたときは特に、、、」
猫は眉をひそめて話を続ける。
「ごめんなさい。あなたヒュームだったわね。故郷のことを悪く言っちゃって」
僕は焼きたてのシナモンクッキーを猫にすすめながら言った。
「いや、実際バストゥーク料理は美味しくはないね。水が悪いから。三国を見
たらわかるだろうけど、一番料理が美味しいのはウィンダスかな。たぶん」
カモミールティーの強い香りをかぎながら僕は続ける。
「たぶん塩が違うんだよ。ウィンダスで取れる岩塩はピンクがかって、あのピリっ
とした刺激が無いんだ。そのかわり濃厚なコクと苦味がある。だから塩焼きでも
魚がじゅうぶんに美味しいんだ」
猫は興味深そうに耳をそばたてている。
「詳しいのね」
「それが仕事だからね」
「そうなんだ」
251 :
119全文コピペ:04/12/29 08:47:59 ID:fIGwSY8B
「色々な料理を食べてお金を貰っているんだ」
「興味深いお仕事ね」
意外と長い時間話し込んでいたらしく、僕と猫はランチタイムが
終わった店から追いだされた。日が落ちはじめ、僕たちのまわりの
景色は赤く染まりかかっていた。
僕は明日取材するはずのウィンダス港にある小料理屋へ猫を
誘ってみた。猫はうなずいてみせた。
猫は仕事の話、つまり三国を巡った目的の話を注意深く避けながら、
旅の出来事を僕に話してくれた。
252 :
119全文コピペ:04/12/29 08:50:37 ID:fIGwSY8B
「私たちは5人編成のパーティを組んで旅をしたの。途中増えたりは
したけれど、基本は5人。旅の仲間。3週間後にここでまた会おう、
って言い合ってマウラで別れたの。苦しいこともあったけれど、面白い
ことや楽しいことのほうが多かったかな。」
猫はネビムナイトのつぼ焼きを食べながら話を続ける。
「その旅で私は思ったの。もうちょっと自分の技術、レベルって言った
ほうがいいのかな。それを今とは違う方向へ上げようと思って。剣術、
黒魔法、白魔法、あとはエンチャント魔法を私なりに解釈して使って
いたんだけれど」
「魔法のどれか1本に絞ろうと思っているんだ」
「ええ。白魔法に。武器も刃物を捨てることで集中力が増すから、、、」
253 :
119全文コピペ:04/12/29 08:51:31 ID:fIGwSY8B
猫はしばし考えて言いなおす。
「アルタナの加護を強めるために刃物を捨てようと思っているの。
自衛のためには片手持ちの棍棒でじゅうぶんだし」
僕は『サンドリア産のグレープフルーツを醸造して造ったジュース』を
口にふくんだ。表向きは三国協定で酒類の販売が規制されているので
面倒くさいことこの上ない。
「それであの黒い本を読んでいたんだね。あの本は僕には難しすぎて
理解できないんだ」
「そうかしら。私も容易に読みこなせてるとは言えないけれど」
254 :
119全文コピペ:04/12/29 08:52:30 ID:fIGwSY8B
「興味はあるけどね。こう見えても僕は魔道士の素質はあるんだ。
多少なりね」
「なら基礎魔法程度なら教えてあげられるわ。教えてあげられるけど」
「けど?」
猫はにやりとして見せた。
「見返りが欲しいわね」
僕は猫の前でしばし考え込んだ。
「じゃあこうしよう。君は僕に魔法を教える。僕は君にご飯を作る。
こう見えても僕は美味しい料理を作る素質はあるんだ。」
猫は笑いながら言った。
「多少なり、でしょ」
255 :
119全文コピペ:04/12/29 08:54:33 ID:fIGwSY8B
小料理屋を出てから僕は言った。
「嫌いなものはあるの?」
「ダルメルのお肉はあまり好きじゃないわね。あとは特に無いかな」
と猫は言った。
「明日の18時にお昼を食べたあの店で落ち合おう」
「わかったわ」
僕は猫と別れたあと小料理屋に引き返し、小人の女将と雑誌に
載せる料理やコメントについて話し合った。
256 :
119全文コピペ:04/12/29 08:55:44 ID:fIGwSY8B
次の日は朝早く起きた。熱めの風呂に入り、目を覚ます。
そしてパイ生地をつくりはじめる。
よく冷やしたバターとサンドリア産の小麦粉を陶器の器に入れ、
少しづつ冷水を流し込み、混ぜ込んでいく。耳たぶより少し硬め
になったら一まとめにし、台にのせ、打ち粉をして麺棒で伸ばす。
長方形になるように形を整えて氷のクリスタルと一緒に箱の中で
休ませる。
仕事場に着く。remoはまだ来ていないようだ。事務の小人に前
日の小料理屋で切ってもらった領収書を渡した。
「ところで、ちょっと前に君は僕たちのためにとてもおいしい手料
理をつくってきてくれたよね。あの時のサラダのドレッシングは
何を使ったんだい」
と僕は言った。
257 :
119全文コピペ:04/12/29 08:56:32 ID:fIGwSY8B
「一週間くらい前ですよね、それ。ウィンダス風サラダですよ。
自家製のリンゴ酢をかけただけですよ。カザムパインやヤグ
ートチェリーを入れていたので甘みもでてましたけどね」
と彼女は答えた。
僕は今日使う素材を書いたメモにアップルビネガーを書き足
して彼女に渡しながら言った。
「午後に石の区で用事を済ますついでに競売に寄ってこれを買
ってきてくれないかな」
「わかりました。私の家も近いのでリンゴ酢はおわけしますよ」
「ありがとう」
僕は午前中に事務的な用事を済ませ、会社近くのレストラン
で昼ご飯を食べながら前日の記事をまとめる。remoをまだ見か
けないが、今日は休むつもりなんだろう。僕たちは仕事を期限
まできっちりやっていればお互いのスケジュール管理に口をだ
さないようにしているのだ。
午後に事務の小人から素材を受け取り、そして14時頃には
家に着いた。
258 :
119全文コピペ:04/12/29 08:59:30 ID:fIGwSY8B
「一週間くらい前ですよね、それ。ウィンダス風サラダですよ。
自家製のリンゴ酢をかけただけですよ。カザムパインやヤグ
ートチェリーを入れていたので甘みもでてましたけどね」
と彼女は答えた。
僕は今日使う素材を書いたメモにアップルビネガーを書き足
して彼女に渡しながら言った。
「午後に石の区で用事を済ますついでに競売に寄ってこれを買
ってきてくれないかな」
「わかりました。私の家も近いのでリンゴ酢はおわけしますよ」
「ありがとう」
僕は午前中に事務的な用事を済ませ、会社近くのレストラン
で昼ご飯を食べながら前日の記事をまとめる。remoをまだ見か
けないが、今日は休むつもりなんだろう。僕たちは仕事を期限
まできっちりやっていればお互いのスケジュール管理に口をだ
さないようにしているのだ。
午後に事務の小人から素材を受け取り、そして14時頃には
家に着いた。
259 :
しまったダブった:04/12/29 09:00:47 ID:fIGwSY8B
パン作りにとりかかる。サンドリア産の小麦粉に、以前
作ってあったパン種と少量の砂糖をくわえ、ひとまとめにする。
台にのせ、岩塩を加えてこねる。途中セルビナバターを加える。
じゅうぶんにこねた後、丸くまとめ、一次発酵をする。
そのあいだに新鮮なシュヴァルサーモンをまな板の上に
のせて、しばしの間考える。ムニエルを作ることに決めた。
ブラックペッパーとオリーブオイル、岩塩だけの薄い味付けにする。
オニカボチャの皮を取って小さく切り、茹でて裏ごしする。
箱からパイ生地を取り出し、15分ほど置いて自然解凍し、
麺棒ですこし伸ばす。裏ごししたオニカボチャ、メープルシュガー、
シナモンと、セルビナミルクで作った生クリームをよく混ぜ、
生地を敷いた型に流し込む。その上に切り取っておいた生地をのせ、
鳥の卵の卵黄を上からハケで塗る。
冷凍で保存されていた大羊の肉をまな板の上にのせ、常温で解凍する。
3時間ほどたったので一次発酵させていたパン生地を8個ほどに
分割し、2,30分ほど休ませる。その間に干していたベッドカバーを
取りこむ。パン生地を丸く成型し、天板に並べて二次発酵をさせる。
下ごしらえは完了した。17時半。上出来だ。
260 :
119全文コピペ:04/12/29 09:01:29 ID:fIGwSY8B
「やあ」
18時をすこし回る頃、サーモンのムニエルが美味しい店の前に
着いた僕は、チュニックを着ている猫を見つけた。帯刀はせず、
腰にワンドをくくりつけている。カバンの中には黒い本と数冊の
ノートが入っているようだ。
「こんにちは」
猫はにっこり微笑んで言った。
「先生、今日はよろしくお願いします」
と僕は言った。
「こちらこそ。美味しいお料理をいただきに来ました」
と猫は言った。
そして二人は僕の家の方向へ歩き出した。
「家はもうすこし郊外にあるんだ。そのかわりちょっと広い。築5年。
ほら、あの白い一軒家」
「庭もよく手入れしてあるのね」
「休みの日は引きこもっているからね」
261 :
119全文コピペ:04/12/29 09:02:40 ID:fIGwSY8B
家の中へ招き入れ、猫が居間の真ん中にあるオーク
テーブルで勉強の仕度をしている間、僕は台所で二次発酵を
終えたパン生地をオーブンの中に入れる。僕は猫のために
濃いめのウィンダスティーを淹れた。
「さあ、はじめましょう」
猫の話はとても面白く、そして興味深かった。複数人編成の
パーティ戦闘時の行動を細かくマニュアル化し、その中での
魔道士の立ち回りを説明する。使用する魔法を取捨択一し、
いらない魔法は切り捨てる。高位魔法を多用せず、低位、
あるいは中位魔法で対処する。
「メリハリが大切なの。高位魔法って疲れるしね。それに、実は
魔道士って意外とマッチョな職業なの。頭ばっかり使うって印象が
あるけれど」
262 :
119全文コピペ:04/12/29 09:03:24 ID:fIGwSY8B
猫はウィンダスティーを飲みながら話を続ける。
「学生の時に習ったことって魔法の仕組みとか、そもそも魔法とは
なんぞや、みたいなものを一生懸命学ぶでしょう。知っていたほうが
もちろんいいけれど。そういうのって実践になるとあまり意味の無い
ものなの。銃を撃つには銃の構造を知らなきゃいけない、ってわけじゃ
ないでしょう。引き金を引けばいいだけなのよ」
「とても興味深いね。僕はてっきり」
僕は黒い本を指差して言った。
「その本に書かれているような意味不明な記号の羅列を解読
させられるのかと思っていたよ」
猫は笑ってみせた。
「この本はそれこそ魔法の成り立ちから書かれている本だけれど、
こんなものを読まなくたって立派な魔道士にはなれるわ。私が
読んでいる本当のわけは、いくつかの強化魔法の仕組みがとても
面白く感じたから、それをより深く知ろうと思ったからなの」
263 :
119全文コピペ:04/12/29 09:04:19 ID:fIGwSY8B
「でも」
猫は鼻をひくひくさせながら言った。
「もう終わりにしましょう。お腹がすいたわ」
僕は仕事にとりかかった。
まずウィンダス風サラダと焼きたての白パンを出す。シュヴァル
サーモンに小麦粉をまぶし、オリーブオイルで焼く。マトンのローストは
乾燥マージョラムとにんにくだけで味付けをした。パンプキンパイを
オーブンで焼き、サンドリアティーを淹れた。すこし作りすぎたと
思ったけれど、猫は全部たいらげた。
「いい食べっぷりだね」
と僕は言った。
「本当に美味しい。全部一人で作ったの?」
「何度も言うけれど、僕は仕事が無い日はだいたい家に引きこもって
いるんだ。家ですることなんて、掃除するか料理するか庭をいじるか、
本を読むかくらいしかないからね」
「店を出したら?繁盛すると思うわ」
「君は教師になるといいと思うよ。君の話はとても面白くて楽しい」
264 :
119全文コピペ:04/12/29 09:05:05 ID:fIGwSY8B
そして僕と猫は青銅製のベッドでsexをした。それはとても素敵な
ひとときだった。猫は僕に様々で性的な要求をし、僕はそれに応え
られるよう努力をした。1回目はぎこちなかったけれど、2回目はとても
スムーズにいった。僕は3回射精をした。
「基本的な」
「そう、基本的なことを聞いていいかな」
と僕は猫と一緒に毛布に包まりながら言った。
「僕の名前はTrilok。君の名前は?」
猫は目を細くし、僕をじっと見つめながら言った。
「私の名前はLihzeh」
僕と猫はウィンダスと小人たちについての他愛のない会話をし、
おやすみなさいと言いあいながらそのまま眠りについた。
265 :
119全文コピペ:04/12/29 09:07:17 ID:fIGwSY8B
僕は夜中に目が覚めた。横で猫がかすかに寝息をたてて僕の左手を
両手で握りながら寝ている。
僕は彼女のことを考える。僕は彼女のことをまだ愛していた。彼女に
会いたいと思った。ベッドのそばに脱ぎすてていた下着をとり、椅子に
かけてあったズボンをはく。書斎に入り、手紙を書こうとする。
266 :
119全文コピペ:04/12/29 09:08:04 ID:fIGwSY8B
ドアを叩く音がする。叩く音量は控えめで遠慮しているが、しっかりした意思と
決意を持っている音だ。僕はペーパーナイフの代わりに使っているオニオンダガーを
懐に忍ばせてそっとドアを開いた。
ドアの前には連邦制式礼服を着た目のはれぼったい小人が二人立っていた。
胸の紋章を指差しながら小人の一人が言った。
「Trilokさんかな」
「はい」
もう一人の小人が奥に見える猫を見つめながら無表情で興味なさそうに言った。
「コールガールかい?」
「いえ。知り合いです。問題ありません」
「君の同僚のRemoさんが」
「西サルタバルタ南の海岸、遺体で見つかった」
267 :
119全文コピペ:04/12/29 09:10:12 ID:fIGwSY8B
僕は小人たちをじっと見つめた。一人は帯刀している。細剣だ。
丸い盾を背負い、僕の右手を瞬きもせずに見ている。もう一人は
左手だけに黄銅でできたナックルをはめている。右手であごの辺りを
なでながら、奥にいる猫を見つめている。
「ちょっと聞きたいことがあるんだ。同行してもらえるかな」
と帯刀している小人が言った。
「15分ほど待っていただけますか。仕度もありますし」
と僕は言った。
「10分待つよ」
「わかりました」
ドアを閉め、僕は深呼吸をした。猫が寝ているベッドに戻り、
猫の二の腕にキスをする。
「一旦起きてくれるかな。僕は行かなきゃならなくなった」
「どこへ?」
「さあ。どこだろうね。君はもうちょっと寝ていていい」
268 :
119全文コピペ:04/12/29 09:11:04 ID:fIGwSY8B
「今夜も会えるかな」
「さあ、わからない。長い一日になりそうだから」
猫は紙にモグハウスの番地を書き、僕に渡した。僕は家の合鍵を
猫に渡し、オークテーブルにオニオンダガーを置いた。
ドアを開けると、小人は一人だった。もう一人は裏手に回っていた
らしい。しばらくして戻ってきた。
「さあ、歩きながら話をしよう」
と小人は言った。
「結論から言うと犯人は何だかわかっているんだよ。ヤグードの
仕業さ。殺し方に特徴があってね」
ヤグード。みんな知っているけれど、日常会話では口にだす
機会のない言葉。
「Remoさんとはどういう関係だったのかな。ただの同僚か、それとも」
「彼とは幼馴染みでした。彼の提案で、ウィンダスで起業することに
なったんです」
269 :
119全文コピペ:04/12/29 09:11:45 ID:fIGwSY8B
暗く肌寒い水の区を抜け、磯の香りがただよってくるウィンダス
港へと入っていく。
「ウィンダスってのは強盗や殺人、強姦などの重大犯罪があまり
起こらない国なんでね。色々と手続きが面倒なんだが勘弁して欲しい」
そして口の院についた。奥の部屋へ通され、椅子に座っていた、
チュニックを着ている小人が話しかけてきた。
「深夜遅くご足労ありがとう。2,3聞きたい事があるのだけれどよろしいかな」
と言って、向かいの椅子を勧め、僕を連れてきた小人の一人に
飲み物を持ってくるように指示する。
そこで僕はありきたりの・・・昨日はどこで何をして、誰といた、とか、
Remoとの関係とか、仕事のこととかを・・・質問された。そしてその
質問に答えたことをしかるべき紙に一字一句もらさず書き、サインをし、
小人に渡し、小人もサインをし、その上にまた僕はサインをした。
他の書類にもサインをした。僕は人生で一番自分の名前を書いたのかも
しれないと思うほど、サインをした。
270 :
119全文コピペ:04/12/29 09:12:38 ID:fIGwSY8B
結局口の院を出たのはお昼を過ぎた頃だった。その足で会社に
出向く。食欲は無い。何も食べることができない。中に入ると事務の
小人が一人、いつも通りに仕事をしていた。
「やあ、おはよう。ちょっといいかな」
と僕は言い、小人を見た。小人の目は赤く、すこし腫れていた。
「おはようございます。なんでしょうか」
と小人は言った。
「急ですまないが休刊することになったんだ。来週号は出さない。
後始末に数日かかりそうなんだけれど、もうちょっと手伝ってくれるかい」
「よろこんで。最後まできっちりやりますよ」
「ありがとう。Remoのデスクも処理してくれないか」
「わかりました」
僕はRemoのご両親に手紙を書き、小人に託け、来週の雑誌に
載るはずだった店を回った。
271 :
119全文コピペ:04/12/29 09:13:19 ID:fIGwSY8B
夕方にRemoの自宅に寄った。会社に合鍵があったので中に入る。
ワンルームで、部屋の中はデスクとオークベッド、大きめの本棚が
あるだけだった。自炊はしていなかったようだ。床には青い絨毯が
敷かれている。僕は部屋をなんとなく一回りし、ベッドの上に腰掛け、
腕組みをした。ふと足を上げて床をならしてみる。コッコッ、と乾いた
音がする。僕はゆっくりと深呼吸をした。そして猫のことを考えた。
猫はとても綺麗な瞳をしていた。舌はザラザラしていて、キスを
すると独特の味がする。猫は僕の唇を舐めたがる。僕は舐めるに
任せる。猫の身体は引き締まっていて、力を入れると上腕の筋肉が
盛り上がる。爪は猫にしては短く整えられていて、度々僕のわき腹に
その爪を立てるのだ。乳房は小さいが形はいい。尻尾は絶えず動いて
いて、面白半分で掴むと、とても嫌がる。腹とふとももには適度に
脂肪がついている。そして身体全体に金色の産毛が生えている。
僕はデスクを少しずらし、青い絨毯を持ち上げた。
そしてベッドのそばにカエデの木の板でふたをしているものを見た。
272 :
119全文コピペ:04/12/29 09:14:19 ID:fIGwSY8B
ふたを開けると、地下へと続く階段があった。僕は足元にある階段を
じっと見つめた。そして僕は階段を下りていった。明かりをつける。
そこにはひと一人、やっと横になれるくらいの広さの部屋があった。
小さいテーブルの上には、僕の読めない文字で書かれた書類が何枚か
あって、そのテーブルの下に錆びたバケツと砥石が置かれていた。
折りたたみ式の椅子があり、そして壁にはナイフがいくつか掛けられていた。
僕は椅子に座り、テーブルに肩肘をつき、その書類を見た。僕には
この意味不明な記号の羅列を解読することはできないだろう。僕は
右手を伸ばして壁に掛けてあるナイフの一つを手に取った。動物の骨を
削って造ったもののようだ。柄が無い。つかには申し訳程度に草布が巻いてある。
刃の部分はとても手入れがされていて切れ味はよさそうだ。僕は
そのまま右手にナイフを握ったまま、目の前の土壁を見つめた。
家に帰ると猫はいなかった。テーブルの上にオニオンダガーがある。
昨日出したままだった食器は棚に戻され、ベッドは整えられていた。
僕はセルビナミルクを一杯飲み、風呂に入らずに寝てしまった。
273 :
119全文コピペ:04/12/29 09:15:50 ID:fIGwSY8B
事務の小人の制止を振り切って人が二人入ってくる。
「Trilok君は、中にいるのかな」
共和国制式礼服を着た人が僕を見つめる。腰に細身の長剣を
差している。刀身が反っていて、片手剣にしては長すぎる。
両手刀だろう。
「君がTrilok君かな。私たちは鋼鉄銃士だ。バストゥーク
領事館へご同行願おう。一応ここはウィンダス連邦なので、
任意同行ということになっているがね」
もう一人は白い鋼鉄製の重鎧を着ている。背中に布で
包まれた斧を背負っている。
「もしも拒否したら僕はどうなるんでしょうか」
と僕は言った。
「彼はいきなり短剣を取り出し私の方へ向かってきて、やむをえず
私は抜刀しました。・・・と、君の死体をかかえながら上司に
報告するだろうね」
と礼服を着たバストゥーク人はにやりとしながら言った。
274 :
119全文コピペ:04/12/29 09:16:31 ID:fIGwSY8B
「やれやれ」
僕は小人に仕事の指示を出し、二人と会社を出た。二人とも
一言もしゃべらず黙々と領事館の方向に歩いていく。
領事館で僕は色々なことを聞かれた。しかし、彼らが知りたい
ことは一つだった。Remoの副業(あるいは雑誌記者のほうが
副業だったのだろうか)について僕がどれだけ知っているか、
ということだった。彼らは巧妙に質問していく。僕はその質問に
慎重に、丁寧に答えていく。
「もういい。帰っていいよ」
バストゥーク人たちは僕に興味を失ったようだ。僕はおじぎを
して席を立った。
「Remo君の葬式は昨日バストゥークで行った。私たちはそれに
出席した後、飛空挺に飛び乗ったのさ。で、今日の夜にすぐに
バストゥークへとんぼ返りだ。人使いが荒いと思わないかい?」
275 :
119全文コピペ:04/12/29 09:18:26 ID:fIGwSY8B
自宅へ帰った。鍵のかかっていないドアを開け、オークテーブルの
上に黒い本を開いている猫を見る。
「ただいま」
と僕は言った。
「おかえり」
と猫は言った。
「台所をかりたいの」
「何を作るの?」
「リゾット」
猫は自宅から持ってきた鶏がらのスープを温め直し、鍋にオリーブ
オイルを熱して、ニンニクとワイルドオニオンを中火でていねいに炒め
はじめた。僕は自分のためにウィンダスティーを淹れ、黒い本を
何ページか読んでみる。鍋にタルタルライスを入れ、また少し炒めて
暖めなおしていたスープを加え煮る。僕は食器を棚からとりだし、
オークテーブルの上に並べた。猫が鍋にオドリタケやパフボールを
ほぐして入れる。中火で汁気がなくなるまで煮詰めている間、猫は
豆のスープを作った。
276 :
119全文コピペ:04/12/29 09:19:12 ID:fIGwSY8B
「リゾットはもうちょっとで完成ね」
と猫は豆のスープをテーブルに置きながら言った。そして僕の
ウィンダスティーを一口飲んだ。
「今日のウィンダスティーはちょっと薄いわね」
「これは僕のために淹れたんだ。君のやつはもうちょっと
濃いめに淹れてるんだよ」
猫は眉をひそめながら言う。
「なんで濃いめのウィンダスティーのほうが好きって知っているの?」
「たぶん前世で君に聞いたんだよ」
「そのジョークはあまり面白くないわね」
猫と出会ったあのサーモンのムニエルが美味しい店は、
とても濃いウィンダスティーを出すのだ。
キノコのリゾットができた。そして僕は猫のためにウィンダスティーを
淹れた。
277 :
119全文コピペ:04/12/29 09:21:38 ID:fIGwSY8B
「前世って」
と猫は豆のスープを木のスプーンですくいながら言った。
「前世があるって、あなたは信じる?」
「よくわからない」
猫は僕をじっと見つめた。
「あるかも知れないし、無いかもしれない。僕にはわからないな」
猫は目をつむり、肩肘をつき、左手の中指と人差し指をピンク色の
唇にあて、何か考えるしぐさをしている。
「私は」
と猫は目をあけ、語りはじめた。
「ちょっと変な考え方だってわかってるけど、前世ってあると思うの」
「どうして?」
と僕は身をのりだして言った。僕は猫の話に興味を持ちはじめていたのだ。
278 :
119全文コピペ:04/12/29 09:22:33 ID:fIGwSY8B
「私は、すべての出来事に原因と結果があると思っているの。つまり、運とか
偶然とかそういうものはまったくなくて、全ての出来事は起こるべくして起こって
いると考えているの。そして話が飛躍するけれど、私はミスラとして生まれて
きた。あなたはヒュームとして生まれてきた。この差はなんなのかな、って
考えると、生まれる以前に何か原因があったのよ。原因というか、因ね。
そうじゃなきゃ説明がつかないと思わない?」
「それは女神が決めたもうた大いなる運命なんだよ」
と僕は両手を広げ、大仰に言った。
「信仰心が低いのかな」
と猫は言った。
「君は剣を捨てたんじゃなかったのかな。剣を捨てた人の言うことでは
ないよね。正直」
「私が刃物を持つことを禁じた本当の理由は女神に身を捧げるためではないの。
単に集中力を上げるためなのよ。私はね。刃物を持つと、自傷しないかとすこし
でも思ってしまうから。他の魔道士がどうかはわからないけれど」
「一つ質問をしてもいいかな。君は女神の存在は信じているの?」
猫は僕を見てにやりとしながら言う。
「いるのかもしれないし、いないかもしれない。わたしにはわからないわね」
「やれやれ」
279 :
119全文コピペ:04/12/29 09:23:35 ID:fIGwSY8B
台所で猫と食器を洗っていると、ドアを叩く音が聞えた。
叩く音は控えめで遠慮している。自信のない者が叩いて
いる音だ。僕は無造作にドアを開けた。ドアの前には小人が
一人立っていた。勢いよく開いたドアに驚いてみせ、上目
遣いで僕を見つめた。隣に住んでいる小人だ。
「やあ。その、街の東が火事のようなんだ。ここまでは燃え
広がらないだろうけど、一応教えておこうと思って」
僕は小人にお礼を言い、すぐに猫を連れ立って外へでた。
280 :
119全文コピペ:04/12/29 09:24:31 ID:fIGwSY8B
Remoが住んでいた家が燃えていた。炎は両隣も飲み込もうと
していた。炎は赤く燃え上がり、黒い煙を吐く。魔道士たちが到着し、
消火活動をはじめる。
「完全な鎮火には時間がかかりそうね。魔法の火みたいだから」
と、猫は揺れ動く炎を見つめて瞳をキラキラさせながら言った。
家から大きな爆発がおき、青白い炎の柱が一瞬できて、そして
しばらくしたあと、もう一回大きな爆発音がした。
「火薬の燃える音と臭い。あの家で花火でも作っていたのかしら。それとも・・・」
僕は彼の家をじっと見つめる。遠くで飛空挺が飛び立つ音が聞こえる。
281 :
119全文コピペ:04/12/29 09:25:41 ID:fIGwSY8B
朝。空は曇っている。白い部屋。何もない。僕と事務の小人だけだ。僕は彼女に
数日分の給料をすこし多めに渡した。小人はそれを両手で受け取った。
「すこしいいかな。二、三言いたいことがあるんだ」
と僕は言った。
「はい、なんでしょう」
と小人は言った。
「今日まで本当にありがとう。君はとても優秀だった。助かったよ。そして君に
おそらく最初で、最後の小言を言わせてもらう。年長者らしくね。いいかい、
人生で一番大切なものはなんだと思うかい?それは信頼だ。信頼される人に
なるんだ。人を信頼するんだ。特に若いころはね。そして若いうちに多くの
種類の人と出会い、臆さず話すんだ。君が将来どのような職業につくことに
なっても、この信頼、信用の重要さはかわらない。お金は二の次だ」
小人は僕にうなずいてみせた。
「いいかい」
と僕は言った。
「大切なものは信頼だ」
僕は小人と別れたあと、猫が住むモグハウスがある方向へ歩きはじめた。
282 :
既にその名前は使われています:04/12/29 09:28:38 ID:WYdwUyFT
公式設定資料集のDVDみた?
バスのストーリーよくねーか!
283 :
119全文コピペ:04/12/29 09:29:21 ID:fIGwSY8B
僕はモグハウスのドアを叩いた。しばらくして猫が顔をだしてきた。
「釣りをしよう」
と僕は言った。
「わかったわ」
と猫は言った。
猫はモグハウスに戻り、釣り竿とカバンを持って
出てきた。僕と猫はウィンダス港にある釣りギルドに向かい、
僕はそこで釣り竿と餌を買った。そして二人で東サルタバルタへ
歩いていった。南の海岸に腰をおろし、竿をたらす。僕たちの
ほかに釣り人の小人が2人いた。僕は言った。
「今日、仕事を辞めたんだ」
284 :
119全文コピペ:04/12/29 09:30:21 ID:fIGwSY8B
「僕は色々な料理屋を紹介する雑誌を友人と作っていたんだ。
その友人が先日死んだんだよ。雑誌を作ることは僕一人でも
続けられるけれど、彼がいないと楽しくないことに気づいたんだ」
「その友人はどのような人だったの?」
285 :
119全文コピペ:04/12/29 09:31:53 ID:fIGwSY8B
Remoは幼馴染みだった。物心つくころには隣にいた。12歳くらいの頃、
学校から帰ったあと、彼は毎日僕を誘って街の近くの荒廃した山へ
連れて行った。そこが僕らの遊び場だった。そこで毎日飽きずに
忍者ごっこをしていた。その山に蜂を飼って蜜蝋を作り生計を立てていた
初老の男が住んでいた。その男とふとしたことで知り合い、僕たちが
蜜蝋を作る手伝いをするお礼として、男は色々なことを教えてくれた。
男は忍者だった。割いた竹で火を焚く方法から、梵字が書かれた
人の形をしている紙を使い自らの幻影を作る術まで、付き合いの
あった3年間の間、僕たちに教えてくれた。一部の高位忍術までも
教えてくれたのだ。男にしてみれば暇つぶしのついでにやったこと
だろう。しかし僕たちはその出来事を通じて『僕たちは本当の忍者の
弟子である』という甘い果物のような2人の秘密を持ったのだ。
286 :
119全文コピペ:04/12/29 09:33:06 ID:fIGwSY8B
僕の家の隣は空き家だったのだけれど、そこに鋼鉄銃士の
家族が引っ越してきた。その鋼鉄銃士の娘は僕と同い年で、
とても魅力的で、行動的で、勉強もできて、にっこり笑うと
えくぼができるかわいらしい子だった。僕と彼女はすっかり
意気投合し、僕は彼に彼女を紹介した。しばらくして甘い
果実は3人で食べることになった。そして僕と彼は彼女に恋をした。
287 :
119全文コピペ:04/12/29 09:34:32 ID:fIGwSY8B
結果から言うと僕は彼との戦いに勝利した。その勝因は今から
してみれば彼より僕のほうが魅力的だったというのではなく、単純に
将来就きたい職種が近かったことだとと思う。彼は政治に興味を持った。
僕と彼女は魔法を学びたかった。彼は士官学校に入学し、僕と彼女は
より高度な魔法を学ぶために上級の学校に入った。彼は僕と彼女より
2年早く社会に出て、大手の新聞社に就職した。その1年後、彼女が
小さな法律事務所の内定を取った頃、彼は新聞社を辞め、ウィンダスへ
旅立つ準備をしはじめていた。そして僕を誘ってきたのだ。
僕はその誘いにうなずいた。二人で山を越え、船に乗り、峡谷を抜け、
ウィンダスへたどり着いた。
288 :
119全文コピペ:04/12/29 09:36:01 ID:fIGwSY8B
ウィンダスでの仕事は大変厳しかった。2,3年は雑誌が
まったく売れなかった。返品されてきた雑誌を自分たちで
鍋で煮て攪拌し、薬品を入れインクを分解させ、製紙して
使いなおした。軌道に乗ったのは購買層をウィンダスに住む
バストゥーク人に絞り、政治的な記事を載せるのをやめ、
完全な料理雑誌にした頃からだった。
289 :
119全文コピペ:04/12/29 09:37:44 ID:fIGwSY8B
ウィンダスに住むバストゥーク人の多くは国に家族をおいて単身赴任という
形で仕事をしにきている。自然外食になるのだけれど、おいしい料理屋を
本格的に紹介したり、簡単でお手軽にできる料理の作りかたを載せている
バストゥーク人向けの雑誌は不思議なことになかったのだ。
僕とRemoはとても忙しくなり、学生の小人を一人雇った。小人はとても
優秀で、事務のほかに多くの雑務をやってくれた。僕たちは度々3人で
仕事のことや将来の夢や明日つくる料理のことを語り会った。とても充実していた。
290 :
119全文コピペ:04/12/29 09:38:52 ID:fIGwSY8B
僕は泣いていた。水平線をじっと見つめながら泣いているのだ。
「とても充実していたんだ」
と僕は言った。
「しかし彼はもういない」
猫が左手を僕の腰に回しそっと抱き寄せ、右手で僕の髪をいじりはじめる。
「彼はもういないんだ」
僕は泣いていた。猫の胸の中で泣いていた。
291 :
119全文コピペ:04/12/29 09:41:03 ID:fIGwSY8B
魚は一匹も釣れなかった。僕と猫はあのとても美味しいサーモンの
ムニエルを出す店に魚を食べに行った。
「旅に出ればいいと思うの」
店の一番奥まった2名用テーブルでウィンダスティーを飲みながら猫は言った。
「あなたは旅にでれば何か変わると思うの」
「さあ、どうなんだろう」
と僕は食べかけのムニエルを見つめながら言った。
「急なんだけれど、わたしは旅の仲間の一人と明日ウィンダスを出るの。
マウラにいかなければいけない。あなたも一緒にいけないかな」
猫は僕をじっとみつめる。僕は何も言わない。僕は店員にカモミールティーと
シナモンクッキーを注文した。しばらくしてカモミールティーが運ばれてきて、
僕はそれを一口飲んでためいきをつく。
「たぶん僕はいかないだろう」
「明日8時、森の区競売の三番窓口あたりで待ってる」
292 :
119全文コピペ:04/12/29 09:42:08 ID:fIGwSY8B
猫と別れ、僕は家に戻った。そしてベッドの上に寝そべり、
両手をみつめる。とても綺麗だ、と僕は自分の両手を見て
思った。気づかなかった。僕の両手はこんなに綺麗だったのか。
指は細く、しなやかで、傷もない。爪は短くよく整えられている。
肌は白く、青い血管が透けてみえる。
ベッドから起き上がり、書斎から青銅の箱を持ってくる。
鍵をあけ、その中から短剣を出し、じっと見つめた。
刃こぼれがひどく、使い物にならないだろう。柄は錆びた
鉄の臭いがする。僕は短剣を箱の中に入れ、青銅の箱を
もとにあった場所に戻した。
293 :
119全文コピペ:04/12/29 09:43:35 ID:fIGwSY8B
その深夜。
「起きたまえ、Trilok君」
僕は眼を開けた。ベッドの傍に男が立っている。
「起きたまえ」
僕は上半身を起こし、その男を見た。黒いチュニックを着ている。
フードを下げ、鎖骨の辺りの留め金の部分に銀の髪飾りをつけている。
剃髪していて、頭部に刺青が見える。腰に棍棒を二つくくりつけていて、
盾は持っていない。その男は音もなく歩き、椅子に腰掛け、
オークテーブルの向かいを指差し言った。
「さあ、座りたまえ」
僕はベッドから起き上がり、言われるまま椅子に腰掛けた。
「まずは失礼を詫びよう。深夜、他人の家に断りもなく入ったことに対してね」
とその男は言った。
294 :
既にその名前は使われています:04/12/29 09:45:01 ID:SrB3u6+q
ティーダ(竜66戦33)なんだよこれ、限界突破して最大ダメ1000もいかねぇのかよ
エッジ(忍37戦18)うはwwwオレ神www
セシル(ナ50戦25)パラディン、アタッカー能力低すぎないか?!
ロック(シ74忍37)チッチッチ、トレジャーハンター3と呼んでくれ
295 :
119全文コピペ:04/12/29 09:46:57 ID:fIGwSY8B
「昼に君の会社に寄ったんだ。しかし、もぬけのからだった。
引き払ったあとだったんだ。私は君が彼の敵を討つために
旅立ったのかと思ってね。君の行く先を調べるためにこうして
君の家に来たってわけだ」
男は目をつむり、首をかしげるしぐさをした。
「しかし君はベッドの上で寝ていた。何事もなかったようにね」
「彼?だれのことです」
と僕は言った。
296 :
119全文コピペ:04/12/29 09:47:51 ID:fIGwSY8B
「Remoのことだよ。やれやれ、Remoも君を買い被っていたようだ」
「僕はRemoの事を何も知らない。僕にとってのRemoは、幼馴染みで、
同僚だった、というだけだ」
「ふん」
男は席を立ち、ドアの方向へ音もなく歩いていく。
「さよならだ」
「一つ聞きたい。Remoを殺した人の名前を知りたい」
と僕は男の背中に言った。背中は言った。
「知ってどうする?」
僕は何も言わない。言えない。
男はドアを開け、僕のほうを振り返り僕をじっと見つめた。
「Buick」
297 :
119全文コピペ:04/12/29 09:49:19 ID:fIGwSY8B
男がドアを閉める音が聞こえた。僕は僕の両手をじっと見つめる。
席を立ち、僕は行動を開始した。台所の下の戸棚からにかわを取り出し、
鍋の中にいれ火をかける。にかわの隣にあった水銀、イエローグローブの
卵巣から抽出した毒素の粉、砥石、バケツを出し、オークテーブルの上に
置く。ガラス管に水銀と毒素を入れ、その中に注意深く水のクリスタルを
落とし、ふたをしておいておく。書斎から青銅の箱を持ってきて、短剣を
取り出し僕は熱心に研ぎはじめる。柄にダルメルのなめし革を巻く。
溶けたにかわを短剣の刃に塗り、水銀と毒素が混ざり合った液体〜毒薬〜が
入っているガラス管の中に入れる。短剣を出して、鞘に収める。
298 :
119全文コピペ:04/12/29 09:50:18 ID:fIGwSY8B
一度テーブルの上を片付け、ニレとモコ草で作った紙と黒インク、
自分の頭髪で作った筆を持ってくる。そして僕は一心不乱に人を
書くのだ。この世の人すなわち現臣・うつそみ・打蝉・虚蝉・空蝉・・・
ああ、世の中は、蝉の抜け殻のように仮のもので、はかないもの
なのだろう・・・空蝉とは人なのだ。僕は人を書いているのだ。
僕は人だ、人とは空蝉だ。そして空蝉は・・・僕なのだ。
僕はその紙に僕、と書いているのだ。僕は人で、彼女で、猫で、
Remoであの男で・・・
299 :
119全文コピペ:04/12/29 09:52:03 ID:fIGwSY8B
7時半頃、森の区競売についた。そこにはチュニックを着て
大きなカバンを持った猫と、白い鱗状の鎧を装備し身の丈ほども
ある斧を背負った小人が待っていた。猫は僕を抱きしめ、小人は
左手をさしのべた。僕はその左手をかたく握った。
「Kohlo」
と小人は言った。
「Trilok」
と僕は言った。
そして僕は冒険者になった。
第一部 完
300 :
119あとがき?:04/12/29 09:53:22 ID:fIGwSY8B
文章が変だったり言い回しがほとんど同じような感じになっちゃいました。
でも書いててちょっと楽しかったです。物語の最後まで構想のようなものは
あるのですが、ダラダラ長くなっちゃいそうなので一応終わり、ってことにしました。
感想など頂けるととてもとても嬉しいです。
ありがとうございました。
301 :
既にその名前は使われています:04/12/29 09:53:49 ID:f9ZjY2q/
おつかれサマンサ!
第二部まてます
302 :
既にその名前は使われています:04/12/29 13:47:58 ID:hJOZ/hhx
おつです。age
303 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/29 13:58:30 ID:0wCjrdgt
119氏のが丁度全部コピペしてくれてあったのでまとめたんですが
改行の仕方とかどうすりゃいいのかな(´д`)カキコとカキコの間とか・・・
305 :
既にその名前は使われています:04/12/29 14:54:39 ID:qEn0dGX2
>>304 後はログからそれっぽいのを抜き出す感じかね。
306 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/29 15:01:33 ID:0wCjrdgt
>>305 そうっすね。
ちまちまやってきます(´д`)
307 :
既にその名前は使われています:04/12/29 15:02:08 ID:qEn0dGX2
どこかにロダがあれば1〜3のdatファイル上げられるけど。
308 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/29 15:36:05 ID:0wCjrdgt
2465ZIPどぞー。
310 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/29 15:56:13 ID:0wCjrdgt
>>309 ありがd!
なんかうちのPCじゃInterMediaFileとかになっちゃうな・・・・
>>310 かちゅとかのログに入れれば見られるかも?
>>311 だめぽだorz
帰ってきたらもっかいやってみよう。 ノシ
313 :
既にその名前は使われています:04/12/29 16:52:27 ID:FWUMmThm
あげ
2483zip
今度はWORDで。
315 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/29 19:15:41 ID:0wCjrdgt
>>314 おぉ、ありがとう!
早速作りたいところだけどワイン飲まされて酔ってるのでまたあとで(´д`)おえふぉえぇ@「
316 :
既にその名前は使われています:04/12/29 22:01:53 ID:hJOZ/hhx
age
317 :
既にその名前は使われています:04/12/30 02:43:11 ID:O6DJHMsn
age
今まで(
>>213-217)のあらすじ:
犯人をおびき寄せるべく1人タロンギに立つアジドマルジドの前に現れるのは果たして…!?
---
わずかな月明かりと青白く光るテレポ岩だけが闇夜を照らすタロンギの大地。
ゆっくりとこちらに向かって歩いてくるアジドマルジドを見ながら襲撃者は考えた。
彼はもう少し後にまわしたかった。…いや、順番などどうでも最後には同じこと。はじめるとしよう。
まず襲撃者は意図的に明確な殺気を作り出し、アジドマルジドめがけて発してみせた。
が、彼はそれに反応することなくゆっくりと歩き続けている。まさか気づいていない?がっかりさせるなよ?と
思いつつ、次は小手調べに(しては充分すぎる破壊力をもった)魔力の塊を標的に向けて放った。
しかし彼は相変わらず攻撃に気づいた様子も回避するそぶりもみせない。魔法が着弾する。
幻影がアジドマルジドの身代わりとなって消えた
319 :
深緑の国の魔道士14:04/12/30 02:55:10 ID:ORfCB0p7
標的をすり抜けた魔法はそのまま地面に激突し大きな衝撃音とともに深く地面をえぐる。襲撃者は心の中で感嘆の声をあげた。
あの若さで白魔法ブリンクを習得しているとは!じゃあこれなら?とガ系の詠唱を開始した瞬間、
アジドマルジドの放った魔法が正確にこちらに迫っているのに気づき今度は実際に驚愕の声を漏らした。
慌てて詠唱を中断させ回避する。ぎりぎりのところでかわした魔法は、大音響とともにこちらの攻撃とさしてかわらない
ダメージをタロンギの地形に与えた。この反撃に感心すると同時に襲撃者の心に忘れていた高揚感がよみがえる。
久しぶりにわくわくする戦闘になるのかもしれない。興奮を抑えきれないように彼女はつぶやいた。
「それでこそ、私の唯一の、そして最高の弟子ですわ!」
320 :
深緑の国の魔道士15:04/12/30 02:59:46 ID:ORfCB0p7
分身により無傷だったとはいえ、その魔法を間近に感じとりこの相手ならば口の院の魔道士達が敗れたのも
アジドマルジドは納得できた。しかし、今、彼の心を支配していたのはそんな理論的な感情ではなかった。
大気を揺るがすこの魔法の波動は!肌が粟立つこのエネルギーの感触は!追いかけ求め続けたこの尊大な魔力は…!
辿り着いた真実を前に、決意と覚悟をこめて彼はつぶやいた。
「理由は決着をつけた後に聞きます、師匠!」
〜つづく〜
321 :
既にその名前は使われています:04/12/30 08:13:09 ID:MKMNS4pP
あげ
――2年前のカザム事件
今思えば
疑うべきだった
ぽこるギアソリッド
kazam of nightmare
おいら「おニャコン、聞こえるか?」
おニャコン「聞こえるニャー。カザムへの潜入は成功したニャ?」
おいら「問題ない、任務の確認をしたい。」
おニャコン「わかったにゃー。今回の任務はカザムで監禁されているリーダーの救出、
及び奥地で極秘裏に行われている、 ニャンニャン祭りの全貌をビデオに収め、可能なら阻止することにゃ。」
おいら「そいつは夢のある話だ。」
???「カザムのミスラ達は、男に飢えているから見つからないようにするんだお!」
おいら「誰だ!」
おニャコン「紹介しますにゃ、今回の任務の指揮官のタルAさんだにゃー」
タルA「よろしくだお、スネーク・ぽこたん」
おいら「ああ、よろしく頼む」
タルA「今のうちに先に潜入している工作員との合言葉をおしえるお、ぽこたんが「おいすー^^」というんだお」
おいら「おいすー^^ …これでいいのか?」
タルA「あ、ぽこたんインしたお!」
おいら「? どうかしたのか?」
タルA「な、なんでもないお!さっさと任務を始めるんだお!」
おいら「その前に工作員の服装を教えてくれないか」
タルA「狩人AFを着エルヴァーンの人だお、コードネームは"エルA"、ちなみに本部に連絡する場合、/cm linkshellを選ぶんだお」
おいら「了解、通信終了する」
プツン
おいら「やれやれ…厄介な任務になりそうだ」
PageUPでズームし、周囲を確認する
(哨戒しているミスラが5人…武装はヘルファイアにボムの腕か。)
おいら「さて、どうしたものか」
<call3> ピッピッピー (通信)
???「よぉwww久しぶりだなwwwwww!俺だよwwwwwww内籐だwwwwww」
おいら「内籐!どうしてここに!」
内籐「いやなwwwミスラとにゃんにゃんしようとしたら白姫にバレてここ数ヶ月逃げ回ってたわけだwwwwww」
おいら「それで最近ずっと見かけなかったのか…で、一体どうしたんだ?」
内籐「タルAに聞いたんだがお前リーダー探してるんだって?wwwww
居場所は知らねえけど逃げ回ってるうちにこの辺の土地に詳しくなっちまったから
なんかわからないことがあったら聞いてくれwwwwwwwww」
おいら「ああ、助かる。で、お前は何をこれからどうするんだ?」
内籐「ほとぼりが冷めるまでもうちょっと隠れてるwwwwww通信したいときは/tell naitouでよろwwwwww
おkkk?wwwwww」
おいら「わかった、気をつけろよ」
内籐「オマエモナーwwwwwwwwww」
そのうち続く
326 :
119 ◆N4hISqu3ag :04/12/30 14:42:56 ID:31ff6ovr
名無しさん ◆V00/Phqsn. さん
とても読みやすく編集されてます。ありがとうございました。
他のみなさんの感想や意見もめちゃくちゃうれしいです。
ありがとうございます。
327 :
既にその名前は使われています:04/12/30 15:50:32 ID:mnYgnoZj
砲手
328 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/30 18:51:47 ID:EkWHCoz7
今あぷろだに上げてくれたワード文章もとにまとめてるんだけど
続きだと思ったらニセモノだったりよくみたらエロ小説だったりで時間かかりそうです(´д`)
作者の名前がコロコロ変わってたりして誰が誰やら・・・
329 :
既にその名前は使われています:04/12/30 18:52:43 ID:aAKxhSLW
330 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/30 18:54:38 ID:EkWHCoz7
>>329 ((((゜д゜;))))ひいい
ってかなぜ2スレ目が行書体で表示されるんだ?
マジ読みにくい・・・
331 :
既にその名前は使われています:04/12/30 19:02:09 ID:aAKxhSLW
>>330 スマンカッタ
フォント変えて読んでくれw
332 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/30 19:08:52 ID:EkWHCoz7
>>331 あ、変えれるのか(・ω・)ワードあんまし使ったこと無くて
2スレ目100レスもないからそんなに苦労しなかったけれども。
短編は短編でまとめちゃっていいのかなぁ。
333 :
既にその名前は使われています:04/12/30 19:13:35 ID:aAKxhSLW
>>332 短編コーナーと長編とで分けていいかもね。
TOP
└長編
├119氏の
├・・・
└@@@
└短編
├初代スレの
├2代目
└3代目
└エロ
とか
334 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/30 19:19:21 ID:EkWHCoz7
>>333 一番下になんか見える(´д⊂)ゴシゴシ
( ´∀`メ) 氏は書くのやめちゃったんだろうか。まとめちゃったけど。
335 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/30 19:55:41 ID:EkWHCoz7
336 :
既にその名前は使われています:04/12/31 00:57:00 ID:iDT/csuE
あげ
337 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 01:17:14 ID:zqiWPiGO
>>335 わたしのまで入れてもらってありがとうです;;
短編は矛盾を直したのがあるんだけど、貼っていいのかな?
338 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/31 01:27:31 ID:szU62pod
>>337 どうぞどうぞー。
青の中のエリネネを追加。
自分で勝手に場面わけしちゃったんだけどいいのかなぁ(´д`)
作者さんどうすかね?
あとは・・・作者名も作品名もない人はどうすれば・・・orz
339 :
既にその名前は使われています:04/12/31 01:40:18 ID:DQ6y0JUF
>>338 作者名がなかった人は、続けて作品を投稿する気が
なかったから、コテハンを持たなかったと考えるのも。
作品名がないのは、無題とするしかない?
340 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/31 01:48:15 ID:szU62pod
>>339 なるほど。
と思ったらあったよ(´・ω・`)別の話かと思ったら同じ人か・・・
それはそうと竜の錬金術師の第1話がログのどこを漁っても見つからない・・・
341 :
既にその名前は使われています:04/12/31 02:20:24 ID:iDT/csuE
342 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:23:54 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り1/8
タルタルの少年クロンクロンは、父がサンドリアの大使館に赴任したために、
最近ウィンダスからサンドリアに引っ越して来た。
しかし、なかなか新しい環境に馴染めなくて、友達もつくれずに一人憂鬱な
日々を送っていた。
もともと釣りが大好きだったクロンクロンは、その寂しさを釣りをすることで
ごまかしていた。学校が終わると、両親に内緒で街を抜け出てロンフォールの
シュバル川で釣りをするのが毎日のささやかな楽しみだ。
343 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:25:08 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り2/8
今日も、クロンクロンはシュバル川に釣りに出かけていた。気がつくと陽は
すっかり沈み、ロンフォールの鬱蒼した森は夜の帳に包まれていた。彼の両親
はいつも帰りが遅いので、うっかりこんな時間まで釣りをしていることも珍し
くなかった。
それにしても、今日は少し街から離れ過ぎたかもしれない。いつもの場所のか
かりがあまり良くなかったので、いい場所を求めて移動しているうちに、かな
り遠くまで来てしまったようだ。
街の明かりさえ見えない。用心のために、父の倉庫からスニークオイル一瓶と
オイルパウダーを少し持ってきていたが、さすがに怖くなって、クロンクロン
は手早く帰り支度を整えると、足早に帰路についた。
344 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:26:34 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り3/8
夜のロンフォールは人気もなく、遠くからは獣の遠ぼえが時折聞こえてくるだけ
だった。夜空を見上げると三日月が寂しそうに浮かんでいた。
こんな時はいつも、「一緒に釣りをする友達がいればなあ」とクロンクロン思う
のだった。友達が一緒なら夜の道も怖くはないだろうし、楽しくお喋りしながら
の釣りは、きっともっと楽しいだろう。
不意にロンフォールの森がざわめいたように思えた。
後ろを振り向くと、木々の梢の向こうに不気味な七色の光が辺りに波紋を投げか
けゆらゆらと近づいてくる。
見た事も聞いたこともない不思議な光だった。
立ち止まって小さな目を凝らしていたクロンクロンだが、次の瞬間身も心も凍り
付いた。低い呻き声のような声とともに大きな獣の影が現れたからだ。
少年は心臓が飛び出るほどびっくりすると、大慌てで踵を返し逃げ出した。
345 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:27:47 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り4/8
ロンフォールの森は起伏が激しい上に、道を外れると深い霧のために迷子になり
やすい。クロンクロンは逃げているうちに、自分がどこを走っているかも分から
なくなってしまった。走った距離を考えれば、もう街の明かりが見えてもいいこ
ろだ。もしかしたら見当違いの方向に走ってきたのかもしれない。クロンクロン
は怖じ気づきながらも、こいうときのためにオイルとパウダーを持ってきていた
のを思い出した。
「あっ!」
オイルを使おうと鞄を開けたとき、クロンクロンは緊張のあまり瓶を落としてし
まった。下り坂を転がっていくオイルの瓶。クロンクロンは急いで瓶を拾おうと
したが、今度はうっかり木の根に足をひっかけて激しく転倒した。ごろごろと転
がり、坂道を下りきった場所に根を下ろした大木の幹にぶつかると、湿った地面
の上に投げ出された。
346 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:28:30 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り5/8
しばらく放心状態だったが、頭を二三度横に振ると慌てて起き上がろうとする。
「つっ!」
膝にずきんと鋭い痛みが走った。どうやら 木の幹で腰をしたたかに打ったら
しい。
なんとか立ち上がったが、痛みのあまり座りこんでしまう。
落としたオイルの瓶を探したが、こんな暗闇の中ではもちろん見つける術もない。
クロンクロンは涙目になりながら、自らの運命を呪った。
坂の上を見ると、七色に光る光が揺らめきながら見えた。巨大な影が木陰に揺れ、
低いうなり声が聞こえる。
(もう駄目だ!)
クロンクロンは小さな体をぎゅと竦めて、覚悟したように目をつむった。
347 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:29:50 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り6/8
「落とし物だよ」
思わず聞こえてきた優しげな声に目を開けると、そこには穏やかな瞳をしたガルカ
の少年が立っていた。年はクロンクロンよりもすこしばかり年上だろうか。
釣り竿を腰に下げ、青いフィッシャーチュニカを着込んでいる。
少年の方に差し出した左手には、見覚えのある魚篭が握られている。
自分の魚籠だ。慌てて逃げ出したときに落としてしまったらしい。
「これ、君のだろ」
クロンクロンは腰の痛みに堪えながら魚篭を受取り、たどたどしく「ありがとう」
とお礼をした。
ガルカの少年は、クロンクロンが傷ついていることに気づくと、ぎこちない詠唱で
ケアルを唱えた。だが効果の方はまんざらでもなく、すーっと腰の痛みが引いてい
くのがわかる。
やんわりと癒しの魔法の光が消えていくと、すっかり痛みは消え去っていた。
ガルカの少年はゆっくりと立ち上がると、クロンクロンに向かって微笑んだ。
「君も釣りをするんだね」
「う、うん……」
348 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:30:45 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り7/8
クロンクロンはそう頷きながらも、ガルカの少年の右手につり下げられた大きな
魚篭に目を奪われていた。七色の光の波紋は、その魚篭の中から発せられていたのだ。光は今も溢れんばかりに辺りの木々を照らし出している。
不思議そうに、自分の魚篭からこぼれ出す光をじっと見つめているタルタルを見て
ガルカの少年はぴんときた。
「ああ、ごめん。これが君をびっくりさせたんだね」
そう言うと魚篭を地面に下ろしてその口紐を解き、クロンクロンに中を見せてあげた。クロンクロンが魚篭を覗きこむと、円筒形の筒の中には堀ブナが十数匹と三匹のクリ
スタルバスが泳いでいた。水底には光のクリスタルが二個沈んでいる。
月夜の光に反射するクリスタルバスの鱗の輝きを、光のクリスタルが増幅して溢れん
ばかりの七色の光を生んでいたのだ。
349 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:32:08 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り8/8
「おじいちゃんに教えてもらったんだ。以前、誤って魚篭の中に光のクリスタル
を落としたことがあってね、その時にこれを発見したんだって」
「きれいだろ?夜釣りにはぴったりなんだよ。だから、夜遅くなりそうなとき
なんかは、家の水槽から二三匹魚篭にいれて持ってくるようしてるんだ」
クロンクロンはあっけにとられたように魚篭の中身とガルカの顔を交互に見つめた。
帰り道、二人は色んな話をした。ガルカの名前はウォーフ、クロンクロンよりも
二つ年上だということ、最近両親を亡くしたウォーフはバストゥークからサンドリア
のお爺さんのところに引き取られて来たということ。そしてなにより、釣りが好きで
好きでたまらないということ。
その後サンドリアにつくまで、二人は仲良く釣りの話で盛り上がった。
どうやら、クロンクロンの一人ぼっちの小さな夜釣りは、今日で終わりを告げそうだ。
おわり
350 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:36:11 ID:zqiWPiGO
貼り終えました。ボキャブラリーないな〜と感じる文章ですが・・・
精一杯がんばったつもり(´Д`;)
しょうこりもなく新しいの書いてるので、出来たらまた貼りまする。m(_ _)m
351 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :04/12/31 02:38:51 ID:szU62pod
>>350 おつした。面白かったですよ(・∀・)
もう2,3個まとめようと思ったけれど眠いのでまた今度・・・
おやすみー
352 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:43:20 ID:zqiWPiGO
>>351 ありがと〜 (;´д⊂)
おやすみです〜
353 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 02:57:52 ID:zqiWPiGO
よくよく考えるとガルカって両親いないよね・・・・
転生するんだっけ、まったやっちまった・・・
354 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :04/12/31 03:01:04 ID:zqiWPiGO
●小さな夜釣り8/8(訂正)
「おじいちゃんに教えてもらったんだ。以前、誤って魚篭の中に光のクリスタルを
落としたことがあってね、その時にこれを発見したんだって」
「きれいだろ?夜釣りにはぴったりなんだよ。だから、夜遅くなりそうなとき
なんかは、家の水槽から二三匹魚篭にいれて持ってくるようしてるんだ」
クロンクロンはあっけにとられたように魚篭の中身とガルカの顔を交互に見つめた。
帰り道、二人は色んな話をした。ガルカの名前はウォーフ、クロンクロンよりも
二つ年上だということ。最近育ての親を事故で亡くしたウォーフはバストゥークから
サンドリアの年寄りガルカのところに引き取られて来たということ。そしてなにより、
釣りが好きで好きでたまらないということ。
その後サンドリアにつくまで、二人は仲良く釣りの話で盛り上がった。
どうやら、クロンクロンの一人ぼっちの小さな夜釣りは、今日で終わりを告げそうだ。
おわり
355 :
既にその名前は使われています:04/12/31 12:10:36 ID:+0+Bj1PY
ほしゅ
356 :
既にその名前は使われています:04/12/31 18:59:33 ID:zqiWPiGO
age
357 :
既にその名前は使われています:05/01/01 02:40:23 ID:JSIxV343
ほしゅ
358 :
既にその名前は使われています:05/01/01 09:05:12 ID:Z+EOT256
sgr
359 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/01 13:35:50 ID:yMHXDFR5
色々追加age
360 :
既にその名前は使われています:05/01/01 17:26:10 ID:yL+hpbad
改行位置で文章って変わるもんだね。とりあえずage
361 :
既にその名前は使われています:05/01/02 10:32:10 ID:XpPojP63
あげおめ
362 :
既にその名前は使われています:05/01/02 19:48:04 ID:rEvS5aKY
VT記者クリスト「幻の歌」1
「よぉ」
薄暗い酒場に聞きなれた声が響いた。
「よぉ」
カウンターに座っていた男が声に気づいて振り返った。
顔がほころぶ。
「久しぶりじゃないか!」
飲みかけのグラスを一気に流し込み、カウンターにガツンと叩きつけると、勢いよく立ち上がって、入ってきた男を抱きしめた。
「久しぶりじゃないか!クリスト!」
「おいおい、勘弁してくれよ、ウエイン」
少し困惑気味に抱きつく男をなだめる。何度も頬をこすりつける男をようやっと引き剥がす。
「今、噂していたところなんだ!」
「嘘付け」
「死んだんじゃないか、てよ……なぁ」
ウエインがマスターに同意を求める。マスターは二コリと微笑んで小さくうなづいた。
363 :
既にその名前は使われています:05/01/02 19:48:58 ID:rEvS5aKY
「どうしてたんだ」
「取材さ」
「どこへ?」
「サンドリア」
「へぇ、遠いな」
「あぁ…」
「なんだ、浮かないな。上手くいかなかったのか?」
「まぁな…結局無駄足だ…」
「そういうこともあるさ」
「はぁ」
大きなため息をつく。
「代わりの記事を書かなきゃならないと思うと、ウンザリだ」
「ハハハ、無事に帰っただけ幸せだろ?物騒だからな」
「編集部はそうは思っちゃくれない」
「ハハハハハ!お互い苦労するな」
少しの沈黙。その合間に詩人の歌が始まる。
364 :
既にその名前は使われています:05/01/02 19:49:48 ID:rEvS5aKY
「あぁ、ジュノのこの酒場が一番落ち着く。まぁ座ろう」
カウンターに並び座ると、マスターは何も言わずにクリストにグラスを差し出した。
「ありがとう」
身体にまとわりつくコートを脱ぎ、左の空いた席に投げ、グラスを半分ほど一気に飲み干した。
「ふぅ…」
「で、どんな記事なんだ?」
好奇心いっぱいの笑顔でウエインが詰め寄る。
「幻の詩人『ユン・スーファーシュ』さ」
365 :
既にその名前は使われています:05/01/02 20:10:39 ID:rEvS5aKY
VT記者クリスト「幻の歌」2
「クリスタル戦争時に天才と呼ばれた詩人…か」
「『ユン』の楽曲は当時の人々の心を支えていたし、現在も脈々と歌い継がれている。研究者によると作者の知られていない歌のほとんどが彼の曲だと言われているんだ。」
「バラードが有名だな」
「あぁ」
「生きていたのか?」
「いや、死んでる」
「当時30代だろう。生きていてもおかしくはないが」
「死に方が問題なのさ」
クリストはタバコを取り出した。火をつけて胸いっぱいに吸い込んで吐き出す。
「クリスタル戦争が終わって数年後、彼の妻が…」
「ちょっと待て」
ウエインがクリストの口に毛むくじゃらの手を当てて話を遮る。
366 :
既にその名前は使われています:05/01/02 20:11:27 ID:rEvS5aKY
「なんだよ?」
「いい曲だと思わないか?声もいい」
「おいおい…」
呆れて、苦笑いをする。
「お前が留守にしている間に、ここの専属の詩人になったんだ。若い娘さ。特にこの曲が好きなんだ。」
「…」
目を閉じうっとりと曲に聞き入る。クリストは半ば呆れて曲が終わるのを待った。
「それで?」
「あぁ…クリスタル戦争が終わって数年後、彼の妻が死んだ」
「なぜ?」
「なんでもない。病死さ」
「…」
「ユンは妻の死を受け入れられなかった。よほど愛していたんだろうな。でもまともじゃなかった。天才というのは少なからずそういうところがある。凡人には、うかがい知れない何かがあるもんだ。しかし常軌を逸していた。」
「なにしたんだ?」
「悪魔に魂を売ったんだよ」
367 :
既にその名前は使われています:05/01/02 20:31:33 ID:rEvS5aKY
VT記者クリスト「幻の歌」3
「なんだい、それ?」
「ズヴァールのデーモン族は彼を狙っていた。何度も人間たちをギリギリまで追い詰めながら獣人達が勝利できなかったのは彼の歌が人々の心を支え、絆を強めたからではないかと考えていたらしい。」
「なかなかいいところを突くな。ジュノ国が樹立する時に最初にしたことが『国歌制定』だったわけだし、言葉ってのには『力』がある。事実、俺達はこうやって酒場で若い娘の唄を聴いているわけだしな」
「そう、その言葉の力を獣人は恐れた。そこで妻を失い自失する彼の元に現われた。」
「何したんだい?」
「目の前で妻を生き返らせた。」
「そんなことが出来るのか?」
「さぁ、幻だったんじゃないかな。完全に死んだ人間を生き返らせることは悪魔でも出来ない。おそらくは幻を見せられただけだろう。」
「キツイな」
368 :
既にその名前は使われています:05/01/02 21:10:03 ID:rEvS5aKY
「妻の幻は一日で消えた。もしも妻との一日をもう一度、過ごしたかったら『子供』を殺せ…と悪魔は言った」
「その血も根絶やしにする気だったのか」
「娘が三人いた。何もしらない長女がまず殺された。幻の妻と夢の一日を満喫、その思い出が後悔と欲望を一層高めていくと次女を殺しに掛かった。」
「酷い」
「その頃になるとユンはもう、まともじゃなかった。目は血走り、顔は歪み、言葉を発しなくなった。獣のように唸るだけだったらしい。言葉を失うってのは詩人にとって全てを失うってことだ。それでも妻との時間を選んだってのは愛の深さかもしれない」
「弱ささ」
「そうとも言う」
タバコを灰皿にねじ込む。
「ユンは徐々に人ではなくなっていったか。骨格はゴーレムのように肥大化し、身体には蛆虫が這い、黒い爪が生え、硬い毛が全身を覆った。皮膚には呪い文字が浮かび、目は闇に光った。
そして新月の夜、娘達をかくまっていたサンドリア騎士団をなぎ倒し、次女を殺した。気を失う直前、騎士団たちが見たのは実の娘を殺し、喰う魔物の姿だった。」
「喰う?」
「あぁ」
「はぁ、酒がまずくなる」
369 :
既にその名前は使われています:05/01/02 22:01:33 ID:rEvS5aKY
VT記者クリスト「幻の歌」4
「いやだな。そんな取材に行くくらいなら、ここで酒飲んで、歌を聴いているほうがいい。この詩人いいだろ?お前も気に入るよ。」
「……次女は殺されたが、三女は逃げ延びた。次の新月の夜、また騎士団の前にユンは現われた。騎士団も数を増やし厳重に警備していたのだが、その間隙を縫い、ユンは三女マリアの目前に迫った。」
ウエインは目を閉じ、眉間に皺を寄せた。場面を想像しているのだろう。
「…それで??」
「ユンは消えた」
「?」
「ユンは消えてなくなった。風に溶け、消えた。」
「よくわからないな。」
「話によると、飛び掛るユンにマリアが何かを呟いた途端に、もだえ苦しみ始め、消えてなくなったらしい…、最後にその娘の言葉で人間の心を取り戻し、消えた。」
「なにを呟いたんだ?」
「それが分からないんだ」
「それじゃ記事にならないじゃないか」
「だから困ってるんだろ」
「そのマリアって娘は生きているのか?」
「さぁ、分からない。ただ、既に高名な詩人が悪魔になって娘を食い殺し、死んだなんて話は…」
「三国政府にとって都合が悪い」
「だから隠蔽した。騎士団にとっても恥だしな。だからユンの話は全く知られていない。ユンが作った曲が『創作者不明』になっているのもこの事情のせいだ。お陰で娘の行方もサッパリだしな。」
「おつかれさま」
ウエインはグラスの縁をクリストのそれにカツンとぶつけた。
370 :
既にその名前は使われています:05/01/02 22:54:30 ID:rEvS5aKY
「いい曲だ」
「お前もそう思うだろ?」
日付が変わる頃になると、酒場からも人影は消えていた。
詩人は最後の曲を歌うとゆっくりと挨拶をし、壇上から降りた。
「そろそろ帰るよ」
「あぁ、またな」
「マスター、勘定…」
詩人は二言三言、演奏者達と談笑した後、カウンターのマスターに向かって歩いてきた。
マスターがその詩人に小さな声で「こちらが…」と囁くと、ニッコリと微笑んでウエインを見た。
「初めまして、ウエインさん。マスターから聞いてます」
「あ…」
「わたしの歌を気に入ってくださってるって…」
その子が微笑むと辺りがパッと明るくなった。
お世辞にも美人だとか可愛いというタイプではないが、初めて会ったのに人とホッとさせる不思議な魅力がある。
「あぁ、あぁ…」
ウエインが照れくさそうに頭を掻いた。
「なんだよ。びっくりするじゃないか…よ…」
「なに照れてるんだよ。いい年して」
「うるさいなぁ」
「あはは、お友達ですか?」
371 :
既にその名前は使われています:05/01/02 22:54:58 ID:rEvS5aKY
「長い付き合いでね」
「若いのに、いい歌を歌うね」
「…ありがとうございます」
「名前なんていうの?」
「自己紹介がまだでしたね。初めましてマリア・スーファーシュです」
「…」
二人の動きが止まる。数瞬見合わせ、声を合わせる。
「今、噂をしていたところなんだ!!!!」
おしまい
372 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/03 04:03:19 ID:9gs5IblV
色々追加&職人さん乙
373 :
既にその名前は使われています:05/01/03 11:03:07 ID:eYb/XyfE
374 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/03 15:20:58 ID:9gs5IblV
375 :
既にその名前は使われています:05/01/03 15:24:35 ID:h1k/Ju59
うはww
漏れもまとめサイトつくってたんだが…
もうあるみたいだなw
削除してくるぽw
376 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/03 15:29:00 ID:9gs5IblV
>>375 マジスカ(;゜д゜)
自分のショボイからそっちでまとめた方がいいかもしれない(´д`)
377 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/03 15:34:50 ID:9gs5IblV
PREタグなんてあるのを今知った
ずっとBRを使ってた俺の苦労は・・・
(´・ω;:,.,...,
:;;:;:;;;;;;;.,.,,.,.
378 :
375:05/01/03 16:00:27 ID:h1k/Ju59
379 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/03 16:05:01 ID:9gs5IblV
>>378 マ、マジッスカ!
でもジオで十分なような気がしないでもない・・・(・ω・)
よくわからないしなぁ・・・
380 :
既にその名前は使われています:05/01/03 17:30:36 ID:JCK+IYwd
>>373 レベル低いとかあんまり言うなよ。な?
このスレに投稿しようかと思ってる人も「そんな風に思われてるのかな」とか考えるかもしれないじゃないか。
と、リンク先を見ずにレスしてみる。
381 :
既にその名前は使われています:05/01/03 17:36:17 ID:igaFHEBk
そういうとこがネットの難しいところだわなぁ
金取ってるモノすらタダで手に入る世界でタダでもいらない物見せ付けられても面白くないし
だからと言ってこれから成長するやもしれない芽を面白半分で摘むっていうものせちがらい
最後にモノをいうのは作り手の強い意思なんだろうけど
382 :
既にその名前は使われています:05/01/03 18:17:06 ID:bibNvu7y
>>373 書き直しも削除も自由に出来るので、
書き手にとってはシステム的に理想的。
383 :
既にその名前は使われています:05/01/03 23:33:19 ID:5GTyRdrG
119氏
第2部きたいage
384 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/04 07:46:56 ID:IdPamvKZ
「ずっと前から聞きたかったんだけど、魔法と歌の違いって何なのかな」
「むつかしい質問だねぇ。正直言うとわたしもよくわからない」
「いや、ほら、魔法って炎だしたり私たちを元気にさせたりするじゃない。
歌ってそういうのないじゃない。あんた歌ってるだけだよ。そりゃあちょっとは
元気になるけどさ。あんた歌うまいし」
「ほめられているのかけなされているのか、いまいちよくわからんねぇ」
「褒めてるよ。たぶん」
「ありがとう」
「だって不思議なんだもん。あんたマジでいらないじゃん。でもあんたが
いない時って決まって苦戦するんだよね。獣人との戦いに限らず」
「そう言ってくれるとうれしいねぇ」
385 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/04 07:48:21 ID:IdPamvKZ
「で、魔法と歌の違いってなにさ」
「どういえばいいのかね。うん、根本的に違うね。きみはフォークと
ナイフを使ってものを食べるでしょう。それが魔法。手段だね。
ナイフを手にとって、これは銀です、って言うの。これが歌。見方を、
法則をちょっとかえるのさ」
「ちょっといいかな。会話ってさ、言葉のキャッチボールじゃない。
普通、伝えたいことを理解させるために話すよね。あんたの
伝えたいことが私に理解できてないんだけど。これは私が阿呆なのか
あんたの伝えかたが悪いのかどっちなんだろうね」
「どっちも違うかなぁ。わたしは君に伝えようとしてないもの。」
「あんたに聞いた私が悪かったのかな」
「さて、もうちょっとで愛すべき我が故郷だ。大滝が見えてきた」
386 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/04 07:49:47 ID:IdPamvKZ
彼は立ち止まる。私は後ろを振り返り彼をじっと見つめた。大きな身体を窮屈そうに
動かし、しっぽを振りながら旅人の帽子をとってその大滝を眺めている。
私は手近な岩に腰を下ろし、カバンから水筒をとりだし口の中をしめらせた。
「バストゥークに帰ったら一旦お別れかな」
と彼は言った。
「三週間後にまた会いましょう。私実家帰るからモグハウス借りないよ。
連絡するときはそのあたりよろしくね。で、帰って公認冒険者の認定書を
貰ったあと何するの?」
「歌う」
「いい答えね」
そして私たちは帰ってきた。ああ!我が故郷!駆け出したくなる。叫びたくなる。
胸いっぱいに空気を吸い込む。そしてすこし咳き込む。前より空気が悪くなっている。
でも私はこの国が好きだ。
彼が私の背中をやさしく叩きながら言う。
「ではまた。三週間後に」
私と彼は(旅の仲間らしく)抱き合った。
「三週間後にここで会いましょう」
と私は、彼の厚くそして恐ろしく硬い胸に顔をうずめながら言った。
第二部です。
388 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/04 13:11:45 ID:/6whfzfl
2部きたーーーage
今まで(
>>318-320)のあらすじ:
アジドマルジドがおびき寄せた口の院襲撃犯はシャントット院長だった。タロンギの地にて師弟対決の幕が開く。
---
「…くそ」
岩陰に身を潜めながらアジドマルジドは小さく舌打ちした。魔法の威力・精度で遅れをとっているとは思えない。
だが、戦いの年季の点では劣ることを自覚していた。こちらが勝負にでて前進すれば同じだけ向こうは退く。
ならば一息つこうかと攻撃の手を休めると、回復する間もなく向こうの魔法が飛んでくる。
お互いに致命の一撃は与えられないまま、しかし消耗が大きいのは確実に自分の方だとも彼は理解していた。
「このまま続けてもジリ貧なだけか。…なら、勝負をかけるか」
アジドマルジドは夜空に浮かぶ月を一瞬見上げ、最後のヤグードドリングを飲み干すと岩陰から飛び出した。
空中から降り注ぐ巨大な氷塊はこちらの居場所から少し離れた場所に着弾した。引き続き放たれた2発目、3発目以降の
氷塊も狙いは悪くかわす必要もない。シャントットは降り注ぐ氷塊を眺めながら相手の真意を探っていたが、夜空を
見上げると何かに気づいたようにニヤリと笑った。
数分後、夜空に浮かぶ月の色が赤く変わった瞬間、日付が変わりヴァナディールの地に影響を及ぼす精霊の属性が炎へと
変わった瞬間、アジドマルジドは放つ魔法を氷系から炎系に変えた。巨大な火の玉が上空から降り注ぐ。
しかしその瞬間、炎系魔法を放っていたのはシャントット側もまた同じだった。
「ブリザドを意識させておいて曜日が変わった直後にファイア、ちょっと子供だましですわね。」
だが、アジドマルジドの放った火球とこちらの攻撃が上空にてぶつかりあう…と考えていたシャントットであったが、
その予想は裏切られた。アジドマルジドの火球は衝突前に空中にて四散し、またも遠くはなれた場所に着弾する…
いや、それらはすべて、先ほど放った氷塊に正確に命中していた。
燃え盛る炎は巨大な氷塊を一瞬にして溶かし、そのまま溶けだした水を蒸発させ、辺りに水蒸気の濃い霧が立ち込める。
「あらあらまあまあ。これが狙い?」
自分の指先すら見えない深い霧の中でシャントットはつぶやくが、この機に魔法を唱えられてもそれを察知・回避する
ことは十分可能、と判断したうえで焦りはなく、冷静に魔力の波動に注意をはらう。
…が、彼女が魔法を感知することはなかった。アジドマルジドの本当の狙いがわかったのは、片手棍を手にした彼が
こちらの目の前に、超至近距離に姿を見せた後だった。
霧が晴れていく中、襲撃者の喉元にダークロッドを突きつけたアジドマルジドは、目の前に現れた姿に一瞬声を失った。
それは、予想していた院長の姿ではなく、ウィンダス連邦において口の院の魔道士団に次ぐ戦力であろう魔道兵器。
「カ、カーディアン!?」
アジドマルジドが戸惑いつぶやいた一瞬、カーディアンは手にした両手棍で突きつけられた片手棍を払いのける。
そのまま横なぎにアジドマルジドを切り裂こうとしたが、アジドマルジドは大きく跳躍しその一撃をかわした。
カーディアンはあきらめず両手根をすばやく切り返しまだ空中のアジドマルジドに一撃を与えるべく間合いを詰めたが、
空中から放たれた精霊魔法によりその攻撃の手は防御にまわさざるを得なかった。魔法は他愛もない威力のI系魔法で
あったが、アジドマルジドの着地のスキをカバーするには十分だった。
着地したアジドマルジドはすでに冷静さを取り戻し、間合いをつめて斬りかかっていく。
「えい!この!とう!いたっ!」
カーディアンとアジドマルジドが切り結んでいる場所から少し離れた岩陰にて、シャントットは手にしたオーブを見つめ、
そのオーブに写るカーディアンの視界をもとに弟子との近接戦闘を続けている。
しかし、若き魔導師の攻撃に彼女が操作しているカーディアンが押されているのは明らかであった。
「うーん、接近戦は独学のようですわね。ちょっとマズイかしら。」
防ぎきれなかったアジドマルジドの攻撃によりカーディアンの右腕が吹き飛んだ瞬間、シャントットはオーブを懐にしまい
魔法の詠唱を開始した。
393 :
新緑の国の魔導師20:05/01/04 18:47:42 ID:PcnVNXJg
「院長!?」
突如動きを止めたカーディアンにトドメの一撃を加えようとした瞬間、強大な魔力が、身に覚えのある魔力がこちらに
向けられているのを察知しアジドマルジドは飛びのいた。一瞬の後、砂埃を舞い上げ巨大な竜巻が発生する。
激しい砂煙でおぼろげになった視界の中で、カーディアンのそばに一人の魔導師が駆け寄り転移魔法で姿を消すのを
どうすることもできず眺めていたアジドマルジドだったが、砂煙が収まるより早くリンクシェルを取り出して叫んだ。
「ハックルリンクル!」
「あ、アジドマルジドさん!無事でしたか!?」
「院長は今どこにいる!?」
「え!あ!た、たった今帰ってきました!」
ハックルリンクルの答えを聞くや否やアジドマルジドもまた転移魔法で姿を消す。
タロンギの大地は何事もなかったようにいつもの平穏を取り戻した。
〜つづく〜
394 :
既にその名前は使われています:05/01/04 19:40:10 ID:rb+HHupb
あげ
395 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/04 20:00:41 ID:IdPamvKZ
大公房に行き、認定書を受持して私は公認冒険者になった。
私は港にある実家に帰った。玄関を開ける。空気がかわる。懐かしい
青春と初恋の酸っぱいにおい。母さんの声が聞こえる。
「ただいま」
と私は言った。
「おかえり」
と母さんはいった。
認定書を仏壇に供えて手を合わせる。私は埃と垢にまみれた東方着を
脱ぎ捨て、身体を拭き、木綿の胴着に着替えた。父さんに認定書を見せて
旅の話をし、母さんから兄嫁の愚痴を聞きながら、久しぶりの暖かいご飯を食べた。
そして私はやわらかい布団でぐっすり眠った。
朝早く起きだし、父さんと道場へ行く。父さんと師匠が話している間、私は道場の
清掃をした。師匠に刀をお渡しする。鞘を抜き、
「人を斬ったね」
と師匠はおっしゃった。
「はい」
と私は言った。師匠は私の両の眼を静かに、じっと見つめた。いっときのあと、
師匠はおっしゃった。
「明日またきなさい」
396 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/04 20:03:15 ID:IdPamvKZ
昼、私は兄の家に行った。会う約束をしていなかったので、家に義理の姉が
いたときは嬉しかった。私たちは港の飛空挺が見えるベンチに腰掛け、
お互いの顔を見て笑いあった。
「旅の調子はどう?」
と彼女は言った。
「思ったより大変でした。でも面白かった」
と私は言った。
「まずバストゥークからウィンダスへ行って、その後サンドリア、そしてまたバス
トゥークへ。その時は実家に寄らずにすぐに旅立って、セルビナで一仕事して、船で
マウラいって。三週間後にまたマウラで会う約束をして別れたんです」
「すごいわね。三国をまわったのね」
「大変でしたよ。でもさっきも言いましたけど、面白いことや楽しいことのほうが
多かったですね。各地の美味しい料理も食べました。特にウィンダスの魚料理は
美味しかった」
「私はウィンダスに行ったことないわね」
「お義姉さんも一度行かれたほうがいいですよ。とてものどかで
居心地いいところでした」
「ウィンダスに知り合いもいるし今度行ってみようかしら」
「新婚旅行にどうぞ」
義姉から夕飯に誘われ、私は兄の家へ義姉といっしょに歩き出した。
397 :
既にその名前は使われています:05/01/04 22:13:04 ID:CdGm5lfc
あげ
398 :
既にその名前は使われています:05/01/05 00:06:12 ID:YjUVcnoV
二つともおもすれー( ^ω^)
399 :
既にその名前は使われています:05/01/05 09:16:39 ID:65BHe0ND
age
400 :
既にその名前は使われています:05/01/05 11:17:10 ID:APR+5YSJ
,r─-、 ,. ' / ,/ } カ
{ ヽ / ∠ 、___/ |
食 ヽ. V-─- 、 , ',_ヽ / ,' ツ
ヽ ヾ、 ',ニ、 ヽ_/ rュ、 ゙、 /
う \ l トこ,! {`-'} Y 丼
ヽj 'ー'' ⊆) '⌒` !
か , 、 l ヘ‐--‐ケ }
ヽ ヽ. _ .ヽ. ゙<‐y′ /
? } >'´.-!、 ゝ、_ ~ ___,ノ
| −! \` ー一'´丿 \
ノ ,二!\ \___/ /`丶、
401 :
既にその名前は使われています:05/01/05 11:37:23 ID:65BHe0ND
面白いのでage
402 :
既にその名前は使われています:05/01/05 12:54:22 ID:hwZewQ6o
ほsy
403 :
既にその名前は使われています:05/01/05 16:02:20 ID:IOOc2Xx5
ほす
404 :
既にその名前は使われています:05/01/05 16:19:23 ID:9aYl2GVx
昔よくあったパロディ系のはここはダメなのかな?
狩人のカチャターンの話とかw
405 :
既にその名前は使われています:05/01/05 21:03:32 ID:IOOc2Xx5
ほす
406 :
既にその名前は使われています:05/01/06 04:58:17 ID:PU4sQNaA
hoshu
407 :
既にその名前は使われています:05/01/06 07:40:16 ID:wULnWRMn
mowsu
408 :
既にその名前は使われています:05/01/06 14:02:45 ID:RlAM7OUf
sage
409 :
既にその名前は使われています:05/01/06 20:37:27 ID:wULnWRMn
もす
410 :
既にその名前は使われています:05/01/07 10:59:33 ID:gFlj6T33
hu
411 :
既にその名前は使われています:05/01/07 11:38:08 ID:3zD+4pxO
だんご!だんご!だんご!だんご!だんご三兄弟!!
一番上は 田中!(田中)
一番下は ユーザー!(ユーザー)
間に挟まれ GM!(GM)
だんご 三兄弟!!
クレームばかりの ユーザー! (ユーザー)
弱体ばかりの 田中! (田中)
話を聞くだけ GM! (GM)
だんご 三兄弟!!
文句ばっかり言っててもー♪
何故か 毎月 金払うー♪
気がつきゃスクエニ 昨年度♪
経常利益が 3.2倍♪ (ウマー♪)
412 :
既にその名前は使われています:05/01/07 19:24:39 ID:3zD+4pxO
補習
413 :
既にその名前は使われています:05/01/08 00:34:21 ID:viiGG1Qd
保守ばかりの件について
414 :
既にその名前は使われています:05/01/08 00:40:13 ID:qg8AmGxi
FF11創作総合(小説メイン)PART4[未更新]
/´~~''""ヽ
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415 :
既にその名前は使われています:05/01/08 04:18:46 ID:GpxcXBiI
119の中の人とか戻ってこないのか?
hey guys 落ち着け まだ4日しか経ってないぞ
417 :
既にその名前は使われています:05/01/08 07:32:42 ID:WChw2cZs
FF11創作総合(小説メイン)PART4[未更新]
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418 :
既にその名前は使われています:05/01/08 17:05:31 ID:hVzorNs4
保守ばっかになるのは、職人がこなければどうしようもないんだから仕方が無い。
つーか、何か書くのって以外と時間かかる。
普通のノート1ページ分書くのに1時間以上とか。
しかも構成とか先の展開とか考えずに思い付いたままに書き付けてそれな。
まぁ俺の場合はそうだったってだけだけど。
だから遅いとか思わず見守ってやれってことで保守。
419 :
既にその名前は使われています:05/01/09 02:48:59 ID:NKOly6aH
age
420 :
1/3:05/01/09 05:29:11 ID:BHN8N06m
〜竜の錬金術師 第6話 真竜の鼓動〜
竜騎士はボスティン氷河に訪れ、毛皮・牙・氷の塊を採集していた。
いつも人は誰もいないハズなのだが今日は何人もすれ違う。
1人引き止めて話を聞くと、この氷河に真竜が2体ほど飛んでいくのを目撃したらしい。
気にはなったが、かばんも一杯になり日も暮れ掛かっていたので竜騎士は下山する事にした。
しかしふもとまでもう少しという所で何かの気配を察知し、竜騎士は足を止めた。
気のせいかと思い、再び足を動かし始めたが今度はハッキリと聞き取る事が出来た。
竜の…鳴き声が。
竜騎士だからこそ気付いたのかもしれない、鳴き声の元へと竜騎士は走った。
そして崖の間を抜けた小さな広場に横たわる巨大な白い真竜を目の当たりにした。
すぐそばには人くらいの大きさの、小さな小竜もいる…親子のようだ。
怪我をしているようでピクリとも動かない。
(たす・・・け・・て・・)
人の言葉では無かったが、竜騎士は真竜の言葉をハッキリと理解する事ができた。
先ほど会った連中がこの真竜を狩りに来ているのだという事も…そしてその者達の気配が近付いているという事も…。
421 :
2/3:05/01/09 05:29:59 ID:BHN8N06m
竜騎士は来た道を走って戻り、崖の隙間の通路を氷の塊と崖を練成して通路を塞いだ。
ここを通る者は行き止まりと思う事だろう。
…これで時間が稼げる。
広場に戻ると真竜は先ほどよりも力を失っているかのように見えた。
残念だが竜騎士の力でも錬金術の力でも傷を癒す事は出来ない。
真竜の頭に近付き、そっと撫でると頭の中に言葉が入り込んできた。
(我々は何もしていない…ただ……静かに生きたかっただけなのだ。
しかし人間も獣人も有無を言わさずに襲ってくる……。
神よ…許されるのならば私は…生まれ変わりたい…………)
小竜は真竜の傍らで泣き続けていた。
その姿は自らのしもべのワイバーンを思い出させた。
竜騎士は真竜から離れると、道具袋から2つの赤い石「賢者の石」を取り出す。
この石をそれぞれの竜に持たせると竜騎士は地面に槍を付きたてて大きな錬成陣を引いて走る。
高度な練成で練成陣は不可欠………そう、竜騎士は2体の竜を別の生物にするつもりなのだ。
422 :
3/3:05/01/09 05:30:31 ID:BHN8N06m
竜騎士は震えていた。
生物の練成は今まで成功した事が無く封印していたのだ。
ここでまた練成を失敗すると救うハズの竜の命を奪ってしまう事になるかもしれない。
人の気配もかなり近付き、考えている時間は無い…竜騎士は決意し練成を開始した。
しかしその直後、大型の剣が真竜の胸に突き刺さる!
振り向くと、崖の上には漆黒の鎧に包まれた暗黒騎士の姿があった。
「何をするつもりかは知らんが、そいつは俺の獲物だ。立ち去れ!」
そう言い放つと暗黒騎士は崖の上から鎌を振りかぶり、竜騎士を切り付ける。
切り裂いたと思った暗黒騎士だったが、竜騎士はプリズムパウダーとなりその場から消えていた。
「ちっ…パウダーを空蝉のように使いやがった…何者だ?」
辺りを見渡す暗黒騎士であったが広場には真竜の亡骸があるだけで、竜騎士と小竜の姿はどこにも無かった。
423 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/09 09:42:51 ID:ZKcISOM5
兄が家に帰ってきて、私は夕飯をいただいた。食べ終わり、
義姉は隣の部屋で本を読みはじめ兄と私は皿洗いをする。
「いつ頃までこっちにいるんだ?」
と兄は言った。
「3週間くらいかな。組んでた人それぞれ課題が見つかった感じだった
からね。旅の疲れを癒すためってのもあるけど、ちょっと長めなのよね」
「課題ね。Suiroの課題はなんだい?」
「なんだろう」
私は皿を拭く手をとめ、すこし考えてみた。
「なんだろう。よくわかんない。一応ぼんやりとしたものはあるけどね。」
「ないならないでいいんじゃないかな」
と兄は皿を戸棚にいれながら言った。
424 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/09 09:45:18 ID:ZKcISOM5
「とりあえず新しい弓が欲しいの。腕のいい職人さん知ってるかな。
そのために兄さんに会いにきたんだけれど」
「知り合いか。いたっけか」
兄は右手を額にあてて考え込んだ。
「木工職人に知り合いがいるわ」
私は振り返った。義姉が黒い本を持ち、居間へ戻ってきた。
テーブルの椅子に腰を下ろし、義姉は話を続ける。
「北の山に隠遁している忍者。弓を作っているところは見たことがない
けれど、職人としての腕は確かよ。作ってくれるかもしれない。
訪ねてみてはどうかしら」
私は義姉からの紹介状を貰い、実家へ帰った。私は新婚の夫婦の家へ
泊まれるほど無粋ではないのだ。
425 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/09 09:45:54 ID:ZKcISOM5
次の日の朝。私は道場で正座している。
「剣の道を究めなさい。剣の道を求める事に貪欲でありなさい。
煩悩即菩提。強さを欲する事は罪ではないよ。君は迷っている。
君の剣は迷っている」
私は刀を賜る。
「この刀で迷いを断ち切りなさい」
私は鞘から刀を抜いて刀身をじっとみつめた。古備前刀だ。
すべてにおいて非の打ち所がない。見事な反り。地沸のついた
力強い地景。刃冴えて乱れ映り立つ。刃中の葉も申し分ない。
備前刀らしい「過ぎたるがない刀」。すばらしい。みつめていると
気がふれそうになるほど・・・すばらしい。
「名は大包平」
426 :
既にその名前は使われています:05/01/09 10:55:48 ID:3rYAlNRG
お疲れ様です。
おもしろいですねぇ。表現に芸がなくて申し訳ないけど。
頑張って下さいな。
「それでは、罪状を読み上げる。この者、元サンドリア騎士団隊長ローゼム・ハリスは、
ジャグナー森林周辺において一般の通行人、隊商団、並びに警備隊を無差別に襲いかかり、
街道の治安を乱したのみならず、その犠牲者は重軽傷者28名、死傷者12名に及び、
かつては栄光有るサンドリア騎士団の隊長たる地位にあったものとして、まさに恥ずべき
行為である。よって、国法第198条の2項、5項に該当させ、極刑に処すのが望ましい
と思われる。裁判官、裁定をお願いしたい。」
「ヴァルハイム検事官、ご苦労であった。アルマ教授、これに対し異論がおわりか?」
「...ありません。せめて騎士団隊長として尊厳ある死を賜りますよう、裁判官。」
ローゼム隊長...生きていたのか...
俺との再会がこの様な形で行われようとは夢にも思わなかった。
髪を乱し、鎧も外され浮浪者のようにボロを身にまとい、だらしなく机に寄りかかる姿、
あれが本当に俺に騎士としての生き様とプライドを教えた隊長の姿であろうか?
「判決を言い渡す...罪人を起こせ」
裁判官から促されて両側から顔を起こされる。
初めてみせる、どろりとした精気のない二つの目。とのとき、
「いけないっ!」甲高い声が法廷に響き渡った。
タルタル族か?なぜこんなところに。
「何故その者を城内に入れたのだ!もう一刻の猶予も出来ない!
早くその者の息の根を止めなければ!」
「黒魔導師トカカ=クッタ殿、貴殿はウィンダス連邦からの賓客とはいえ、
我が王国の裁定に口を挟むことは許されない。ご静粛に願いたいが。」
「....くっ」
広い法廷の真ん中に飛び出した小さな魔導師が、その可愛らしい顔を一気にゆがめて、
凄まじい勢いで人の言葉とも聞こえぬ呪文を唱え始める!
「ごめんっ!」ドスッ
「う...」当て身を喰らい、たまらず倒れる魔導師。
動かないとみて、そっと抱き起こそうとする兵士の背後に、恐るべき狂気が襲いかかった!
「ウガァァァァァァァァァァァッッ!!」
(隊長!?)
「え...あぁっ!!」両手で兵士の体を掴むやいなや、一気にその首を引き抜き、
一人、また一人と血飛沫を立てつつ引きちぎっていく!飛び交う悲鳴、阿鼻叫喚!
「馬鹿な!素手で鎧まで引きちぎるなど!」
「で、出合え!止めよ!何をしている」
「だ、だめであります!早くお逃げ下さい!う、うわぁぁっ!」
雄叫びを上げ、なおも襲いかかろうとしている、かつて隊長と呼ばれた魔神を、
彼方から突如現れた一つの疾風が貫いた!
気が付くと、俺は自らの剣を抜いて、隊長の胸を背中を貫いていた。
(お前か...腕を上げたではないか...)
(た、隊長...)
(まさに...栄光有る...騎士団に...相応しい...)
どさり...と崩れ落ちる隊長。
「...よくやったぞ。後で忘れずに申し出るが良い。報奨を授けてやろう。」
「....」
言葉も出ずかろうじて敬礼を取り、その場をゆっくりと離れていった。
報酬?かつて敬愛していた隊長を刺し殺しておいて、受け取れる者などいるだろうか?
隊長だけではない...隊長達と供に、オーク共に捕らえられたハルーディア。
いまだ行方の知れぬ彼女との再会は、それほど待つまでもなかった...
(完)
430 :
既にその名前は使われています:05/01/09 19:12:25 ID:5l6pNshz
訂正スマソ そしてage
>>427 下から3行目 とのとき→そのとき
>>429 下から4行目 報酬→報奨
今まで(
>>389-393)のあらすじ:
口の院魔道士襲撃犯・シャントットを追うアジドマルジド。決着の地はウィンダスのシャントット宅へ。
---
ハックルリンクルはリンクシェルをしまうと、シャントット宅の監視を続けながら軽い溜息をつき呟いた。
「はあ、アジドマルジドさん大丈夫なのかな…。なんか大変そうだったけど…。」
「院長は家の中か?」
「ええ、そうです。………わ!アジドマルジドさん!もう戻ったんですか!?」
背後から急に声をかけられ慌てて振りかえったハックルリンクルは、砂埃まみれのアジドマルジドの姿に驚いた表情を見せたが
アジドマルジドは気にせず言葉を続ける。
「よし、行こう。」
「え?」
「決着をつけるんだ。ついてこい。」
さらに不安な表情を見せたハックルリンクルを気にせず、アジドマルジドはシャントット宅のドアを開けた。
「院長!」
「あらあらまあまあ。こんな夜更けにレディの家におしかけてくるとは、何のご用?」
普段と変わらぬ様子で奥の部屋から出てきたシャントットに、アジドマルジドは単刀直入で言い放つ。
「あのカーディアン、手の院も1枚かんでいるのですか?」
真っ直ぐに自分を見つめる真剣な眼差しを受け、シャントットはごまかすのをあっさりとあきらめた。
「…とぼけても無駄のようですわね。手の院は何も知りませんわ。カーディアンはちょっと無断で借りてるだけ。」
悪びれるそぶりもないその返事に妹の怒り狂う顔が脳裏に浮かんだアジドマルジドだが、気を取り直しさらに問い詰める。
「なんのためにこんなことを?」
「その昔、貴方の父ゾンパジッパがカーディアンを開発したとき、彼はカーディアンに人工的な知能を与え兵器として運用する
ことに成功しました。」
部屋をゆっくりと歩き回りながらシャントットは話し始めた。
「しかし、下手に知能があったせいで、私の命令を聞かないカーディアンも多かったものですわ。そのときからずっと考えていたのです。
高い戦闘能力はそのままに、持ち主の意のままにカーディアンを操ることはできないか、を。
そして、私の才能と努力がついに実を結び、それは完成したのです!」
そこまで話すとシャントットは懐から呪符を取り出した。
「この呪符をカーディアンに貼り付けることで、あらゆる命令に従い、戦闘記録を蓄積・学習し、最終的には私と同じレベルの
魔道士までに進化することができる、私の作った、私による、私のための魔道兵器が完成したのですわ!
…ま、実戦データのために、我が口の院の優秀な魔道士達にもちょっぴり協力してもらいましたけど。」
「院長並の魔力をもった、院長の思い通りに動く、院長のためのカーディアン部隊…」
そうつぶやくハックルリンクルの顔はひどく青ざめている。アジドマルジドも表情にこそださないが、思いは同じだった。
院長ひとりでも手に余るというのに。
「…なんにせよあなたの行為は、口の院魔道士に対する傷害行為は、許されるものではありません。身柄を拘束させていただく!」
「オーホホホ!それが貴方にできまして?アジドマルジド。」
一見上品な笑顔はそのままに、強大な威圧感を発しながらシャントットは静かに答えた。
「アジドマルジド。さきほどの貴方との一戦、とてもとても有意義なものでしたわ。その実戦データも既に反映済み。
おかげさまで、私のカーディアンに勝てる者は、ウィンダスにはもはや誰もいないでしょう!」
シャントットはそう言い部屋の片隅にあったタンスを開く。その中に収められていたのは1体のカーディアン。
彼女が手にした呪符を貼り付けられたそのカーディアンは、低い起動音ともにタンスから降りアジドマルジド達の前に立ちはだかった。
「アジドマルジド、あなた1ヶ月ほど病院で安静にしておいでなさい。その間に、私がこのカーディアンを量産して、口の院最強部隊を
作り上げて差し上げますわ!さあカーディアン、やってしまいなさい!」
シャントットの命令を受け、カーディアンは魔法の詠唱を開始する。
「右腕がちゃんとくっついている…タロンギで戦ったのとは別物の、新品のカーディアンか…。
そして、この詠唱呪文は、古代魔法バースト…。なるほど、さっきのカーディアンより強いってのは本当のようだ。」
表情を険しくしつつ状況を分析したアジドマルジドも対抗して魔法を詠唱する。が、魔力はその手には集まらない。
そればかりか、よろめきその場に膝をつくことになった。慌ててハックルリンクルが駆け寄り抱き抱える。
「アジドマルジドさん!?ま、魔力がもう?」
「くっ…。」
その間にもカーディアンの詠唱は続いている。ハックルリンクルはその場に座り込み半泣きになりながら叫んだ。
「うわああ、やっぱり院長に逆らっちゃダメだったんだ!諦めましょうアジドマルジドさん!今なら謝れば許してくれるかも!」
「…諦める?」
アジドマルジドはそのハックルリンクルの言葉を聞き、しかし自分に言い聞かせるようにシャントットを見つめたままつぶやく。
「…院長は越えられないから諦める?前大戦の英雄には勝てないから任せておく?」
「ア、アジドマルジドさん?」
「それは違う!それでは何も変わらない!変えられない!」
突如力強くなったアジドマルジドの言葉にハックルリンクルは思わずのけぞった。アジドマルジドは立ち上がりさらに叫ぶ。
「大戦は終わった!時代は変わったのだ!立て!ハックルリンクル!」
「は、はい!」
力強いのはその言葉だけではなく、膨大な魔力が彼の身体に集まっていくのをハックルリンクルはその肌で感じていた。
アジドマルジドは、彼の師を見つめ、指差し、叫んだ。
「ウィンダスの未来は!光は!俺達、新しい世代が切り開き、導かねばならんのだ!!」
「…魔力の泉。」
シャントットは感心したように呟いた。生粋の黒魔道師だけが使える、魔力を使いきってもなお魔法を詠唱できる最後の切り札。
しかし、いまアジドマルジドに集まる魔力は、彼が扱える魔力の限界を大きく越えているはずだった。いや、あるいは彼の師をも。
「…でも、少し遅かったですわね。私のカーディアンは既に詠唱を…」
そうつぶやきカーディアンをちらりと見たシャントットだったが、カーディアンが詠唱を止め微動だにしていないことに気づき驚愕した。
「あれま?」
不思議そうにカーディアンを覗き込むシャントット。それと同時にアジドマルジドが大きく叫んだ。
「フレア!!」
閑静なウィンダスの住宅地に、轟音が響き渡った。
「いてて、少しやり過ぎたか…?」
魔法の反動と影響で部屋中の家具が散乱する中、アジドマルジドはつぶやく。部屋を見まわすとハックルリンクルはタンスの下敷きに、
シャントット院長は本の山にうずもれて、それぞれ爆風に吹き飛ばされたショックで気を失っているようだった。
そして、彼の足元にはフレアが直撃し真っ黒焦げになったカーディアンが横たわっている。
アジドマルジドも、あの一瞬カーディガンが動きを止めていたのは気がついていた。しかし理由はわからない。
彼が何気にカーディアンをつつくと、胴体部分の装甲が剥がれ落ちその中から丸い球体が転がり落ちた。
これはカーディアンの動力源となる魔導球……と思いつつ手にとったアジドマルジドが、
それが別の丸い物体であると理解するまで時間はかからなかった。
「…サルタオレンジ???」
その思いもよらぬ正体に混乱したアジドマルジドだったが、数日前の自宅の記憶が脳裏によみがえった。
サルタオレンジだけの晩飯を空しく食べたあの日、食卓に座っていたカーディアンの魔導球をサルタオレンジとすり替えるという、妹への軽い仕返し。
「そうか、このカーディアン、あの晩に家にあった奴か!あの後アプルルが手の院へ届けたはずだが、それを院長が…」
奇妙なめぐり合わせに立ち尽くすアジドマルジドだったが、シャントットのうめき声で我に返る。
「うーん、うーん、なぜ、失敗……」
「…院長には黙っておくか。」
騒ぎを知ったガード達がシャントット宅に突入してきたのに気づき、アジドマルジドは焦げたサルタオレンジを懐にしまいこみながらつぶやいた。
騒々しく開けられた扉の音に、室内で魔法の訓練に勤しんでいた魔導師達は一斉に非難の目を無礼な訪問者に向けた。
しかし当の本人はまったく気にせず大きな足音を立てながら奥へと進んでいく。やがて『院長室』と書かれた部屋の
前に辿りつき、さきほど同じように騒々しく扉をあけると同時に今度は大きな声で叫んだ。
「事件の判決が確定しました!」
室内いたのは1人の眼鏡姿のタルタル。彼は騒々しい訪問者をちらりと見ると答えた。
「ノックくらいしろよ、ハックルリンクル。」
「あ、すいませんアジドマルジドさん……じゃなかったアジドマルジド院長!」
「で、判決の内容は?」
「えーっと、シャントット前院長はこれから先永久に魔道兵器の開発・改造はもちろん入手も禁止、口の院幹部への復職は無し、
および今後の口の院の方針・行動にたいして一切口出ししないこと!になりました。…でも、なんかこれって軽すぎませんか?」
「まあ、そんなもんだろう。今までの功績もあるし、被害者の連中もカーディアンに負けたとあってはあまり話を大きくしたくないようだしな。」
「うーん、そういうものですか。あ、それともうひとつわからないことがありまして。」
「なんだ?」
「あの日、シャントット様が最後に動かしたカーディアン、なぜ魔導球ではなくサルタオレンジが入ってたのに、一瞬は動いてたんでしょう?
普通なら、ピクリとも動かないはずですよ!」
全く同じ疑問を持っていたアジドマルジドは言葉に詰まった。しばらく逡巡したのち、ただの想像だが、と前置きして彼は口を開いた。
「…カーディアンの材料は、すべてウィンダスで作られる。ウィンダスの大地に生まれ、ウィンダスの光を受け、ウィンダスの水で育つ材料だ。」
「はあ。」
「それを、ウィンダスの民が精魂こめて組み立てる。」
「はい。」
「そして、今回、カーディアンが糧にしたのは、ウィンダスに実るサルタオレンジ。」
「そうですね。」
「この地で生まれ、糧を得て、育つ。それは、俺達も全く同じじゃないか。」
「まあ、そうですね…。」
「でも、俺もお前も、自分が動いてる理由なんてわからないだろ?そういうことかもしれんな。」
「え、ええ?うう、なるほど…。うーん、でも、それって…」
神妙な面持ちで考え込むハックルリンクル。そのとき、口の院連絡用のリンクシェルから別のタルタルの声が響き渡った。
「院長!オズトロヤ城からの使者が到着しました!」
「ああ、今行く」
部屋を出て行こうとしたアジドマルジドに、我に返ったハックルリンクルが慌てて声をかける。
「ヤ、ヤグードがここへ!?いったい、何の用です!?」
「新院長への挨拶…と言えば聞こえはいいが、実際は前大戦の英雄を押しのけて院長に就任した若造にプレッシャーをかけにきた、って所だろ。」
そう答えると、ポカンと見送るハックルリンクルを尻目にアジドマルジドはそのまま部屋を出て行った。
442 :
深緑の国の魔道士32:05/01/09 23:31:00 ID:SlqEmpTi
応接の間は屈強なヤグード使者団で溢れかえり、出迎えにあたった口の院の魔道士達の方が肩身の狭い思いをしているほどだった。
「ウィンダス一の精鋭部隊といってもしょせんこの程度の連中か」
使者団の長であるヤグードは、部屋にいる異種族達をにらみつけながらそう考える。しばらく待たされた後、院長到着の知らせを聞いた彼は
部屋に入室してきた新院長を見下ろすべくつかつかと歩み寄る。
が、その相手と間近に対峙した瞬間、無意識のうちに自分の足は止まっていた。
若き新院長はヤグード達を見回した後、長を見据えて堂々とした態度でその口を開く。
「下がれ!ウィンダス口の院 魔道院の院長 アジドマルジドだ!」
深緑に囲まれた魔道院の一室で、ウィンダスの魔道士達は新たな指導者が誕生したことをその身体に感じ取った。
〜おわり〜
あとがきのようなもの
---
ようやくオワタ。
アジドマルジド兄貴燃え!の一念だけで色々つめこみまくり書き上げたので、
突っ込みどころ満載かと思われます。皆さんの暇つぶしにでもなれば幸いです。
感想がいただければ、それはさらなる幸いです。それでは。
444 :
既にその名前は使われています:05/01/10 00:03:48 ID:FfGzN381
445 :
既にその名前は使われています:05/01/10 03:14:50 ID:0zS2trJk
ほしゅ
446 :
既にその名前は使われています:05/01/10 12:22:45 ID:FfGzN381
ほしゅ
447 :
既にその名前は使われています:05/01/10 14:04:15 ID:YdgQKxLp
アルマジロ(ぉぃ)かっこEEEEE!!
話の流れがいいですね。セリフまわしもうまい。
お疲れ様ですた。次回作あるのかはわからないけど、あるなら頑張って下され。
あー、これ書いてて思ったんだけど、感想ってどこまで書けばいいのかね。
例えば「○○は△△だったけど、ここは××のほうがよかったんじゃないか?」的な意見とか。
そもそも意見だから感想じゃないのか?
職人さんとしてはどうなんですかね、こういうの。
勿論、「この展開はクソ。○○の方が面白いwwうはwwww俺最強wwwww」みたいなのは論外ですが(´_ゝ`)
448 :
既にその名前は使われています:05/01/10 17:32:23 ID:HTB/aegD
ほしゅ
449 :
既にその名前は使われています:05/01/10 17:49:07 ID:tv9W/qqU
おもしろかったです、おつ^^
台詞回しがかっこいいね。
450 :
オークと奥さんその1:05/01/10 21:06:13 ID:Al6jJcOK
短いです。
「くそ〜。」
この悔しそうな表情の緑の顔の持ち主はオークの親父さん。
「どうしたの!?あなた。」
この親父さを心配そうな緑の顔で見ているのはオークのおかみさん。
ここはダボイのオーク集落にあるとあるテントの中。
「どうしたもこうしたもあるかい!俺のいとこの3兄弟が冒険者にやられちまった。」
親父さんは悔しそうに地面を殴りつける。
「まあ、あの仲良し3人組が!?」
親父さんの言葉に驚きの声をあげるおかみさん。
「ああ、それもタルと猫娘の2人にな。」
「そんな、あの3人のコンビネーションとパワーはあのそう簡単に破られるものじゃないわ!」
「タルの方がいきなり『ファイガ3』唱えやがってよ、それで3人は一瞬で吹っ飛んじまいやがった・・・。最近の冒険者は手加減ってやつをしらねえ奴が多くなってきやがった。」
親父さんは悔しそうに舌打ちする。さらに続けて、
「勝手に俺等の集落に乗り込んできて略奪を繰り返しやがって!」
451 :
既にその名前は使われています:05/01/10 21:07:00 ID:Al6jJcOK
その言葉におかみさんは手をぱたぱたいわせ、
「お前さんお前さん。」
「なんだ?」
「ここは元々、人間の集落だった場所よ。」
「気にするな。」
「あいよ、あ、そういえばあんた、その3人が殺られる場面を見ていたんなら仇をとったんでしょうね?」
おかみさんのその言葉に親父さんは申し訳なさそうに肩をすくめ、
「それが、一緒にいた猫娘がいきなり吼えてなそいつと目があった瞬間・・・殺られると思っちまってつい・・・。」
おかみさんは肩を震わせて、
「ついって何よ!まさか尻尾巻いて逃げてきたっていうの!!?」
と大激怒!しかし、親父さんは神妙な顔をして、
「お前、尻尾巻けるのか?一度、あの『びっくりオーク大会』に出てみろよ。」
おかみさんは親父さんの胸倉を掴んで、
「尻尾巻いて逃げるっていうのは人間どもが使う言葉のあやよ!」
「ほ〜そりゃ、しらなんだ。」
452 :
オークと奥さんその3:05/01/10 21:08:04 ID:Al6jJcOK
親父さんはさっき異常に肩をすくめた。
「これだからこの間も冒険者に銀貨盗まれるのよ。」
「おいおい!それはちゃんと返り討ちにしたじゃねえか!それに今はそのことは関係ねえだろ!」
「ふん!どうだか。猫娘にも睨まれたぐらいで逃げちゃうなんてあんたはいつまでたってもミスリル貨さえ持つことできないわね。」
「うんだと〜!!!」
「なにさ!!!」
おやじさんとおかみさんの二人はすごい形相でにらみ合う。
「悔しかったら今からでもその猫娘を倒してきな!」
「ああ、わかった!今すぐ追いかけてやってやる!火打石頼む!」
「あいよ!」
カチッ!カチッ!とおかみさんが親父さんの肩のところで火打石を叩くと親父さんを一言、
「行ってくる!」
といいテントを出る。
453 :
オークと奥さんその4:05/01/10 21:09:09 ID:Al6jJcOK
「お前さん頑張って!」
その様子をみておかみさんも嬉しくなって手を振る。だが、その瞬間!
「邪魔だ。」
ドゲシッ!頭を突然、黒ずくめの鎧で身を包んだガルカが思いっきり足蹴される。
「ブホッ!」
親父さんは頭を地面に叩きつけられてピクピク痙攣してしまった。
「あんた!!」
その様子を見てしまったおかみさんは親父さんに駆け寄り
「あんた、あんた、大丈夫かい!?ねえ、あんた・・・あんた〜〜〜〜!!!!!!!!」
黒ずくめの冒険者はまったくそのやり取りを気にする様子はなくダボイの出口に歩いていくのであった・・・。
文章が下手でごめんなさい(´д`)
454 :
既にその名前は使われています:05/01/10 21:26:02 ID:JIXEAcyJ
わろた
落ちがむごいぜ
455 :
既にその名前は使われています:05/01/10 21:39:21 ID:HTB/aegD
こういうのもイイネ
456 :
既にその名前は使われています:05/01/11 00:38:45 ID:2P+aAa35
age
読んでくれた方、感想レスくれた方、ありがとうございました。
>>447 >あー、これ書いてて思ったんだけど、感想ってどこまで書けばいいのかね。
>例えば「○○は△△だったけど、ここは××のほうがよかったんじゃないか?」的な意見とか。
自分の場合は、読んで思い浮かんだことなら全部教えてくれるとうれしいですね。
458 :
既にその名前は使われています:05/01/11 03:38:17 ID:cD1qamcF
結構前からROMってるがまだ感想書かれていない常連がいてワロタw
とりあえずここの風習らしいからずっと放置してよっとw
459 :
既にその名前は使われています:05/01/11 12:46:02 ID:wnoJYsml
ほしゅage
460 :
既にその名前は使われています:05/01/11 13:03:18 ID:+lZ06ztW
461 :
【メモリー】 レストラン編:05/01/11 16:14:39 ID:2P+aAa35
オークと奥さんというヘタレな書き物を読んでくれた方ありがとうでございます。
今回はとりあえず続き物出来るような終わり方にしていますが
実際どうするかは未定であります。
単にミスラ侍という希少生物が書きたくなっただけであります(´・ω・`)/~~
しかも、文章は下手だったり中身もてきと〜な上にシリアスなお話は苦手なのでコミカルにしてありますです。
ここはウィンダス水の区にあるレストラン。調理ギルドや釣りギルドに近いことから常に新鮮な食材が揃っており安く提供してくれる
ことから貧乏冒険者から味にこだわる客まで好んで訪れる。ただ、出てくる料理やテーブル・イスなどすべてタルタルサイズ
(それでも一応大盛りサービスなのだが他の種族から見れば少ないのには変わりはない)なのが欠点といえば欠点か・・
「おばちゃーん、マスの塩焼きとウィンダス風サラダ追加ー!」
店の中央のテーブルでトルティーヤを片手に黒い東方着を着た黒髪のヒュームの青年が声を張り上げ、
「あいよ〜〜!」
カウンターの向こうでタルタルの女性がフライパンを振っているため青年の方を振り替えらずに大声でそれに答える。
この店では吟遊詩人が美しい音を奏でているのだがそんなのはお構いなしである。
「ユウ、いくら一つ一つ量が少ないからって少し食べすぎだ。」
462 :
既にその名前は使われています:05/01/11 16:15:28 ID:2P+aAa35
黒髪の青年と相席していた白髪のミスラがうんざりした表情で忠告する。その言葉にユウと呼ばれた青年は一度口に入れた
ものを喉に通し食べる手を止めて、
「ニャンマゲももっと食わないとダメだぞ?腹を空かせては冒険は出来ぬというだろ。」
「ニャンマゲいうにゃー!!!」
チャキン!ニャンマゲと呼ばれたミスラは般若の形相で一瞬で腰に身につけていた刀を抜き、ユウの首にその刃をつきつける。
「わ、悪かった・・白猫落ち着け、と、とりあえず落ち着け、な?」
ユウは顔に青筋垂らしながら平謝りをする。その様子をみた白猫は息を荒げながらも刀をしまい込む。
「今度言ったらホントに斬る!」
「たっく、そんなに怒るなよ・・、周りの客もびっくりして店出て行っちゃったじゃないか。」
白猫はユウのその言葉にはっとして周り見渡すと客どころかウェイトレスや吟遊詩人まで姿を消していた・・が、カウンターの
向こうでフライパンを振っていたおばさんだけは何事もなかったように料理を作り続けている。
「あらあら、みんなしょうがないね〜あんちゃん、悪いけどマスの塩焼きとウィンダス風サラダ出来たから自分で取りに来てくれる?」
「あいよ〜。まったく、誰かさんが怒りっぽいおかげで・・」
ユウはその言葉に素直に従いながらも白猫に聞こえるように皮肉を言い席を立ち、カウンターまで料理を取りに行く。
白猫は顔を真っ赤にさせてユウを睨みながらも先ほどの失態を繰り返さないように自分を抑えた。
463 :
既にその名前は使われています:05/01/11 16:16:26 ID:2P+aAa35
「それにしても何で俺についてきたんだ?」
そんな様子の白猫に料理を両手に持ち帰ってきたユウが問う。
「たまたま、わしの最初の目的地がお主と一緒だっただけで別にお主に付いて来たわけはない!」
「ふ〜ん、そういえば聞いてなかったがお前の旅の目的ってなんだ?」
「わしの旅の目的は自分を磨くため剣を極めること。まずはわしと同じミスラが多く住む
ウィンダスには盲目ながらもこの地のミスラ達をまとめあげているという族長ペリィ・ヴァシャイ殿を話がしてみたかった。
あと大戦時の孤児でありながらも星の神子殿の守護戦士の長、セミ・ラフィーナ殿とも一戦交えてみたかった。」
「族長とは昨日会ったんだっけ?どうだった?」
白猫は目を輝かせながらあさっての方向を見てコブシを震わせながら答える。
「深い!盲目といえどもまだ若いわしなんかよりずっと色んなことが見えていると感じた。わしもいずれはあのような方になりたい。
ただ、セミ・ラフィーナ殿は星の神子殿の命で今、ウィンダスを出ているため会えなかったのが残念だ・・と、お主こそどうだったのだ?」
ふと我に返り白猫はマスの塩焼きの骨を綺麗に抜いていたユウに逆に聞いた。
「こっちは手がかりまったく無し。一応、鼻の院でも調べてみたがやっぱ魔法の知識がない俺には調べようがなかったし・・半分近くが禁書扱いでさ。」
ユウは首をすくめながらお手上げのポーズをとった。
「そうか・・。じゃあ、次の国に行くのか?」
「いや、とりあえず俺はこの国の冒険者になる登録をして当分滞在しようかなと。」
464 :
既にその名前は使われています:05/01/11 16:17:19 ID:2P+aAa35
「魔法が使えないお前がなぜウィンダスに?それにお前には大事な目的があるではないか。」
「いや〜この店の飯は上手いから。」
ゴツン!白猫はテーブルに頭をぶつける。
「お主、そんな理由で自分の所属国決めていいのか。もっと思い入れある国とか自分の出身国とか・・・」
ここまで言い掛けて白猫は自分の過ちに気付きはっとし慌ててユウに頭を下げた。
「す、すまん!お前の旅が記憶を取り戻す旅だったことを知りながらわしは・・。」
ユウは苦笑しながら、
「そんなに謝ることはねぇよ。記憶を失ってから5年間ずっとノーグにお世話になっていたし、思い入れのある国なんてないな。
まあ、どこの国に所属してようが冒険者は自由だ。嫌になったら移籍も出来るしな。そんなことよりお前こそ冒険者登録しないのか?」
真剣な顔をして白猫はきっぱりと答える。
「孤児になったわしをノーグ海賊だった親父たちに拾われ育てられた。刀の使い方も教えてもらった。
わしにとってノーグは故郷なのだ。その故郷を捨てるような真似はできん。」
「おいおい、捨てるってのは大げさだな。でも、故郷か・・そんな大切なものまで俺は忘れちまうなんてな・・
まずは記憶を取り戻す魔法でもないかとウィンダスに来てみたんだが・・」
465 :
既にその名前は使われています:05/01/11 16:17:55 ID:2P+aAa35
ユウは小さくため息をつき再び苦笑する。
「落ち込むな。世界を巡ればいずれはお前を知るものが見つかるだろうし記憶も取り戻すだろ。
わしも何か協力できることがあればいつでも協力をしよう。」
「ホントか!?じゃあ、まずはデートを一回−」
チャキ、白猫は刀に手を添え、一言、
「斬るぞ。」
「ごめんなさい」
おわり(?)
466 :
既にその名前は使われています:05/01/11 16:44:04 ID:d2nmZefS
>「斬るぞ。」
>「ごめんなさい」
なんかワロタ
467 :
既にその名前は使われています:05/01/11 20:09:35 ID:wnoJYsml
保守
468 :
既にその名前は使われています:05/01/11 23:11:24 ID:HYBZPrEf
いつのまにか落ちてるじゃないか・・・ってことで
age
【
>>429の続き】
「これだから、魔法を魔法と称することを改めるべきだと考えていたのだよ。
いいかい?まず、薬は体を癒し毒薬は体を蝕む。食物は飢えを満たして
活動のエネルギーとなる。どれもこれも人体に作用する化学反応だ。
では、魔法は何か?六大元素、光と闇の二極面に働きかけ、様々な作用を
物質に及ぼす。人を遠くまで瞬間移動させ、敵を破壊し狂わせて、
あるいは、味方を癒し倒れた者を救い出す。どれもこれも物質に対する
科学現象の一種であり、その媒体は自らの知性と精神力、天地自然の力
であり、呪文を用いて発動を促す。それがあまりにも便利であるため、
旅芸人の手品や見せ物と混同されるのは残念だと考えているのだ。
魔法とは、我々が何でも思い通りに出来ると思うのはそれは間違い...
ああ、すまないね。もう終わったから下げておくれ。ありがとう」
にっこりと笑みを浮かべて食べ終わったシチューの皿を片づけ、甲斐甲斐
しくデザートを並べているのは黒魔導師トカカ=クッタの愛妻である。
とろりとした子兎のシチューと真っ白いパン、その食事の後はデザートに
甘く煮たリンゴのパイと、ミルクたっぷりのウィンダスティー。
そこに砂糖を注ぐスプーンは、我々が使うそれより巨大であるから恐れ入る。
正直、塩の効いた炙り肉が恋しい私には少々ホームシックが襲いつつある。
が、本当に俺を悩ませているのは、そんな詰まらないことではない。
「導師、そこをどうかお力添えを頂きたいのです。確かに私のお願いという
のは虫が良すぎる話です。が、彼女が『そうであること』を見破るお力を
お持ちの導師におすがりするしか...」
これ以上、俺の懇願を聞くつもりはないのか、なおも横を向いて妻に語りか
ける。
「あ、もういいよ、後は私がするからね。それから導師ククハラ君に使いを
出してくれないか?急いで、そしてこっそりとね」
ぺこりとお辞儀をして小さなドアから出て行く彼女を見送り、彼が懐から
取り出したのは一通の手紙。それはサンドリアからのものだった。
「君宛だよ。彼らは君がここにいることを知っているのだな?封は開けてい
ないが...それに書かれていることを当てて見せようか?差出人はカウ
ラ長官か。推測だけど大体察しが付く。」
「...」
にやりと笑って俺に渡した。どうも、この小さな魔導師は屁理屈と皮肉が
好きでたまらないようだ。
「彼女を生かして連れ戻せ。違うか?」
「...」
慌てて封を切って読んだが大意は合っている。しかし、それがなんだと?
「薬、毒薬、魔法。そのように区別するのは人に説明する時に役に立つ。
だが、説明づけるときには邪魔な概念だ。薬も時として毒として働く。
サンドリアの高官だからといって民と兵士のために良い作用をするとは
限らない。あの鎧を引き裂き人体をも素手で破壊する力、いたく気に入っ
たようだな?」
「...ばかな」
「忠実なる王国の騎士殿には信じがたいかな?彼から実験解剖の報告を聞く前
に私が説明してやろう。ウィンダスではかなり調査が進んでいる。
第一段階、そのものの理性を奪い、見る者全てを敵と見なして破壊と殺戮を
及ぼす。この時点では、その者の力は大したことはない。
ただし、次の段階。全ての制約が破壊されて破壊的な力を発揮して、あの様
な破壊を及ぼす。それがいつかは判らない。ただ、それをとどめる方法は、
時を移さず息の根を止めること。残念だが、危険を回避するためにはそれしか
方法が無いのだ。あの時何人殺された?」
「彼女はよく寝ているよ。私の術なら、あと数日は目を覚まさないだろう。
そうしている間は、あの様な力は及ぼさないようだ。これは賭だったな。
逆に起こさなければ、そのまま死に堕ちる...そうした方が良いかな?」
「...さらに、もう一段階ある」
「?」
「隊長が...俺を認識した。刺した俺のことをちゃんと判っていたのだ。」
その時、だれかがドアをノックした。
「入りたまえ...おお、来たな。紹介しよう、白魔導師のククハラ君だ」
「....は、はぁ」
「私は黒魔導師だからな。我々の旅には彼が居なければままならない。
頼むぞ、目指すはエルシモだ。」
まったく、説明好きなのか単刀直入が常なのかさっぱり判らない。
始めからそのつもりなら言ってくれればよいものを。
「賭けてみよう。今の私には知らぬ出来ぬとしか言ってあげられないが、
あの大地に燃える炎の『浄化』に可能性を見出そう。段階的に症状が進行
するならば、未だ掴めぬ体内の毒素があるに違いないが、もうのんびり調
べる時間がないのだ。そうだろう?」
まだ、成り行きを飲み込めない私に手つかずのパイを勧めた。
「わが妻の傑作を味わっておきたまえ。それぐらいの時間はあるだろう。
もちろん、ハルーディアさんを担いでいくのは君の役目だ。しっかりね。」
473 :
既にその名前は使われています:05/01/11 23:32:42 ID:Q/s6i17K
>>443 アジドマルジド話おつ!俺も兄貴好きなんで楽しかった。
台詞まわしの話題があったけど、アジドはウィンミッションで実際に
似たような台詞を言ってるね。
「ウィンダスの未来は!〜」と「下がれ!〜」はそこからの引用と思われ。
>>461 オーク、獣人ほのぼの話ってのは実はあんまりなかったかね。こんなのもいいね。
猫侍はまだプロローグって感じなのかな。猫の台詞に「お主」と「お前」が
混ざってるのは仕様?と思えました。(細かいツッコミスマン。
474 :
既にその名前は使われています:05/01/11 23:33:07 ID:Q/s6i17K
>>443 アジドマルジド話おつ!俺も兄貴好きなんで楽しかった。
台詞まわしの話題があったけど、アジドはウィンミッションで実際に
似たような台詞を言ってるね。
「ウィンダスの未来は〜」と「下がれ!〜」はそこからの引用と思われ。
>>461 オーク、獣人ほのぼの話ってのは実はあんまりなかったかね。こんなのもいいね。
猫侍はまだプロローグって感じなのかな。猫の台詞に「お主」と「お前」が
混ざってるのは仕様?と思えました。(細かいツッコミスマン。
475 :
既にその名前は使われています:05/01/12 00:36:11 ID:JIzHnAau
>>461 >猫侍はまだプロローグって感じなのかな。猫の台詞に「お主」と「お前」が
>混ざってるのは仕様?と思えました。(細かいツッコミスマン。
ピギャ〜ス!ΣΣ(゚д゚lll)ノノズガーン!!
猫侍の「お前」は「お主」と脳内変換してくださいor2=3
でも、一応猫侍はテンゼンのような完璧なひんがし風ではなくて
一種の中の国とひんがしの国の言葉が混じっちゃってる
中途半端な『ノーグ語』を喋るという感じです。(´・ω・`)
あと感情が暴走すると「ネコ語」(語尾ににゃーと付けてしまう)を使い出すという設定でふ
>猫侍はまだプロローグって感じなのかな。
あくまでプロローグ風で続きは書くかどうかは決めてないです。
今回は長くても読んでると疲れると思い、
あえて短くわかり易い内容で中途半端な感じで止めてみました。
476 :
既にその名前は使われています:05/01/12 01:11:44 ID:CYwncAEY
さすがに常時ageってわけにはいきませんなぁ〜・・・
477 :
既にその名前は使われています:05/01/12 01:14:28 ID:CYwncAEY
>>443 アジドマルジド話。楽しく読ませていただきました。
あのシャントットならやりそうw
478 :
既にその名前は使われています:05/01/12 01:22:27 ID:CYwncAEY
保守
479 :
既にその名前は使われています:05/01/12 09:23:00 ID:A+imOWtc
ほす?
480 :
既にその名前は使われています:05/01/12 10:06:02 ID:yG49KUvz
ほっしゅ
481 :
既にその名前は使われています:05/01/12 10:28:00 ID:dVLnWKY9
482 :
既にその名前は使われています:05/01/12 17:50:13 ID:A+imOWtc
ほっす
483 :
既にその名前は使われています:05/01/12 20:22:01 ID:CYwncAEY
職人様 チン☆⌒ 凵\(\・∀・) まだぁ?
484 :
既にその名前は使われています:05/01/12 20:49:13 ID:CYwncAEY
がんばって、ほす
「君の愚痴を聞いている暇はない。心配は要らないよ。ただ、失敗しても 払える代償
などないがね。ああ、これを渡しておくよ、オイルとパウダー。魔法でやればタダで
済むが、残念ながら効果が安定しないのだ。それから、ちょっと交渉してくる。
待っていたまえ。」
ようやく我々は『海蛇の岩窟』の奥底にある小さな集落『ノーグ』に辿り着いた。
寄り道だ、という彼の言葉に少々いらついたが、右も左も判らぬ私には彼の言葉に
従うほかはない。
しかたなく体を休めるために彼女を背中から下ろす。青白いその顔の様子をうかがう
たびに正直不安に陥るばかりだ。
「まだ...大丈夫だと思うよ。でも、あと2日が限度かな。」
トカカ=クッタの友人、導師ククハラは彼女の顔をそっとなでて呟いた。
こうしてタルタル族がエルヴァーンである彼女の側にいると、昼寝をしている母親に
ねだる赤ん坊のようだが、彼のその物腰からなかなかそうは見させないところもある。
ここまできて、私は何かがおかしいことに気が付いた。
ズシィィ...ン ズシィィ...ン
扉の向こうから伝わってくる鈍い振動...初めて聞く音だ。
「ほら、おいでなすったぞ。足音で判る。」
そう言って巨躯のガルカは不適な笑みを浮かべて、両手に刀を抜き払い構えを取る。
この状況でも汗一つかかないこの男...誰だ?
そして、その言葉にも動じず必死で古文書を探す小さな魔導師の2人。
「冗談だろう...?料理の献立ばかりだ。本当にこの部屋なのか?」
1人が、はっと何かに気が付き小さな手で何かを探る。
ゴゴゴ... 鈍い音とともに本棚が床に沈んでいくと...
奥の部屋には、比較にならぬほどの高さでそびえ立つ本棚がずらり。
「ゆっくりやんな。その代わり報酬は弾んで貰うぜ?」
ようやく詠唱を終えた彼は、ぺたりと尻餅をついて崩れ落ちた。
「判らない...成功なのか失敗なのか...一か八か起こしてみないと」
「ほう、それは残念。ただし解毒方法は正直、興味がないのだがな。」
数人の魔導師達を引き連れて、話しかけてくる男が一人。
「おやおや、黒幕が登場するには早すぎはしませんかな?カウラ長官殿。」
「君の相手をするつもりはない。それとも、サンドリアの敵意をはじき返す国力が
ウィンダスにはお有りかな?トカカ=クッタ殿」
「当てが外れたな。最初からあなたが首謀者だったとは。しかもオーク達と手を結んで
いたとは恐れ入る。」
(判らない。隊長や彼女を含めて捕らえられ何故俺は助かったのだろう?
それからウィンダスに向かって、いや、それはサンドリアでの裁判の事件の後だ)
「いや、『それ』にはもう用はない。といって『そちら』の方も...な。
オーク共は完成品だと言っていたが、始動方法が実に曖昧なのだ。」
え?と言わんばかりに驚くトカカ=クッタと視線が絡み合った。
(彼女とどうやって見つけ出した?どうやって助け出したのだ?
いや、それ以前に思い出せないことがある...それは...それは何だ?)
「あ...まさか...」
「まさに猪の様な彼の性格だからこそ、ここまで持ったのだな...おい」
うながされて隣に立っていた魔導師は詠唱を開始する。
「こういうことは、大抵の人間はつらつらと考えるものだがな。まさにオークの知能
にしか通じない鍵なのだろうよ。では、良く聞け。『お前は何者だ?』」
俺の中で何かが弾け飛び、魔導師が詠唱を終えて彼の一団は姿を消した。
「ぐわぁぁっ!!」
ガルカの太い腕を引き抜いた俺は、その悲鳴がうるさくてたまらず、
巨大な頭を一蹴りで吹き飛ばした。
後は、ちびっこい魔導師2人、逃がしはせぬ!
「なんということだ!一気に末期症状へと堕ちるなどとは!」
俊敏に逃げ回りながら、必死に詠唱を繰り返す。
通じん!もはや俺には魔法など通じないぞ!
もう1人はどこに消えた?
必ず見つけ出して血祭りに上げてやる!
「もうだめだ!頼む!もはや通用するのは剣の力だけなのだ!
死だけが!死だけが彼を救う唯一の方法だ!」
あ...
「そんな...この人のおかげで私は助かったというのに...」
ハルーディア...そうか...助かったのだ...
しかも...俺に引導を渡してくれたのは彼女だったのか...
強力な魔導師である彼ならば、一撃で俺をはじき飛ばす物理的な魔法もあったはず。
なのに、剣を用いたのは俺の話を覚えていたのかも知れない。
死ぬ間際に正気に返ることを。そして、この一瞬の時を得られるようにと。
俺の思いに気が付いたのか、トカカ=クッタは語る。
「彼は...あなたを愛していたのかも知れませんね。まさに、我を忘れて奔走して
いました。」
「....」
剣を引き抜く彼女の口からは、期待している様な言葉は出てこない。
出てくるはずもない。同じ隊とはいえ、隊列の遙か後方から彼女の横顔を
眺めていた俺のことなど、名前すら覚えてくれていたのか判らないのだ。
「きっと...彼は本望でしょう...実に安らかな死に顔だ。」
俺の頬に落ちた一滴の涙、それに俺の苦労が報われたことを感じ取り、
二度と覚めない眠りへと落ちていった。
490 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/12 21:08:32 ID:qshc9hlT
>>485-489 は
>>472からの続きです。
正直思いつくままに書いたので、後で読んでみるとアラが目立ちます。
しかも、他の人には読みにくいかも、どっかで聞いたような話かも、
ってことで、どんな罵倒が帰ってくるのかと思うと、
感想を聞くのが怖い心境です。
491 :
既にその名前は使われています:05/01/12 22:26:49 ID:CYwncAEY
あげだま?
492 :
既にその名前は使われています:05/01/12 23:16:35 ID:CYwncAEY
そろそろ家かえろ・・・ってことで、にゃんage
493 :
既にその名前は使われています:05/01/13 01:19:07 ID:sIfNQKo+
げげげ
494 :
既にその名前は使われています:05/01/13 08:02:32 ID:MdRG80Dj
携帯から保守
495 :
既にその名前は使われています:05/01/13 10:25:28 ID:j1L/spBk
文章は巧いと思うよ。
ただ、状況説明とでも言えばいいのか?それがあまりなかったり、
場面が飛んでたりで何が起きてるのか判り難いってのが本音かな。
そこの所をもう少し書き込むともっとよくなると思う。
ま、あんまり書きすぎると逆にくどくなるから、そこら辺は考えないといかんけど。
文章自体が読みづらいってことはない、つーか読みやすい。
罵倒がきたら、そら落ち込むかも知れないけどさ。
自分の文章の何処がよくて何処が駄目だったかってのはやっぱ他人の方がよくわかるものだし。
上の感想もなるべく丁寧に書いたつもりだけど、気に触ったらすまんな。
496 :
既にその名前は使われています:05/01/13 12:23:29 ID:T9U7xA21
ほっしゅほっしゅ
497 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/13 15:31:11 ID:MIxinrFv
私は道場に一人、正座している。
腰を浮かせ両足の指を立て右手で刀を抜き放ち、同時に右ひざを一歩前に
踏みこんで横一文字に空を斬る。両手で刀を上段に振りかぶり、膝を
もう一歩まえに踏みこんで切りさげる。私は黙って考えにふける。
師匠は私に何を伝えたいのだろう。この出来の悪い弟子に。
私は刀を鞘におさめ、立礼をして道場をでた。公認冒険者なので
帯刀していてもなにも言われないけれど、私は刀を置きにいくために実家へ帰った。
家のポストを見てみると、私宛の白い手紙が入っていた。消印はない。
自分の部屋に向かいながら封筒から手紙をとりだす。力強い文字で書かれていた。
旅の仲間。一昨日別れたあの巨人。
『今夜10時 港 3番倉庫 Bobo』
498 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/13 19:37:14 ID:sIfNQKo+
>>495 意見ありがとう。そして読んで頂いてありがとう。
状況説明が少ない点は、
「こういう具合に書いておけば判って貰えるだろう」という、
いわば甘えの気持ちが有りすぎたかもしれないです。
そして1レス20行が限度。それを数レスでコンパクトに押さえたい。
その為の作業に終始したため、バッサバッサ余分な部分をカットしまくり。
あと、場面が飛んでいる点も同様なのですが、
話のポイントだけに絞ってしまおうとしたことと、
主人公の記憶が飛びまくってるという演出にするつもり...だったけど、
全然出来ずに終わってしまったような;;
もっと良い妄想ができたら、また懲りずに貼ってみます。
499 :
既にその名前は使われています:05/01/13 19:42:42 ID:7MPKcZkq
とりあえずぅ
小説は普通「・・・」じゃなくて三点リーダーを二つ並べないとだめなんだよぉ☆
とか言ってみたりなんかしてぇ・・・
500 :
既にその名前は使われています:05/01/13 20:44:37 ID:IljXREsa
500げと? ……みたいな
501 :
既にその名前は使われています:05/01/13 20:44:40 ID:NINuhM6X
だいたい495に同意かな。誰の台詞かわかりにくいってのもあるかな。
俺がアフォなだけかもだろけど。
あと、細かいツッコミになるが、男タルタルの名前でトカカ=クッタは
変じゃない?韻を踏むので、トカカ=クカカかトッタ=クッタに
なるような気がする。それも踏まえて何かの伏線だったらスマネ。
ちなみに、ウィンダスには↑の法則があてはまらない男タルNPCが
1人だけいるが、話してみるとどうもオカマっぽかったりするw
502 :
既にその名前は使われています:05/01/13 22:22:23 ID:IljXREsa
ほしゅっしゅ!
503 :
既にその名前は使われています:05/01/13 22:37:18 ID:NevWRCz3
>>501 そういやまとめサイトの作品にも同じミスがあったな
504 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/13 22:52:27 ID:sIfNQKo+
>>499ー501
φ(..;) メモメモ……
いや、そういえば確かに韻を踏んでましたね……
名前は、それっぽくなれば何でもよかったっす。
505 :
既にその名前は使われています:05/01/14 00:45:06 ID:jE4/F5+o
>>504 タルタルの命名法は
♂は古代呪文の名残で共通して韻を踏む形になっとります。
♀は星の大樹を中心にどちらの方向に生まれたかで「トト」とか「ピピ」とか付けるようになっとります。
506 :
既にその名前は使われています:05/01/14 00:49:35 ID:QC1Dm8GS
507 :
既にその名前は使われています:05/01/14 00:51:34 ID:QC1Dm8GS
あ、そうか。トト・ピピ以外にもあるってことね。
508 :
既にその名前は使われています:05/01/14 00:55:41 ID:jE4/F5+o
ちなみに
コルシュシュ地方は女性名詞で意味は「決断の地」
昔、まだ魔法がなかった時代、
体型では他の獣人や種族に勝てないタルタル族が
クォン大陸からミンダルシア大陸に移民してきた時に
赤土ばかりの土地でこれ以上南下しても
肥沃な土地はないかもしれない・・どうしようかを諸部族で話し合い、
諦めずに頑張ろうと決断したことから名づけられたらしいです。
サルタバルタ地方は男性名詞で意味は「約束の地」
星の神子を中心として諸部族を統合しウィンダス連邦を設立したことから
名づけられたらしいですよん。
こういう設定は何か覚えておくと役立ちますな( ´ー`)y-~~
509 :
既にその名前は使われています:05/01/14 07:39:34 ID:lk0tsUrv
おお俺も見つけた。
公式に一応いろいろ書いてあるんだな。
510 :
既にその名前は使われています:05/01/14 10:10:52 ID:UVlbI+RY
保守
511 :
既にその名前は使われています:05/01/14 12:40:56 ID:MzuN2Zfw
ageとくわw
512 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/14 13:07:45 ID:/xsPWsGn
自分もそういう設定とかあんま意識してないんですけど、
読んでる方はやっぱり違和感あるんですかね。装備は
一応ちょっと考えてやってますけど。
513 :
1/2:05/01/14 16:14:07 ID:rh0iQJzX
ここはバストゥーク。
オレの故郷。
ジュノで知り合ったサンドリアのあいつはバスの周りは荒れ地と馬鹿にする
ウィンダスのあいつも狭い国だと嘲笑う
だがオレはこの場所が好きだ。
港の橋は最高だ。
ザイドさんはカッコイイしシドさんは超渋い。
大統領の娘は荒れ地に咲く花だ。
514 :
2/2:05/01/14 16:14:30 ID:rh0iQJzX
でもオレは…
いつもジュノで待機している竜騎士45歳
今日も一日お疲れ様。
明日は誘われるかな
故郷の母は
背中の槍を見てから
口を聞いてくれません
515 :
既にその名前は使われています:05/01/14 16:27:08 ID:QC1Dm8GS
あれこれ考えてはいるけれど、
歴史的背景に関わりそうなんで、ちょっと悩み中('A`)
516 :
既にその名前は使われています:05/01/14 16:29:42 ID:QC1Dm8GS
517 :
既にその名前は使われています:05/01/14 16:33:18 ID:UVlbI+RY
ふと思いだしたんだが昔、内藤列伝てのがあったな。あれは禿藁だったな。まだまとめサイト残ってるんだろうか…。
518 :
514:05/01/14 16:44:59 ID:rh0iQJzX
〜 サンドリア宮廷魔導師 〜
時は、適当に昔の話。場所はウィンダスの水の区『耳の院』
「皆さん、お早うございます」
『おはようございまっす!!』
「はい、それでは12ページを開いてください……」
屋上に設えた教室でにぎやかな子供達の授業が始まった。
だが、今年のクラスは何かが違う。一番後ろに座っている異様な存在。
顔を見上げようとすれば首が痛くなってしまうほどの長身。
丁度良い椅子があるはずもなく直にあぐらをかいて座り、特別に用意されたテーブル
に向かっていのは、サンドリアから来たエルヴァーン男、カルス=ディヌスであった。
教壇に立つのは、エルヴァーンの子供よりも小さな女教師マタタ。
「それではみなさん、今日もおーきな声で読んでみましょう。」
『はぁーい』
「パクナナ・クタナナ・ケナナ」
『ぱくなな!くたなな!けなな!』
ぱ、パククナ、クタタナ、ケナナ……
「デー・ホー・ヨー」
『でー!ほー!よー!』
デー、ホー、ヨー、ここまでは簡単。でも、次だよ次。
「ヴィヴィヴァヴィヴァススヴェヴェヴォンディ」
『う゛ぃう゛ぃう゛ぁう゛ぃう゛ぁすすう゛ぇう゛ぇう゛ぉんでぃ!』
そんなの言えるわけねぇだろッ!なんだよ、この教科書……
……でも、出来ないのは俺だけなんだよな。どんな頭してんだタルタル族ってのは。
「カルスさん、口が動いてませんね。あなただけもう一度。あ、立たずにそのままで。」
プー、クスクス……笑いを堪えるクラスメート達。
「え、え〜」
「さ、大きな声で」
「び……びびぶ」
その第一声で教室中は大爆笑。がっくりうなだれる俺を見て、マタタ教師は一言。
「……カルスさん。放課後、職員室へ」
ため息を着きながら、マタタ教師は口を開く。
「やはりエルヴァーンには無理か、ですって?
カルスさん。あなた自身がそのように考えるならば、もう終わりにしましょう。
安楽な生活を望むなら、楽な道は幾らでもある。嫌なら止めても良いのですよ?
タルタル族とエルヴァーンとの違い、そのようなことを問うつもりはありません。
多少の能力の違いは、努力次第で何とかなるのです。私が求めているのはその努力。
ただ、年齢が行き過ぎているという点。これは多少の違いではすみません。
幼少の物覚えの良い時期に始めたからこそ、私は魔導師で居られると思うのですから。
無理、と言うわけではありませんが、並大抵の勉強量では済まないかもしれません。
となると……
焦っても仕方がありませんね。心配しなくても、あなたを見捨てたりしません。
校長に頼んで特例として留年を考慮しましょう。長い付き合いになりそうですね。
ここに根を下ろすつもりで頑張りましょう。」
「はい……」
けっして冷たい教師ではない。諦めず頑張れ、そう言ってくれているのだ。
「今日もお仕事?もし時間が空けれるなら補習の相談に応じますよ?」
ひざまずいて聞いていた私は、床に頭を擦りつけるような礼をして職員室を出た。
卑屈になってるのではない。
最初に受けた注意は、「人と話す時は、まず座ってから」
実際、その姿勢でもこちらの方が目線は高いのだが。
幸いなことに、天職とも言うべき仕事が見つかった。
貸チョコボ厩舎でのアルバイト。こっちの方ならガキの頃から仕込まれている。
チョコボの世話など目をつぶっていても大丈夫……
「コラァッ!」
「え?」
「どこに目ェつけてんだ!柵が開きっぱなしだから、こいつめ噴水まで来て水飲んでやが
ったぞ!ガマガエルでも飲み込んだらどうするつもりだよ!」
気の荒いミスラの雇い主に怒鳴り散らされてしまった。
いかんいかん、仕事までトチったらもう目も当てられん。
「ほらほら、まだよごれてるぞっ!どこにめぇつけてんだ!」
「うわわ、すみませんって……なんだ、みんなか。」
気が付くとクラスメート達が集まってきている。口真似で俺をからかっていたのだ。
「しごとなんてしてないでさぁ……もっとべんきょうしなくちゃだめなんだろ?」
「しょうがないだろ、働かないと喰っていけない。みんな、これから遊びに行くのか?」
女の子、クミミが笑顔で答える。
「えへへー、きょうはみんなで、おやまにぴくにっく〜」
「ピクニック?子供達だけじゃ危ないって先生が……おい!やめろって!」
「んしょ、んしょ、カルスやまのてっぺんまで、あとすこし」
「やめろって、うはっ!くすぐったいっ!」
クミミは左足から俺によじ登り、遂に山頂、俺の頭まで登り切った!
「やっほー!」(キ〜〜〜〜ン)
耳のすぐ横で大声だすなぁっ!
「さ、おべんきょうかいしっ!もっと、どりょくしなくちゃだめなんでしょ?」
あ……立ち聞きしてたな?職員室でのお説教。
「いくよっ!ぱくなな・くたなな・けなな」
「え、え〜と、パククナ・クタナナ・ケナナ」
「ちっがーう!ぱくなな!!」
「ぱ、パクナナ」
「でー・ほー・よー」
「デー・ホー・ヨー」
「う゛ぃう゛ぃう゛ぁう゛ぃう゛ぁすすう゛ぇう゛ぇう゛ぉんでぃ!」
「び、ビビバ」
「はつおんがちがうっ!う゛ぃ!あたしのおくちをよくみて!」
耳を掴んでぶら下がり、俺の顔面に回り込んだ。ま、前が見えん。
「い、痛ててっ!危ない、落ちるって」
「う゛ぃっ!」
「ぶ、ぶ、う゛……う゛ぃ?」
「はい!よくできましたっ!」
にっこり笑って、俺の頭を撫でてくれた……って耳が痛いんだよ!
「おお、いえてるじゃんか!えらいっ!」(ぱちぱちぱち)
集まったクラスメートは拍手喝采。
「ほらほら、てをやすめるな、くいっぱぐれるぞ!もっとはたらけー!」
「前が見えないんだって!落ちるぞこら!」
「つぎだよ、すこしずつおぼえるんだよっ!う゛ぃう゛ぃう゛ぁ!」
尚も授業を続けようとしていたその時、
「こらぁっガキども!仕事の邪魔してんじゃねぇっ!」
雇い主がまた怒鳴り込んできた。
「うひゃ〜、にげろ〜」
落ちる心配など無駄だったらしい。クミミはひらりと飛び降りて、男の子達と一緒に
逃げ ていく。
また、お説教かな。今度は気の荒いミスラが相手か、やれやれ……
-=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=--=-=-
「び、びびばんば……」
「ヴィヴィヴァヴィヴァスス…ヴェヴェヴォンヴィ」
「そんなのおぼえらんないよぉパパ」
あの日々のことを思い出しながら長いローブを着た俺は、早朝の誰も居ないドラギー
ユ城を娘に見せてやっていた。いつものように肩車をしながら。
みんなどうしてるだろう。もうずいぶん昔のことになってしまったな。
「痛てて……耳を引っ張るなって」
525 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/14 16:59:42 ID:QC1Dm8GS
えっと、書いてみました。
ツッコミ所は、魔法や全体の歴史的背景や、
サンドリア=ウィンダスとの国際関係でしょう。
なので、「初代宮廷魔導師」にするのは止めました。
感想など頂けると幸いです。
526 :
既にその名前は使われています:05/01/14 19:26:47 ID:MzuN2Zfw
>>525 心和む感じですね。
つづきを期待しています。
527 :
既にその名前は使われています:05/01/14 20:45:33 ID:MzuN2Zfw
ほっす
528 :
既にその名前は使われています:05/01/14 20:49:11 ID:hmjYmDi5
一瞬創価スレかと思った
保守age
529 :
既にその名前は使われています:05/01/14 21:02:36 ID:MzuN2Zfw
職人様
マ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━ダ????
ってことで支援age
530 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:10:51 ID:jIpk9KVZ
やっと出来たので、ちょっとづつ貼るね。
臭いとこあったら云って下さい、参考にしたいので。
ほんとは感動出来るようなもの書きたいんだけど、
ただ臭いだけの作品になるのよな〜(´Д`;)
今回は、だいぶ気をつかって書いてみますた。
どうぞ、よろしく〜
531 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:12:41 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物1
ブランマーニュはダボイの崖を滑り落ちていった。
険しい崖の上に、オークの一団と戦っている仲間たちの姿が一瞬垣間見えた。
自分は不覚をとったのだ。背後に回った屈強なオークの戦士による一撃が
ブランマーニュを吹き飛ばしたとき、仲間達にはもう手の打ちようがなかった。
オークの強烈な一撃で体が麻痺したように動かず、したたかに体を打ちながら
崖の下に滑り落ちていく自分の姿をブランマーニュはどこか他人事のように感じていた。
「ブランマーニュ!」
友人であるエルヴェの、悲痛な叫び声を聞きながら彼はやがて意識を失った。
532 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:19:55 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物2
「お父様、わたしは断ったはずです。」
ミリアムは美しい顔を怒りで歪め、父に向かい合っていた。
ミリアムの父レイモンド・クロートは、恰幅のいい体に見合った威厳を保ちながら、
困ったように娘を見つめた。
「ミリアム、この話はお前のためでもあるのだ。ルゴー氏はおまえのことをたいそう
気に入ってくれている。しかも、このバストゥークで有数の富豪、名門中の名門だ。
なにがそんなに不満なのだ?」
ルゴー家はバストゥークで一二を争うほどの大富豪だった。その若き当主、マーティ
ン・ルゴーは、富と名声、そしてカリスマを合わせ持つ人物で、その影響力は政界上層
部にも及ぶという。
ミリアムの父は、ルゴー家と縁を結ぶことでクロート家のさらなる繁栄を願っていた。
そして、それが娘の幸せに繋がることだと心から信じていた。
「でも、私には…」
唇をきつく引き閉めると、ミリアムは今まで何度も繰り返してきた言葉を口にしようとした。
533 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:25:58 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物3
レイモンドはうんざりしたように、眉間にしわを寄せその言葉を遮った。
「認めたことは一度もないはずだ……」
「第一、あのエルヴァーンはもう生きてはおるまい。所詮、自分の身一つ守れぬ男だ。
お前にはふさわしくなかったのだ。」
二週間程前、一通の知らせがクロート家に届いた。オーク視察部隊の一員としてダボイ
で任務中のブランマーニュが、戦いのさなか行方不明になったという。
レイモンドにとっては娘を勾引かした憎むべきエルヴァーンだが、娘にとっては自分の
命よりも大切な恋人だった。騎士にしては優しすぎる容貌をした、このエルヴァーンの
若者に彼女は深く想いを寄せていたのだ。
レイモンドはひどく不愉快だった。よりにもよって傲慢な、異種族のエルヴァーン、
それも貧乏貴族の倅などに、誰が大事な一人娘をやれるものか。レイモンドは何度も
心の中でそう毒づいた。凶報にショックを受ける娘の気持ちとは裏腹に、あの男が
獣人どもの国でこのまま土に帰ってくれることを、レイモンドは心の底から願っていた。
534 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:38:36 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物4
父との口論に疲れたミリアムは、豪奢な造りの自室へと戻り、ノーブルベッドの上に体を
うずめた。部屋には父が三国から取り寄せた最高級の家具類が並んでいたが、もはやミリア
ムの心の慰めにはならなかった。ブランマーニュらと出会う前までは、この部屋が唯一の
私の世界だったのに、今はなんて寂しくて小さく見えるのだろう、ミリアムは白いシーツに
顔を伏せながら、ブランマーニュの優しい笑顔を思いだしていた。
「バストゥークの方ですね、安心してください。我々が来たからにはもう大丈夫です。
あなた方に傷一つ、つけさせはしません。」
車軸が折れて、走れなくなったチョコボ馬車の中で、ミリアムはオークの襲撃に脅えながら
涙顔で震えていた。そんな中、たった一人で乗り込んできた、傷だらけの頼りなさそうなサン
ドリアの王国剣士が云った言葉を、彼女は今でも覚えていた。
535 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:41:34 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物5
はじめて訪れたラテーヌ高原、父が仕事の所用でしばらくサンドリアに滞在することになり、
そこへ向かう途中のことだった。運悪く、ミリアムが乗ったチョコボ馬車は、ダボイからゲル
スバへと向かうオークの一団に襲われた。馭者はオークとの戦闘で振り落とされ、迷走し絶壁
をさけようとしたチョコボ馬車は、岩に車輪を打ち据えて壊れ、動かなくなってしまったのだ。
護衛は傷つき散り散りになって、あわや絶対絶命のときに現れたサンドリア王立騎士団の
剣士三名の姿を、ミリアムは生涯忘れないだろう。
彼らは、必死になってミリアムと護衛たちの命を守ってくれた。なんとかオークの一団を
追い払った彼らのぼろぼろになった姿は、どちらかというと敗者のそれだったが、若き王国
剣士三人の瞳には誇りと自信が満ちあふれていた。
丁寧に傷の手当てをし、サンドリアに送ってくれた三人のエルヴァーンの姿は、父から
聞いていた、傲慢で気位が高く、多種族を軽べつすることしかしらないエルヴァーンの姿とは、
どこまでも異なって見えた。
536 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:45:34 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物6
それまで、父から聞かされたものだけが、世界のすべてだと思っていたミリアムは、その日
から少しずつ変わっていった。
主人と使用人の関係しか知らないミリアムにとって、王立騎士団でともに夢を語り合う三人の
姿は、とても眩しく、彼らの仲間になれたならとどんなに楽しいだろうと思うことも少なくな
かった。
市内観光と称して、たびたび三人と交友していたミリアムは、やがてブランマーニュと恋に
落ちた。
ブランマーニュは、ミリアムの父が自分たちのことを快く思っていないことを、充分に承知し
ていたが、いつか自分がもっと出世したなら、ミリアムの父も自分たちの仲を認めてくれ
るのではと思っていた。
ミリアムがバストゥークに帰っても、ブランマーニュがプレゼントした水色のリンクパールで
二人は想いを確かめ合った。
半年もした頃、ブランマーニュたちにダボイ任務の話が決まった。
537 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:51:33 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物7
危険な任務だが、無事、帰還したあかつきには王国剣士から王国騎士に昇進することが決まっ
ていた。三人は自分たちの夢の第一歩が実現することに胸を躍らせ喜びあった。
その夜、友人達と別れたあと、ブランマーニュはひとりリンクパールをとりだしてミリアムに
任務のことを伝えた。そして、ダボイから帰ってきたら、ミリアムの父に二人のことを許しても
らうために、バストゥークに話しに行くということを。
「僕が王国騎士になったら、……そうなったら、きみのお父さんも分かってくれかもしれない。
僕が本気だってことが」
ブランマーニュの言葉に、ミリアムは静かに頷いた。そして思いを込めて続けた。
「気をつけて、必ず無事に帰ってきて……」
「ああ、かならず、帰ってくるよ。エルヴェもジョエルも、やっと僕たちの夢の第一歩が叶うの
だから……」
その言葉を残しブランマーニュはダボイへと旅立った。
ミリアムは、ブランマーニュの言葉を思い出し、シーツから顔をあげた。ブランはきっと生き
て戻ってくる。このまま私のまえから消えてしまうはずがない。そう私と約束したのだから。
538 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 00:59:51 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物8
新米冒険者のロココは、砂丘で仲間と待ち合わせるために、友達のグリムとラテーヌ高原を南
へと急いでいた。
「早く、早く、30分も遅れたら、みんなカンカンだよ。」
小柄のタルタルの後ろをガルカのグリムが雄大な姿で走っている。道にそった杭の向こうに何か
見えたような気がして、グリムは足を止めて、道端の草むらに入った。
「もう、何やってんのよ!急いでるのに!」
けしかけるロココをよそに、グリムは真剣な眼差しを返した。
「おい、砂丘行きは中止にしよう、これはかなりやばい……、」
その言葉に、とててて、と引き返してきて、ガルカの足下をのぞき込んだロココは、自分の見
たものに思わず口を押さえた。
539 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 01:02:59 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物9
質実剛健な造りで知られるドラギーユ城の王立騎士団控室に、エルヴェとジョエルが慌てて駆け
込んで来た。
「隊長、ブランマーニュが見つかったというのは本当ですか、」
ジョエルが息つく暇もなく、訊いた。エルヴェも心配そうに騎士団長のラーアル・ルブラールの
顔色を伺っている。
「落ち着け。ブランマーニュは今治療室だ。」
ラーアルのかわりに、副隊長のアンコレン・フラートがそう応える。
「ここに来る時に、教会の高位白魔道士が、慌ててドラギーユ城に入っていくのが見えました……」
「ブランはそんなに悪いのですか、」
エルヴェは嫌な予感を感じた。すでに揃っている団員たちの表情が暗い。
「エルヴェ、ジョエル。」
王立騎士団団長ラーアルは、静かに口を開いた。
「お前達は、ブランマーニュ・リユールの友人であり、同期だったな。」
まるで覚悟を確かめるような口調にエルヴェとジョエルは息を呑んだ。
「二人に話がある。」
540 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 01:06:12 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物10
しばらくして団長室を出た二人は蒼ざめた表情でうつむいていた。団長から伝えられた事実は、
ふたりを酷く打ちのめした。
エルヴェはどんと背後で壁を叩く鈍い音がして、振り向いた。
「こんな、こんな事ってあるかよ……、」
壁を打った拳は、血に滲んでいた。
「これからだろ、俺達、何年も訓練を積んできて、やっとこれからってときに、」
ジョエルはもう一度、拳で壁を打った。そして、そのまま壁にもたれ掛かるように座りこんだ。
壁にはジョエルの血が沁みていた。
「ジョエル……、」
エルヴェも名前を口にするだけでやっとだった。泣きたくなるような気持ちを我慢しているのだ。
肩が震えている。
「俺の、俺のせいだ、あの時、あいつと組んでいたのは俺だった。あいつの背中を守ってやれるの
は俺だけだったんだ!」
どん、とジョエルは三度(みたび)、今度は床を打った。さらに打とうしたとき、エルヴェが
たまり兼ねて止めた。
「ショエル……、もうやめてくれ。お前だけのせいじゃないんだ。俺だって……」
しゃがみ込み、震えるジョエルの拳を制したエルヴェは、彼の頬に後悔の涙がつたうのを見た。
541 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 01:08:55 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物11
ダボイで行方不明になっていたブランマーニュは、十日後にラテーヌの草原で倒れているところ
を、冒険者に発見された。ひどく衰弱していた彼は、右足に深い傷をおっていて、右足の大部分に
壊死が進んでいた。発見された当時、傷口は腐り、ひどい有り様だったという。
ブランマーニュを診た治癒魔法、外科医術、双方の治療士が出した答えは、これ以上壊死が進ま
ぬよう、右足を切断することだった。
右足を失っては、王立騎士団の過酷な任務に耐えることは出来ない。ブランマーニュの回復を待っ
て、除隊手続きが行われるだろうとのことだった。
542 :
既にその名前は使われています:05/01/15 07:12:00 ID:otRlGqRB
ほしゅ
つつきまたー?
543 :
既にその名前は使われています:05/01/15 10:26:05 ID:chPKaSVi
ブランマーニュ(エ) …… サンドリア王立騎士団の剣士
エルヴェ(エ) …… ブランマーニュの友人
ジョエル(エ) …… 〃
ラーアル・ルブラール(エ) …… 王立騎士団長
レイモンド・クロート(ヒ) …… バストゥークの若き当主
ミリアム・クロート(ヒ) …… レイモンド・クロートの娘。
いや、判りにくいって訳じゃないけど、整理してたから勿体なくて。
間違ってたらスマヌ。続き読みたぃぃ
544 :
既にその名前は使われています:05/01/15 12:38:50 ID:zcKou8OU
>へっぽこφ(・_・; )先生
乙であります。
続きが気になるー ウズウズ
545 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 14:15:02 ID:jIpk9KVZ
ありがとん。
続き読みたいって云われの、初めて・゚・(ノД`)・゚・
>>543 あと、レイモンドは若くないです。ミリアムの父。50くらいかな。
若き当主はマーティン・ルゴー(34)です。
印象づけて説明するのを練習しなきゃかな。自分で読んでんみても、
さらりとしすぎだった。
えと、私の方の続きです。
本当に、魔法に関してジョブと国と歴史的背景の設定が難しい(汁
ウィンダスから魔法が流出し、全土に広まって獣人をも魔法を使う時代。
力の時代なんですが、サンドリアでも使用しているものの、
専門的な魔導師が居ない(あるいは少ない)時代、を想定しています。
といって、このころはサンドとウィン、仲が悪そうだなぁ……
なんか、妙な設定を広げまくりですが、これは私の中だけ、ということ
にしてください……
入学式前の臨時面接会議……天の塔第2会議室にて。
「えー、カルス=ディヌスさん?既にサンドリア王立騎士団の席を離れ……
ほほう、騎士隊長だったとは。しかも、国籍をも離れているのですか。」
議長は資料を目で追いながら、俺に対し問いかけを続けている。
「はい、国王陛下に対する忠誠は今もなお健在ではありますが、これは独断実行でありま
して、己の欲するところを為すがために、隊長の名を返上させて頂いた次第であります。
こちらが、それを証明するサンドリア政府の印状です。ただし、いずれは国元に戻り、
学んだ魔法の力で祖国に尽くしたいと考えている次第であります。」
「理由を詳しく。既に獣人ですら使う魔法を、何故わざわざウィンダスまで学びに来た?」
別の一人が声を上げる。国際問題となるため校長と教員だけでなく、言わばウィンダス
連邦の重臣をも含めた面接となったのだ。
「はい、破壊と殺戮を行うより、付け焼き刃ではない味方を癒し民を救う大きな力を……」
「なら、医者になればよいではないか?もっと正直に。」
別の族長が言葉を遮り鋭く指摘する。体が小さく子供のように可愛らしいタルタル族。
女の子が見れば「持って帰りたい」などと言うだろう。だが、祖国の文官達にも引け
劣らぬ威圧感。いや、それ以上かも。正直に、か……
「……無力。如何に自分が無力な存在であるか、それを痛感したからです。」
それでは、時を元に戻しまして……
ついにマタタ先生による補習計画が実践された。
「では続けてください。」
マタタ先生はタマネギを刻みながら授業を進める。
「デナ・クナ……えーっと、クタタ・テタタ」
そう答える俺は、やっぱり床にあぐらを掻いてイモの皮を剥いている。
ここは彼女の台所。なんと放課後に案内されたのは彼女の自宅だったのだ。
「えーっと、は要りません。呪文の意味が変わりますよ。次は?」
「コタタ・ムタタ・ムタタ・ペンタ……ニッタ」
「はい、よく頑張りましたね……それでは私にケアルを掛けてみてください。」
「あ、はい……」
軽く念じると、軽い光の泡が彼女を包みこんだ。
「えーー!!まほうつかえるんだ!すごーい!」
驚いて声を上げたのは、俺の隣で皿を磨いていたクミミ。
先生の娘だなんて、最初っから言ってくれ。こっちが驚いた。
「なんで?あたしたちもまだならってないんだよ?」
「彼はサンドリアで別の練習を受けてるのよ。でも、それだけでは高度な魔法は無理。」
クミミはまだ腑に落ちない様子だが、先生は構わず説明を続ける。
「まあ、こんなもんでしょ。判りますか?ケアルぐらいなら訓練次第で誰でも出来る。
しかしケアルの呪文より、あなた達が行っている発音練習の方が遙かに難しいでしょ?
入学当初から、あなたは既にタルタル族が誇る秘技への道を歩いているのです。」
「……そうだったんですか。」
「私が早く説明したかったのはこのことです。タルタル族と同じ魔導学を学ぶ限り、
あなたは我々一族と同じ責任を担って頂かなくてはなりません。」
「同じ責任……それは、何ですか?」
「一言で言えば、魔法に対する『思いやり』と言えばいいでしょうか。」
「思いやり……?」
「判りやすくいえば……自分の部下にウィンダスへ攻め込め、と言えますか?」
「ウィンとサンドがせんそうするの?やだよ、そんなの」
「クミミ、もしもの話よ。さ、そのお皿を持って行って。」
娘を見送ってから、先生は続けて話す。
「もし国王陛下が命じれば、あなたの騎士隊は迷わずウィンダスへと攻め込むでしょう。
あなたは、自分の部下を悪魔の軍勢として育てるのか、正義の守護神とするのか。
戦争となれば、陛下にとって騎士団は守護神、我々にとっては侵略の悪魔。
そしてこの問題は、自分の部下が歩む人生にまで及ぼすことになるのです。
魔法にとっては、人生と言うより歴史と言うべきでしょうね。わかりますか?」
ふと尋ねてみたくなった。
「聞いてもいいですか?何故、私の留学を許可していただいたのですか?」
「あなたは力が欲しいと言った。しかし力が何を及ぼすのか、それをあなたは知っている
と感じたからです。大丈夫、危険と判れば今すぐ私の魔法でブッ飛ばしてあげますから。」
タママ先生はニヤリと笑った。先生……目がマジだよ……
台所補習だけでなく、先生は自分の自宅で寝泊まりするように、と持ちかけた。
古い大きな家で、空き部屋など幾らでもあるから、と。
(とことん付き合うっていったじゃないですか。あなたと一緒に勉強するスケジュールを
組み立てて行きましょう。遠慮なんて野暮ですよ、野暮。)
タママ先生の夫、ドンタ=タンタ氏が帰宅し夕餉の始まりとなった。
彼は調理ギルドの一員で、汚れたエプロンを付けたまま帰宅し、満面の笑顔で俺を歓迎
してくれた。調理人の夫を持っているにも関わらず、妻である先生は台所に立たせよう
とはしないらしい。教師の仕事で忙しいはずだが、これも主婦としてのプライドか。
「このイモは君が剥いたのか?いやいやまいった、これは傑作。がっはっはっはっは」
「ど、どうも」
イモで笑いを取ったのはこれが初めてだ。うーむ、どの辺が面白いのだろう。
「ママとカルス、ずっとむずかしいおはなしばかりしてるんだよ。つまんない。」
ドンタ氏は面白そうに娘に答える。
「カルス君は立派な大人だからなぁ。難しい話が大好きなんだよ。」
「えー、おとこのひとは、ずっとしょうねんのこころをもってなきゃだめなんだよ〜」
どこで覚えたんだよ、そんな言葉。
「ねー、こんどはあたしだよ。あたしのへやで、おべんきょうしようねー」
「おお、これぞ親子どんぶりって奴だな。がっはっはっは」
親父さん……サンドリアじゃエッチな意味なんだけどな、その言葉。
「さぁカルス君。沢山食べてもっとおーきくならなきゃ」
そして放課後の労働は、学校が始まるまでの早朝に行うことになった。
学校が始まるまでチョコボの世話に向かう。これも先生の薦めだ。
収入は減ったが、先生の家に泊めて貰っているから問題はない。いや、そんな訳にはい
かないと言ったが、食費以上はガンとして先生は受け取らないのだ。
「お、お、お〜!食べてる食べてる!」
雇い主ミスラは驚いている。どうだ、これが俺の実力だ。まいったか。
「そして、焦らずゆっくり療養させればいいだろう。目安は、早く走りたくてウズウズす
るようになるまでだ。焦ると病気がブリ返してくる。」
「やるじゃん!凄いじゃん!偉いよあんた!見直した!」
「そ、そうか?いや、照れるなぁ」
「もっとあんたの腕前見たいなぁ!空いてる寝床がピッカピカになったら嬉しいなぁ!」
「よーし、まかしとけ!」
「じゃ、よろしく。あたい朝飯喰ってくるから。」
あ……俺、乗せられた?
(カルスさん。あと、家での補習と夕ご飯までは自由時間です。
くれぐれも勉強しようなどと考えちゃだめですよ。
よく食べ、よく学び、よく遊べ。大人だって遊ばなくちゃね?)
552 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/15 14:36:41 ID:chPKaSVi
>>545 わちゃちゃ、間違えたか。すまんかったage
553 :
◆L3BRINbQjY :05/01/15 17:23:25 ID:BcOzdezD
「種族差なんて関係ねぇよ」
どこからともなく聞こえた声の主はタルタルだった。
見るとこのタルタル、銀の装飾が施されたキセルをくわえ
細身のふちの尖った黒い色眼鏡をかけている。
思わず笑ってしまいたくなるような可愛いらしい容姿だが
その奥からは恐ろしく鋭い眼光を感じとれる。
ここはジュノ上層にある酒場。今日は『忍者』の日。
ヒューム忍者のシロウは同僚のエルヴァーンのダニルと任務の後飲みに来たのだが、
酒も手伝ってか話の腰に火が付いてしまった。
「シロウはいいよな、ヒュームはバランスがいい!オレなんて力任せだから
よく手裏剣をあさっての方向に投げてるときあるぜ」
ダニルは声がでかい。
以前は隠密行動中に街中で先輩を大声で呼んで叱られていた。
「でもオレはエルヴァーンのその体力と力には憧れるけどなぁ」
「体力だけはな、まぁ忍者は体力ないとやれない職業さ。
すぐ戦闘不能になってちゃ話にならないぜ。誰のこととは言わないけどな」
ダニルは熱燗を飲み干すととっくりの中身を確認するかのように覗きこんでいる
554 :
◆L3BRINbQjY :05/01/15 17:25:04 ID:BcOzdezD
今日の任務は簡単なものだった。少なからずシロウ達には簡単なはずの任務だった。
バストゥークから送られてくる装備品を天晶堂に納めるため
護衛を兼ねた任務として先導するというものだった。
今回の品は数が多いため通常の護衛に加えて
シロウとダニル、タルタルのレンタの忍者3人も同行することになり
何事もなくロランベリー耕地まで来た時だった。
既に日が落ちジュノまでもう少しというときにクゥダフの集団に出くわしたのだ。
「レンタ!お前が前方の経路を確保する役目だろ!
この数の集団は危険だ!くそ!」
パーティ二つ分はいるであろうクゥダフを相手に奮闘する護衛隊と忍者達
「護衛と運搬係は先にジュノに向かって下さい!ここは抑えます!」
大量の荷物はあと少しでジュノにつく。
機動性の悪い荷物を持っての敗走は考えられない。
そう考えたシロウはそう叫ぶとクゥダフに雷遁の術を唱えた
「ここはオレとシロウに任せてお前はあっちについて行け!」
「すみません」
と一言言い残してレンタは運搬の護衛にまわった。
555 :
◆L3BRINbQjY :05/01/15 17:26:45 ID:BcOzdezD
「まぁ今月配属になったばかりだし、そうカリカリするな」
「シロウは甘い!死人が出てからでは遅いんだ!
背が低くて見えなかったではすまないんだぜ!」
空蝉の術を唱えながら二人はクゥダフのパーティをうまく撹乱していく。
「なかなかしぶといな、調子に乗るな!地!」
逆手に持った刀で突き上げ力いっぱい振り落とし
ダニルはクゥダフを沈めた。
シロウは忍術を駆使してクゥダフの視界を遮り、動きを止めている。
傷つきながらも二人はクゥダフを抑え任務は終了した。
ジュノに着いてからダニルはレンタにくどくどと何か言っていたが
シロウはレンタに気にするなとだけ言って解散した。
その後、上層でシロウはダニルと酒場に入り、ダニルの愚痴を聞かされ、
それが種族批判に入った時のことだった。
カウンターの端から聞こえたその声の主は腰に金鍔の刀を持っていた……
続き書くか迷ってます…駄文すいません
入学式当日。
校長先生、長老タムク=トムクは俺を校長室まで呼び出し、重々しく語りかけてきた。
「この装備はお返ししておきます。」
校長先生に預けた片手剣、盾をも含めたナイト装備。
返上した王国の正装ではなく、修行の末にナイトとして認められ授けられた装備一式で
ある。ナイトの道から外れて魔導師としての道を歩む、という誓いの元にに提出したの
だ。学校に対する恭順を示す意味もある。
「でも、私は既にナイトではありません。もはや、これには何の意味もないのです。
そして、外国人である私が武具を持つことは危険であると考えますが。」
「その態度は御立派です。しかし今後の学習にあたり、どのような事があったにせよ、
全ての過去を捨ててはなりません。サンドリアの騎士であり、エルヴァーンであり、
そして国を出られてウィンダスへと参られたあなた。その全てを踏まえた上で入学を
認めたのですから。サンドリアの騎士としての誇りを持って授業に望んでください。」
「……ハッ!」
カツンと、思わず正式なサンドリア式敬礼を行った。
「よろしい。さ、入学式が始まりますぞ。」
早朝の教室……
チョコボ厩舎での仕事を終え、誰よりも学校に着いて朝食を食べながら教科書を読みふ
けっていた。食べているのは子兎の切り身を挟んだサンドイッチ。クミミと一緒に昨晩
から用意したのだが、少々パンを焼きすぎ怒られてしまった。
やがて、クラスメートのみんなが集まってくる。
(みんな、こんどはテポカリプカのいけに、つりにいこうぜっ)
(……ったく、クッタはつりきちだなぁ。)
(おぅっおれはせかいいちの『りょうし』になるのがゆめなんだっ)
(だめだよ、まどうしのがっこうで、そんなこといっちゃぁ)
(でもさ、おとなのひとが、あそこはあぶないからいっちゃだめだって)
(なんだよ?こんじょうなしぃ)
(じゃ、カルスつれてきゃいいじゃん。)
(だめだめ。あいつだって、おとなじゃんか。)
(あー、クミミもいきたいー。)
(ひるまはみつかっちゃうし、みんなでさ、あさ、はやくおきて……)
なんの相談をしてるんだろう?ここからじゃ良く聞こえないなぁ。
年齢の違いはどうしようもない。少々、孤独を感じる初夏の朝……
翌朝。
「ふわぁぁぁぁ……お早うさん……」
「お疲れさんです」
眠そうに、夜勤をしていたタルタルの飼育員と挨拶を交わす。勤務交代の繋ぎとして、
俺の早朝勤務は実に好評なのであった。
「……えっとな。あと2匹ほど出てるけど、もうすぐ帰ってくるから。
餌はそれからやってくれ。後は大したことはない……かな?ああ、眠てぇよぅ。」
ん?あの子達だ……何やってんだ?こんな朝早くから。あ、外に出て行くぞ。
おいおい、門番しっかりしてくれよ……
「おいこら、どこよそ見してんだ?人の話はちゃんと……」
「すんません、ちょっと用事が出来ました。後よろしく。」
「なんだと!俺は眠いんだって!おいこら……」
そんだけ怒鳴ったら居眠りしないで済むだろう。こっちはそれどころじゃない。
感じるんだ。久しく戦場でしか味わったことのない感覚。
この鋭い俺の直感が、幾多の危機から部下達を救って来たのだ。
まさか、この平和な国で、この感覚が蘇ってこようとは。
(何もなければそれでいい。何かあっては取り返しの付かないことになる!)
そのまま、あの子達を追いかけようとしたが、思い返して自宅……先生の家に向かって
大急ぎで戻っていった。
「お、すげー、でっけぇなまず」
「うわーすごーい」
「よーし、さっそく……おい、みまわりがこないか、みはってるんだぞ!」
クッタが釣り糸を垂れる。
「えさはなんだよ?」
「りとるわーむ」
「それじゃ、ざりがにつりといっしょじゃん」
「……だって、たかいえさなんかかえないよぉ」
「ばかだな。そういうのは、じぶんでつくるんだよ、じぶんで」
「いや、なんかきもちわるいし」
「『りょうし』が、きもちわるいとかいってたら……あれ?クミミちゃん?」
「い、いないの?だめだろ!ちゃんと、みてなきゃ!」
「おーいっクミミちゃーーんっ」
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「ああっ!たいへんだぁ!」
「ギャギャギャッ!どうするどうする。この子をどうする。」
「ギャギャギャッ!煮て喰おう。さぁ煮て喰おう。」
「ギャギャギャッ!煮るのは嫌だ。煮るのは嫌だぞ。」
「ギャギャギャッ!なら焼いて喰おう。焼いて喰おう。」
「あ、あ、あ、あ……」
遠目でも判る。
ヤグード数名に囲まれ、顔面蒼白で震えているのはクミミだ。
くそっもう少し早ければ……
いや、何とかなる。あの程度なら物の数ではない。
しかし、どうする?戦う俺の姿など、あの子達には見せられない。
考えろカルス!考えるんだ……
……よし、あれしかない!
心に決めた俺は、包みから昔の装備を取り出し、首から上をすっぽり隠すヘルメットを
装着した!
「うわーはっはっはっはっはっはっはっは!!」
「ギャギャッ?誰だ貴様は!」
「誰が呼んだか知らないがッ!何処の誰かは判らないッ!
サンドリアが産んだ放浪騎士!ナイト仮面とは俺様のことだぁッ!」
「………………………………はぁ???」
クミミも、他の子供達も目をまん丸くして俺を見ている。
この威風堂々たるナイトの装備に見とれているのだな?無理もない。
「ギャギャ!何を小癪な。こっちには人質が……な、な、なんと!」
「うははっこの子のことかなっ」
「やっほー♪」(きぃ〜〜ん)
耳が痛いんだって。
「ギャギャッ?何時の間に!」
「えーい、やってしまえぃ!!」
……こいつら雑魚だな?この程度なら剣を抜くまでもない。
モンクの経験は無いのだが、こんな連中は俺様の必殺パンチで十分だ。
さぁ!どっからでもかかってきやがれ!!
「わーーーはっはっはっはっ!!」(ぼこっばきっどかっぼかっ)
「ギャギャーッ!畜生!覚えてやがれ!!」
観念して逃げていくヤグード達。どうだ!この子達には指一本触れさせやしないぞっ!
その後、子供達に厳重に注意を与えて、こっそりとウィンダスの街へ送り届けた。
勿論、大人達には内緒にしてやるから、と約束をして。
そして今朝もまた、何食わぬ顔で教室で教科書を広げて読んでいた。
「そ、そうか、ナイト仮面かぁ。俺も見たかったなぁ。」
(……プッ)
(……ほんとうに、ばれてないとおもってるんだな。こりゃけっさくだ。)
(このあたりでエルっていったら、あいつしかいないじゃん。なぁ?)
(えー、でもいいじゃん。すっごくつよかったんだから)
(でも、ナイトかめんとかいいながら、せっきょうしてんじゃねぇよ)
(ナイトかめん……だめだ、はらいてぇ)
みんな楽しそうだなぁ……でも、何を話してるんだろう。
もしかしたら、今朝のことかな?いや、あれは絶対に知られちゃいけない秘密なのだ。
「はぁーい、皆さん席についてくださーい!」
先生が鐘を鳴らしながら生徒達をうながす。さぁ授業が始まるぞ。
そして、俺の席に通りかかった時、ニッコリと笑みを浮かべてささやいた。
(後で職員室まで来てくださいね。ナイト仮面さん?)
ウィンダス連邦定例会議。
「いい加減にしろ!冗談ではない!」
机を叩いて怒鳴っているのは、元老院議員の長老グッダ=グンダである。
「あのサンドリア人に我らが秘技を教えるだけでも腹立たしいのに、今度の作戦行動の臨
時指揮官に任命するだと?いったい何の冗談なのか!」
「長老、落ち着いてください。彼は終始、誠実に私の教えを守り、普段の誠実な行動から
周囲の人々からも徐々に信頼を得ているのです。そしてこれは議会の決定事項です。」
答えたのは、連邦政府の重臣達が居並ぶ会議の中で、なぜか参加している耳の院教師、
マタタであった。そして、となりにすわったタムク=トムク校長は重々しく語る。
「さよう。流出した呪文はヴァナ=ディール全土を一人歩きしておる現状。本来、魔法と
はかくあるべきか、正しい指導を踏まえた教育が無ければ、逆に危険というものです。」
「しかし、我が軍と協働させるなどと。」
「はて?あのサンドリア人ではなく、参加するのはナイト仮面じゃなかったでしたかな?」
口の院院長はクックックと笑いながら横槍を入れた。そしてまた、別の議員も囃し立てる。
「サンドリア人では問題だが、ナイト仮面ではしょうがありませんなぁ」
「いやぁ、実は私の息子が彼のファンでしてな……」
どんっっ!長老グッダは机を割れんばかりに大きく殴りつけた。
「もうよいっ!今に見ているがいい。今にワシがあのサンドリア人を追い出してやる!」
そこへ議長は淡々と受け答えた。
「議題提出なら来週の風曜日までにお願いしますね。グッダ長老。」
「はい、それでは遠足のプリントを配ります。よく読んで、お母さんとお父さんに見せるん
ですよー」
『はぁーい』
ざわざわ……マタタ先生の配った羊皮紙のプリントが行き交い、クラスメートのみんなは
目を輝かせて、それを読んでいる。遠足か……懐かしいな……
「えーっと、おべんとう、すいとう、おやつ、それから」
「せんせ〜、サルタオレンジは、おやつにはいるんですかー」
「それじゃ、パンプキンパイは、おやつ(略」
「……あれ?カルスくんのプリントがたりませーん」
「ああ、カルス君はお仕事で行けないそうです。」
「そ、そうなんだ、残念だよ。みんなで楽しんで行ってきてくれ。」
ざわざわ……
「いやぁ、荷物の仕入れがあってさ。で、チョコボといえば俺だろ?それで……」
(おれしってるぞっ!ナイトかめんがしゅつどうするんだってさ!)
(うはっしごとってのはそれなのかっ)
(うひゃひゃ、まだ、ばれてないとおもってやんの)
「では皆さん。忘れ物が無いようにちゃんと確認するんですよ。」
2人だけの職員室で、先生との打ち合わせを済ませておいた。
「ナイト仮面のことは誰にも言ってません。クミミからナイト仮面の話を聞いて、もしや
と思ってね。ああ、この間の子供達のことは、あまり叱っていません。正直に打ち明け
てくれましたからね。また、あなたが子供達にした説教は実に的確だったようです。」
「は、はぁ……どうも……」
流石、女の勘は鋭い。
「娘の恩人です。私たちには、これまで以上に遠慮無く、ね?
私達を実の家族と思って甘えてくださって結構ですよ。あぁそれから」
「はい?」
「これは連邦政府からの要請状です。ナイト仮面当て。どうやら政府にまで知れ渡ってい
るようですね。」
「な、なんですってぇ!!」
そんなわけで……俺はウィンダスが誇る戦闘魔導団の兵舎へとやってきた。
「おお、ナイト仮面さんは正体を知られてはいけないのでしたな?これは失敬。
そのままで結構ですよ。お座り下さい。」
魔導団長から作戦行動の説明と資料を頂き……
いや、あんたにも秘密を明かすからヘルメット脱がせてくれ。資料が読みづらい。
そして、義勇兵士から魔戦士をも含めた大集会に案内された。
(おおッ!来るぞッ我らがナイト仮面ッ!)
(感動だッ!ついに本物が見れるんだ!)
(って、お前ら。あいつが誰か知ってて)
(馬鹿野郎ッ!そんな無粋なこと言う奴は、競売所で叩き売ってやるッ!)
(♪ど〜こ〜の、だ〜れか〜は〜し〜らな〜い〜け〜れ〜ど〜)
なんだか、今日は幼稚園の保父になった気分だ。
戦闘魔導団とはいっても園児が朝礼しているようにしか見えない。
しかも私語が多いし……ウィンダス軍の士気は甘いなぁ。まぁ、いいか。えぇっと……
「ナイト仮面である。ある事情に付き、面を取るわけにはいかない無礼、平にご容赦頂き
たい。さて今回、ウィンダス連邦政府の要請により、定例であるこの作戦行動において
陣頭指揮の任に当たらせて頂くこととなった。明らかに外様である我が輩であるが、皆
に号令を掛け、不心得者は軍紀に照らし、状況に於いて指示を下すことが授かりし責務
であると考えており、作戦遂行を果たすため皆の協力を頂きたく思う次第である。
想定される敵との戦闘は諸君らにとって容易な物だが、だからこそ死者はおろか怪我人
の一人も出さぬよう、万全の作戦行動を期して頂きたい。我の言うことは以上である。」
『はっっ!!』 ザザッ!!
全軍のウィンダス式敬礼。
おお、やるときはやるんだな。これがウィンダス軍か。
そして俺は、こればかりは譲れないとばかりにサンドリア式敬礼を持って返礼した。
(すげぇぞナイト仮面。弁が立つなぁ。)
(おぃ、進軍だぞ。早く行け。)
(お、おう)
俺は説明を受けた通り指示を下し、兵士達はてきぱきと動いていく。
「第一、第二中隊は本隊と合流するまで水の区で待機。第三から第五中隊までは計画通り
に陣を敷き、敵の掃討を開始せよ。一匹二匹の発見、及び戦闘において報告は不要、
掃討終了確認と負傷者の報告のみ伝令するように。」
「はっ」
「配置は等間隔で二名ずつ、そして一人が戦闘する場合もう一人は配置地点を維持せよ。
決して手薄な地点を作らぬよう。」
「はっ」
「また、これは打ち合わせにはないが、隊長クラスはチョコボに騎乗のまま全陣営を巡回
せよ。個々の兵士達に異常がないかを報告させ、常に緊張状態を保つよう……
おぃッ!そこをどけッ!!」
「え、うわぁ!」
バシィッッ!! いきなり地面から沸き上がった骸骨を一瞬で砕いた!!
「もうこういう時間なのか。総員油断するな!」
「ハッ!!」
そして……いよいよ、作戦は最終段階を迎えた。
「よし、本隊投入!」
水の区の外門から現れた本隊……それは耳の院魔導学校の生徒達だった。
第一中隊は散開して周囲の安全を確認し、第二中隊がにこやかに話を弾ませなら、子供
達とともに歩いていく。
美しくも恐ろしい深夜の星降る丘。けっして子供達には来られない目的地。
この遠足は、骸骨達がうごめく丘までの道をウィンダス連邦は国防力を投入して絶対の
安全を確保して行われるのであった。
「おおっ!はじまったぞー!」
「きれーーーい……」
「おぃっねるなぁ!いっしゅんたりとも、みのがすんじゃないっ!」
「う、う……ん……zzz」
小さな光の泡が夜空へと舞い、消えていく。そのまま見上げた夜空は満天の星。
俺は感動した。この夜の美しさだけではない。
主戦力をも投入して遠足を支援するウィンダス連邦政府。
俺は……ウィンダスをもっともっと好きになりそうだ。
「おー、ナイトかめんだ。ナイトかめんさ〜ん、こんやはありがとー」
俺は手を振って答えた。良い気分だ。
ここで俺は、つい昔の悪癖で隠し持っていた酒を一口飲んでしまった。
「うぁっさけのにおいだっ!せんせーにいってやろー!!」
569 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/15 19:10:39 ID:chPKaSVi
えっと...大量連貼りごめんなさい。
副題のタイトルは「ナイト仮面前編・後編」
そして面白くなかったら、すまんかったです(;´Д`)
570 :
既にその名前は使われています:05/01/15 19:45:29 ID:jIpk9KVZ
ナイト仮面おもろかったw、笑わせてもらいました。
あと、ナイト仮面の仰々しい台詞つくるの上手いです。
ちょっと、自分でやるとあの文章出てこないです。
>>555 とにかく書こう。完結しないともったいないよ。
……と、未完を投げっぱなしの俺が言うのだった。
571 :
既にその名前は使われています:05/01/15 19:46:52 ID:st3I/7wS
572 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/15 20:16:09 ID:chPKaSVi
>>555 つДT)タルタル忍者・レンタ君が惨めなまま終わるのは悲しい
つーわけで、続きキボンヌ
>>570 つДT)ありがと。そういうこと言って貰えると救われる
573 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:36:33 ID:jIpk9KVZ
574 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:40:20 ID:jIpk9KVZ
575 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:43:07 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物12
ブランマーニュが右足を失ったことを知ったあと、エルヴェたちは悲嘆にくれながらも、ミリアムに
知らせを打った。彼が生きてサンドリアに帰って来た、と。
しかし、何日たっても、返事はもどってこなかった。ブランマーニュが握りしめていた水色のリンク
パールは崖から落ちたときに破損したのか、割れてしまっていた。エルヴェたちはサンドリアを離れる
わけにも行かず、やりきれない日々が続いた。
ミリアムからの返事もなく、数度、知らせを打つうちに、ブランマーニュの体は徐々に回復してきた
ようだった。失った足はもう戻らないが、せめて生きていてくれて良かったと、エルヴェとジョエルは
そう思うようになっていた。ブランマーニュが目覚めたとき、自分達が落ち込んでいても何の役にも立
たない。二人の思いはそう行き着いたのだ。
発見されてから6日後、ブランマーニュはやっと意識が回復する兆しを見せた。医師の報告を受け
てエルヴェとジョエルが駆けつけていた。
576 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:45:23 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物13
「ブラン……、」
ベッドでうっすらと目を開けたブランマーニュは、傍らで嬉しさに涙ぐむ親友達の姿を見た。
「……ここは、」
「サンドリアだよ、俺たちの国だ。」
ジョエルが安心させるようにそう云った。
「……僕は、戻って来れたのか……、」
まだ意識がはっきりしないのか、ブランマーニュは、気づかう親友たちの姿をぼうっと見つめ、
しばらくしてから呟いた。
「……すまない、心配かけたみたいだ……。」
「馬鹿云うな、心配なんかしてないさ。生きて帰ってくるって信じていたさ。な、」
エルヴェは、ジョエルの肘をつついて、同意を促す。
「…ああ、もちろんだ。」
ジョエルは手で涙を拭うと、無理に笑って頷いた。
577 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:46:41 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物14
友人達の笑顔につられて、ブランマーニュは力なく微笑んだ。体がひどく重いが、すでに
ほとんど痛みはなかった。治癒魔法の効果は予想以上に彼の体を回復させていた。上半身を
なんとか起こそうとして、ブランマーニュはダボイで受けた右足の傷を思いだした。
ブランマーニュは、すぐに体の違和感に気づいた。右足の感覚がない。手でまさぐると、
あるべきはずのものがないのだ。ブランマーニュは驚いて、掛け布団をはぎとった。そして、
変わり果てた自分の右足を見て言葉を失い、悲鳴をあげた。
578 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:49:01 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物15
ブランマーニュが目覚めてから数日が過ぎた。エルヴェとジョエルは、王立騎士団の仕事が
終わると、毎日かならずブランマーニュを見舞いに出かけていた。彼の病室は、今はサンドリ
アの居住区にある療養所に移されていた。
「見ていられない……、」
ジョエルはいつもの見舞いが終わったあと、病室に面した廊下に出ると、石壁に背中を預け
てそう呟いた。
「……彼女からの返事は、まだなのか、」
ジョエルの質問に、エルヴェは黙って頚を振る。
中庭に面した窓を見上げると、サンドリアの青い空が広がっていた。ふたりの気持ちなどお
構いなしに、故郷の空は蒼く澄み切っている。
ブランマーニュは、右足を失ったことに最初こそ取り乱したものの、その後は意外なほど落
ち着いた様子を見せていた。しかし、それが見せかけだけのものだいうのは誰の目にも明らか
だった。失ったものの大きさに、ブランマーニュの心は深く鋭く傷つけられていた。それにも
かかわらず、見舞いに来た友人達に、心配をかけさせまいとする彼の態度は、かえってエルヴェ
らの胸をひどく痛めさせた。
579 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:51:35 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物16
「なあ、俺達はどうしたらあいつの力になってやれるのかな、俺にはそれがわからないんだ……。」
ジョエルは力なくそう呟き、その場にしゃがみ込んだ。
エルヴェは落ち込んでいるジョエルを見て、それから病室の厚い扉を見た。そんなことは自分が
教えてほしいくらいだった。自分たちに出来た事といえば、今日ブランマーニュのために持ってき
たマホガニー製の松葉杖くらいだった。
いや、ひとりだけ、ブランマーニュの心を救えるかもしれない人物に、エルヴェもジョエルも心
当たりがあった。
「行ってみるか……、バストゥークに。」ぼそりと呟く。
「彼女に、ミリアムに会いに、」
ジョエルは、その言葉に顔をあげると、黙って頷いた。
580 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 20:58:21 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物17
次の日、休暇願いを無理に申請して、エルヴェとジョエルは、バストゥークへとやって来た。
街の住人に案内を請いながら、なんとかミリアムの住む屋敷にたどり着いたが、広大な敷地と堅く
閉ざされた門の前に、ふたりは途方に暮れていた。
しかも最悪なことに、ミリアムと、バストゥークの富豪マーティン・ルゴーという男の縁談の噂
まで聞こえてくる。
「いったい、どういうことなんだ……、」
ジョエルが戸惑いを隠せず、そう口にした。
「……わからない、ただの噂と信じたいが、」
エルヴェもジョエルと同じくその噂に戸惑っていた。細い顎に指をかけて、考えてみる。エルヴェ
の知っている彼女は、たしかにブランマーニュのことを心から想っているようだった。しかし、彼
女が、バストゥークへ戻って半年は経っている。心を変えるような出来事が全くなかったと、言え
るだろうか。エルヴェは、頭に浮かんだ嫌な考えを払うように首を振った。
581 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:02:59 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物18
何度も門番に追い返されながらも、屋敷のようすをうかがっていた二人は、二階のテラスに現れ
たミリアムの姿を見つけた。だが、屋敷と門の間は広大な庭で隔たれていたうえに、業を煮やした
衛兵が二人を本気で排除しようとしたために、いったん引き下がることにした。しかし、あのテラ
スはミリアムの部屋に通じている可能性がある。それだけでも成果だった。
ミリアムに、ブランマーニュのことを知らせるまでは帰れない、ふたりの思いは同じだった。
その夜、鉱山区の宿屋に部屋をとり、どうしたらミリアムと連絡をとれるかと、思案していた彼
らは、宿屋のロビーで旧知の顔見知りと偶然出会った。
白い衛生帽子をかぶったタルタル、ミタルポタルだ。ミタルポタルは、移籍を繰り返しながら、
三国を回る放浪癖のある冒険者で、サンドリアに来たとき、エルヴェは彼のミッションの担当者だっ
たのだ。たしか獣使いだったはずだと、エルヴェは彼の記憶をさぐった。
582 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:05:03 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物19
「おや、珍しいところで、珍しい人に会っちゃった、」
ミタルポタルはにっこりと笑顔をつくると、ぺこりと会釈をした。彼の小さな腕には炎のクリ
スタルやメープルシュガー、小麦粉などがどっさりと抱えられていた。
そう云えば明後日からハロウィンカーニバルか、エルヴェはドラギーユ城で神殿騎士がカーニ
バルの治安維持について語っていたのを思い出した。王立騎士団も何名か警備を兼ねて、人手が
足りないハロウィンの係を演じることになっていた。
「お二人もバストゥークに移籍ですか、なんちゃって、」
ミタルポタルは挨拶がわりのジョークを飛ばしたが、見事に無反応の二人に、すぐさま「ごめ
んなさい」とかえし、自己完結した。陽気なタルタルにジョエルは困惑した表情を浮かべていた
が、エルヴェは慣れたもので、さらりと聞き流していた。
583 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:08:34 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物20
「ミタルポタル殿、久しいですね。その格好からすると、ハロウィンの需要をあてこんで商売の
準備ですか?」
「うん。僕ら冒険者は、金儲けのチャンスを逃しちゃ駄目だからね。うっかりしてると、のたれ
死んじゃうから。お国からお給金がでる身分が羨ましいです。」
そう云いながら荷物を椅子に降ろした。あらためて見ると、よくこれだけの荷物をあの小さな
体で運んでこれたものだ、と感心しつつエルヴェは話を続けた。
「ミタルポタル殿ならば、士官の口もあるのでは、」
「そうなんだけどね〜、自由がないのはちょっと勘弁」
ちょこんと椅子に座ってふ〜っと一息ついた。
「今回は、天晶堂のバイトもしてるんだ。ほら、そこ、」
彼の指差した先を見ると、コウモリの柄がついた杖が何本もロープで束ねられて置いてあった。
「それを、お菓子と交換してね、もらったお菓子をまた売るの。がっぽがっぽと大儲けだよ。」
にししとほくそ笑むタルタル。
それは、かなり問題がある商売なのでは、と思いながらも、エルヴェはあることを思いついて、
ミタルポタルに尋ねた。
584 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:11:00 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物21
「そう云えば、貴殿は獣使いの心得がありましたね、」
「うん、自慢じゃないけど、僕、獣にかんしてはちょっとすごいよ。」
得意気に笑うと紙包みの中からビーストヘルムを取り出して、衛生帽子の代わりにふかぶか
とかぶった。
「どう、やっぱりこっちの方が格好いいでしょ、僕の自慢の帽子だからいつも持ち歩いてるん
だ。」
にこにこ笑っているタルタルを見て、格好いいというのとはかなり違うな思いつつも、二人
は頷いた。しかし、自分の記憶が間違いでなかったと知り、エルヴェは満足した。獣使いなら
ば、ミリアムと連絡をとるのに役立ってもらえそうだ。ジョエルの方を見ると彼も同じことを
考えているようだ。
「ミタルポタル殿に折り入って、お話が……」
一張羅の帽子を褒められ、有頂天になったタルタルは、ふたりの話に気持ちよく耳を貸すの
だった。
585 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:12:23 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物22
次の日、三人はミリアムの屋敷の裏手に回って、テラスの見える場所に隠れていた。
「本当に、あぶない話じゃないんだよね、」
ここに来て、ミタルポタルは物怖じしたようにごね出した。
「私たちを信用してくれ。このリンクパールを君のペットを使って、あのテラスまで届けてくれ
るだけでいいんだ。」
「だって、こんなこそこそして、やるなんて、やっぱり危ない仕事だよ〜」
冒険者のくせに何を言ってるんだと思いながら、エルヴェはギルのつまった袋を取り出した。
「ほら、これが昨日話した報酬だ。前払いだ。貰ってほしい。」
ギルを間近に出されて、ミタルポタルの心は明らかに動かされたようだった。
「でも……」
もう一押しだと、エルヴェは金額を上乗せしようとしたが、その前にジョエルに先を越された。
586 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:16:02 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物23
ジョエルが差し出したのは、エルヴェの提示した金額の、倍のギルがつまった布袋だった。
中を覗き込んであっけにとられるミタルポタル。
「……頼む、大事なことなんだ。このとおりだ。」
そう云い、ジョエルは深々と頭を下げた。異種族に頭を下げることなどないと思っていた
エルヴァーンが、目のまえで自分に頭を下げている。
ミタルポタルは、この件には何か深い事情がからんでいることを察した。
(わけありか……、仕方ないな。こういうのに弱いんだよな〜僕、)
「わかったよ、やってみる。あそこのテラスだね。」
ミタルポタルは頷いた。もちろん、ギルの詰まった袋はふたつともしっかり受取って、鞄
に詰め込んでいたが……。
「恩に着る。」
これだけの金額をもらって恩にきせるつもりなんかないよ、と思いながらミタルポタルは
ペットの赤い鳥を呼んだ。
「まだ、子供だけど、こっちの方が警戒されないはずだよ」
ふたりは頷いて、パールを手渡した。ミタルポタルは小鳥にパールをくわえさせると、何
かを耳打ちした。獣を使う合図のようなものだ。やっという掛け声とともに、小鳥は主人の
手を離れ、空へと舞い上がった。
587 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:17:31 ID:jIpk9KVZ
●ハロウィンの贈り物24
あちこちの木々に留まりながら、テラスへと近づいていく。見ているものに違和感を感じさせ
ない上手いやり方だった。このタルタル、存外こんなことをするのは、初めてではないなと確信
しながら、エルヴェは小鳥の軌跡を見守った。
ようやくテラスへとたどり着くと、小鳥はちょんちょんと跳ねながら手摺りから降りて、口に
くわえたパールを落とした。
「よし、上手くいったようだ!」
注意深くテラスを見ていたジョエルが声を上げる。小鳥は目的を遂げると、来たときは反対側
に飛び去り、ずいぶん迂回してまた戻ってきた。
「よしよし、よくやったぞ。」
ミタルポタルは手に小鳥を留まらせると、にこにこと頭を撫でてやる。
「おい、エルヴェ、彼女が出てきたぞ!」
三人は、ジョエルのその言葉に一斉にテラスの方を見た。
588 :
既にその名前は使われています:05/01/15 21:18:15 ID:c8jp8RYo
こんな事言っちゃなんだが。
あんまり連続投稿すんのはよくねーぞ。
あんまり長いと、他に発言したい奴が出来ないからな。
HAHAHAHA
589 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:21:56 ID:jIpk9KVZ
ごめんなさい、ちょっと長いですね。
一応完成してるんだけど、たぶん全部で40レス分くらいありそうなので
一回の分量はこの辺にしときます。^^;
なげぇよ、と言わず、読んでもらえるとうれしいです。
590 :
既にその名前は使われています:05/01/15 21:24:36 ID:c8jp8RYo
OK 俺も口悪く言って正直スマンカッタ。
一応、投稿する前に●●回あります。
とか宣言しとくと良いかもな。
591 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/15 21:32:55 ID:jIpk9KVZ
>>590 いやいや、自分もちょっと調子に乗って貼りすぎかなと思ってたから。
つぎから一度に貼る量は7〜9レス分を超えないよう気をつけるよ。
592 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/15 21:33:48 ID:chPKaSVi
あせらしちゃいけない、でも先が読みたい、なんともレスしにくい心持ち。
正直、悲運の主人公の行く末が気になるものです。楽しみにしてます。
593 :
既にその名前は使われています:05/01/16 00:09:12 ID:tZCH94/F
>>570 私も投げっぱなしだw
続き書くべきなのかな。
594 :
既にその名前は使われています:05/01/16 00:15:32 ID:VZsWrQo8
あと何十スレ分もアップ予定があるなら、
自分が今書いても埋もれるだけだから。
そんな意味で、アップできるものならしておいてほしい
気持ちもあったりしますが。
595 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/16 00:20:51 ID:sagQq2Bi
じゃ、二日に7レスぐらいならいいのかな。
一度に大量に貼るのは心苦しいし。
ご迷惑おかけします。m(_ _;)m
596 :
サポ死 ◆9Ce54OonTI :05/01/16 00:24:17 ID:52DyIv/J
僕は神山満月ちゃん
597 :
既にその名前は使われています:05/01/16 06:28:30 ID:OnUHzNkf
あげ
598 :
既にその名前は使われています:05/01/16 06:54:12 ID:EYISYGQE
あー、なんか俺も書きたくなってきた。
もう引退してる身でプロマとか解んないけど考えてみるかな。
599 :
卑しき血流れず 1/8:05/01/16 11:35:42 ID:VZsWrQo8
「夢の時間が終われば、夢は消えるの」
冒険者に配り回った赤い帽子を自ら脱いで、スマイルブリンガーは
その仕事を終えた。
バストゥーク商業区の噴水を覆う、白亜の天蓋。それは風に吹かれるたび、
雪の幻を周囲に舞い散らせる。
スマイルブリンガーは噴水の縁に腰掛けて、白銀の幻をひとり浴びていた。
「子供におもちゃを配るスマイルブリンガー役は今日で終わりさ。
やっと、冒険に戻れる」
青い目をした彼女は、傷だらけの鎧を着た、どこにでもいる冒険者だった。
「だからね。星芒祭は続くけど、スマイルブリンガーは夜空へ還ったの。
悪いね。もう冒険者に配ってほしいプレゼントはないのさ」
「わかってる。
あなたをねぎらいに来たのよ、スマイルブリンガー」
え?と疑問符を浮かべた女に、私はドリンクとジンジャークッキーを渡した。
子供にプレゼントを渡すたび、赤い帽子の中からこぼれ落ちるクッキー。
スマイルブリンガー達の疲れを癒したのは、いつもこの小さなお菓子だった。
「お疲れさま、スマイルブリンガー。いい星芒祭だった」
「あんたもね、冒険者。……それと、子供に夢を配った全ての冒険者に」
乾杯の心地よい音が、商業区の噴水広場に響く。
私のリンクパールが懐でコールを受けたのは、その直後だった。
600 :
卑しき血流れず 2/8:05/01/16 11:36:36 ID:VZsWrQo8
鮮血を浴びた松明が、黒煙を上げて土壁を照らしている。
頼りない明かりが延ばす影と、通路に転がる死体の区別がつかない。
岩を掘り、土を固めて作られた城塞に、死はこんなにもありふれている。
「プレゼント配りに熱中してる間に、戦争みたいな事になってたなんて」
血だまりを避けて歩く私のひとりごとに、胸元のリンクパールが震えた。
『なに言ってんですか、シェリーさんっ。
冒険者なら戦況から目を離さないでください。
獣人と人類との戦争、まだ終わってないんですから』
「確か、ウィンダスはヤグートと休戦していたはずよね。食料援助とかして。
……冷戦の下で、獣人は攻め入る隙をうかがっていたか」
壁へ張りつけにされたヤグートの死体。矛先が折れた槍など、破損した武器が
ヤグートの額を胸を腰を……全身を貫き、土壁に縫いつけている。
とどめとばかりに放たれた魔法は、死体を壁もろとも炭化させていた。
「つもり積もった恨みを隠す必要はないって言っても……」
冷戦の下にあったウィンダスの戦意から足早に離れつつ、リンクパールに問う。
「で、シスター。
あなたの戦隊と合流するのは城塞の最奥部でいいの?」
『いえ。まだそこまで進んでいないんです。
小部屋に困ったものを見つけて、足止めされて……』
リンクパール越しに、相棒の声と重なって、言い争う男女の声が聞こえた。
601 :
卑しき血流れず 2/8:05/01/16 11:38:01 ID:VZsWrQo8
「獣人の子供を殺す?この子たちに責任はないのよ」
白魔道士の、悲鳴にも似た声がホコリっぽい場所に響いた。
壁を埋める棚には、人の頭ほどはある卵が並んでいる。羽毛に抱かれ、
孵化を待つそれは、ヤグートの卵に違いなかった。
否、もう孵化は始まっている。白魔道士にかばわれ、殻をやぶったそれは
くちばしを開き、金属質の鳴き声を上げている。
卵から還った雛は両手で虚空を掴み、鳴く。その様は大きな雛鳥と
呼ぶには禍々しすぎた。
「斬らせろ。子供だろうが何だろうが、そいつは敵だ」
卵をかばう白魔道士と対峙するのは、アーティファクトを着たナイトだった。
ナイトの言葉が、この部屋で成り行きを見守る兵の意見を代弁している。
白魔道士の感傷につき合う意味はない。雛とはいえ、
見過ごせば反逆罪に問われる可能性だってある。
それでも、白魔道士のすがるような視線に抵抗できる者は少ない。
戦うべき相手は、武器を手にした獣人のみ。敵とはいえ、子供を
手にかけるのはためらわれる……休息を挟めば、そんな意見を
受け入れるほどに冒険者の頭は冷えたのか。
「シェリーさん……」
腕にしがみついてきたミスラの耳元に、私は口を寄せた。
「下手に口を挟まないほうがいいわ、シスター。今は、ね」
602 :
卑しき血流れず 2/8:05/01/16 11:38:45 ID:VZsWrQo8
世界を渡る冒険者の軍勢に、獣人が勝るのは数だけだった。
魔法に勝る魔法を、力に勝る回復力を持つ冒険者にとって、
獣人はもう敵ではない。
冒険者の軍勢は城塞を駆け抜け、刃向かう全てを薙ぎ払った。
「全てを、ね」
勝利に酔う冒険者の輪から抜け、私は城塞の奥深くへ戻ってきた。
細かな羽毛が舞う小部屋。この階層中に響く雛の鳴き声は、
時間が経つほどに強く、力強く存在感を増していくように思える。
「雛鳥は全て殺したなんて虚偽報告、高ランクの冒険者が認めたなんて」
信じられない。ヤグートの死体がそこら中に打ち捨てられた回廊を抜け、
私は雛鳥の小部屋に飛び込んだ。ついてきた相棒が、怪訝そうに聞いてくる。
「シェリーさん、どうしてまたここに戻って来るんです」
「決まってるでしょ。責任を果たすのよ、冒険者として」
小部屋に留まっていた兵士が、事情を知らない冒険者に口裏を
合わせるよう説得している。彼を脇目に、私は卵が並ぶ棚を見上げた。
「シェリーさん、まさか」
ウソですよね、と周囲をうかがいながら言ったシスターに、
私は片手剣を抜いて応えた。
「ここは戦場よ。
腰に短剣ぶらさげて、あなたは何をしに来たの、シスター」
603 :
卑しき血流れず 5/8:05/01/16 11:39:36 ID:VZsWrQo8
「見逃したヤグートの子供は、誰が育てるの?
この戦争で生き残ったヤグートが子供に語るのは、人類への復讐よ」
戦争は、私たちの両親が生まれるより以前から続いている。
停戦状態の中でも、獣人が人を襲う日常は当然のようにあった。
「獣人の子供に責任はない?だからどうだっていうの。
白魔道士の主張に意味はないわ。子供が人を襲う獣へ成長する流れを
変えようともせず、何の責任も追わない主張なんて。
それこそ子供のたわごとだわ」
「それは……違うよ、シェリーさん」
シスターは泣きそうな顔で、私を真正面から見つめている。
「ウィンダスはヤグートとの共存を望んでます。
だからヤグートに食料を送ってるし、院の導師だって」
「獣人が食料援助に感謝したなんて話、聞いたことがある?」
小部屋の入り口に詰めかけていた冒険者たちへ、私は問いかけた。
「サンドリアにしても、ウィンダスと似たようなものよ。
オークに拉致された子供の救出が、冒険者の仕事になっているの」
北の砦に設置された攻城兵器は、サンドリアを砕く瞬間を今も待っている。
勝敗の二択しかない戦争を望む敵。こちらが差し出した和平の手は
斬り捨てられて、今日の戦いがある。
「敵の未来を奪うのが戦争よ。戦いが始まった今でも違うというの?」
604 :
卑しき血流れず 6/8:05/01/16 11:40:35 ID:VZsWrQo8
「違います」
静かに。しかし雛鳥の鳴き声を遮る力強さで、シスターは沈黙を破った。
「獣人との共存を望んだ人たちの努力が全部ムダになります。
ここで……シェリーさんがヤグートの子供を殺したら」
獣人と、いつか手を握りあえる。戦火が消えない歴史の裏には
平和を望む人々の努力があったと、シスターは言う。
「それに、この戦争に勝っても意味はありません。
遙か遠くにある獣人の故郷から本隊が押し寄せたら、
私たちに勝ち目はないんですから」
戦いは終わらない。一時的な勝利で得られるのは、一時的な平穏。
永遠の和平が難しいなら、せめてかりそめの平和を。人と獣人が
共存する夢を見続けられる日常の先に、希望を見て生きたい。
シスターの主張に、小部屋に留まっていた兵も、事情をやっと
飲み込んだ冒険者たちも難しい顔をしている。
戦いは終わらない。戦いの未来はここにいるヤグートの子供が紡ぐ。
雛鳥を兵士に育てる敵の現状。それはいつか変わると、
シスターは信じている。同じ未来を何人が信じられるだろう。
戦いの未来を紡ぐのが敵の子供なら、共存の未来を紡ぐのも彼らだと。
「だから、子供たちを見逃してください。
シェリーさん、お願いですから剣を収めて」
605 :
卑しき血流れず 7/8:05/01/16 11:41:58 ID:VZsWrQo8
「答えになってないわ、シスター。
それは王者の決断よ」
ミスラの頼りない希望を、私は斬って捨てた。
「時代が変わると言えるのは、時代を変えられる者だけ。
成長したヤグートに襲われる人たちの責任を、あなたは全て
背負えるというの?」
それこそ、白魔道士の無責任な情けと変わらない。彼女がここにいない
事が、獣人の子供を殺したくない、その場限りのきれい事を裏付けている。
思えば、私とシスターが小部屋の中央で対峙しているのは、
半日前に白魔道士とナイトが争っていたのと同じ構図だった。
「ナイトは命を護るジョブのはずです」
「命を護るために振るう剣だってあるわ、シスター」
いつだったか、ゴブリンと話したことを思い出す。私が鍛える剣は、
誰かを護るためにある。せめて、この手が届く限りの人々を。
「だったら、だったら。シェリーさんはどうするつもりなんですかっ。
子供をその手で……殺めて」
大きな瞳に涙を溜めたシスターの肩は震え、言葉は声にならない。
私は相棒との話を打ち切って、小部屋に留まっていた兵を呼んだ。
「悪いけど、サンドリアの戦隊長にこの部屋のことを知らせて。
ランク10の私の名前で……あの白魔道士の名前は伏せて、ね」
606 :
卑しき血流れず 8/8:05/01/16 11:42:59 ID:VZsWrQo8
バストゥーク商業区の噴水を覆う白亜の天蓋は、いつの間にか
取り外されていた。
噴水広場を、おもちゃを抱いた子供たちが駆け回っている。
街を囲む防壁の外で起こった戦争を、彼らが知るのはいつだろう。
「聞いたよ、あんたの噂」
噴水の縁で休んでいた私を見つけたのは、青い目の女。スマイル
ブリンガーだった彼女は、前に会った時より鎧を汚している。
「見逃すはずの敵を、上に報告したんだってね」
私が失った相棒の穴を埋めるように、女は隣に座ってきた。
嫌悪に似た違和感を、私は苦笑で隠した。
「何よ。あなたも私が間違ってるっていうの?」
「そうじゃないさ。
きっと間違ってない。誰も。目指してる方向は同じだからね。
ただ、そこまでの道筋が違うだけさ」
獣人の子供の運命を、私はサンドリアに預けた。ウィンダスなら、
獣人の子供を魔法実験か交渉の道具に使ってしまうだろうから。
私の国が望む獣人との未来。それを確かめるいい機会だと思った。
「きっといつか、みんな同じ場所で笑えるさ。
だから、後悔しないで」
わかっている。選んだ道を後悔しない。それは私の責任だった。
607 :
既にその名前は使われています:05/01/16 12:18:20 ID:sagQq2Bi
おお、「卑しき血流れず」、重い話を読ませるね。
文章からして、デュナミスの話を書いた人かな、おもしろかったです。
>>598 そんな人におすすめなのが、公式設定資料集Life in Van'diel。
結構、お話つくるのに使えるよ。
608 :
既にその名前は使われています:05/01/16 15:13:53 ID:e8Eutp7r
携帯唐揚げ
(>_<)アク禁でネタ投入出来ないぃ
609 :
既にその名前は使われています:05/01/16 17:49:22 ID:7qmXQFF2
あの公式設定資料集はいいね。
第二次コンシュタット会戦の詳細とか、マジでおもしろかった。
610 :
既にその名前は使われています:05/01/16 17:55:34 ID:7qmXQFF2
お、アク禁切れてた。
>卑しき〜
文章メチャうまいっすね。おもしろかった。
まとめてで激しく失礼なんだが、他の連載中の作品も、続き期待してますんで、頑張って下さいな。
アク禁でない限り感想書くので。
611 :
既にその名前は使われています:05/01/16 18:42:42 ID:EYISYGQE
>>607 おー、今かねないから買えないorz
でも一応考えてみるよ。
でもSSとはいえないほど長くなりそうなんだよなぁ…
まあ、出来たらここにうpします。
612 :
卑しき血流れず:05/01/16 23:34:00 ID:VZsWrQo8
読んで頂いて感謝です。
コミック版FF11では、
かわいそうだから、とヤグートの子供を見逃した
白魔道士に、反対したナイトが押し切られる
展開なのですが……どうなのだろうと。
『あるオーク砦での攻略戦にて』
「あぁッ!ヘリウス!ヘリウスではないか!」
見間違いではない。今まさに、オークの槍に貫かれて倒れたのは、旧友のヘリウスだ。
「隊長ッ!お下がり下さい!前に出られては!」
「うるさい!俺がオークなどに殺られると思うかッ!!」
その言葉通りオークの巨体を二度三度薙ぎ払い、ようやく旧友の元に辿り着く。
慌てて抱き起こすが、既に虫の息だ……
「う……あ……隊長殿……」
「隊長殿などと言うな。ヘリウス、救護班ならすぐやってくるぞ、案ずるな!」
「隊長……カルス……本当に立派になったな……」
「喋るなといってる!」
つたない魔法をも使い治療を試みようとした。こうなっては無駄だと判っていても。
「お前は正に……俺たち仲間の……誇り……カルス隊長と……サンドリアに……栄光……」
もはや、周囲にオークはおらず、我が軍の破壊鎚の音ばかりが響き渡っていた。
「隊長……」
気の毒そうに俺の側近が声を掛ける。俺は、あふれる涙を拭こうともせず絶叫した。
「総員総攻撃ッ!砦の門は破られたぞォーッ!」
この戦いにて『きわめて少ない犠牲でオーク砦を攻略した』功績が称えられサンドリア
国王直々に表彰されたのは、異例の若さで出世を遂げたカルス=ディヌス隊長であった。
「あぁッ」
また、夢か……
「どうしたの?ずいぶんうなされていましたね。」
「ああ、まだ外は暗いな。今日は、閲兵式だったかな……」
「大声で叫んでいましたよ?国王陛下まで起こしてしまいそうなくらい。」
「構わんさ。国王陛下直々に、だと?ハッ!陛下なんぞ糞ッ食らえだ……
いや、すまん。起こして悪かったな。ついでに何か飲むものはないか?」
「ホットミルクを持ってきました。冷たい物がよろしいかしら?」
「ミルク?あ、あぁ、用意が良いな……あれ?お前誰だ!」
「え?私をお忘れ?」
……あぁっ!!
「せ、先生!!」
「うふふふッもう少しで彼女の名前が聞き出せたのに残念ですわ。ここはドラギーユ城
では無いし、私はあなたの恋しい人ではありませんよ?」
「う……あ……お恥ずかしい。」
「恥を恐れては誰とも仲良くはなれません。さ、ミルクをお上がり。落ち着きますよ。」
「す、済みません。起こしてしまって。」
「いいんですよ。あんまり酷いようならサイレスかけちゃいますからね。」
いや奥さん、スリプルにしてくれ。うなされたまんまかよ……
だから、魔法を習いにウィンダスまでやってきたのか?
いや、ヘリウスのあの状態、どれほどの高位白魔導師が駆けつけたところで、どうにも
ならなかっただろう。
味方の全軍を一気に蘇らせるような魔法など、この世に存在しないことはウィンダスに
来る前から知っている……いや、それは素人の浅知恵かな?
(せんせー、ナイトかめん、ねちゃったよー?)
(シーッそれ言っちゃダメ!)
我が身の苦痛、戦友の死、仲間のと離別、幾多の苦難が我が身に降りかかろうとも、
国王陛下並びにサンドリア国民に忠誠を誓い、誇り有る騎士の使命を全うし……
俺は……既に、陛下の忠実なる騎士では無くなったのかも知れない。
国を去ることを告げ、戦友や上官、最後には陛下からも引き留められたが、考えを変え
ることなく、サンドリアとの別離を証明する印状に御印が押されるのを、冷ややかな目
で見ていた俺。
俺は、逃げてきたのかな?……いや、そうじゃなく……
(それじゃクミミ?いち、にの、さん)
「おきろーーっっ!!」(きぃ〜〜ん)
「おぃ!耳が痛いって……う、うわわ!ご、ごめんなさいっ!!」
で、職員室である。先生は、なにやら書類に筆を走らせながら、俺に問いかけてくる。
「遠慮は無用と言ったはず。一人では何にも出来ないことぐらい、あなたほどの人なら
ご存じでしょう?悩みを打ち明けてくれないなら私たちも手の出しようがありません。」
「あ、ああ、心配かけて申し訳ないです。」
「また、そんな野暮なことを言う。で?あなたの好きな人って誰?クミミ?私はダメよ。
夫も娘も居る身だし。」
「先生、からかわないでくださいよ。」
そろそろ俺からは、相手が可愛らしいだけのタルタル族という意識が抜けつつある。
が、タルタル族の女性を対象とするには……どうもなぁ……
「幾多の戦いを重ねてしまうと、陥りがちな悩み事です。友人との死別を思い出して……」
「そんなに簡単に言ってしまっては詰まらないわ。立場を捨てて国を出てしまうほどの悩
み。あなたの問題は非常に深いところにあると思うけど……」
「はぁ……」
「私も印状を拝見したけど、あれは簡単に貰える物なのですか?私は残念ながら国王陛下
のことを存じ上げないけど、陛下は愛情を込めて、あなたを送り出したのではないかと。
私の空想ですが、そんな気がしてなりません。」
「……」
「あと、傍らで寝ている女性の名前。忘れちゃダメよ?私なら、蹴っ飛ばしてる所だわ。」
「き、気をつけます……」
可愛らしいタルタル女性、でも言うことはキツイ。
愛情、ねぇ……
入隊した若い兵士達に尋ねれば、目を輝かして王国に対する忠誠を語る。
その中で、はたして何人の兵士が陛下の姿を拝見することができるだろうか。
ましてや、言葉を交わすなど有りうるものではない。絶対的な、崇高な存在。
親しみ、愛情などとは縁遠い、もはや現人神と称されても不思議ではない。
その言葉も交わさぬ相手からの命により、若い兵士や戦友達を死に追いやった俺……
また先生は口を開いた。
「ウィンダスでもっとも孤独な存在……それは星の神子様なんじゃないかと思うのです。」
「……」
俺は黙って頭を下げて、職員室から出て行った。
618 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/17 00:11:58 ID:t5cLnx+q
えっと、アク禁が目出度く解けたので貼らせて頂きました。
私の場合、少々の知識で妄想広げまくりなので、
意識の食い違いがあったら御免なさい。
別の世界だと思って頂いても構いません……
619 :
既にその名前は使われています:05/01/17 06:08:57 ID:tYq3o+7f
あげ
「そして、その翌年に大導師クンタタカ=テンタタカの手により発表された詠唱法は、
従来では考えられないほどの……」
歴史の授業。こういうのは俺は得意だ。
既に船を漕いでいるクラスメートも居るのだが、伝統と歴史に関しては興味津々で
耳を傾けることが出来る。これも伝統有る王国生まれの特徴か。
どおぉ……ん どおぉ……ん
ん?何事だ!?……これは、足音?
「うわぁっっ!」
ぬーっと長い首を伸ばして覗き込んだのは、間の抜けた顔のダルメルだった。
「はいはーい、どうどう……」
どおぉ……ん どおぉ……ん どおぉ……ん
獣使いの手慣れた掛け声で、ダルメルは通り過ぎていく。
あいつら、本当にやりやがった……
「せ、先生、行ってきます。あ、えーと、急用が、その」
マタタ先生は、苦笑いでウンウンとうなずき返す。
(……おい、まさか)
(まちがいないっ!あれこそ、ナイトかめんの『しゅつどうようせい』だ!)
俺は、ざわつくクラスメートを後にして、三段飛ばしで階段を駆け下りていった。
既に、連邦政府関係者の極一部には秘密を明かしてあったのだ。
「それでは秘密の暗号を作りましょう。差し障りのない範囲で、お手伝いして頂ければ
幸いです。勿論、一般兵士やウィンダス国民には絶対の国家機密として秘密を保持い
たします。……よし、これなら絶対ばれませんよ、大丈夫。」
戦闘魔導団の団長ポクト=ポポトは、楽しそうに語ったが……
まさか本当に実行するとはなぁ……
急いで装備を身につけて、俺は天の塔に向かった。
「あ、ナイト仮面様。ようこそおいでなのです。こちらに案内するのです。」
独特の口調で受け答える受付嬢に連れられて、長い階段を上っていく。
(よろしいですかな?我々が秘密を知っていること自体、絶対に悟られないように)
(は?はぁ……)
(極一部の者しか知らないことになってますので、くれぐれも……お、来ましたかな?)
「お待たせいたしました……あぁ、お前は!」
案内された待合室には、ほとんど俺と変わらぬ装備を着た女騎士が待っていた。
「初めてお目に掛かります。ご友人のカルス殿にお取り次ぎ願えませんか?ナイト仮面殿。」
ニッコリ笑って挨拶したのは、かつてサンドリア王国騎士団での部下にして戦友。
ヒュム女性のアリサであった。
どうやって秘密を明かして普段着に着替えてきたか、その説明は省くとして……
「大丈夫、安心して。サンドリア騎士の口は堅いんだから。」
「……頼むよ。絶対に知られちゃいけない秘密なんだ。」
(本ッ当に、ばれてないと思ってるのね?幸せな人。)
「それにしてもセンスのない名前ね。せめて、もうちょっと面白い名前付けた方が」
「うるさいなぁ。とっさに考えたから仕方ないだろ?」
そうして話をしながら、ゆっくりと水の区を歩いていたが、ゾロゾロと後を付けている
一団がある。クラスメートに……魔導団の兵士も混じってるな。
だから、ウィンダス軍の士気が甘いと言いたいところだ。
「素晴らしい……あの太もも、光り輝いている……」
「ねーねー、なんで、ふとももだしてるの?ナイトかめんとちがうよ?」
「痴れ者めッ!有り難いと思わないのかッ!」
「も、もうたまらん。俺、ちょっと体当たりしてくる。」
「馬鹿、止めろ!俺が先だ!」
「なんだよ、ふともものなにがそんなに」
「ふははは、大人にしか判らないことが、世の中には沢山あるのさっ」
聞こえてるぞ、お前ら……他種族に欲情してんじゃねぇよ……
だが、アリサは気分を害した様子もなく、にこやかに彼らの方へ手を振っていた。
「みんなから手紙を預かってきたわ。こんなに沢山。」
「あ、あぁ……有り難う」
「返事を書くまで此処にいるから、ゆっくり読んで。それから、これ。」
箱を見ただけですぐ判る。ロランベリーの年代物だ。
「これは……陛下から、直々に頂いた物よ。驚いたわ、チョコボ厩舎でみんなに見送りを
受けている最中に突然おいでになったの。飼育員は気絶寸前。」
「……そうか。」
複雑な心境で、箱をじっと眺めていた。
「で、どう?ここの暮らしは。正直、心配してたんだけど。」
「ああ、大丈夫だ。此処の人達は良い人ばかりだし。」
心配するのも無理はない。彼女にとって他人事では無いのだ。
彼女は、ヒュムの身でありながらエルヴァーンに混じって騎士団に所属している。
親を失いサンドリアの知人しか頼る他はなく、必死で自分の場所を勝ち取るために戦い
続けた彼女。人なつこいタルタルと異なり誇り高いエルヴァーン社会では、その苦労は
俺と比べられる物ではないのだが。
「あなたは偉いわ。素晴らしい。」
「え、何が?」
「ナイト仮面なんて馬鹿やってみせて、捨て身で子供達や此処の人達に融け込んでいる。
私は……ただ、がむしゃらに突っ走るしか知らなかった。」
馬鹿とはなんだよ、馬鹿とは。
「いや、お前の方が大変だったろうに。状況はまるで違う。」
「あなたやみんなが支えてくれたからね。それにしても部下達に話したら泣いて喜ぶわよ?
昔のあなたには考えられない。」
「……頼むよ、絶対に」
「はいはい、口は堅いって言ったでしょ?」
その夜、マタタ先生の計らいで、彼女も家に寝泊まりすることになった。
空き部屋は有るのだが、食卓はもう満杯。古い戸棚を移動させるなどの大騒ぎ。
戸棚のあった場所は口では言えないような状態で、掃除に一苦労だった。
百年以上は動かして無いという。流石はウィンダス……
そしてタママ先生の夫、ドンタ=タンタ氏による例によっての大歓迎。
「おお、カルス君!嫁さんを迎えたからには、これで君も安泰だな!がっはっは」
「冗談はよしてくださいな。私にも男を見る目はありましてよ?」
先生まで調子を合わせる。
「あら残念ね。クミミ?ライバルが一人減ったわよ。」
「いやいや、タルタル女じゃ小さすぎるからなぁ。がっはっはっはっは」
親父さん、言うことが微妙にエロイ……
数日間、彼女は俺や子供達の案内でウィンダス観光を済ませ、書き上げた俺の返事を
携えて、サンドリアへと帰って行った。
そして彼女が去った後、深夜に一人で星の降る丘の上へと向い、送られてきたロラン
ベリーを飲みながら俺は物思いにふけった。
いまだ、悩みは俺の中から消え去ることなく残っている。
だが、胸の中にあるモヤモヤしたものが、少しずつ晴れていくような気がしていた。
手紙に書かれていた戦友達の励まし、部下達の熱い思い、上官達の暖かい助言、
陛下から賜った故郷の酒……そして、彼女との再会。
もう例の夢に悩まされることもないだろう。
今まで、何故か起こらなかった『帰りたい』という思いが沸々と沸いてきたのだから。
……などという、甘い考えは数ヶ月後、見事に打ち砕かれた。
「わーはっはっはっはっはーッ!!ナイト仮面ブラック!只今見参ッ!!」
悪友の暗黒騎士が、第二便として手紙を携えて現れたのだ。
量は三倍を軽く超え、宛先は全て「ナイト仮面様」
あのアマ、喋りやがったなぁ……帰りたくねぇよゥ……
626 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/17 06:32:22 ID:t5cLnx+q
連投すみません。続きが出来てたので置いときます。
>>626 しんみりしながら読み進め、最後の「ナイト仮面ブラック」で吹いた!
good job 通り越して、god job!
628 :
既にその名前は使われています:05/01/17 17:56:55 ID:Gvw9U3kB
〜竜の錬金術師 第7話 記憶のアニマ〜
ボロボロになりながらも、白髪の少女を抱えて竜騎士は錬金ギルドに帰っていた。
「変なの拾ってくるでねぇでヨ」
叱りを受けた竜騎士であったが、事情を説明するとアジマはそれ以上何も言わなかった。
この子が真竜の子だった事、練成をして少女の姿に変えた事、暗黒騎士の事・・・
辛い事ばかりだった為か、意識を取り戻した後も少女は数日経っても泣き続けるばかりであった。
体に慣れていない事もあり、うまく歩く事もできないし言葉を発する事もできない。
困り果てていた竜騎士であったが、そんな時アジマはアニマ合成について語り始めた。
本来は意思の力を具現化して、アイテムにその力を吹き込む練成なのだが、
うまく使えば悲しみの記憶だけを消す事が出来るかもしれない・・・
ただし、失敗をすると何を破壊するのか分からない危険な練成でもある・・・と。
再び竜騎士は悩み込んでしまった・・そして泣き続ける少女を見つめる竜騎士。
数日後、ガルカの子供達と元気に外で走り回って遊ぶ少女の姿があった。
その首にはペンダントとなった記憶のアニマが提げられていた。
629 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/17 20:54:37 ID:tYq3o+7f
>>627 ⊃дT)ありがと
こんな感想貰えた私はめっちゃくちゃ幸せものです
もう少し続きを書いてみようかと思うけど、しばらく書く暇ないし規制中だし
それまでスレあるといいなぁ
630 :
既にその名前は使われています:05/01/17 22:44:16 ID:E0tJZBEZ
>>626 ただのライトファンタジーではないところを感じました。
軽い読み口なのにそれでいて、根底には深いテーマがある・・・
でも、ナイト仮面・・・よすぎw
631 :
既にその名前は使われています:05/01/18 01:40:08 ID:LCWMWHVJ
アゲダマン
632 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:01:51 ID:VRD+CJhJ
今までのあらすじ↓
王立騎士団の剣士ブランマーニュはダボイでの任務のおり、行方不明に。
消息不明のまま、ブランマーニュの恋人、ミリアムはバストゥークの富豪
マーティン・ルゴーとの縁談を、父に勝手に進められていた。
数日後、ブランマーニュは帰還するが、右足切断を余儀なくされ、
王立騎士団を除隊、騎士団で立身出世するという夢を失ってしまう。
騎士団で、ともに夢を語ったブランマーニュの親友エルヴェとジョエルは、
失意の友人を見ていられず、ブランマーニュ帰還の知らせにも返事を
返さないミリアムに会いにバストゥークへ。
しかし、屋敷にも入れず、さらに他の男との縁談の噂を聞き、困惑してしまう。
ふたりは獣使いの冒険者ミタルポタルの助けを借りて、リンクパールを
ミリアムの屋敷のテラスへと運んだ。
633 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:05:00 ID:VRD+CJhJ
●ハロウィンの贈り物25/41
小鳥の羽音のあと金属片の跳ねる音を聞いて、ミリアムはレースのカーテンを開け、テラスへ
と出た。小鳥の姿はすでに無く、バストゥークの空は、晴れやかに地平線まで伸びていた。
ブランマーニュから貰ったリンクパールをとり出すと両手で包み、祈るように口元に当てた。
「ブラン、生きていたら声を聞かせて、」
何度もその言葉を囁いた。外の方がよく伝わるかもしれないと思い、最近ではテラスに出て、
水色のリンクパールに何度も彼の名前を囁いていた。しかし、返信がかえってきたことは一度も
なかった。
ため息をついて、空を見上げる。二羽の鳥が大空を横切っていくのが見えた。わたしも鳥になっ
て、彼を探しにいけたらいいのに、そう思いながら、もう一度水色の真珠に言葉を囁こうとした、
その時。自分の名前を呼ぶ、澄んだ声が聞こえてきた。
634 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:11:15 ID:VRD+CJhJ
●ハロウィンの贈り物26/41
「ブラン、」
ミリアムは思わず、リンクパールを耳にあてた。
違う、このパールから聞こえているわけではない。それに、彼の声とも違っている。
けれど、この声の主にミリアムは心当たりがあった。周囲を見回すと、テラスの隅に小さく
陽に反射して煌めく、白いリンクパールが落ちていた。
「ミリアム、聞こえますか、聞こえていたら、返事をして下さい。」
ミリアムは慌てて、そのパールを拾いあげ返事をした。
「エルヴェ、良かった。ずっと連絡を取りたかったの、」
ミリアムは懐かしい友人の声を聞いた嬉しさに、自分の声が上ずるの感じた。
パールの声の主は、話を続けた。
「ミリアム、そこのテラスから左手の、背の高い煙突のある家が見えますか、」
ミリアムはテラスの手摺りに寄りかかると、エルヴェの云った方角を見た。あった、背の
高い煙突。
635 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:17:49 ID:VRD+CJhJ
●ハロウィンの贈り物27/41
「その家の塀の横に、私たちはいます。ジョエルも一緒です。」
視線を下に降ろすと、ミリアムはエルヴェと、こちらに手を振っているジョエルの小さな
姿を見つけた。知らないタルタルの姿もあった。ミリアムは、心の許せる友達に会えて思わ
ず涙ぐんでいた。寂しさが消え、自然と心のうちから元気が湧いてくる。
「エルヴェ。……ブランは、ブランのことはわかりましたか、あれから知らせが全然こなくて……」
そして、息せききったように続けた。
ミリアムの語る話に、エルヴェは確信した。自分たちの知らせは、誰かに握り潰されてい
たようだ。その誰かとは、ミリアムの父親と考えて間違いないだろう。
合点がいったように、ジョエルと顔を見合わせたエルヴェは、静かで、それでいて力強く、
優しさのこもった声でミリアムに伝えた。
「ミリアム。ブランマーニュは生きています。」
636 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:19:09 ID:VRD+CJhJ
●ハロウィンの贈り物28/41
「ああ……、」
その言葉を聞いて、力が抜けたようにミリアムはテラスに座りこんだ。生きていて
くれた……。自然と頬に涙がつたうのを感じながら、自分にとって彼がどんなに大事
なのか、ミリアムはあらためて思い知らされた。
長い不安から開放されたミリアムに、エルヴェはブランマーニュのことをあますこ
となく伝え、そして、祈るように最後にこう付け加えた。
「お願いです……。あいつの力になって上げてください。」
エルヴェの言葉に、ミリアムは頷いた。その表情は力強く、先ほどまで不安に慄い
ていた少女の顔とは、まるで違っていた。
637 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:20:24 ID:VRD+CJhJ
●ハロウィンの贈り物29/41
ミリアムが落ち着くのを待って、エルヴェ達は自分たちの情報を交換した。ミリアムの
父が、マーティン・ルゴーという男とミリアムを結婚させたがっていることや、護衛兵士
の目が厳しく外へ出ることも困難なことなどを。
「でも、一度だけ外に出るチャンスがつくれるかもしれません。」
「それは、どういうことです、」
「ルゴー氏に、もうすぐ始まるハロウィンに誘われているのです。その時なら父も外へ出
ること許してくれると思います。ただ、護衛はかならずつくと思います……」
しばし考えた後、エルヴェは応えた。
「……分かりました。詳細な計画は私たちの方で考えます。ミリアムは、不本意でしょう
がルゴー氏とハロウィンに出られるよう、お願いできますか、」
エルヴェらは、ミリアムと約束を交わし、詳しくはまた後で連絡すると残して、ひとま
ず宿屋へと戻った。
638 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:22:10 ID:VRD+CJhJ
●ハロウィンの贈り物30/41
鉱山区に戻ると、エルヴェ達は今後の計画を練るまえに、腹ごなしとお礼を兼ねてミタル
ポタルを食事に誘った。
「ほんとうに感謝している。なんとか用件が果たせたのは貴殿のおかげだ。」
エルヴェはミタルポタルに改めてお礼を云った。
「いやいや、そうかしこまわれると困っちゃうけど……、これからどうするつもりなの、」
ミタルポタルは、ダルメルステーキを頬張りながら、尋ねた。
その質問にふたりは黙っていた。
「よかったらさ、僕も、」
言葉の途中で、エルヴェがミタルポタルの言葉を制するように、静かに右手を差し上げた。
「いや、この先は私たちだけでやり遂げるつもりだ。ここからは、失敗すれば唯では済まない。」
かりにも、富豪の娘を攫おうというのだから、ジョエルもその言葉に頷く。
639 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/18 02:23:59 ID:VRD+CJhJ
●ハロウィンの贈り物31/41
「唯ではすまないって……。それなら、なおのこと手助けが必要なんじゃ。ぼくだったら
手伝ってもかまわないんだよ。乗り掛かった船だしさ。……最初は尻込みしちゃったけど、
事情を知っちゃうとさ。あ、追加のお金が欲しいとかじゃないよ。お礼はもうたんまりも
らってるし」
そう云うミタルポタルに、エルヴェは首を振った。
「その気持ちだけで充分だよ、ありがとう。」
そして、優しく微笑み、続けた。
「君という友人を持てたことを、私たちは心から誇りに思うよ。」
そう云ったエルヴェの言葉からは、偽りのない感謝の気持ちが伝わってきた。
覚悟を決めた男たちのまえで、ミタルポタルはそれ以上、もう何も言えなかった。
640 :
ぱっしょーね ◆LBzBg/yd5c :05/01/18 04:47:51 ID:HWmnsPdO
◆THE BOSS◆ 1−1
あの日、俺はいつものようにジュノ下層で玉出し放置6時間の憂き目にあっていたんだ。
”レベル上げ……クフタル……どうだ?”
詩人なんかなら無視確定の殺伐としたtell。俺はそんなもん気にしない。レベル上げに連れて行ってくれるならオール外人も無言誘いもオーケーさ。人は俺を竜騎士またはガリのJabuと呼ぶ。
「はい!ぜひおねがいします!!」
そしてその日が、俺がボスと初めて逢った記念すべき日だった。
641 :
ぱっしょーね ◆LBzBg/yd5c :05/01/18 04:49:01 ID:HWmnsPdO
◆THE BOSS◆ 1−2
ボスはガルカの詩人だった。漆黒の遮光眼鏡の上に眩しく輝くハゲ頭。
ちなみにハゲ頭というのはガルカにとっては褒め言葉だ。たぶんそのはずだ。ネタによく利用されるし。
アーティファクトも装備できるレベルだが、あのキノコ帽子で自慢のハゲを隠すようなことはせず、
いつも遮光眼鏡にその厳格な双眸を隠している。能ある鷹は爪を隠すという。
ちなみに俺は範囲攻撃が来そうな時はすかさずMikan(相棒の子竜)を送還している、能あるガリだ。
“ギーブルは……いねえな……”
話し口は高○健とか渡○也といった渋い男のそれである。
それがボスの男の魅力のひとつでもある。
642 :
既にその名前は使われています:05/01/18 04:50:27 ID:HWmnsPdO
◆THE BOSS◆ 1−3
“Darling darling stand by me……”
話し口は和製シブ系だが、ボスの歌のマクロには洋楽が多かった。
選曲もメジャーなものからマニアックなものまで多様だ。
ちなみに前述のマクロは言うまでもなく映画『スタンド・バイ・ミー』の主題歌だ。
「かっけーっす! 渋いっす! いいっすよねスタンド・バイ・ミー!」
するとボスはこう答えた。
“いいよな……スピルバーグ……”
ボスッ! あれはキング原作ッ!
“オーシャンズ12も……楽しみだなおい……”
惜しいぜボスッ! あれはソダーバーグッ!
“キャサリン・世田=ジョーンズ……ありゃいい女だ……”
一気に胡散臭いハーフの芸能人になっちまったぜボスッ!
643 :
既にその名前は使われています:05/01/18 04:51:22 ID:HWmnsPdO
◆THE BOSS◆ 1−4
うっかりやっちまった。相棒のMikanが弱っちまってるところに
カニのバブルシャワー。Mikanが墜落しちまった。
コールワイバーン再使用まではあと1時間ある……。
「スピリンか送還くらいしろっての。ただでさえガリで時給落ちてる上Mikanなしかよ」
「す、すいません……」
パーティメンバーからの抗議と罵声。俺は心底へこんだ。
それまで黙って見守っていたボスが口を開いた。
“Mikanがいなくなったら……お前がMikanの分も頑張ればいいさ……”
一生ついてくぜボスッ!
“お前らも根性見せろ……トカゲ一匹いなくなったくれえでなんだ、その慌てようは……”
トカゲはないぜボスッ!
644 :
既にその名前は使われています:05/01/18 04:52:18 ID:HWmnsPdO
狩りも終わりテレポルテ。ラバオで俺はボスに裏tellした。
「あ、あの……これからボスと呼ばせてください!」
これっきり別れるなんて俺にゃあ耐えられねえ! 男が男に惚れるってのは、こういう事を言うのかもな!
ボスは黙って腰から丸い宝石を取り出した。リンクパールだ。
“俺のリンクシェルだ……つけたきゃつけてろ……”
俺はMikanも愛想尽かす程ペコペコ頭を下げ、早速リンクパールをつけた。
ボス程の男だ。舎弟は何百人といるだろう。だがボスに対する忠誠心は誰にも負けない自身がある。
リンクシェルでの第一声、俺はそのへんの気合を叩きつけてやった。
「竜騎士のJabuッス! 押忍! ボスに一生と言わずあの世の果てまでついていく所存ッス! 押忍!」
返事が返ってこない。俺の気合にビビっちまったか?
リストを見てみた。現在2名。
“パールをやったのは……お前が初めてだ……ミス……”
上のセリフはsayだった。
「これからどんどん舎弟を増やしていきましょうボスッ!;;」
あれ、なんで俺、泣きの顔文字入れてるんだろ、アハハ……;;。
645 :
ぱっしょーね ◆LBzBg/yd5c :05/01/18 04:53:23 ID:HWmnsPdO
改行ミス、タイトル欠落、ハンドル欠落と
大変お見苦しいものになり、面目次第もござりません・・・
646 :
既にその名前は使われています:05/01/18 11:50:33 ID:tigSY4Oc
おっとっとっと
647 :
既にその名前は使われています:05/01/18 17:23:41 ID:rA9uW+z3
>宮廷魔道士
ヒュム♀の後ろについてくるタルの会話笑ったw
ナイト仮面もいい味出してるね。ただのネタかと思ってたがこれがなかなかw
>へっぽこ
続きが気になるねぇ。期待してます。
感想は、少し考えてる部分もあるけどこの後どうなってるかわかんないから保留で。
>竜の錬金術師
さらっとしてるんだけど、なんとなく味わい深いですね。
噛めば噛むほど味が出るスルメみたいな。
>ぱっしょーね
胡散臭いハーフの芸能人ワラタ
「ちょ、ちょっと・・・!何考えてるんですか!」
突然の事態に焦りを隠せないCorneria。
「ヌヌッ!これは、不可抗力というものじゃッ」
「先生・・・しっかりして!私たち今、lv1なんですよ!
彼女は大げさな身振り手振りで、必死に状況を説明する。
だが当のMaat本人はまったく話に耳を傾けていないようだ。
ここはペドー奥地。獣人クゥダフの本拠地である。
建物内部には、通るだけで何かの悪感と共に
呪いを受けてしまう小部屋など、侵入者に対する様々な仕掛けが存在する。
そして早速のこと、見事にこの仕掛けにハマって、なんやかんやと騒ぎ立てているこの二人はMaat爺とCorneria嬢。
Corneriaは言わずと知れた、バストゥーク大統領の実娘である。
彼らは今では武術を通じて師と弟子という間柄となってはいるが
孫と子にまで歳の離れたこの二人からは、端目にはあまり想像できないだろう。
今回この二人は、はるばるバスから最近侵略を異常に拡大しているクゥダフの調査を目的にやってきたのだ。
しかしMaatに言わせると、これは調査でもなんでもなく、単なる修行の一環ということらしいが・・・。
「だからな、お主こそこうもっとじゃな、乙女の恥じらいというものについてじゃな、考えないとこれからの時代・・・ブツブツ」
「と、とりあえず、早くなんとかして下さいっ、Maat先生!!」
「年寄りの新陳代謝にはな むしろこれくらいの方がいいんじゃ」
Corneriaは顔をそむけながら、必死に片手で視界を遮っていた。
今の彼らは、呪いの特殊な効果によって一時的なレベル制限が掛けられ、装備品を
身に付けられない状況なのである。
だが、ここでひたすら目のやり場に困っているのは・・・何故か彼女だけのようだ。
「呪いのせいで装備が全て外れてしまったのはしょうがないと思います・・・でも!」
「なんで『全裸』なんですかっ(赤面) 下着はどーしたんですか!下着っ」
「じゃかしいわッ!ワシにデフォルト装備なんぞないわッ!そこらの冒険者といっしょにするねぃ!ペッペッ」
「それと先生、どうでもいいから少しくらい前 隠して下さいっ」
「生まれたままの姿にケチをつけるものではないぞ」
「もう、Maat先生〜っ!」
「ギャギャーとうるさい奴じゃな・・・格闘家はな、何事にも動じてはならんと常々言っておるだろ、馬鹿者!」
「それとこれとは別です!!」
ひたすらに頬を染めるCorneriaに対し、あっけらかんとしたMaat。
二人の話し声はまるでペドー中に響いくのも辞さないかのごとく、遠慮がない。
「お主とて裸同然の格好をしとるではないか!獣人の中にはヒュームの♀を好むような変り種もおる。
クゥダフ達の格好の的になるぞ」
「そんなこと言われても・・・私もこの状態で着れる衣服なんて持ってきてないですし」
Maatの一言に思わず不安の表情が浮かぶ。
同時にCorneriaは今の自分の姿を上から下まで見返してみた。
確かに、かなり挑発的な格好である。肌の露出の多さに改めて驚く。
これでは彼に指摘されるのも無理はない。
彼女はまだ十代とはいうものの、身体つきを見れば十分に成長した女性のそれである。
でるところはちゃんとでているし、締まるところはきっちりと締まっている。
だが、彼女自身はそれを知ってか知らずか、女性らしさとは程遠い飛んだり跳ねたりを繰り返す毎日なのである。
二人は小部屋出て、トボトボと地下施設の中心部へと向かって歩きだしていた。
「私、もうちょっと女らしくなった方がいいですか?」
「ウム、やはりな、女たるもの胸はデカい方が良いぞ。よし!ワシが揉んで大きくしてやろうか!ああ、大きくしてやろうか!」
「ええ?何?あぁ・・・ダメです・・って、コラ!やめなさいッ」
すかさず彼女の右フックがMaatの顔面にスマッシュヒットする。
鼻を押さえながらのけぞるMaat。デンプシーロールを繰り返しながら威嚇するCorneria。
彼女のシャドーボクシングをする拳が、激しい風切音を立てて空を切っている。(しゅしゅしゅ)
そう−−−彼女は身の危険を感じるとまるでスイッチが切り替わるように突然凶暴化してしまうのであった。
「は!あれ・・・また、私・・ご、ごめんなさい」
ふと意識を取り戻すCorneria。
気がつくとポタポタと鼻血を垂らしたままのMaatが、なんとも不愉快そうに睨みつけていた。
「・・・もう技とか教えてやらんぞ」
「え、えへへ。それはそうと、このままだと私たち本当に危険ですよね。それにここ・・・すごく寒い」
誤魔化すようにしてあたりを見回しながら、彼女は震える両腕をさする。
「じゃ、パンツを脱いでお互いの火照った身体を温めあうというのはどうじゃ?」
「私は別に火照ってません」
「とりあえずパンツを脱ぐというのはどうじゃ?」
「・・あっ!」
突然彼女が何か気付いたように手を伸ばした。細い手と長い指先がとある一点をさしている。
「先生、あんなとこにBogyが・・・。ここを通り抜けるのはちょっと無理そうですね」
「ふむ。ペドーにアンデット系のモンスターが存在するとは、これは何かひっかかるの」
Maatが口元の髭に手を当てがいながら言った。
だが、すぐさま彼の思考を遮るかのようにCorneriaが叫んだ。
「せ、先生・・・周り見てください!私達・・アンデット系モンスターに囲まれてますっ!」
「なんじゃと!?」
二人は驚愕した。先程まで彼らの周囲にはクゥダフはおろか羊一匹すらいなかったはずのだが
いつの間にか多数のLichやBogyが徘徊していたのだった。
「一体、このペドーで何が起こっているのでしょうか・・」
蒼白な表情で彼女が呟く。
「Corneriaよ、ワシらはここまでかなりペドーの深部まで潜っているはずじゃ。なのにおかしいと思わんか」
「?」
「ワシはまだ一匹もクゥダフを見ていないんじゃ」
「そういえば・・・」
「主達のいない、もぬけの空の本拠地。そして出現したはアンデットモンスター、これは何かある。何かあるぞ・・・
ここは戻ってシドに報告ぢゃッ!」
親指をグっと立てるMaat。無理やりな笑顔とカメラ目線も忘れてはいない。この歳にして驚くべき芸人魂である。
だが彼の努力もむなしく、Corneriaの周囲に対する真剣なまなざしの前にはMaatの存在などまったく無視されていた。
「で、でもっ!!Maat先生。これだけ囲まれてしまうと動きようがないですよ。
それに、持ってきたサイレントオイルももう残り1つです。どうしたら・・」
「ぬぅう・・・。ここはなんとか時が過ぎて呪いが解けるまで、うまくやり過ごすのが賢明じゃな」
「・・・悔しいですけど、今はそれしかなさそうですね」
「そうと決まればもっとくっつくんじゃ!!ホレ、見つからないようにピッタリくっつくんじゃッ!!」
「は、はいっ」
駄文スイマセン お邪魔でないようなら続き書いときます
655 :
既にその名前は使われています:05/01/18 19:41:38 ID:VRD+CJhJ
>>654 マートのエロ爺ぶりがわらえるw、続き希望。
宮廷はナイト仮面がいい味出してるよね。
THE BOSSは、ガルボスしぶいなw。
656 :
既にその名前は使われています:05/01/18 21:48:29 ID:LCWMWHVJ
ほっしゅしゅ
657 :
既にその名前は使われています:05/01/18 23:42:32 ID:LCWMWHVJ
数分−−が経っただろうか。未だに二人の呪いの効果は切れる様子がなかった。
それどころか、悪いことに徘徊するモンスターと彼らの距離は少しづつ狭まってきていたのだった。
「・・・先生・・・さっきから」
「え、何?」
「私の胸ばっか弄るなッ!」
「固いこと言うでないぃぃわ!これも可愛い弟子を守るためぢゃッ!!」
「それになんか腰のあたりに・・・カタイ感触がでてきたんですケドッッ^^;」
「そ、それは多分気のせいじゃ(汗)」
「先生、あいつ等は生体感知が広いんですから!変なとこに力入れないで下さい、もう!」
Bogy「ヘァッッ・・・・!!フェァッッ・・・!!」
「ひっ・・!」
フワフワと怪しげに漂うゴーストが時折、雄叫びともとれるような奇声上げ、
そのかたわらに佇むスケルトン達がカタカタと不気味に顎を鳴らす。
もはや、彼らに二人の存在が気付かれるのは時間の問題になりつつあった。
「どうしよう・・どうしよう。何か・・何か考えなきゃ。考えるんだ、Corneria」
焦りをつのらせる彼女とは裏腹に、Maatはがっぷりと彼女の腰に手を回しセクハ・・、いや精神統一を繰り返していた。
時折、すばやくお尻に手を伸ばしてみるのも忘れてはいない。その期待以上の弾力に思わず溜息を漏らす。
どうやら合格のようだ(何が とにかく、彼にとって、今はまさに至福の時であるのは間違いなさそうである。
一方、当のCorneriaは、そんなMaatに構う余裕すらない。健気にも必死に打開策を思案しているのであった。
「このままじゃ二人とも襲われてしまいます!だから・・・最後のサイレントオイルを使うしかありません」
「じゃが、そうは言ってもな・・・今、下手に動こうとすればたちまち気付かれるぞ。それに第一、オイルは残り一つなんじゃろ?」
「そこでですね、いいですか?この一人分のオイルをよ〜〜〜くのばして・・・二人で使うんです!」
Maatの眉がピクリと釣りあがる。彼女は一呼吸置くと、言葉を続けた。
「量は少ないけど、私たちがこのまま無理に動きさえしなければ十分に音を殺してくれるはずです」
そう言うとCorneriaは、オイルの小瓶をさっそうと取り出し、密着した状態から器用にフタを開ける。
「先生、このオイルを一番摩擦の多い部分に塗るんです!」
「ま、摩擦の多い部分!?」
「ええ。とにかく少しづつ、大切に使んです!」
こうして二人の危ない共同作業が始まった。CorneriaがMaatの身体にに、MaatがCorneriaの身体に
潤滑性のある液体をまとわりつかせていく。
「た、たまらんバイ」
「よだれでてますよ、先生」
「はっ!こりゃ失礼」
「って・・・私にばっかやってないで、自分にもちゃんと塗って下さいよっ!!!も〜〜このッこのッ!」
彼女は片方のヒジをMaatの顔面に食い込ませて拒む。が、彼の手の動きは相変わらず節操がない。
「わかっておるわぃ・・・ちょっと触ってみたかっただけじゃ。それよりあんまり大きな声を出すでないわ」
ふと、急に彼の声のトーンが一段下がる。なにやら先程までとは雰囲気が一変していた。
「ほれ、見てみろ。どうやら悪ふざけもここまでのようじゃの」
「え?」
「構えろ。来るぞ!」
その刹那−−−彼女は背後にとてつもない殺気を感じた。振り返ると、鎌を振り上げた骨が、今まさに降ろさんとばかりに
彼女の背中を捉えていたのだ。
(しまっ・・・)
「−−−空鳴拳−−−!!」
(ズドドドド・・・・ドーン)
まさに一瞬だった。Maatの拳にまとわりつくオーラが、鎌を握った両腕ごとを骨を粉砕してゆく。
そのオーラは拳を中心にますます広がり、最後には全体を包み込み、無へと還した。
彼女にはその一連の出来事がスローモーションのように再生され、空を舞い散る破片の一つ一つまでもが鮮明に描写される。
「ほれ、しっかりせい。まだまだ来るぞ。迎え撃つのじゃッ!」
まるで水を得た魚のように、豹変したMaatは辺りのモンスターを次々と蹴散らしていった。
「でも、先生、一体どうして・・・?今の私たちの状態ではWSなんて不可能なはずでしょ?」
Corneriaが不安そうに彼にたずねる。
「馬鹿者!真に技を体得した者であれば、こんなつまらん呪いなどに縛られたりするものか」
「!」
彼女の両眼がぎょっと見開いた。まるでハンマーにでも殴られたような感覚が、頭の中をぐるぐると駆け巡る。
「そう、お前は心が負けておる。迷いが自身の技を封じ込めているだけということに、まだ気付かないか」
「そうか・・・そうだったんだ。そんなことにすら・・・私は」
(先生は、きっとそのことを私に伝えたくてわざわざここへ・・・)
ふと、自分が瞳に涙を溜めていることに気が付いた。それは自らに対する不甲斐なさからだろうか。それとも・・・。
「あたっあたたたーーホァァァッー双竜脚〜〜!!阿修羅拳〜〜〜!!波動拳〜〜〜じゃなくて気孔弾〜〜」
次第に周りを取り囲んでいたモンスター達も、Maatの鬼人のような暴れっぷりにその勢力を分散しつつあった。
「ありがとうございます、Maat先生・・・」
彼女は、堪えきれず流した一筋の涙を指で拭うと、小さくそう呟いたのだった。
END
良いオチが思いつかず行き当たりばったりになってしまいましたスミマセン
今度書くときはもっと微エロ路線を目指したいと思います
読んでくれた人どもでした。
664 :
既にその名前は使われています:05/01/19 13:05:15 ID:TeLlE68W
>>663 乙でした。たしかに最後が少しシリつぼみに
なってしまいましたね。(我ながら偉そうな事言ってますが)
無事に脱出した後、エロボケをかまして・・・みたいな。
終わり方でもよかったかも・・・
次回作に期待です。
665 :
既にその名前は使われています:05/01/19 20:15:18 ID:TeLlE68W
ageておきますね。
時は流れ……
俺は『目の院』屋上で黙々と読書に夢中になっていた。
もはや俺はナイトの衣装でも軽い普段着でもなく、ねずみ色の見習い魔導師のローブ
を身につけ、腰には剣ではなく片手棍を提げている。
すでに初等の学校は卒業し『目の院』や『口の院』で研究と訓練に没頭していた。
だが、学生という身分であることは変わりはなく、そのままマタタ先生の家に居候を
続けて勉学に励んでいる。
彼女の授業はもはや受けることはないだろう。だが良き相談相手としての関係は変わ
らない。
「おーい」
俺に手を振っているのは誰だろう。ああ、釣り吉のクッタだ。
あいつも魔導師見習いの身でありながら、夢は漁師だと言ってはばからない。
供にブブリムでの実戦訓練をした中なんだが……あの時は2人で隊長に叱られたな。
たまりかねて前衛を押しのけ、ゴブリンを片手棍で片づけてしまったのだから。
「おお、あちらですか?あの階段はどこから……」
別の声。聞き覚えがある。えーと、だれだ?
どたどたと、階段を駆け上る音。既に頭が見えているサンドリア人の長身。
「カルス隊長!お久しぶりです。」
久々のサンドリア定期便は、俺の側近だったイーゴであった。
「なんというか、すっかり魔導師らしくおなりですね?」
ゆっくりと2人で西サルタバルタの丘を登りながら、イーゴは話を弾ませようとする。
「いやぁ、ナイト仮面の絵本や紙芝居があいかわらずのベストセラーで。
特に『にせナイト仮面現る』の売れ行きと言ったらもう……」
俺は苦笑いで答える。
「……もう、ナイト仮面は止めだ。騎士ですらない。誓いの元に止めたんだ。」
「ああ……それは……」
「なんというかな、どうしても残っていた未練を断ち切る必要があったのだ。
魔導師には不要の感情だ。もう隊長とは呼ぶな。」
俺はもう一度、後衛に徹しきれず片手棍で暴れたときのことを思い出していた。
「……」
顔を見れば判る。こいつが何を言いに来たのか。
「お前、サンドリアに戻れと言いに来たんじゃないのか?」
図星だったらしい。相変わらず顔に出る奴だ。
「いえ、あの……その……」
「今回も手紙はあるのか?貸してみろ。」
「はい……」
「ん、期間が空いた割には少ないな?いよいよ、俺も忘れられてきたかな。」
ニヤリと笑ってイーゴの方を向いたが、グッとうつむいて答えない。
俺は何か言うかわりに、手紙の差出人を確認した。
その中の一通……個人名はない。サンドリア政府?
その場で、俺は手紙を広げると、次のような内容が書かれていた。
三ヶ月前、オーク共の大規模な侵攻が発生。ロンフォールでの攻防戦を経て、
ラテーヌ高原での決戦。そのままジャグナー森林まで押し返し、
当面は再びの侵攻はあり得ないだろう、というところまで弱体させ……
ようするに勝利したという報告である。だが、イーゴは付け加えた。
「ただし、サンドリア全軍の半数を失うという大打撃を受け……」
……そうだ、手紙が少ないのは、まさか?
「では、マリスはどうした?ダルヴァンは?それから……」
他にも思い浮かぶ名前を挙げてみる。が、イーゴは答えない。
そして、最後に付け加える。
「……アリサは?」
「……彼女は、最後の決戦のおり、自ら最前衛での部隊の指揮を名乗り出て」
一番言いにくいことだが、これこそ果たさなければならない義務である、とばかりに
ようやく口を開く。
「勝敗を決したものの……彼女の部隊はもはや帰らず……」
「……」
しばらく何も言えず、重苦しい沈黙が辺りを埋める。
しかし、ようやく俺は口を開いた。
「……よし、今すぐ国へ帰れ。」
「あ、あの……隊長。あ、いえ、カルス殿」
「そうなっては国元は大変なはず。こんなところまで来ている場合ではなかろう。
手紙の返事は書かない。健闘を祈る、と伝えるだけでよろしい。」
「……」
「今の俺では何の力にも立ってやれぬ。もし俺が必要なら、先ほどの手紙にそう書くはず
だ。違うか?」
「いえ、そんなことは」
「さあ、早く戻れ。次に合うときは、俺は大魔導師カルス=ディヌスとしてお前に出会う
ことになるだろう。こんな見習い衣装ではなく、な?」
それを聞いて、イーゴは少し目を輝かせた。
直接ではないが、戻る、という意図を掴むことが出来たのだ。
「それではカルス殿……いえ、最後は言わせてください。隊長もご健闘を!」
カツン、と敬礼をとるイーゴ。
「……サンドリアを頼むぞ」
俺もまた、ローブでは似合わぬ久しぶりのサンドリア式敬礼で返礼した。
そして……
670 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/19 21:11:18 ID:ZqOpeprI
また、出来たので貼りました。っても、大した内容じゃないけれど。
次回を最終話にしたいと思います。
つДT)ナイト仮面、喜んで貰えてウレシイ。ありがとー
671 :
既にその名前は使われています:05/01/19 22:58:43 ID:TeLlE68W
>>670 待ってましたよ〜。
前回の展開から、いよいよ物語りも佳境ですな。
期待しております。 (。・x・)ゝ
672 :
既にその名前は使われています:05/01/20 00:31:29 ID:lLKNA3FS
>>663 エロに突入していくのではと、ハラハラして読みましたw。
>>670 一転してシリアスに、ナイト仮面(もう廃業してるのか)の今後が気になります。
●ハロウィンの贈り物32/41
ハロウィン当日、ミリアムはジンジャークッキーを焼き上げた。何も知らない父は、そんな
ミリアムを見て満足の表情を浮かべていた。ルゴー氏と会っているうちに、あのエルヴァーン
のことも少しづつ忘れていくだろう。すべては時間が解決してくれそうだ、レイモンドは本気
でそう思っていた。
バストゥークの街並みは、子供から冒険者まで多くの人で賑わっていた。今年のハロウィン
は例年と違い、お菓子をあげると魔法でモンスターの姿にしてくれるというおまけつきだった。
街にはたくさんのモンスターに扮装した人々が、列をつくって歩き回り、あちこちから歓声や
奇声があがっている。衛生帽子をかぶったおかし職人が何人も、ハロウィン需要をあてこんで
木彫りの看板をぶら下げて行商していた。
●ハロウィンの贈り物33/41
マーティン・ルゴーは、数人の護衛をつれミリアムをエスコートしていた。ルゴーは普段
ならば、こういった庶民の催し物などにかかわり合うことなど、決してない人物だった。
しかし、何度も演劇や音楽会の誘いを断られ、たまにはこう云った趣向も悪くはないかと、
なかば自棄(やけ)になって誘ってみたのだ。
行方不明になったエルヴァーンに傷心の娘を慰めるには、こんな雑多な賑やかさの方がよ
かったのかもしれない。あっさり返事をもらったルゴーはそんなことを考えていた。
ルゴーが片手を振り上げと、護衛の兵士たちがあたりの人々を追い払い、道をつくった。
カーニバルを楽しみに来た人々は不満の声をあげ、自由を尊ぶ冒険者たちからは失笑をかっ
ていたが、ルゴーはまったく気にしていないようだった。
ミリアムはいつもよりも賑わうバストゥークの噴水広場を見回した。これなら隙をついて
逃げ出して人込みのなかに飛び込んでしまえば、追っ手を撒くのも簡単そうだ。そんなこと
を考えていると右手に伸びた路地にある俄作りの露店から、よく通る澄んだ声が聞こえてきた。
●ハロウィンの贈り物34/41
「そこの紳士淑女のおふたり、おいしそうなお菓子の包みをもっておられますね。よっかたら
ハロウィンの気分を味わってみませんか、」
ダークストーカーの姿をしたハロウィンの係員だ。二人に愛想よく手を振っている。
ルゴーは馴れ馴れしい態度に、不愉快な顔をしたが、ミリアムが興味をもったようすを見せ
たので、仕方なく足を止めた。ミリアムがお菓子の包みを差し出すと、ダークストーカーは大
袈裟に驚いたふりをしてミリアムに近づいた。周りの護衛が思わず身構える。
「これは失礼、しかし、これだけの量となると、ひとりだけのお礼では申し訳ない。」
そう云い不敵に笑うと、紅い口を三日月にまげたコウモリの杖を空高く差し上げた。
「これは、わたしからのささやかなお礼です、」
●ハロウィンの贈り物35/41
一瞬の間だった、不意をつかれた護衛が魔法の光に目をおおった瞬間、その場にいた
全ての人々がダークストーカーの姿へと変わるとともに、露店に仕掛けてあった花火が
いっせいに爆発した。それを機に、ダークストーカーに扮装したエルヴェは、ミリアム
の手をとって反対側へと走り出した。突然の破裂音と花火の光の色彩であたりは混乱し、
乗じて人が集まってくる。狙いどおりだった。このまま監視の目を撒ける、そう思った
とき、強靱な腕でミリアムの体は捕まえられた。バストゥーク一の富豪の護衛のなかで、
とっさの判断で目を隠し、不審な人物に注意を怠らなかった一人が、ふたりの逃亡を許
さなかったのだ。
失敗か……、冷や汗をかきながら、エルヴェはミリアムの手を強く握って、護衛にむ
かって構えをとった。
その時、大歓声がどっと広場に上がった。二十人ばかりのダークストーカーの大群が
エルヴェたちのところへと、勢いよく流れ込んで来たのだ。手にはクラッカーや花火が
握られ、ところかまわず目茶苦茶に打ち放した。
●ハロウィンの贈り物36/41
このチャンスをエルヴェは見逃さなかった。隙をつかれた護衛は、エルヴェの蹴りを
まともにくらって吹き飛んだ。追っ手が一人だけなのを確認すると、エルヴェは驚いて
立ち尽くすミリアムを抱き寄せ、素早く群れの中へと紛れ込んだ。
路地裏でエルヴェが来るのを今か今かと待っていたジョエルは、予定にない大歓声に
驚いて、思わず通りへと出た。ダークストーカーの大群が狂乱の騒ぎを繰り広げ、
ルゴーとその護衛が罵声を張り上げている。
「これは……、予定より多すぎないか。エルヴェのやつ、どうやったんだ……」
「おい、ジョエル、こっちだ!」
押し殺したエルヴェの声が背後から聞こえた。振り向くと、二人のダークストーカーの
幻影が消えて、もとの主の姿へとかえっていくところだった。脱出劇に興奮した表情の
ミリアムは、手を胸に当てて大きく息をしている。
678 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/20 00:49:42 ID:lLKNA3FS
●ハロウィンの贈り物37/41
ジョエルは、ふたりの姿を確認すると駆け寄り、白魔法テレポホラの呪文をすばやく
唱えた。ぐずぐずしている暇はない。混乱が収まるまえにバストゥークを脱出しなければ、
どうなるかは容易く想像できた。詠唱が終わると、やがて路地裏から白い燐光とともに
三人の姿はかき消えた。
その様子を、噴水の塔に登って眺めていたミタルポタルがいた。上手くいったと、ほっ
としてやれやれと衛生帽子を脱ぐ。
「ま、アフターサービスってとこかな。やるならここまで徹底的にやらないとね。
とにかく、皆がんばれ!」
ミタルポタルの足下には、「今なら無料(ただ)でモンスターに!噴水広場で大花火大会」
とかかれた木彫りの看板が置いてあった。菓子を無料でくばり、大量のダークストーカーを
量産した彼は、機を見てエルヴェたちがピンチとみると、一気にけしかけたのだった。
679 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/20 00:52:42 ID:lLKNA3FS
貼り終えました。しかし、あらためて貼ってみると無駄に長いです・・・・。
申し訳ない。でも、せっかく書いたから、誰かに読んでもらいたいと
思うのでありんす。^^;
ここはラテーヌ高原……
かつては野生チョコボの産地として知られていたたであった大草原地帯。
雨後によく虹がかかり、そして高原を縦横に切り裂いた地裂の谷底には、
巨大な草花による幻想的な風景が美しく、訪れる旅行者も少なくない。
その高原で、チョコボを連れた軽装のサンドリア騎士二名。
「なぁイーゴ。本当に今日、カルスは帰ってくるんだろうな?」
「ディヴァン。隊長……じゃなくてカルス殿は必ず」
「別に言い直さなくてもいいだろ。まったくあいつは……む?誰か追われているな。」
「よし、助けに行きましょう!これぞサンドリア騎士の役目!」
「おうッ!」
「だ、誰かタスケテー!!オークが、オークがぁー!!」
「グホッグホッ!グヘヘヘヘ……」
旅人を一匹のオークが目を付けたらしい。
必死で逃げる相手を嬲るように追いかけるオーク。
しかし……運が悪かったな。丁度、俺様が戻ってきたときに出くわすとは!
「向こうからも、誰かやってくるぞ?」
「……あ……あぁッ!!あの方だ!ついに、あの方が帰ってこられたんだ!」
そう!怪しく輝く真っ赤なローブを身にまとい現れたのは!
「わーはっはっはっはっはっはーッ!!大魔導師カルス!只今参上ッ!」
バシィィィッ!!
「ギャァァァアアアアッッ!!」
見たか!このクラーケンクラブの威力!オークなんぞ一撃だ!!
「カルス殿ォナイト仮面止めたんじゃ無かったんですかァ?」
「……魔導師なら魔法を使え。」
何故か、うろたえながら礼を繰り返す旅人を見送り、やっと俺は旧友に向き直った。
「待たせたな……あれから何年になるだろう。」
「あいかわらず、お元気そうで……私はもう……」
「泣くなよイーゴ。こいつ、何にも成長せずに戻って来やがった。」
「ディヴァン……もうちょっと俺を歓迎してくれ」
などと言いながら、サンドリアへとチョコボを飛ばし……
俺は遂にウィンダス連峰政府の公認上級魔導師としての認定を受け、サンドリアへと
戻ることになったのだ。
「さよならは言わない。先生、行ってきます。」
「はいはい。宿題はちゃんと送って下さいね。」
先生やウィンダスとの別れは、そんなあっさりとした見送りで終わってしまった。
……先生、せっかくの決め台詞なんだから、もうちょっとなんか言ってくれ。
ロンフォールの森を抜けると、いよいよサンドリアの城塞都市が見えてくる。
「さて……既に俺は外国人扱いになっている訳だったな。」
「心配無用です。さぁ、みんな待っていますよ。」
「……」
みんな、か。俺の友人や知人の大部分は、前の戦火で倒れたはず……
門番の兵士も、みんな見知らぬ顔だ。以前は俺の顔だけで門が開いたのに。
やれやれ、山のような手続きが待ってるのか……と考えていたが、
「ああっ!あなたはナイト仮面さんですね?おーい、みんな!ナイト仮面のご帰還だぞ!」
「あなたがそうですか!初めまして、俺とっても大ファンなんですっ」
「ち、ちょっと待ってて。私の絵本にサインを一筆」
「俺も頼む……いや、違う!そんな入国申請なんぞほっとけ!」
……忘れてた。絵本がベストセラーとか言ってたな。
自分で自分の顔が、徐々に恐怖で歪んでいくのを感じていた。
普通に入国するより3倍の時間は掛かったかも知れない……
しかし、それは序の口だった。
魔導師の格好をしたエルヴァーン、それがナイト仮面の正体というのが既に広まっており、
街を歩けば誰彼無く声をかけつつ近づいてくる。
知り合いの数は減っているはず、大した出迎えなんぞありえないと思っていたが、
終いには騎士隊が人員整理するほどの大騒ぎになってしまった。
「うはははっ大人気だろ?どうだ、まいったか!」
「お、おいディヴァン!笑ってないで助けてくれ!」
俺は、てっきり寂しい帰国になると思ってたが、これほどの暖かい……
違う、熱狂的だ。もう暑苦しい。
もしかしたら、あいつが喋ってくれたこその大歓迎なのかも知れないが、
喜んでいいのやら、怒った方が良いのやら。
とにかく、これでは収集が付かない。そうだ、少しだけサービスしてやろう。
見よ、魔導師として帰ってきた俺の姿を。
「……むんっ!!」
シュゴォォッ!……ケアルガの最高位魔法。周囲の人々が輝かしい光に包まれる。
「おお、すごい!ナイト仮面の新技だ!」 パチパチパチパチ……
拍手喝采。何やってもナイト仮面かよ……
なんとか懐かしいドラギーユ城へ入城した。
あれこれと、手続きに向かう前に……これだけは、言っておかなくては。
「イーゴ……町中はおろか、城壁の外側もまるで戦火の痕が感じられないな。」
「あの、オークの来襲は確かに」
「判っているさ。大きな戦いがあったにもかかわらず街の人々や兵士達は、みな朗らかで
幸せそうだった。」
「……」
「よくぞ……みんな守り通したな……」
「はい!」
「これからは、俺も一緒にやらせてもらうぞ。」
「はっ」
カッと敬礼するイーゴ。困ったな、魔導師の衣装の時はウィンダス式が良いのだろうか。
「それでは、こちらの部屋へ」
「ありがとう」
「では、後で例の酒場に。」
そう言うとイーゴは去っていった。
そして薄暗い部屋を見渡すと、机の上に積み上げられた黒い影……
予想通りだ。『ナイト仮面』の絵本。苦笑いしながら本を手に取る。
『ナイト仮面 登場!』『ナイト仮面 対 ナイト仮面ブラック』……
ブラックもやはり絵本にしてしまったのか。
しょうがなく、タルタル族の子供達の前で演技をする羽目になったエピソードだ。
あいつめ、台本まで用意していやがった……ああ……あいつも居なくなったんだな……
すこし、しんみりしながら絵本の背表紙を読んでいく。
『にせナイト仮面現る』『ナイト仮面 危機一髪』……
前に言ってた奴だな。しかし、こう言う展開、既にパターン化してるような……
『ナイト仮面の入学式』『ナイト仮面の夏休み』『ナイト仮面の遠足大作戦』
なんだと!!俺はびっくりして本を開く。
馬鹿な。それはウィンダスの連中でしか知るはずも無いエピソードのはずだ。
そこには、ナイト仮面という影の顔を持ちながら、正体を隠して子供達と魔導学校に通い、
子供達を救う変身ヒーローとして、あるいは慣れない勉強に苦しむ生徒として、
多少の脚色も加えつつも俺そのままの姿が描かれていた。
ウィンダスの連中……正体を知ってたんだな。まさかとは思ってはいたが。
いったい、いつの間にウィンダスまで来て、インタビューなんぞやらかしたんだろう。
協力者としてウィンダスの人々の名前が記載され、しかもその一冊一冊の最終ページに、
彼らのメッセージが記されていた。
『ナイト仮面 登場!』 「あの時のこと、何があっても忘れません。」
クミミ=タンタ
『ナイト仮面の授業参観日』「同窓会に来なかったらブン殴ってやるッ」
元クラスメート一同
『ナイト仮面とチョコボ』 「たまには、あの子達に会いに来い」
チョコボ屋店主
『ナイト仮面の遠足大作戦』「いつの日か、再び我々の陣頭指揮を!」
ウィンダス連邦・戦闘魔導団
『ナイト仮面 0点』 「また、お説教聞きに戻ってらっしゃい」
マタタ=タンタ教授
『ナイト仮面 0点』には大笑いした。0点取って落ち込んでいた時のことを、
怪人ヤグードとの対決で勉強する時間が奪われた、というエキサイティングな演出で
言い訳してくれていたのだ。夢中でページをめくり爆笑しながら読みふけった。
これほどに、これほどに涙が出るほど笑ったのは初めてだ。あふれる笑いはもう止められない。
みんなが集めてくれた思い出を、ずっとサンドリアの人々が見届けてくれていたのだから。
そして……俺は目立つローブを脱いで約束した酒場へと向かった。
わずかに残った友人達が迎え、酒を注文しつつ俺を座らせる。
さぁ、みんなの供養の始まりだ。そう言って最初の乾杯。
あまり悲しむ雰囲気もなく、イーゴはオークとの大戦について語り出す。
特に、アリサの話には力が入っていた。
いかに勇敢だったか、その毅然とした指揮ぶりは、などなど……
その隣で、なんとなくニヤニヤしながら酒を飲んでいるディヴァン。
……悪いな。お前らの企みはもう知ってるんだよ。
そして、いよいよとばかりに、ディヴァンが話を引き継ぐ。
「……だがな。いいか?奇跡が起こったんだ。まさに奇跡の大脱出だ!」
扉が開いて誰かが入ってきた。松葉杖をついた痛々しい右足の無い姿で。
そして、連れの女騎士の手を借りながらこちらに近づいてくる。
「彼女はオークに捕らえられながらも、生き延びて耐えしのいでいたんだ!
そして彼女は自力で……おい、ちょっとは驚けよ……」
彼女は……アリサは俺の隣に椅子にどっかり座って第一声。
「ごめん。それ嘘。」
「はぁ???」
「右足無くして、自力でダボイの奥底から切り抜けるなんて出来るわけ無いでしょ?
まったく、男ってのは……ねぇナイト仮面さん?」
チロリと俺を見ていった。みんなの驚く顔を見て実に楽しそうだ。
顔には以前無かった傷が走っている。だが、得意満面の笑顔は輝いていた。
「みんな、なんとか言ってよ。この、ウィンダスから私の臭いをかぎ当てた鼻。
世界中の犬が泣いてるわ。ああ、もうこんな奴を歓迎しなくてもいいわよ。
どう思う?私を届けておきながら、誰にも言わずにウィンにとって返すなんて。」
そう。イーゴから話を聞いて、居ても立っても居られずダボイに潜入したのだ。
誓いを破りナイトの衣装を引きずり出し、友人となった魔導師達の手も借りつつ、
数ヶ月も捕らえられ、生死の境目で彷徨っていた彼女の救出に成功した。
なぜ、彼女が生きていると思い込んだんだろう。今となっては奇跡だ。
「もう秘密にしなくていいのよね。今度は私ずいぶん我慢したでしょ?
それじゃ始めるわよ。ナイト仮面・最終話『ダボイからの救出劇』」
で、また本にする訳か。
はたして、俺が「宮廷魔導師」などと呼ばれるのは、いつのことやら……
(完)
689 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/20 06:54:46 ID:PBugLJgM
では、後書きみたいなものを。
最後は、調子に乗ってナイト仮面責めですw
書き始めで、まさかナイト仮面などというものを登場させるつもりは、
実は言うと全然なかったっす。
正直、思いつきで書き進めたんですが、なんとかエンディングをまとめきれたかな?
……と、思うものの、最後の最後はちょっと強引すぎ。
まぁ、ハッピーエンドが一番というところで…… m(_ _)mお粗末様でした。
690 :
既にその名前は使われています:05/01/20 08:18:15 ID:ShyUoQMm
ハロウィンの贈り物、楽しく読ませていただきました。
あえて何か言うとすると〜見せ場がちょっと弱い感じがするかな。
あとブランマーニュももうちょっと話に絡ませてあげられるといいかもしれない。
長いって言うけど、私は特に感じなかったな。
それに無理に短くしようとして話が崩れたら本末転倒ですから。
宮廷魔道師、お疲れ様でした。
きれいにまとまってていいですね。
書くつもりもなかったものがいつのまにか話の中心を占めている。
これが俗に言う「キャラが勝手に動く」ってやつなんですかね?w
ふと思ったのが、タルの女って姓はあるのかな?
691 :
既にその名前は使われています:05/01/20 10:13:23 ID:+KY6+x2I
あげときますわ
692 :
既にその名前は使われています:05/01/20 12:26:39 ID:8UF/gJA8
タル女性に姓は無い。
力の時代ならば…
サンドリアは神殿騎士団が出来たばかり。オーク帝国の軍をサンド王がウルガランで
千人落とし敢行。撤退させる。
ダボイはまだラヴォール村。ただの樵の村。
神殿、王国騎士団がサンド及び周辺のヒュム、ガルカを徹底的に追放。
ウィンをかなりまで攻め落としたが敗走。オークの相手でウィンとの国交は一時停戦。
ウィンダスはこの時代ヤグードに5回も攻撃されている。チョコボ騎乗方法をサンドから
教わる。ミスラはウィンにまだいない。
魔法学校、図書館、などが耳の院、目の院といった風に五院に改名される。
などなど
サンドリア宮廷魔道士、それらを押しても面白かったです。
693 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/20 17:33:40 ID:MBsVnhvu
694 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/20 18:37:07 ID:PBugLJgM
>>691-692 つДT)フォロー 有り難うございます。
そんでもって、もうしわけない。
うーむ、やっぱり公式資料を押さえとかないとダメですね。
そんな、いい加減な作品にもかかわらず、
ご評価頂いて、すんごくウレシイです。
あと、単品ですが、投げておこうと思います。
むかしむかし、バストゥークという大きな街に、一人のガルカさんが住んでいました。
彼は、怖い怖い顔をしていて、大きな大きな体をしていて、とてもとても力持ち。
そんな彼なのに困った顔をしていました。
なぜなら彼は腹ぺこでした。パンを一つ買うお金を持っていなかったのです。
そこに、一人のちっちゃな可愛いタルタルさんが歩いてきました。
ガルカさんは「しめた」とばかりに、大きな手を伸ばしてタルタルさんを捕まえました。
そして言いました。
「タルタルさん、タルタルさん、僕はお腹がぺこぺこなんだ。君を食べてもかまわないよね?」
ちっちゃな可愛いタルタルさんでは、ガルカさんにはかないっこありません。
でも、食べられてはたまりません。食べられると死んでしまうからです。
タルタルさんは困り果てましたが、良いことを思いつきました。
「ガルカさん、ガルカさん。僕はもっと、おいしい物が有るのを知ってるんだよ。」
「本当かい?それは、どうすれば手に入るんだい?」
「それじゃいいかい?僕の歌を、よくお聞き。」
そう言うと、タルタルさんは腕を後ろに組んで目をつぶり、こんな歌を歌い始めました。
♪お山に登って 焚き火の前で
一日待てば 何できる?
ガルカがみんな 大好きな
おいしい ガルカン・ソーセージ
ガルカさんは、「そうか!」と思って、お山の方に走り出しました。
タルタルさんは、歌の続きを歌っていましたが気にもとめませんでした。
ガルカさんがお山に登っていくと、一つの焚き火が見つかりました。
それは、恐ろしいゴブリン鬼の焚き火だったのですが、
とっても強いガルカさんには、かないっこ有りません。
その焚き火の周りには、大きな大きな羊たちが、ひなたぼっこをしていました。
ガルカさんは、焚き火の前でどっかり腰を下ろして、待ち始めました。
お日様が沈み、お月様が登りましたが、ガルカさんは我慢してじっと待っていました。
そして、とうとう次の日のお日様が昇ってきました。
「よし!おいしいガルカン・ソーセージが食べられるぞ!」
そういって、焚き火を探りましたが、黒い墨ばかりで何もありません。
「ははぁ。タルタルさんは、食べられるのが嫌だから、嘘をついたんだな?」
そう思うと、大急ぎで山を下りて、バストゥークの街へと走り始めました。
ガルカさんは、タルタルさんを探しだし、首根っこを掴んでこう言いました。
「タルタルさん。僕に食べられたくないからって、嘘をついたんだね?
一日待っても、おいしいガルカン・ソーセージなんて、出てこなかったよ。
もう、君を食べちゃっても、かまわないよね?」
タルタルさんは、一生懸命こういいました。
「ガルカさん、ガルカさん、あなたは歌を最後まできかずに、いなくなったじゃないですか。
あの歌には続きがあるんですよ。」
「なんだ、そうだったのか。それでは、もう一度歌っておくれ。」
タルタルさんは、しかたない、とばかりに目をつぶり、歌い始めました。
♪お山に登って 焚き火の前で
一日待てば 何できる?
ガルカがみんな 大好きな
おいしい ガルカン・ソーセージ
用意する物 これから言うよ?
最後まで ちゃんと きいててね?
大きな 大きな 羊のお肉
ぼうぼう燃える お山の焚き火
ここで、タルタルさんは口をつぶりました。
ガルカさんは、歌が終わったと思い、またお山へと走り出しました。
タルタルさんは、くるくると可愛い踊りを踊っていましたが、気にもとめませんでした。
ガルカさんは羊のお肉を何処で手に入れればよいのでしょう?
でも、ガルカさんはちゃんと判っていました。
焚き火の周りには、大きな大きな羊たちが、ひなたぼっこをしているのを、
覚えていたのです。
ガルカさんが羊を倒すと、たくさんのお肉が手に入りました。
でも、そのお肉をどうすればよいのでしょう?
「そうだ!焚き火の中に放り込んでみてはどうだろう?」
そう言うと、ぼうぼう燃える焚き火の中に、お肉をたっぷり放り込みました。
そして、今日もまた、次の日のお日様が登るまで、じっとまっていました。
「よし!今度こそ、おいしいガルカン・ソーセージが食べられるぞ!」
そういって焚き火を探ったのですが、でてきたのは、黒く焦げたお肉ばかり。
食べてみても、ぜんぜんおいしくありません。
また、ガルカさんはバストゥークの街に戻り、タルタルさんに言いました。
「タルタルさん、タルタルさん。歌の通りに準備したのに、
焦げたお肉しかできなかったよ。やっぱり、嘘をついたんだね?」
「違うよ、違うよ。歌は終わりじゃないんだよ。
歌が途中でとぎれているのは、踊りを踊るためなんだ。」
「そうか、まだ、続きがあったんだね。それでは、また歌っておくれ。」
また、タルタルさんは歌い始めました。
♪お山に登って 焚き火の前で
一日待てば 何できる?
ガルカがみんな 大好きな
おいしい ガルカン・ソーセージ
用意する物 これから言うよ?
最後まで ちゃんと きいててね?
大きな 大きな 羊のお肉
ぼうぼう燃える お山の焚き火
(※ここでおどります)
♪次に 用意 する物は
ずるずると長い 羊の腸
滝で お水を くんできて
腸を きれいに 洗いましょう
お次は お次は 長いひも
モコ草刈って よりあわせれば
丈夫な草糸 できあがり
次に おいしく 味付けするため
お塩を 蟹から 剥がしましょう
(※ここでおどります)
さぁおまちかね! 作り方!
羊のお肉を みじんぎり
次に包丁 両手に持って
とんとん とんとん 叩きます
とんとん とんとん とんとん とんとん
とんとん とんとん とんとん とんとん とんとん とんとん とんとん……
もう、ガルカさんは我慢できなくなって、
タルタルさんを、ぱくりと食べてしまいましたとさ。
(おわり)
※教訓:羊は生で喰え
702 :
既にその名前は使われています:05/01/20 18:55:24 ID:lLKNA3FS
703 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/20 19:09:02 ID:PBugLJgM
>>693 私はどちらかというと、下です。
こりゃ、難しい問題……
(;゚Д゚)両方って訳にはいかないですかい?
704 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/20 19:14:04 ID:MBsVnhvu
あ゙あ゙!?喰われちゃったよ!!!
706 :
702:05/01/20 19:30:55 ID:lLKNA3FS
>>704 う〜ん、ブラウザ変えてみてみたけど、けっこう見え方変わるね。
俺はマカーでSafariなんて使ってるから、俺の意見は参考にならないかもです。
たぶん、皆と見え方だいぶ違うはず・・・。
707 :
名無しさん ◆V00/Phqsn. :05/01/20 19:35:36 ID:MBsVnhvu
BR使わなくても改行してくれるPREタグ使ったら文字小さくなっちゃって(;´д⊂)
FONT使ってもいい感じの大きさにならないしなぁ・・・
意見してくれてる人どうもです(´・ω・`)もうちょい意見募ります
708 :
既にその名前は使われています:05/01/20 20:17:07 ID:+KY6+x2I
>>679へっぽこφ(・_・; )氏
すっかりと姿が変わってしまったブランを彼女は
どう受け止められるのでしょうか?
>>689◆6NLrYYfI2g 氏
宮廷魔術士・・・途中から、すっかりとキャラが走り始めたようですね。
いい意味で、裏切られましたw
次回作も期待しています。
709 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/20 21:00:27 ID:lLKNA3FS
>>690 感想どうもです。でも、もうちょっとだけ続きます。あと4レス分です。
ただ、確かにブランマーニュの出番はもうちょっとあったほうがよかったのかな……。
参考にしまする。
>>708 それを、1番わたしが訊きたかったりして、o....rz
あとすこしなので、最後まで貼ります。
710 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/20 21:01:44 ID:lLKNA3FS
●ハロウィンの贈り物38/41
その日、サンドリアは快晴でカーニバルには絶好の日和だった。南サンドリアの凱旋門前
では、多くの人々が賑わい、互いにモンスターに変身しては、戯けたり脅かしあったりして
いた。街には吟遊詩人も多く、楽しい調べを演奏しては、人々はそのメロディに合わせて歌
い踊り、カーニバルを満喫していた。
賑やかな調べに誘われて、ブランマーニュはエルヴェにもらったマホガニーの松葉杖をつ
いて、こっそりと病室を抜け出した。なぜ、そんな気分になったのだろう。別に楽しい気分
に浸りたいと思ったわけでもなかった。ただ、なんとなく病室にいたくなかった。
この杖はエルヴェとジョエルが木工職人の名人に頼み込んで作ってもらったものだった。
彼の体にぴったり合った、杖の使い心地にブランマーニュは改めて友のありがたみをかみし
めた。
このままではいけないことは、自分でも分かっているつもりだった。だが、心にぽっかり
と開いた大きな穴は、ブランマーニュから夢も希望も、生きていこうする意志さえも奪い去っ
てしまったかのようだった。
●ハロウィンの贈り物39/41
パンプキンヘッドをかぶった子供たちが、ふらつきながら歩いているブランマーニュの横
を避けて、楽しそうに駆けていく。ブランマーニュは、その子供たちに、エルヴェやジョエル、
そして自分の子供の頃の面影を思い出した。
あの頃は、将来に少しの不安も感じていなかった。自分たちの夢は未来に向かって、まっす
ぐに伸びていると信じていた。三人は、いつまでもどこまでも一緒だと。それが、こんなふう
に自分だけ別れてしまうことになるなんて……。
そして、ミリアム。今の自分に、彼女に見合うものがあるのだろうか……、
●ハロウィンの贈り物40/41
そんなことを考えているうちに、ブランマーニュは凱旋門前に来ていた。訓練で何度も
行進したことのある門の横を、ブランマーニュはひとり歩いた。片足のブランマーニュは
やはり目立つのだろう。好奇の視線を感じた彼は、無性に自分の情けない姿を隠したくなっ
て、売りにきていた菓子職人からゴブリンチョコを1ダース買うと、モンスターの姿にし
てもらった。
しかし、モンスターになってもやっぱり右足が生えるわけでもなく、そこには片足のま
まのヤグードが、寂しく松葉杖をついている姿があった。ブランマーニュはなんだか可笑
しくなって、その姿のまま城壁の縁に腰掛けた。
空はどこまでも蒼く、人々は小さな喜びを見つけては笑いあっていた。
●ハロウィンの贈り物41/41
そんなブランマーニュに、ジンジャークッキーを差し出す手があった。特産品売り場の
近くで座り込んでいたので、間違えたのだろう。
「ごめん、僕は違うんだ……、ハロウィンの人は向こうの……」
そう云いながら、相手の顔を見たブランマーニュは、それ以上言葉を続けられなかった。
「……あなたのために焼いたのよ、」
目の前にいる、ミリアムの瞳には涙が浮かんでいた、声も震えていた。
「ミリアム……」
自分の名を呼ぶ彼の声に、ミリアムはそのままブランマーニュの胸に飛び込んだ。
ヤグードの姿をしたブランマーニュがミリアムを抱きしめる光景を、遠くから見ていた
エルヴェとジョエルは顔を見合わし、お互いに微笑んだ。
遠くで祝福をあらわす花火が打ち上がり、人々は歓声を上げた。ハロウィンのカーニバル
は今から盛り上がりをみせようとしているところだった。
〜Fin〜
714 :
既にその名前は使われています:05/01/20 21:09:28 ID:+KY6+x2I
>>ハロウィンの贈り物
完結(^▽^)ゴザイマースΣ(^▽^;)
ただお互いが居ればいい・・・それが「愛」ってことですねぇ・・・
ほろりとさせて頂きました。多謝!!
長文失礼しました。
構成として、不幸で引き裂かれた主人公達を友人達が助けるという話を
やってみたかったのですが、うまく機能したのかどうか・・・・。
ブランマーニュにしても、具体的な立ち直りのエピソードを提示できませんでした。
というか思いつかなかったし、きっかけを与えるくらいが精一杯でした。
716 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/20 21:13:15 ID:lLKNA3FS
>>714 どうもです。もっと面白くなるよう頑張ります。m(_ _)m
717 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/20 21:35:09 ID:PBugLJgM
>>715 絶望的な主人公がどうなってしまうのか気になってたけど、
今後は、こちらが覗き見するのは野暮って物で、
後は、彼女や彼らに任せとけば立ち直っていくんだろうなぁ……
などと、胸をなで下ろした気分です(;´∀`)
有り難うございました。
718 :
既にその名前は使われています:05/01/20 22:57:15 ID:dnFVwfKr
719 :
既にその名前は使われています:05/01/20 23:56:38 ID:+KY6+x2I
本日ラストageで(^▽^)ゴザイマース
720 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/21 01:01:07 ID:swg4o6yh
>>717 感想ありがと〜。長文読んでいただけで感謝です。m(_ _)m
721 :
既にその名前は使われています:05/01/21 08:27:12 ID:t5OT9RRu
携帯唐揚げ
722 :
既にその名前は使われています:05/01/21 11:38:37 ID:4xEmv/Y/
緊急浮上
723 :
既にその名前は使われています:05/01/21 12:14:12 ID:19FN6xii
携帯あげ
724 :
690:05/01/21 16:01:58 ID:nCE5W78o
ああ、申し訳ない。まだ続きがあったのか。
貼り終えたって言ったからつい終了かと。
確かに、なんかやけに中途半端な終わり方だなと思ったんだけど…
失礼シマシタ
725 :
既にその名前は使われています:05/01/21 20:06:36 ID:4xEmv/Y/
今日もいい作品を期待あげ
ハロウィンの贈り物、完結おつかれさまでした。
文章がとてもきれいでやわらかくて読みやすい。
ネタに懲りすぎで読みにくい一方的な文章よりこういうの好きです。
727 :
既にその名前は使われています:05/01/21 23:20:08 ID:GJMoU+Zj
あげるだけですまん
>>726 >文章がとてもきれいでやわらかくて読みやすい。
激しく同意。
場面の描写なども丁寧に書かれているので安心して読める。
へっぽこさんのファンなので、これからもいいの書けたら貼って下さいな。
729 :
既にその名前は使われています:05/01/22 00:15:12 ID:15I66ffx
「ハロウィン」は女性が好きそうな話ですね。
短編にネタを詰めるより、長くても読みやすくした
ほうがいいのかな、などと思いました。
短編上げるのは控えて様子みさせてもらいます。
730 :
既にその名前は使われています:05/01/22 00:16:46 ID:9qt5wr0o
731 :
へっぽこφ(・_・; ) ◆w3Zp1E1s1M :05/01/22 02:06:39 ID:VE7eSee8
寝る前にage、と思ったら感想がきてる〜。
文章を褒めてもらえるとは思いませんでした。
気の利いた文とか台詞が思いつかないので、
せめて、分かりやすくしようとしたのがよかったのかな……。
また何か書き上げたらお世話になります。
>>724 こちらこそ、誤解を招くような書き方でした。すまんです。
20レス貼ります
ヴァナディールの最北端。フォルガンディ地方のアシャク山脈……
降り積もった雪が決して溶けることのない山奥で、一人の少年が住んでいました。
その子はエルヴァーン族の男の子で、耳がつんと尖っており、その肌の色は、雪のように
真っ白でした。ずっと雪山で暮らしていたから無理もありませんでした。
木々に囲まれた小さな家に、その少年は独りで住んでいました。
朝になると、少年はベッドから飛び降りて一日の仕事に出かけます。
既に、その子の兄弟達が家の周りに集まっていました。
その兄弟というのは黒い肌と、長く鋭い牙を持った虎でした。
少年は生まれてからずっと一緒に育ちましたから、本当の兄弟のように思っていました。
実は、この虎たちは人間を見ると襲わずにはいられない恐ろしい動物だったのですが、
少年には絶対に噛みついたり、爪を立てたりしようとは思いませんでした。
「みんな、おはよう。」
すると虎たちは、グルルル、と喉を鳴らしながら、少年の所へ集まり体をすり寄せました。
少年はさっそく家の隣に置いてあった一台のソリを引いて来て、虎たちにつなぎました。
「今日も頼むよ。ああ、君は初めてだね。それじゃ後ろがいいな。」
虎は、みんなそっくり同じ姿だったのですが、少年にはちゃんと区別がつくのです。
そうして、4頭の虎にソリを繋ぎ終えると出発です。
「はいよお!」
掛け声をかけると、虎達は一斉にソリを引いて走り出しました。
彼の仕事は、氷の結晶を集めることでした。
氷の結晶とは、この世の「寒さ」が形となった水晶で、この雪山にしか出来ないもの
でした。それは一体どこにあるのでしょう?
雪の上や、木の根本に落ちているのでもありません。その結晶は結晶同士が寄り集ま
って、くるくるくるくると回りながら、まるで生き物のように動いているのです。
少年はさっそく一つめを見つけました。かちかちに凍った池の畔で、ゆっくりと動いて
います。
少年が近づくと、まるで少年を待っていたかのように、氷の結晶は動くのを止めました。
それを指でツンと突くと、パリンという音がして、ころころとした氷の結晶が雪の上に
落ちて転がりました。
それをソリの荷台に載せ、他にいないかと周りを見渡します。そうして繰り返し10個
ほど集めたら、これで十分と少年は考え、また虎たちにソリを引かせて行きました。
普段は、そのまま家に帰るのですが、少年は少し山を下ったところにある広場へとソリ
を向かわせました。今日はその場所にゴブリンという小鬼が集まる日でした。
何人も集まって来て話をしたり酒を飲んだりしながら、少年が来るのを待っているのです。
「やあ、来たな。気分はどうだい?」
「早かったじゃないか。さあ、今日もいろんな物を持ってきたぞ。」
そんなことを口々に言いながら、ゴブリン達は集まってきました。
ゴブリンというのは、みな同じようなマスクをしていて、腰にまさかりや剣を吊し、
ガニ股でペタペタ歩く、奇妙な小鬼でした。
実はいうと、彼らは人間を見ると襲いかかり、殺したり、物を盗んだりする恐ろしい
連中だったのですが、少年には決してそんなことはしませんでした。
少年は、彼らに氷の結晶を食べ物やいろんな物と交換して、暮らしていたのです。
「えーと、氷の結晶が10個だな。それじゃあタマネギをこれだけ、イモがこれだけ、
あとは肉と、パンと……」
一応、結晶の数を数えているのですが、少年に渡す野菜や肉の量はいい加減でした。
タマネギ、イモ、羊の肉、にんじん、パン、バターなど、どれもこれも凍った食べ物
ばかりで、ミルクもカチカチに凍らせてたのを切り分けて、少年に渡すのでした。
その他、チョコレートなどのお菓子や洋服、ハミガキや道具など、生活に必要ないろ
んな物を交換してくれました。
そして、楽しみにしているのは、ゴブリン達が作った人形でした。
それは、ヴァナディールに住んでいるいろんな動物たちに似せて作られていました。
「へー、こんな首の長い動物が居るんだねぇ。」
「こいつはダルメルといってな。砂と風が吹き荒れる所に沢山住んでいるのだ。」
「砂?砂ってなあに?」
「ああ、そうか。この辺りは掘っても掘っても雪ばかりだからな。こんど持ってきてやろう。」
「本当?約束だよ。」
その人形は、いつでも貰えるわけではありませんでした。そして、ゴブリンから人形を
手渡されると、少年はとても喜びました。
少年は、貰った人形を眺めながら、いつもゴブリン達にこんな風に話をしました。
「僕もいろんな所を旅してみたいな。」
「ああ、ダメダメ。君はずっと雪の中で暮らしているんだから、雪のないところに来たら、
たちまち溶けて無くなってしまうぞ。」
ゴブリンは、そんなふうにからかうのですが、本当にそうかもしれません。
少年は、一度もこの雪山から下りたことはないのです。
でも、少年は言い返しました。
「でも、僕は毎晩あつあつのシチューを食べているのに、溶けたりしないよ。」
「わははは、確かにそうだな。」
ゴブリンは、少年の言うことを笑って聞いていましたが、もう一度、少年に話しました。
「でも、いいかい?この広場から下の方には、それはそれは恐ろしい連中がやってきて、
わしらを殺したり、わしらの物を奪ったりするんだ。わしらなら上手く逃げたり出来るん
だが、坊やなんかじゃすぐに殺されてしまうぞ。だから決して、ここから先に行っては
いけないよ。」
少年は、少し怖くなって、だまって頷きました。
ゴブリン達は、ずっとこの雪山に住んでいるわけではなく、砂漠や森や海の近くで狩りを
したり(狩る相手は人間だったりするのですが)、仲間と商売したりしながら、旅をして
暮らしているのでした。
そして、少年の集めた氷の結晶は、この雪山でしか取れないために、ここにやってくるです。
だから、いい加減に食べ物を渡していましたが、ちゃんと商売が成り立っているのでした。
そして、最後に必ず貰わなくてはならないが「炎の結晶」でした。
それは、氷の結晶が「寒さ」であったのに対して、「熱」が凝縮した結晶でした。
この結晶を使うと、薪や墨が無くても火を起こすことができ、シチューを煮たり、パンを
焼いたりできるのです。ずっと雪山で暮らし、寒さになれている少年でも、火の通した
料理を食べなければ生きていけないのでした。
草糸で編んだ袋に、沢山の炎の結晶を入れて貰いながら、少年は不思議そうに尋ねます。
「この結晶は、どこで取れるの?」
「遙かに遠くの山では、空から炎が降り積もる山があってな。そこから取ってくるのさ。」
「へぇ、そうなんだ。」
実は、これは嘘でした。
外の世界を知らない少年には、いつも、いい加減なことをいいました。
「それでな、ジュノという俺たちの街があって、そこにはゴブリンの王様が……」
どれもこれも、いい加減な嘘でしたが、少年は疑ったりせず目を輝かせて聞いてました。
ほかにも、ゴブリン達にいろんなことを教わったり遊んだりしてから、家に帰りました。
家に着くと、虎たちをソリから離してやり、家の中に入って晩ご飯のシチューを作らなけ
ればなりません。鍋の中に凍ったミルクとバター、これもカチカチに凍ったの肉や野菜
を放り込み、空いている隙間に雪を詰め込み、しっかり蓋をして準備完了です。
そして、特別に作られた竈に炎の結晶を差し込むと、ゆっくりと炎が上がりました。
少年は鍋を炎の上に置いてシチューが煮えるのを待ちながら、これもまた凍ったパンを
焼いたりして過ごすのです。パンが焼けていく途中で、チョコレートを差し込んでおくと、
チョコクリームパンの出来上がりです。少年はそれが大好きでした。
こうして、少年の一日が過ぎていくのでした。
虎やゴブリンの他にも、雪山にはいろんな者が居ました。
まず、山のように大きな大きな体つきをしている巨人。
巨人達は山の中をうっそりと歩き回り、片手に棍棒や斧をもって、通りかかる人間の旅人
を容赦なく殺しました。はいているズボンには、倒した人間が使っていた盾が縫いつけられ
ていて、それが彼らの鎧の変わりでした。
とてもとても大きな巨人の足ならば、少年を踏みつぶすことが出来たでしょうが、少年が
近くを通りかかっても、踏まないように注意しながら歩いていくのでした。
時々、少年は彼らに挨拶したり話しかけたりするのですが、巨人達は決して答えることは
有りませんでした。
そして、巨大な一つめの怪物が居ました。彼らは翼を持っており、絶えず飛び回っている
のです。かれらは魔法が得意で、近づいた人間達に恐ろしい呪文を唱えるのですが、少年
には、ただジッと見つめるだけで、何もしませんでした。
ほかにも、もともと人間であった骸骨が、手に武器や盾をもって歩き回っていたり、
坊主頭で足は無いけれど大きな手を持ったお化けが、ふらふらと浮かんでいたりしました。
少年は、いろんな怪物の近くで住んでいましたが、怪物達は少年に襲いかかったりすること
は一度も有りませんでしたし、怖い思いをしたことは、ほとんどありませんでした。
でも、そんな恐ろしい連中よりも、もっと恐ろしい怪物がいました。
それは、光の壁に囲まれた闇の城に集う魔神達でした。
その闇の城の方には行くことがありませんでしたが、退屈なとき、虎達にソリをあちこち
へと引かせて行くと、その闇の城の真ん前に辿り着いたのです。
何枚もの光の壁の向こう側に恐ろしい形の闇の城がそびえ立っているの見て、なんだか
少年は怖いと思いました。でも、初めて見る光景に少年は興味津々です。
少年はもっと近くで見たいと思いソリを近づけると、魔神の一人が目ざとくその子を
見つけました。
少年は魔神を見るのは初めてでしたが、魔神はその子のことを知っていました。
だから、殺そうとは思わなかったのですが、すこし脅かしてやれ、と思いました。
何者も、闇の城に住む闇の王に近づける訳にはいかなかったからです。
「そこにいるのは誰だ!」
そう、魔神はワザと大きな声を出して、持っていた剣を少年の方に突きつけました。
「うわぁ、びっくりした。」
少年は本当にびっくりして、尻餅をつきながら言いました。
そして、魔神はゆっくりと剣を引いて言いました。
「なんだ、お前か。ここに来てはいけない。俺はもう少しでお前を殺してしまうところ
だった。」
「どうして、僕のことを知ってるの?そして、どうして殺そうとするんだい?」
「ああ、山に住んでるものは、みんなお前を知ってるのさ。そしてお前を殺そうとしたのは、
お前が悪い奴らだと勘違いしたからだ。」
「悪い奴ら?」
「そうさ、ここに住む王様を殺そうとする悪い奴らさ。だから、ここに住む兵士達は、
知らない奴が来たら殺せ、と命令されている。」
「みんな僕を知ってるのなら、僕は殺されたりしないよね?」
「だがな、坊主。城の中には沢山恐ろしい罠が張り巡らされているぞ。俺たちでしか
くぐれない罠だ。しかも、兵士達が君のことを、うっかり間違えて殺してしまうかも
しれないぞ。今のようにな。」
魔神はニタリと笑って言いました。
そう言っている時に城の扉が開いて、大勢の魔神達が翼を広げて空へと飛んでいきました。
その恐ろしい光景を見て少年はもっと怖いと思い、寒さに強いはずの体が震えだしました。
その少年の様子を見て、魔神は言いました。
「ああ、俺の仲間達が、悪い奴らが近づいてこないか見回りに出て行くところだよ。
山はとても広いから、大勢で行かなければならない。」
この説明は少し間違っていました。
見回りをする者も居たのですが、闇の王を狙う連中の他に、罪もない人間達を殺したり、
人間達の住む家に火を付け、街や村を破壊しに行く連中も居たのです。
魔神は、少年に向き直ってこういいました。
「さあ、もう住んでいるところに帰るんだ。今日は危ないところだったな、坊主。」
そういって、少年を追い返してしまいました。
少年は二度とその城には近づこうとはしませんでしたが、やっぱり退屈して、いろんな
所へと行きました。この山にある物は、木と岩と山。そして、決して溶けることなく
降り積もる雪ばかりでしたから。
やがて、少年はゴブリン達から禁じられている、広場の更に下の方へと行ってみたくな
りました。ゴブリン達から聞いた炎の降る山、砂だらけの砂漠、水ばかりの海を見てみ
たくなったのです。
少年は、ゴブリン達のやってこない日に、広場の下の方まで降りていくことにしました。
この広場の向こうに何があるのだろう?僕も、いろんな世界を旅してみたい。
そう思うと、少年の心は少しワクワクしてきました。
そちらの方へとソリを走らせようとすると、何故か虎達は少し嫌がりました。しかし、
少年に強くうながされると、仕方なしに広場の更に下へと、降りていきました。
曲がりくねった長い長い谷道をどんどん進みました。少年はここまで来ることは初めて
だったので、ドキドキしました。怖いとも思いましたが、それは闇の城を見たときとは
少し違った怖さでした。
そして、遂に谷道が終わって、とうとう広く開けたところに出てきました。
そこで少年の見た物は……
……やはり、少年の見た物は溶けることのない雪と、木や岩ばかりでした。
いったいどこまで行けば良いんだろう、そう少年が考えていると、突然、少年からの
指示もないのに、虎達は急に向きを変えました。
危ないところでした。ソリはあと少しで高い崖の上から落ちるところだったのです。
そして、ソリから降りて崖の上から景色を眺めてみると、どこまでもどこまでも広がる雪
の世界でした。
少年は思いました。
「ゴブリンたちは嘘をついたのかな?それとも、もっともっと遠くまで行かなくちゃ
ならないんだろうか……」
でも、少年はこれ以上進む気にはなりませんでした。帰りが遅くなったり、帰り道が
判らなくなったら困るからです。
その時、
「ガァーーーーーッ!!」
少し離れた場所から、大きな吠える声がしました。それはソリを引いていた虎達と同じ
声でした。慌てて少年は、その声のする方へと走っていき、虎達もソリを引いたまま
少年についていきました。
そこいたのは一人の狩人で、別の虎と戦っている最中でした。
虎は牙や爪を振るい狩人と戦っていましたが、狩人の見事な腕前にはかないません
でした。そして虎には、すでに何本も狩人の放った矢が突き刺さっていました。
背中に剣を突きさされ、とうとう虎は狩人に倒されてしまいました。
どくどくと血を流している虎の前にしゃがみ込み、狩人は何かをしていました。
すると、ごきり、という嫌な音がしました。狩人は倒した虎の牙をへし折ったのです。
その虎の牙は、彼が住む町でとても高く売れるのです。そのため、彼はこの山に来て
沢山の虎を倒しては、沢山の牙を集めているのでした。
少年は、その恐ろしい光景を見てガタガタ震えていました。
怖い、と思いました。でもそれだけではありません。
めらり……
少年の心の中に、炎の結晶が埋め込まれたかのように、炎が上がりました。
でも、少年の心はガタガタ震え始めて、その炎はすぐに消えてしまいました。
そのとき、その狩人は初めて少年が居ることに気がつきました。
『坊や、こんなところで何をしてるんだ?』
狩人は声をかけました。
けれども、少年には全く通じない言葉でした。
「……」
少年は怖くて何も言えませんでしたし、身動きも出来ませんでした。
そして、この人は一体何を言っているんだろう、と考えました。
狩人は少年の後ろに、4頭の虎がソリを引いて、ついてきているのを見つけました。
『この虎は獣使いでしか、手なずけることはできない。坊やは獣使いなのかい?』
幾分、優しい声で狩人は言いましたが、やはり少年は何も言えません。
少年が何も言わないため、狩人はどうしてよいか判らなくなりました。
狩人は右手に剣、背中には弓矢を背負っていました。
そして、耳が尖っていて、少年と全く同じエルヴァーンの種族だったのです。
狩人は、ここからだいぶ遠くの洞窟に入り、その長い長い洞窟をくぐった先にある、
緑溢れるサンドリア王国という国からやってきたのです。
そして、ここまでやってきて、高価な虎の牙を集めていくのでした。
狩人は少年の方を見て、いまいましい、と思いました。
なぜなら、少年の連れている4頭の虎の牙が、欲しくて仕方がなかったからです。
でも、虎達がなついている少年に、ことわりなく虎を殺してしまうことは出来ません。
そして、狩人は不思議に思いました。
獣使いというのは、様々な動物を操ることが出来るのですが、一度に4頭もの虎を
操る獣使いなど、聞いたこともなかったからです。
狩人は、さらに少年に話しかけました。
『こんな恐ろしいところに居てはいけない。さあ、街まで送っていこう。』
狩人は、この子が同じサンドリアから来たのだと思い込んだのでした。彼にとって、
この少年が独りで住んでいることなど、想像することも出来なかったのです。
狩人は剣を納めて、ゆっくりと怖がらせないように、少年に近づいていきました。
その時です。
「こらあ!その子に触るな!」
大きな声がしました。
ゴブリンです。本当はここに来る予定ではなかったのですが、たまたま近くまで来たので、
ここを通りかかったのでした。
そしてゴブリンは、まさかりを振り上げて、狩人に立ち向かって行きました。
少年は、その光景に驚いて、どうしてよいやら判らなくなっていると、何者かが少年の
口をふさいで、その小さな体を担ぎ上げて、その場から逃げていきました。
それは別のゴブリンでした。そして4頭のソリを引いた虎達も後に続きました。
そして、少年は担がれながら後ろを見ると……丁度、狩人にゴブリンが殺されたところ
が見えました。
めらめらめら……
またしても、少年の中の炎の結晶が燃え始めました。
ゴブリン達は少年を家まで送り届けて、こう言いました。
「それごらん。わしらの言ったとおりだろう?君が広場の先に行った所には、あんなに恐
ろしい奴がいるんだ。おかげで、わしらの仲間は殺されてしまった。それは構わない。
君がこうして無事で戻ることが出来たのだから。そして君は二度と広場の先に行くこと
はないのだから。それが判れば、死んだ仲間も喜んでいることだろう。」
そういうと、少年は涙を流しながら、ゆっくりと頷きました。
ゴブリンは少年の変わりに虎達をソリから離してやり、シチューを火にかけて帰って
行きました。そして、燃え上がった心の炎は、ゴブリンが死んだ悲しみの涙で、すっかり
消えてしまいました。
狩人は、少年がゴブリンに掠われてしまったと思い込みました。
自分が近くにいたのに助けることが出来なかったと悔やみました。でも、ゴブリンが
走っていった先は、とても恐ろしい場所なので、一人で追いかけることは出来ませんで
した。狩人はしばらく考えていましたが、助けを借りることを思いついて、大急ぎで
サンドリアの街まで帰っていきました。
狩人が街までつくと、大急ぎで酒場に向かいました。
酒場に行ったのは、もちろんお酒を飲むためではありません。そこに集まっている
冒険者や戦士達が目当てでした。
狩人は酒場に入るなり、こう叫びました。
『みんな、手を貸してくれ!ボスティン氷河で少年がゴブリンに掠われてしまった!』
なんで、そんなところに少年が居るのだろう?
そんなふうに考える者も居たのですが、この狩人の真剣な様子を見て、疑う者は一人も
いませんでした。
『ボスティン氷河の更に北、ザルカバードの方角だ。とても一人では手に負えない。
みんなの助けが必要だ!』
『そこは恐ろしいところだ。大勢で行っても死人が出るぞ。一人のために犠牲者が出ても
いいのか?』
すると他の戦士達が叫びました。
『俺は死んでもかまわないぞ。俺なんかより、その少年の未来の方が大事だ。』
『そうだ!俺も行くぞ!』
戦士や冒険者達は一斉に立ち上がって、狩人の頼みに答えました。
そして、大勢で少年を助け出しに行くことになったのです。
あくる日、少年はまたゴブリン達の集まる広場に向かいましたが、なんだか元気が出ま
せんでした。少年が気まずい気持ちで、広間の方を見下ろしていると、ゴブリン達は手
を振って少年を迎えようとしていました。
少年の元気のない様子は遠くからでもわかりました。ゴブリン達は少年のことを怒って
はいません。仲間が殺されてしまったけど、それを少年が悲しんでくれたことが、
とても嬉しく思いました。本当の仲間のように、少年をいとおしく思いました。
ですが、その時です。
後ろから、サンドリアの戦士達が現れたのです。とうとうこの場所を見つけて少年を
救い出しに現れたのです。そして、ゴブリン達に襲いかかりながら大声で叫びました。
『あの少年だ!ゴブリン達を倒して、あの少年を救い出すんだ!』
めらめらめらめらめら……
戦士達に倒されていくゴブリン達を見て、またしても少年の炎の結晶が燃え始めました。
今度はもう止められません。火のついた少年の心は、たちまち燃え広がり、全身は
シチューの様に煮えたぎりました。もう、少年は我慢できなくなって叫びました。
「ウワーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
すると、
「ゴォアアアアアーーーーッ!!」
「オオオオオオーーーーッ!!」
「ガアアアァァーーーーッ!!」
遠くの方から、あるいは近くから一斉に叫び声が上がりました。巨人達です。
普段はゆっくりと歩き回る巨人達が、一斉に雄叫びを上げながら、凄まじい勢いで
広場の方へと集まってきました。
それだけではありません。黒い虎が兄弟達や仲間達を集めて、唸り声を上げながら
向かってきます。
大きな目玉の怪物や、骸骨達も、辺りを埋め尽くすほどの物凄い数で、広間の周囲を
取り囲みました。
戦士達はうろたえました。怪物達は遙かに数は多く、もう絶体絶命でした。
狩人は気がつきました。少年の叫び声がきっかけで集まったのだと。
少年の雄叫びに、怪物達が答えたのだと。でも、どうしてよいか判りません。
でも、このままではみんな倒されてしまいます。
狩人は、この後どうなるかも判らず、弓に矢をつがえて、ぶつっと放ちました。
狩人の放った矢は、狙いを外すことなく、少年の胸に刺さりました。
そして少年は、ぱたりと雪の上に倒れてしまいました。
すると……
怪物達は、一斉にその場で立ちつくしました。
巨人達は吠えるのを止め、骸骨達はそれ以上進もうとはせず、虎達も唸り声を止めました。
しばらくそうしていたかと思うと、後ろを向いて元から来た方角へと帰って行き、誰も
少年の敵を討とうとは思いませんでした。
後に残されたのは、既に倒してしまったゴブリンと、もう動かなくなった少年だけでした。
狩人はあるものを拾い上げました。それを見ていて狩人はしばらくジッと考えましたが、
自分が大変な思い違いをしていたことに気がついたのです。
この少年はゴブリン達の仲間だったということに。
そうして考えている狩人に戦士達は声をかけました。
『せめて、少年をサンドリアの墓の元で、弔いをしよう。』
けれども、狩人は言いました。
『この少年は、ここで弔わなくてはならない。』
狩人は少年を抱き上げて、彼の家を探しました。山は唸り声を上げて、猛烈な吹雪を起
こしましたが、狩人はけっして諦めずに、少年の家を探しました。
怪物達や闇の城の魔神達も狩人を見かけましたが、襲いかかろうとはしませんでした。
そして、とうとう見つけました。
その小さな家は、屋根に小さな煙突があり屋根には雪が降り積もり、その壁は巨人達の
履く、盾の縫いつけたズボンが使われていました。
狩人は、その小さな家の中を覗き込みました。
家の中の壁には……
首の長いダルメル、大きな大きな雄羊、恐ろしい毒針を持った蠍、翼を広げた竜、
髭の長い豹、鮹の足を持つ平たい大魚、羽根の透き通った蜻蛉など……
ありとあらゆる人形が並べられていました。動物に詳しい狩人の知っている動物は、
全て有りました。それはゴブリンの手により、全て本物そっくりに作られていました。
彼は少年をベッドの上に寝かせて、そっと毛布を被せると、少年はただ眠っているか
の様に見えました。また、翌朝に目を覚ますのではないかというように。
そして、広間で拾った最後の人形を棚の上に置きました。それはゴブリン達が初めて
少年にあげようとした、ゴブリンそっくりの人形でした。死んだ仲間の変わりに、と
用意した物でした。そして少年のベッドの隣には、ひときわ大きな二つの人形が置か
れていました。それは少年が寂しくないように、やはりゴブリン達の手によって、
少年が赤ん坊の時に死んだ両親に似せて作られたものだったのです。 (完)
753 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/22 06:57:37 ID:2nvW/Hjf
長文失礼しました。
少々、オリジナリティに欠けるような気がしますが、読んで頂けると幸いです。
754 :
既にその名前は使われています:05/01/22 13:30:53 ID:VE7eSee8
おもしろかった。一気に読みました。
まるで、ほんとの小説みたいでした。
755 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/22 18:46:23 ID:2nvW/Hjf
>>754 ご評価ありがとです。そう言って頂けるとすごくウレシイ
...なんていうか、重ーい話乗っけちゃってすんません。
756 :
既にその名前は使われています:05/01/22 19:47:28 ID:No28qtuX
>>753◆6NLrYYfI2g氏
いやいやこれは、いい話ですね。
わたしも一気に読んでしまいました。
文章的な構図も完成されているし、下手な小説家の
作品よりよく出来てると思いました。
758 :
既にその名前は使われています:05/01/23 00:36:44 ID:oV6iYc6/
>>757 初めて小説以外きた〜。
なんか怖いっす。額のあたり。1/6っていうと結構でかい?
ガルカっつーか闇王って言われても納得したかもしれない。
いやガルカだけど。
760 :
既にその名前は使われています:05/01/23 00:47:55 ID:oV6iYc6/
色を塗ったのも見てみたいです。
761 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/23 08:35:16 ID:hc/Tm61O
>>756 つДT)うぉぉ、そこまで言って貰えるとは思わなかった。
すんごく嬉しいです。
では、調子に乗って解説と自己批判
なんというか、小学校高学年でFFを知らない人向け、
というのを想定して、文章を組み立ててみました。
それが良かったのかも知れません。
あと、オリジナリティがないと思ったのは、
>>599〜の「卑しき血流れず」の裏返しを想定したように見えるから。
あと、少年を「エルヴァーン」としたけれど、
怪物達が「人間を殺す」という説明をつけてしまった。
「人間≠エルヴァーン」と受け取られかねないので、
FFを知らない人(この板に居るはずもないけれど)は
エルヴァーンは人間の仲間、ていうか同じような物と見て下さい。
762 :
既にその名前は使われています:05/01/23 08:40:23 ID:9ks+46Rh
「あ、ぽこたんインしたお!」
763 :
既にその名前は使われています:05/01/23 13:13:17 ID:npO3fK0Q
携帯唐揚げ
764 :
757:05/01/23 17:18:27 ID:dV8h3NwS
感想ありがとうございます、757です。
>>758 1/6というと、12インチサイズの人形とかにフィットする大きさです。
12インチは大体30センチくらい。
GI-joeとかリカちゃん人形のサイズです。
標準的人類(ヒューム)サイズの1/6に合わせて作ったので、
身体まで作れば40センチくらいになるかもしれないですね。
元々は1/6サイズのドール(コスチュームが布製の着せ替えができるお人形)のカスタムヘッドとして掘り始めたのですが、
現存するドールの素隊だとサイズが合わないようです(ガルカだから当たり前ですが)
今後は身体も作っていく事になるかも…。
>>759 ゲーム中の3dモデルやハイポリを参考に作っていたのですが、肌の質感や造形等はゲーム中では殆どテクスチャだけで再現されているんです。
立体物としての面白さを考えると、どうしても独自の解釈でヘラを走らせる事になってしまいました。
>>760 樹脂粘土製なので、原型をもうちょっと煮詰めてみてから型を取ってキャストという樹脂に反転してみようと思っています。
いつかお見せできるように頑張ります。
765 :
既にその名前は使われています:05/01/23 20:49:03 ID:oV6iYc6/
>>764 こういうのは塊を削ってつくるのか・・・知らんかった。
あと、原形には色つけないんだな。考えてみれば、あたりまえか。
全然知らない分野なんで、興味深いです。今後も出来たらのっけてくだせい。
応援age
766 :
既にその名前は使われています:05/01/23 22:07:06 ID:c8w2Sqqn
確かに、小説じゃなきゃだめって訳じゃないからな。
これも立派な創作だ。
そういやー、どっかにセルビナーマウラ間の機船の模型作ってる人がいたと思ったが。
767 :
既にその名前は使われています:05/01/24 02:13:39 ID:+YaSqEz2
age
768 :
既にその名前は使われています:05/01/24 07:38:42 ID:jfeaYtVK
携帯唐揚げ
769 :
既にその名前は使われています:05/01/24 12:22:27 ID:rHfquaRy
あげ
770 :
既にその名前は使われています:05/01/24 12:31:47 ID:qxxavxZz
支援あげ
771 :
既にその名前は使われています:05/01/24 18:47:54 ID:js9qpupE
保守ばかりが続く今日この頃...
772 :
既にその名前は使われています:05/01/24 22:05:48 ID:qxxavxZz
むむむ。文才のなさが恨めしいですな。
773 :
既にその名前は使われています:05/01/25 00:10:16 ID:0IMZ89In
@
774 :
既にその名前は使われています:05/01/25 05:25:52 ID:zuuXei38
〜竜の錬金術師 第8話 老チョコボの願い(前編)〜
竜だった少女はピケルと名付けられた。
ピケルは人の言葉を覚え始めると、喋る事は出来ないものの色々な文献に読みあさった。
そんなある日、チョコボ小屋を通り掛かると小屋の中から弱々しい微かな声が聞こえてくる。
小屋の中に入ると足を怪我した年老いたチョコボが寝そべっているのが見える。
(また・・・この大地を駆け抜けたい・・・)
ピケルはそれを聞くと、毎日のようにやって来ては老チョコボを看病し励ました。
老チョコボは見る見る内に体調を取り戻したが、足だけは一向に治る気配を見せなかった。
そこでピケルは白魔法の文献を学習し、回復魔法での治癒を試みる。
魔法をかけ終わると老チョコボは立ち上がった。
回復魔法は成功したのだ。
ピケルと老チョコボは喜んだ。
老チョコボはピケルを乗せてチョコボ小屋を飛び出す。
広い広いグスタベルグを走り回った・・・若いチョコボにも上回る勢いで。
(ありがとう・・・ありがとう・・・)
775 :
既にその名前は使われています:05/01/25 05:26:53 ID:zuuXei38
〜竜の錬金術師 第8話 老チョコボの願い(後編)〜
翌日、ピケルはチョコボ小屋を訪れたが老チョコボの姿はそこには無かった。
しばらくするとチョコボ小屋の職員が現れ、辺りを見渡すピケルにこう言った。
「ここにはヴァナディール1足の速いチョコボが居たそうだよ。もう随分前に死んだらしいけどね。」
ピケルは空を見上げた。
すると老チョコボの声が微かに聞こえた気がした。
(ありがとう・・・)
「あり・・・が・・・とう・・・」
ピケルが始めて口にした人間の言葉であった。
776 :
既にその名前は使われています:05/01/25 07:12:22 ID:T2/qwaaA
クポ Λ( Λ 〔^^〕
_,( -●-)⌒ i | クポ
クポ (⌒ ー 一 r.、! 〉
ヽ弋 。 人 。 イ(` ー'
〔勿\ ヽ
) r⌒丶 ) クポ
タル クポ / ! |'´
タル / /| |‖ タル
( く ! ||‖ タル
タル \ i | ‖|‖|
,__> ヽ从/从/人 タル
⊂⌒ヽ从/ つ;´ω`)
777 :
既にその名前は使われています:05/01/25 19:43:52 ID:hjlm8kYC
ageときますね。
778 :
既にその名前は使われています:05/01/25 20:49:30 ID:zN9gsoVb
あげついでに感想も
面白くて毎日チェックしてます。これからもどんどんお願いいたします
779 :
既にその名前は使われています:05/01/26 00:59:26 ID:MZdifglX
今は上げるだけで
780 :
既にその名前は使われています:05/01/26 13:25:45 ID:t61Ypoai
ここはジュノの最上階、『ルルデの庭』の噴水前。
底の地面に何故か置かれているのは山盛りにして積まれた羊の生肉。
それを取り囲む様にして正座で座っているのは、3人のガルカでした。
それぞれ、サンドリア、バストゥーク、ウィンダスの礼服を着ています。
どうやら、各国の命運をかけた勝負が始まるようです。
そして、観客席に並んで座っているのは、三角座りしている各国出身のタルタル達。
手に手に三国の旗を持っているので、審査員だと言うことが判ります。
さぁ、勝負の始まりです。ミスラがにこやかにプラカードを掲げて歩いていきます。
さて、最初のお題は...
お題『クエスト』
サンドリアのガルカは誇らしげに答えました。
「虎狩り!」
審査員は納得した様子で頷いています。
バストゥークのガルカも負けては居ません。
「キュスマラソン!」
審査員が議論しています。低レベル者でも出来る点で評価が高いようです。
ウィンダスのガルカが答えました。
「ミスラのダルメル飼育員に絹糸を渡す。」
審査員はどっと笑いました。誰もやるはずがない理不尽さがうけたようです。
勝利者はウィンダスのガルカに決定しました。
ウィンダスのガルカが生肉を一枚、ぺろりと平らげました。
どうやら、サンド、バスのガルカは審査に納得がいかないようです。
お題『NPC』
サンドリアのガルカは誇らしげに答えました。
「バイト少年!」
審査員は重々しく頷きました。涙するものさえ居ました。
バストゥークのガルカは自信なさげに答えました。
「……ファッションチェックのブリジット」
いや悪くはない、という答えも聞こえてきますが、今ひとつうけません。
ウィンダスのガルカが自信満々に答えました。
「シャントット博士!」
審査員は拍手喝采です。もはや勝負は歴然としています。
またしても勝利者はウィンダスのガルカです。
ウィンダスのガルカが生肉を一枚、ぺろりと平らげました。
サンド、バスのガルカは、今度はお題に文句を付けています。
お題『女とは』
サンドリアのガルカは誇らしげに答えました。
「エルヴァーン女の尻!」
審査員は重々しく頷きました。何故か涙するものさえ居ました。
バストゥークのガルカは、今度ばかりは自信満々です。
「ヒュム女の太もも!」
審査員は拍手喝采です。バストゥークのガルカは勝利を確信しました。
ウィンダスのガルカが、ぼそりと答えました。
「……ミスラの尻尾」
ほう……などと、審査員からため息がこぼれました。意外に好評なようです。
微妙な差でしたが、またしても勝利者はウィンダスのガルカです。
ウィンダスのガルカが生肉を一枚、ぺろりと平らげました。
サンド、バスのガルカは、どうにも納得がいかないようでした。
この後、延々と勝負が続けられましたが最後の最後までウィンダスのガルカが勝利し
続けるでしょう。
さて、それは何故でしょうか?
言うまでもなく、審査員をタルタルだけで揃えてしまったのが原因でした。
例え各国に所属を換えても、ウィンダスに対する妙な愛国心がうつろうはずはありま
せんでしたから。
(完)
786 :
◆6NLrYYfI2g :05/01/26 15:54:34 ID:MZdifglX
くだらないネタでごめんなさい。置いときます。
787 :
既にその名前は使われています:05/01/26 15:58:19 ID:RZMJjfVD
つまりタルタルは腹黒で氏ねかw
ハゲドウ
788 :
既にその名前は使われています:05/01/26 20:13:41 ID:SAnR0Jkv
まるあげ
789 :
ケトラー:05/01/26 21:19:32 ID:OCYLniJu
ageだまボンバー!!
790 :
既にその名前は使われています:05/01/26 21:20:21 ID:MJ0uH0lu
ヤキソバンキターーーーー!!
「持っていきな」
まるで棒切れでも扱うかのようなぞんざいな素振りで、
そいつは俺に何かを手渡した。
ちょうど俺の腕の長さと同じくらいのそれは、
身構える前にふいに虚空に放たれ、俺は慌てて手を差し出す。
「と、と……」
ずしり、と重い感触があって、
俺は手に入れたそれをしっかりと右手の中に握りしめる。
「オイオイ、しっかりしてくれよ」
そいつは「フン」と鼻で笑ったようだったが、
俺は一瞥を加えただけですぐに右手のそれに目をやった。
まっすぐ、すらりと伸びた鮮やかな赤茶色、
四分の三ほどのところは十字になっていて、
中心には魔法の輝きともいえる小さな宝石が埋め込まれていた。
「何千、いや――何万ものモンスターを斬った名剣だぞ」
そいつは呟いて、もう冷めてしまった紅茶を一気に喉の奥に流し込むと、ニヤリと笑う。
「未だに錆びぬ」
それは、古びた鉄製の長剣に見えた。
だが、魔法で打たれたらしいそれは、
もしかしたら銀製のものか、
古代より受け継がれる魔法金属の類かもしれない。
俺はゆっくりと鞘を滑らせると、
真っ白に輝いた刃に映る自分の顔を見てやった。
刀身をずらすと光が折れ、角度を変えて何度も俺の顔が映し返す。
「初々しい輝きだろう?」
そいつはまた笑った。
剣は、まだ新米という未熟さか、または冒険に憧れる瞳の輝きか、
更に先にある名声を夢見ている男の
傷ひとつないウブな表情が見てとれるようで、
俺は少し恥ずかしくなってすぐに元の鞘にしまい込んだ。
そしてそれがばれないように俺は不自然に落ち着きを取り繕うと、
そいつに訊き返す。
「いいのかい、高いんじゃないのか?」
とは言ったものの、正直渡りに船だった。
長旅を経てようやくバストゥークとやらに辿り着いたはいいが、
いささか路銀が尽きていたのだ。
「なぁに、どのみち二束三文で捌く品だ」
間を置かず、そいつは答えた。
「誰が打ったかは知らぬが、誇れるのは錆びぬことくらいで
実のところ切れ味はあまり良くないのだよ」
なんだい、そりゃ。
「だが今のお前さんにゃピッタリだろ」
そいつは先ほどと同じようにニヤリとして、気さくに俺の肩をたたく。
俺は剣を手に握りしめたまま、じっと剣を見つめていた。「名剣、ね」
威力云々はさておき、
しばらくはありがたく使わせてもらうことになるだろう。
何せこれまで使っていた剣はボロボロだったから、
今の俺にはこの他に武器がない。
しばらく稼げるようになったら、もっと良い武器を揃えればいいだろう。
ともかく、半ば押し売られた
――いや、こちらは1ギルたりとも払ってはいないのだから
売りつけられたという表現は適切ではないが、
俺は一振りの剣を手に入れることができた。
最初話しかけられたときはおかしな奴だと思ったが、
今は礼を言わねばなるまい。
「礼はいらんぞ」
そいつは俺の考えを見透かしていたかのように、
「大事に扱ってくれさえすればな」
俺に背を向けておもむろに歩き始めていた足をぴたりと止めた。
そして、振り返りざまにこう言うのだった。
「絶対に捨ててはイカンぞ。真に良い物は人から人へ巡るのだ。
ワシがお前さんに渡したようにな」
俺はとくに礼を言うでもなく、
ただひとつ首をすくめるように肯いていた。
捨てるはずもないとは思うが……
「歴戦の中をかいくぐってきた名剣だろう?」
そいつはもう何も答えず、今しがた俺が来た方向
――つまり外へと続く門の方へ歩いていた。
俺は急に手持ち無沙汰になって、
とりあえず剣を握りしめたまま大きく手を振った。
「ありがとよ! いつか恩返しがしたい。――あんた、名前は?」
「Romeo(ロメオ)だ」
遠くから、そいつの声が返ってきた。
「お前さんが途中でくたばりさえしなければ、
またいつか会う日も来るだろう」
けっ、口の減らない野郎だ。
俺は貰い物の剣をまっすぐ縦に構えると、
もう向こうの方に霞んで見えやがるそいつに、
吐き捨てるように呟いてやった。
「……誓うぜ」
(おわり)
796 :
既にその名前は使われています:05/01/27 03:42:49 ID:3ThCA8Gc
おわりかよ!w
797 :
既にその名前は使われています:05/01/27 13:45:39 ID:83UWmLK2
Romeo...セルビナのリサイクル野郎?
オニオン装備かよw
798 :
ヴァナケイ・コラム:05/01/27 15:08:45 ID:zUA2F0SB
『レベル30以下の姫に贈り物を渡すか』
所属LSにレベル30以下の姫を持つレベル60-75の男性に、姫に定期的に
贈り物を渡しているか聞いたところ、「渡していない」という回答が67%を占めた。
「渡す理由が見当たらない」という理由が多いが、「まだ姫のレベルが低いため」
(74歳の赤魔道士)、「必要なものはその都度、相談して買い与えている」(68歳の
暗黒騎士)という人も目立った。
一方、定期的に渡すというバストゥークのナイト(75)は「彼女にとって特別な
存在になりたい」。贈り物に恋愛効果を期待する人が少なくない。
しかし専門家の間では「我慢して金策をする経験がないと金銭感覚が
養われず、与えられる状態が普通なのだと勘違いする非女に
なりかねない」といった指摘は多い。
バストゥーク広報中央委員会「LSの姫に関する世論調査」によると、
贈り物の平均金額はレベル30で平均7万ギル。レベル50は23万ギル、
レベル75は94万ギルだった。所属しているLS別に見ると、少人数LSに
比べて多人数LSの方が高い傾向がある。また、なれあいLSより
HNMLSの方が贈り物の金額は高かった。
799 :
既にその名前は使われています:05/01/27 16:41:55 ID:/hGupU+I
前あったβ終了時の小説とか、こういった独自の解釈を見るのはおもしろいね。
800 :
既にその名前は使われています:05/01/27 19:19:49 ID:83UWmLK2
801 :
既にその名前は使われています:05/01/27 20:08:07 ID:2l/kgdgm
から揚げ・・・食べたいな・・・
802 :
既にその名前は使われています:05/01/27 20:26:44 ID:smv7pKgC
age
803 :
既にその名前は使われています:05/01/28 07:43:09 ID:iyRBJ4fk
まぁなんだ。あげとくな。
804 :
既にその名前は使われています:05/01/28 12:10:10 ID:dPyNfm3R
ほっしゅ
805 :
既にその名前は使われています:05/01/28 13:59:17 ID:YERTC7oF
806 :
既にその名前は使われています:05/01/28 20:49:59 ID:9EXpJIdD
age
807 :
既にその名前は使われています:05/01/29 00:10:15 ID:1OVOsFjR
携帯唐揚げ
808 :
ケトラー:05/01/29 07:47:45 ID:G1QBnrOx
ごっど
809 :
既にその名前は使われています:05/01/29 16:20:05 ID:Lb7KXMRx
age
810 :
既にその名前は使われています:05/01/29 17:33:12 ID:/f8OIipW
RPGツクールでFF11のオフゲ版作りたいな
誰かストーリー考えとくれ
できれば主人公バス出身でよろwww
811 :
◆yANtvXYFvY :05/01/30 09:39:23 ID:mxI7RKo+
test
一陣の風が吹いた。撫で付けられた下草が小波のように揺れている。
ここはよく風が吹く。そのせいで砂塵が舞う事もしばしばあったが、この風は小麦を
挽くための風車を回すのに好都合だった。もっとも、挽いた小麦を運ぶ際の経費、
安全面の問題や新しい製粉技術の発達により風車は廃れてしまい、今は当時の遺構として
存在を残すのみになってしまったが。
ここの環境は植物、特に高木にとっては過酷なものだった。
舞い上がった砂塵に太陽を遮られ、成長した木は落雷で焼け落ちる。
そして巨大な雄羊族になぎ倒され、種は踏み固められ芽を出さない事もしばしばあった。
ここ───コンシュタット高地と同様に、ラテーヌ高原にも強い風と雄羊族がいるが、
あそこがコンシュタット高地よりも木々が豊かなのは、豊富な雨量によるものだろう。
雄羊族の接近を察知するには、その巨体を視認することはもちろんだが、耳を澄ましてみる事だ。
ここにはあれより巨大な種族はいない。地響きを聞き付ける事ができれば、近くにいる事がわかるはずだ。
だが───どうやら、今の地響きは雄羊族のそれとは違うようだった。
コンシュタットの乾いた大地が黒く焼け焦げている。下草についた火は、いつのまにか降り出した、
ここでは年に数回あるかないかの雨によって消し止められていた。
地響きの発信源は、コンシュタットの西方にあった。
すり鉢状に、小さく地面がえぐられた場所がいくつもあり、それは、ある一点を取り囲むように並んでいた。
その一点に、人が倒れていた。
6人。
鎧、衣服は黒く煤け、焼け焦げている。
倒れたままぴくりとも動かないので、生きているのかどうか定かではなかったが、しばらくして、
その内の一人がよろよろと立ちあがった。
彼は周りを見渡して敵がいない事を確認すると、まず自分の体を確かめた。
体中が痛み、どこが酷い状態なのかさえよくわからなかったが、右腕が折れているのは間違いないようだ。
迂闊に触ってしまい、痛みで思わず声を漏らした。
それから、彼の仲間だろう、周りに倒れている人たちの様子を確認した。
全員息はしていた。だが酷い傷だ。早く治療しなければまずい。
助けを呼ばなければ。
彼らのいる場所は街道から離れている。誰かが見つけてくれる可能性は低かった。
盾を外し、剣を左手で握る。
立ちあがると痛みで意識が遠のきそうだったが、構っていられなかった。
今動けるのは彼しかいない。彼まで倒れてしまえば、全員、そのまま二度と醒めない眠りにつく外ない。
それぞれが出来る事をやらなければ生きていけない。彼はそういう世界に暮らしてきた。
街道まで出れば人も通るはずだ。
彼は歩き出した。
20分ほど経っただろうか。彼はまだ歩き続けていた。
やはり傷付いた体では足取りは重かった。疼く足を引きずりながら進み、時折立ち止まって息を整えては
また歩き出す。その繰り返しだった。アーメットに隠れてわからないが、その顔は恐らく苦痛に歪んでいるだろう。
それでもようやく、あと一つ丘を越えれば街道が見えるという所まできていた。
その丘の頂点まで辿り着き、少し休憩しようとした時だ。
左手の方で音がした。それと同時に彼の近くの地面にクロスボウが突き刺さる。
驚いて首を巡らすと───いた。
ゴブリンだ。
岩の陰の死角にいたらしい。気が付かなかった。
獣人は賢い。普通の獣にも言える事だが、相手が自分よりも強い事を感じ取ると決して襲いかかる事はない。
だが相手が弱っているなら別だ。どこまでも追い掛けてきて止めを刺そうとする。
彼は街道まで走ろうとして、初めて気が付いた。今いる所と街道までの間にゴブリンのキャンプがある。
助けを呼ぶには見つからない様大きく迂回するしかない。今まで気付かなかった自分に思わず悪態をついた。
だがゴブリンを連れたままあんまり逃げ回るのは非常に危険だった。
このゴブリンが仲間の視界に入るだけで奴らは寄って来る。それだけは避けたい。
どこかでやり過ごさなければ。
彼は右手に走り出した。
その間にも後ろからはクロスボウが飛んでくる。
彼には誤算があった。
今の自分の体力を測り間違えていた。忘れていた、と言った方が正しいかもしれない。
少し走ると息がすぐに切れる。
酸素がうまくまわらないので足はふらつき、すぐに転びそうになったが、なんとか小山にあいた横穴に逃げ込んだ。
背中には何本ものクロスボウが突き刺さっている。
やり過ごせたかと思ったが、甘かった。
入口の所にゴブリンの気配がする。
彼は左手の剣を握り直した。息が荒い事に気付く。緊張のせいか、走ったからなのか。
勝機は薄かった。
彼は忍者ではない。二刀の心得はない。左手で武器を扱ったことなどなかった。
慣れない技術が通用するほど、実践は甘くない。
確かに、誰もが最初は初心者だが、そこに至るまでの訓練があったはずだ。いきなり、
なんの備えも無しに飛び出す奴はいないだろう。
それでも、普段の彼ならどうにかできたかもしれないが、今の彼はすでに満身創痍だった。
たとえ勝っても助けを呼べなければ結果は同じだ。
いつのまにか下を向いて項垂れている自分がいた。
諦めるな。
顔を上げると、黒い影がうごめいている。
───きたか。
壁にもたれかかりながら立っている彼を見て、優越感に浸りながら笑っているように見えた。
ゴブリンはゆっくりとクロスボウを構えた。
奴が撃つと同時に突っ込んでやる。
そう考えながら剣を握り直す。
今まさに彼の生死を賭けた戦いが始まろうとした時だった。
突然ゴブリンの体が前に吹っ飛んだ。
よろよろと立ち上がろうとするゴブリンはもう一度吹っ飛んで彼の足元に落ち、そのまま動かなくなった。
倒れたゴブリンを注意深く見ると、体に数本の矢が刺さっていた。何が起きたかまだ理解できていないうちに
入り口の方から声がした。
「大丈夫ですか?」
女の声だ。そこでようやく理解した。
どうやら難を逃れたらしい。
緊張の糸が切れたのか、彼はそのまま座り込んでしまった。同時に、今まで忘れていた痛みがぶり返してくる。
「助かった。ありがとう。」
痛みに耐えながら、近寄ってきた女になんとかそれだけ言うと、彼は剣を置いてカバンを漁りだした。
女はそれをじっと見ていたが、彼が薬瓶を取り出したのを見て口を開いた。
「それ、なんですか?ポーション?」
「いや、エーテルだよ。見てわからないかな。」
「あ……ごめんなさい。暗くてよく見えなくて……」
謝る必要はないよ、と言いながら、少し言い方がきつかったかと反省する。
確かにここは暗かった。彼女の顔もよく見えない。
この横穴は奥で折れ曲がっていて、そこには光が届きにくかった。
最初は入口の所のゴブリンが見えたのだから、知らずに退いていたのかと考えると、思わず苦笑した。
片手でなんとかアーメットを取ると、エーテルを飲み干した。
体の痛みは酷くなっていた。最初は折れた右腕だけが気になっていたが、いつのまにか痛みは全身に廻っていた。
彼はケアルの詠唱を開始する。
彼はナイトだった。
上位ケアルを唱えられるはずなのにそうしないのは、体にまだクロスボウが残っていたからだった。
そのまま治療すると鏃が体に残ってしまう。
鏃というものは大抵抜け難くするための返しがついていて、無理に引き抜こうとすれば傷を拡げるだけだ。
ナイフで傷口を開いてから取り除かなければならない。
回復魔法は治したい所だけ治す、というような器用な真似はできない。全身の傷が同じ様に治っていく。
だから回復すればそれだけ鏃を取り除き難くなるのだが、そのままでは動けそうになかったのだから仕方がなかった。
ケアルを唱え終わると彼は立ち上がった。が、ふと力が抜けたかと思うと、また座り込んでしまった。
まいったな。ここまで弱っていたのか。
「ちょ……!何やってるんですか。大人しく休んでいて下さい。」
彼がへたり込むのを見た女は慌てて彼を制止した。
「他にも仲間がいるんだ。早く助けを呼ばないと……」
「それだったら、安心して下さい。今、私の仲間が見つけたみたいです。
白魔道士もいますから、たぶん大丈夫ですよ。」
リンクパールを手にしながら、女は微笑んだ。表情はよく見えないが雰囲気で伝わった。
それを聞いて彼は深い息を吐いた。
「何があったんですか?凄い音がしたので来てみたんですけど……」
「え?あぁ、それは───とりあえず出ようか。ここは少し暗すぎる。」
肩を借りて入口の方へ歩いていく。暗闇に眼が慣れていたので、外の光は眩しかった。
819 :
◆yANtvXYFvY :05/01/30 10:04:13 ID:mxI7RKo+
とりあえずできてる分だけはって見ました。
駄文ですが読んでいただければ幸いです。
続きは…いつになるんだろう。ていうか、あるのかどうか…orz
820 :
既にその名前は使われています:05/01/30 13:11:35 ID:gLFE5ouI
>>819 さっそく読んだぜ!
ハッピーかい?
続きは、ゆっくり待つことにするぜ、そいじゃ。
821 :
既にその名前は使われています:05/01/30 15:03:03 ID:VMpSJ/cB
読みました。丁寧な描写ですね。続きを待ってます。
とりあえず仮題でもいいので題をつけたほうがいいかも。
他の作品に埋もれてしまわないためにも。
822 :
既にその名前は使われています:05/01/30 19:48:02 ID:C/gbyPX2
このスレのまとめサイトってもう潰れたの?
823 :
既にその名前は使われています:05/01/30 21:52:18 ID:WwmwDBaf
>>819 ◆yANtvXYFvY
これからの展開に期待。
さり気無い情景描写などいいと思う。
821の言うとうり、題は付けておいた方がいいとおもうよ〜
824 :
天の塔奇譚:05/01/30 22:20:27 ID:qHkg8Vl4
6レスぶんあります。よかったら読んでみてください。
星の大樹が植わった植木鉢、みたいな天の塔へとつづく木の橋のうえに
タルタルがふたりおりました。ふたりは、橋の両はしにわかれて座って、
足をぶらぶらさせながら釣り糸をたらしています。
「うわあ、もうあんなところまで上っているよ」
まんまるの月を見あげて、とんがり頭のタルタルがいいました。
月は、星の大樹の傘のすぐ下で光っていて、まるで大樹に実った真っ白な
果物のようでした。
「ほんとだ、時間たつの早いねえ」
ぼさぼさ頭のタルタルが、竿に通した糸を引っぱりながら言いました。橋は
下の池からずいぶん高いところにありましたから、上手に引っぱらないと……。
「ああっ! 逃げちゃった」
ほらね。魚は、針からはずれて、ポチャンと池のなかに帰っていきました。
「あはは。6回目〜」
言って、とんがりタルタルが笑いました。可笑しくてたまらないのか足を
ばたばたしています。けれど、はずみでその足が竿を持つ手を蹴ってしまい、
竿を池のなかに落としてしまいました。
「うわあ!」
「あはははっ。なにやってんの〜?」
こんどは、ぼさぼさタルタルが笑いました。とんがりタルタルは、情けない
顔をして、パニックになったタルタルなら誰もがついやってしまう、
タルタルジグを踊っています。
「こっちへおいで。ぼくの竿でいっしょに釣ろ」
「うん」
ふたりは並んで腰かけて、魚釣りをつづけました。ぼさタルが、竿を持って、
とんがりタルが糸を引っぱります。
「たのしいね」
ぼさタルが言いました。
「うん。ガードのしごとも釣りをしながらだとたのしいね」
「満月の夜は、釣りしないとね」
「ねっ」
ふたりは、顔をあわせて、くすくすと笑いました。
「こんなに明るい夜に、あやしい人なんて通りゃしないよ〜」
「うんうん」
それでもちょっと気になったのか、ぼさタルは橋の入り口のほうをそっと
見ました。ちょうどそのときです。髪を青いリボンでツインテールに結った
タルタルの女の人が、橋のたもとへさしかかりました。しかも、女の人は、
まよわず橋を渡って来るではありませんか。
その人は、さらさらした金髪にどんぐりまなこの、フニフニほっぺで、
タルタルらしい可愛らしい姿をしていたのだけど、ぼさタルは、たいそう
おどろいて竿を投げだすと、素っ頓狂な声をあげました。
「あ、あやしい人、きたぁ〜!」
「うあああ!」
とんがりタルは、すでにタルタルジグを踊っています。
こちらに向かってくる女の人は、ふたりのようすに気づくと足をとめました。
「あらあら」
そうして、自分の手のひらをみたり身体をくねらせて着ている服を確かめて
から、ぽんと手をうちました。
「わたくしとしたことが、インビジとスニークをかけ忘れるなんて。急いでいる
とはいえ、うっかりですわね」
女の人は、ゆっくりと歩いて縮み上がっているふたりのまん前までくると、
ふんぞりかえってみせました。ぼさタルが、しどろもどろに口をひらきます。
「シ、シャントット博士」
「なにか?」
「あのですね。この夜も遅い時間に天の塔に行くのはいけないことだと
おもうのですよ」
「ふむ、それもそうですわね。あなたのおっしゃること、ごもっとも。けれど……」
「けれど?」
「このまま家にかえってしまうと、時間をもて余してしまいますのよね。わたくし」
「はあ……じゃあ、お肌のために早めに寝たら……」
「だまらっしゃい!」
「ごめんなさい!」
「まったく……まあ、聞かなかったことにいたしましょう。ともかく、あなた、
あたくしの貴重な時間が空費されることについて、落とし前をつけて下さるん
でしょうね? まあ、幸い……」
背負った両手棍をはずして、その先っぽでトンと橋の床を打ってシャントット博士は
言いました。
「さきごろ新しく思いついた必殺技を実際にうけてくださる、汁っ気の多い実験材料、
もとい! スパーリング相手を探していたところ」
ブンッ。ドクロの装飾のついた物々しい杖を軽くスイングして、すごみのある
笑顔で一歩、ぼさタルに詰め寄ります。
「あなた、やってくださるわよね。ス・パー・リン・グ」
「と、とんでもないです!」
泣きそうな顔のぼさタルでした。とんがりタルは、そのよこで白目になって
固まっています。
「ぼくは、ぼくが、まちがっておりました。お通りください、通ってやってください」
土下座して、ちいさくちいさくなって、ぼさタルがいいました。
「あら、残念ですわね。おほほ……。それでは、通らせていただきますね。ふふ」
「えっ?」
シャントット博士の声のトーンが、微妙に変化したのに耳ざとく気がついたぼさタルが顔をあげると、博士の姿は、もう塔のそばにあってちいさく見えました。
「やれやれ、嵐は、去っタルね」
とんがりタルが、一仕事おえたような口ぶりで言いました。君は、
固まっていただけじゃないかと、ぼさタルは思っていましたが、
口をついた言葉は別のことでした。
「シャントット博士、なんか最後、変じゃなかった?」
「えっ、なんで? あの人は、いつもおかしいじゃないの?」
「うん。けど、なんか今ちょっと、ちょっとだけど……」
「え、なに?」
「かわいらしかった」
「うわあ! 相棒がおかしくなっちゃった!」
とんがりタルは、しばらくタルタルジグを踊りつづけました。
831 :
◆yANtvXYFvY :05/01/31 00:59:38 ID:p6nJg8ZF
感想もらえるのメチャクチャ嬉しいです。
タイトルですか…
確かにトリップだけじゃ覚えにくいかもしれませんね。
次までには考えてみます。
832 :
既にその名前は使われています:05/01/31 02:35:51 ID:/vEjppSv
>天の塔奇譚
なんか、不思議な持ち味がある作品。
833 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/31 04:19:53 ID:HlNbjNui
834 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/31 04:22:49 ID:HlNbjNui
私はその手紙を細かくちぎり、くずかごに入れた。夜までまだ時間がある。
義姉から紹介された忍者に会いにいくことにした。紹介状を持つ。街の北、
荒廃した山を登る。街を出て1時間ほど歩いただけで、茶色くごつごつした
岩だらけの殺風景な景色が広がる。ウィンダスやサンドリアに住む人たちが
この光景を見たらどう感じるのだろう。私たちの欲望は果てしなく深い。
その底なしの欲求がこの光景を生み出したのだ。この土地は、この土は、
もう何物も生み出す事はできないのだろう。山のふもと辺りで、錆びて
赤茶けたピックを背負った半裸の巨人とすれ違った。炭鉱労働者だろう。
お互い目を合わせ、軽く頭を下げる。尻尾をふりながら、虚ろな目をして、
山を下っていく。私は立ち止まって後ろを振り返り、その巨人を見つめた。
背中から肩までの筋肉が異常に盛り上がっている。頭を左右に振りながら
巨人は歩いていく。怠惰そうに、つまらなそうに、そして何かを諦めたように。
835 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/31 04:24:34 ID:HlNbjNui
忍者の住んでいる家は山の中腹にあった。小さいけれど、案外と
しっかりした造りの家だ。私は扉を三回叩いた。はたして忍者は出てきた。
「何のようだい」
と、忍者は私の顔をじっと見つめて言った。私は自分の名前を言い、
義姉から貰った紹介状を忍者に渡した。忍者はその手紙を見つめ、
一時目をつむったあと、私を家の中へ招きいれた。
「いい弓を造る自信はあるよ。実際君のために造るかどうかは別として」
と忍者は言った。
「どのような弓が必要なのかな。そしてなぜ弓が必要なんだい?」
「強くならなくちゃいけないんです。そのためには剣の道を究める
だけではだめだと思って。弓術も習ったことがあります。矢を射る技術は
持っています」
忍者は腕組みをして天井を見上げた。
「いまいちよくわからないな。雰囲気からして君は多少は腕が立つだろう」
と忍者は言った。
「しょうがないんです」
と私は言った。
忍者は黙って首を横に振った。
そして私は山をおりた。
836 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/31 04:25:42 ID:HlNbjNui
家に帰り、風呂に入った。胴着を着て手甲、脚絆をつける。大包平を
持ち、私は家を出た。バストゥーク港から北へちょっと歩いたところ。
3番倉庫の前に旅の仲間、Boboはいた。
「やあ。よくきてくれたねぇ」
とBoboは旅人の帽子を左手で持ちながら言った。
「何のようなのかな」
と私は言った。
「愛の告白さ」
「こんな物騒なところで愛の告白なんだ」
「こういうのは多少緊張感があったほうが成功しやすいんだ」
倉庫のドアが開いた。共和国制式礼服を着た長身の男が立っていた。
刀を腰に差しているが、動作が穏やかで緊張感が無い。
「入りたまえ」
と礼服の男は言った。Boboは素直に指示にしたがい、倉庫の中へと消えていく。
「やれやれ」
私は後につづいた。
837 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/31 04:26:38 ID:HlNbjNui
倉庫の中にもう一人、見知らぬ男が立っていた。白い鋼鉄製の
重鎧を着ており、背中に布で包まれた斧を背負っている。多少緊張して
いるようだが、殺気は感じられない。礼服の男がニヤニヤ笑いながら
話しかけてくる。
「お穣ちゃん。ペニスもないこのガルカとどうやってsexしてるんだい?」
Boboは声を上げて笑い、そして抑揚の無い声で言う。
「そんなものを持って無くても女を悦ばすことはできるのさ」
私は眼をつむり、意識を拡張させるイメージをして五感を研ぎすます。
倉庫に入って右にある階段から二階に登れるようだ。二階に2人。
1人は寝ていて、1人は私たちがいることを知っているようだ。倉庫の
裏に1人。多分見張りだろう。共に殺気は感じられない。罠ではないようだ。
逃げ方は3通り考えた。私は眼をあけ、Boboを見てうなずいてみせた。
その私の仕草を見て、Boboは礼服の男に話しかける。
「さあ、商談といこうじゃないか」
838 :
119 ◆N4hISqu3ag :05/01/31 04:31:36 ID:HlNbjNui
「オズトロヤ城からあるものを手に入れて欲しい。」
そして礼服の男は語りだした。
「経典だ。前後編にわかれている。前編がヤグード族の誕生から現人神が
誕生するまで。後編はこの宗教の絶対性と正当性が説かれている。とても
完成度が高く、歴史的な矛盾や論理的な破綻はほとんど見受けられない。
確認されている経典は前編十六品と後編十六品の全編三十二品。その内の
前編第十四品を手に入れて欲しい。その経典の中で、現人神がミンダルシア
大陸の中心で自身が神であることを覚知し、現人神に自らの命を捧げた
高僧たちを『祝福』し『奇蹟』を起こして死の淵から呼び戻した、という記述がある」
「つまり、レイズIIのスクロールかね」
Boboの言葉で礼服の男は黙る。Boboを見つめ、諭すように話しかける。
「これ以上のことを説明する必要は無いだろう。リーダーは雇った。
Remoという名だ。マウラに行き、彼の指示を仰ぎなさい。クライアントは」
礼服の男は自身の腕に刻まれている腕章を指差し言った。
「国だ」
839 :
サポシ ◆b7EvvsUjsA :05/01/31 11:56:40 ID:I4Etzqll
ここの小説ラジオで放送してもいいでしょうか?
840 :
既にその名前は使われています:05/01/31 12:10:38 ID:0GscDeY8
>>839 こういうスレッドがあると紹介するのか
ラジオドラマのネタとして使うのかで考え方が違ってくると思いますが。
841 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:18:32 ID:R1RuL/lE
題名:レイズ拒否
※結構長いです
842 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:19:34 ID:R1RuL/lE
天晶暦○○年 1月28日
Takako>>すいません、レイズお願いできませんか?
一行のtellがオレのもとへ届いた。 現在オレはラテーヌ高原を走って、サンドリアに向かう最中。
オレのジョブは白魔導師、レイズは習得済みだ。
いまはanonにしているが、オレの着ている白AFを見て、声をかけたのだろうか? 近くを見渡してみる。
いた。黒魔導師のヒュム女が、戦闘不能になっている。 直ぐそばにいるのなら断るのも酷か。
オレはレイズをかけようと、彼女の死体に近づこうとした、そのときだった。
彼女の先に、羊NMがPOPしたのだ。 こいつの角は、オレが以前からずっと狙っていたもの。
こんなラッキーなこともあるもんだと、オレは彼女の死体を通り過ぎ、羊に向って走りだした。
レイズはこいつを倒すまで、ちょこっと待ってもらおう、そうおもった矢先、彼女から2度目のtellが入る。
Takako>>蘇生可能時間が、あと3分しかありません・・・ レイズしてもらえませんか?
「マジか・・・ そんなこといわれてもな。 早くしないと他の羊狩りに取られちゃうし。(-_-)」
843 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:21:08 ID:R1RuL/lE
数秒考えた結果オレは、彼女の死体を通り過ぎ、レイズよりも先に、羊にディアを撃ち込んだ。
「辻レイズなんざ、強制されても困るしな。しなかったからって悪になる訳がない、すまんがあきらめて貰おう。」
羊を倒し終えて、彼女の死体のあった場所に戻ってみるが、そこには彼女の姿は無い。
「やっぱり間に合わなかったか、しょうがないよな。」 そこへ3度目のtellが。
Takako>>ひどい・・・ なんで・・・?
ぐぅ・・・ 目当てのアイテムは入手できたが、何とも言えない後味の悪さが残る。
「オレは別に悪くないとは思うんだが、一応謝っておいたほうがいいのかな?」 いろいろと言い訳を考える。
Ore>>すいません、MPカラだったんで
そう送ったが〔離席中か、ログインしていないためtellは〜略〕
サーチしたところ、もうログアウトしてしまったようだ。
オレはため息をつきながら、再びサンドリアへ向けて走り出した。
844 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:22:05 ID:R1RuL/lE
天晶暦○○年 1月29日
モグハウスから、ジュノ下層へ出る、賑やかに多種多様の/shout・/sayが響き渡る。
オレは暇つぶしに、並んでいる寝バザーを、ひとつひとつ見て回る。
ダースと間違えて買わせようとしてる、新手の詐欺に注意しながら、掘り出し物をゲットしていく。
そんななか、ひとりの寝バザーキャラがオレの目に留まる“Takako”
「あ、昨日のレイズお願いしてきたひとか」ごく自然に彼女のバザーを開く
品を見てみると、呪札(忍具)が1ギルでバザーしてある。カーソルを合わせ決定ボタンを押す。
「なんだ・・・ バザーしてるの一枚だけか。」
忍者はやってないけど、店売りしたほうが高いしな、とりあえずその一枚を購入する。
売り物が無くなった為、自然とバザーが閉じられる。彼女のバザーコメントを後から見てみると、こう書かれていた。
{なんで見捨てたの? 呪います・・・ 呪います・・・ 呪います・・・}
845 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:23:35 ID:R1RuL/lE
こ、これはもしや、昨日のことを指しているのだろうか? 「呪いますって、オレを・・・? なんか気持ち悪いな。」
Takako>>こんにちは
「ぎゃあっ!!」 いきなり彼女からのtellが届く。ブラウン管の前で、思わず叫び声をあげる。
「寝バザーじゃなかったのかよ・・・(ノД`)」
Takako>>たったいま、あなたが買われたその呪札は、あなたへの呪いを完成させるものです
Takako>>この呪札が4枚そろったその日に、呪いは執行されます
おいおい、震える手で必死にキーボードを打ち込む。
Ore>>すいませんでした、昨日のことでしたら謝ります、ですからそんな悪い冗談はやめてください。
しかし、昨日と同様tellは彼女に届かない。「何でだ? 離席もログアウトもしてないのに。」
「もう訳がわからん、バグだよな、一旦ログアウトしてみよう、うんそれがいい。」
モグハウスに逃げ込み、ログアウトをする。
深呼吸をし、気持ちを落ち着かせログインし、彼女のいた場所へ行くが、もうそこに彼女の姿はなかった。
846 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:25:13 ID:R1RuL/lE
天晶暦○○年 1月30日
「ふぅ、昨日おとといと、たて続けにやなことがあったからな、オレはLS入ってないし」
「フレもいないソロプレイヤーだから、こういうときに話せる仲間がいればと思うよ、気分転換にLV上げPTでも組むか。」
同LV帯をサーチしたところ、どうやら後衛不足気味っぽい。オレはモグハウスの中でサチコメを書き緑玉を出す。
ついでに全エリアサーチで“Takako”を探すが、どうやらいないようだ。
レベル上げ用の装備を整理していたところ、ひとつのアイテムが目に留まる。“呪札”だ。
そういえば、彼女はこう言ってた「4枚集まった日に呪いは執行される」だったか・・・
「まさかっ!」 オレはおそるおそる、ポストを確認する・・・ 「ふぅ、よかった何も入ってないな。」
「しかし何だ、オレは何も悪いことはしてないしな、彼女の一方的な嫌がらせだ。」
「こうやってビクビクしてること自体、彼女の嫌がらせにハマっちゃってるんだ。」
「そうか。/tellに関しては、ブラックリストに入れればいい、焦ってこんなことにも気がつかなかったよw」
オレはすぐさまTakakoをブラックリストに登録する。「ほかに何か嫌がらせを受けたらGMを呼べばいいだけだ。」
「堂々としてりゃいいんだな、うむ。 PTの誘いくるまで、漫画でも読んで待つか・・・。」
847 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:26:46 ID:R1RuL/lE
漫画のページをめくる際、/tellが来てないか画面を確認する。
そんな反復行動が何回か続いた後、オレは画面にありえないログを確認する。
それは青色の文字でこう書かれていた {Takakoはあなたをじっとみつめた・・・}
一瞬にして全身から血の気が引く。「そんなバカな! オレはログインしてから一歩もモグハウスから出ていない」
「ありえない・・・ ありえない・・・ バグだよな、バグに決まってる。 昨日もなんかおかしかったしな・・・」
念の為“Takako”を全エリアサーチしてみる。
いる・・・ 場所はラテーヌ高原、そして彼女の名前の横、赤いサーチコメントのマーク。
「ダメだ、見ちゃダメだ・・・ まともなことが書いてあるはずがない、見るな・・・ 見るな・・・」オレの第6感がそう叫ぶ。
しかし既にオレは、冷静さの欠片も残ってない、言うことの聞かない指が決定ボタンを押す。
{Takako 黒魔導師 LV40 あと2枚ですね・・・}
「あと2枚? アレのことか?」 おそらく届いているのだろう、アレが・・・
ポストを再度除く、予想は的中していた。 届いていた・・・“呪札”が。
Kuraudo>>こんにちは、こちらナ狩モ赤詩ですがPTどうですか^^
「うわあああぁぁぁぁ!!(゚Д゚)」 いきなり赤紫の文字が画面にあらわれ、心臓が止まりかける。
「そうか・・・ 緑球だしてたんだよな。でもさすがに、いまはまともに動けそうにない、せっかくだけど断ろう。」
Ore>>すいません、急用できちゃったんで、またの機会に
Kuraudo>>あい;;
848 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:27:43 ID:R1RuL/lE
天晶暦○○年 1月31日
今日の予定は決まっている、昨日はあんなことがあって、冷静さを失いログアウトしてしまったが。
とりあえずGMに相談してみよう、不要なアイテムを送りつけるのは禁止されてたはず。
1個だけじゃ難しいかもしれんが、今後のこともあるし念のために。
GMコールをし、待ち時間にポストをのぞいてみるが、なにもないようだ。
GM>>こんにちは
「お、来たようだな」
GM>>こちらでログを確認した結果、Takakoというキャラは、このサーバーにおりません
Ore>>【え!?】そんな馬鹿な
GM>>当然Oreさんにアイテムを送ったという事実もありません
Ore>>でもたしかに送られてきて、いまも実際鞄に入ってますんで・・・
GM>>おそらく、不具合だと思われますので、ディスクをインストールしなおしてみてください
GM>>それで改善されない場合には、再度メールにてご連絡下さい
Ore>>わかりました(マジか、なんじゃそりゃ・・・)
GM>>それでは、良い旅を
「Takakoなんてキャラはいないって? たしかにバグ以外に考えられないと言ったら、そうなんだが。」
Kuraudo>>こんにちは、希望ないところすいません、PT入ってくれませんか?
「およ、anonにしてなかったか、昨日そのまま落ちちゃったからな。 丁度いい、気分転換に行って来るか。」
849 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:29:22 ID:R1RuL/lE
=== Area Kuftal ===
「ふぅ、@30分で解散だ、結構稼いだな。 久しぶりにLVも上がったし。」
「解散したら、GMの言ってた通り、再インストールしてみるかな。」
Ankokku /p 我が魔剣の錆となるがいいっ!!
Ankokkuはシックルムーンを発動! Sand Lizardを倒した
Sand Lizardはトカゲの皮を持っていた
Sand Lizardはトカゲの卵を持っていた
Sand Lizardは“呪札”を持っていた
850 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:30:27 ID:R1RuL/lE
「呪札? 呪札っておい・・・ ちょっとまってくれよ・・・ カンベンしてくれよ・・・( ゚д゚)」
Kuraudo /p およ? 呪札なんか落としたっけ?
Ankokku /p オレもはじめてみたwww
Momochan /p すいません、石です><
「アレ? オレだけじゃなくて、他の人にも呪札はちゃんと見えてるみたいだな、オレのファイル破損じゃないのか?」
Momochan /p 石です><
Kuraudo /p 白さん?
「とりあえずパスしときゃ、オレの鞄にはこないよ・・・な。」
Ankokku /p 寝オチ?
Momochan /p <call3>
「うおっ!(゚д゚)」 Ore /p 寝てないっす! 寝てないっす(汗)
Ore /p Momochanさんにストナー♪
Momochan /p アリが10匹^^
Sifu /p ごめんリンクしたw 3くるww
「おいおい、なにやってんだよ糞シーフが・・・。」
851 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:31:43 ID:R1RuL/lE
「ふぃ〜 なんとか倒せたな。 あ、そうだ“呪札”パスしなきゃ・・・ってアレ? 戦利品に無いよ」
「ロットなしルールだから、3匹分のアイテムに押し出されて自動分配されたのか?」
オレは震えながら鞄を確認すると・・・ あった・・・ しっかりと・・・ オレの鞄の中に入っている。
どっちみちパスしようが何しようが、オレの物になる運命だったのだろうか?
過去に手に入れた2枚は、ためしに捨ててみたが、気が付いたらいつの間にか、俺の鞄の中に戻ってきているし。
もう4枚集まるのは、時間の問題なのだろうか? 4枚集まったら一体なにが起こるというのか・・・
Kuraudo /p それでは皆さんお疲れ様でした、解散しますね^^
852 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:33:27 ID:R1RuL/lE
天晶暦○○年 2月1日
「今日はひとりで金策にでもいくか。」
ログインしないという手もあったが、最後まで見届けたいという、怖いものみたさか?
とりあえずダメもとで、再インストールもしてみた。
「もしも今後、このゲームを続けるのが、不可能な状況に追い込まれたら、いさぎよく解約してやるさ
ゲームで命まで取られることは無いだろう、もうとことん付き合ってやるよ。」
一種の開き直りだ、「もう、逃げも隠れもしないから、どっからでもかかってこい。」
853 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:35:08 ID:R1RuL/lE
オレの定番の金策場所、デルクフの塔に到着する。光・雷エレを待ちながらサポシでゴブリンを狩る。
今日は結構調子が良いな、みるみるうちに鞄のスペースが消えてゆく、しかし恐怖の瞬間は突然訪れた。
Oreの盗む! “呪札”をぬすんだ!
驚きで息が止まる「落ち着け、落ち着け、たかがゲーム、たかがゲーム((;゚Д゚)」
この年になって呼吸のしかたが思い出せない、いつもどうやって息吸ってたっけ?
「落ち着け・・・ 落ち着けオレ・・・(((( ;゚Д゚)))」
Takako>>こんにちは、ついに4枚そろいましたね
「うぎゃぁぁぁああああっ!!!(゚Д゚)」 生まれたての赤ん坊のように、叫び声によって呼吸始める。
「はぁはぁはぁ・・・」パニックに陥ったオレは、必死で魔法の欄からデジョンを探す。
しばらくゴブリンに殴られ続け、サポシだったことに気付き、オレはテレポルテのマクロを必死で連打した。
テレポ詠唱→殴られ詠唱中断→再度詠唱→中断を2,3度繰り返しが
結局耐えきれなくなったオレは、そのままプレイステーション2の電源を切った。
854 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:36:43 ID:R1RuL/lE
「もうやめだ・・・ こんなゲーム。」 電源を切ってから、オレはずっと毛布にくるまり震えていた。
「なにやってんだかオレは・・・ 明日は朝早いし、もう風呂入って寝よう。んで明日解約手続きしよう。」
後ろにTakakoがいるのではないかと、現実世界で怯えながらシャンプーをする。 情けない・・・
風呂からあがって時計を見ると、夜の11時。「そういえば彼女はこう言っていた
「4枚そろった日に呪いは執行される」と
「どうする・・・? このまま確認せずに解約したら、よけい気持ち悪くないか?」
所詮ゲーム命まで取られることはない・・・
「よしっ! ログインしてやる、これで最後だ。 0時まで確認したら何が起ころうとも、起こらなくとも解約する!」
855 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:37:56 ID:R1RuL/lE
部屋に戻り、プレイステーション2の電源を入れる。
{ログアウトをしてから電源を切ってください、ファイルが破損する恐れがあります}
「はいはい、わかりましたっと。」
デルクフの塔に戻ってきた、トリートスタッフUを使いモグハウスへ戻る。現在時刻は11:30
あと30分か、静かなのは少し怖いので、部屋のコンポで音楽を流し、隣の部屋のテレビも点ける。
膝に飼っている猫を抱いて準備万全、その時を待つ。
@20分・・・ 緊張で胃がキリキリする
いきなり<call>なんて鳴らされたらショック死するかもしれん、念の為ゲームに使っているテレビの音量をゼロにする。
@10分・・・ 1分1秒が物凄く長く感じる、もうすぐ今日が終わる、それでこんなゲームともおさらばだ。
@1分・・・ なにも起こらないまま、ついに秒読みに入る。 ラスト30秒 20秒 10秒 9・・・8・・・
856 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:39:41 ID:R1RuL/lE
そしてついに、時計の針は0時をさした。 「なんだ・・・結局なにも起こらなかったじゃないか?」
「これはあれか・・・ この4日間恐怖に苛まれたこと自体が“呪い”ってことなのかな?」
「おそらくそだろう、きっとそうに違いない。」
「なにはともあれ、これでスッキリした。なんか拍子抜けしたな、ビビって損したw」
オレはログアウトせずにそのまま、プレイステーション2の電源を切った
「さらばファイナルファンタジー11、さらばヴァナディール。」
857 :
三沢さん ◆NOAH//Vb/2 :05/01/31 16:41:07 ID:R1RuL/lE
「さ〜て明日早いし寝るとするか・・・」 「プルルルゥゥゥ……」
布団に入り込もうとした瞬間、オレの携帯電話が鳴る。 「非通知って、誰だこんな遅くに」
「???:もしも〜し」
「どちらさんですか?(´ー`)」
「こんばんはTakakoです、ヴァナディールではあきたんで、こっちの世界でまた遊びましょうね。」
「ガチャッ ツー… ツー…」
たかがゲームで命まで取られることはない。いまのオレには、そう思える自信はない・・・
終わり
858 :
既にその名前は使われています:05/01/31 17:13:01 ID:IjJzYwhp
ワロスww
辻レイズしなかったぐらいで祟られてたら、
俺の鞄は呪札で埋め尽くされるぜwwwww
859 :
既にその名前は使われています:05/01/31 18:01:36 ID:8SslLMtI
お笑いなのかホラーなのか判らんな
これがギャグホラーってヤツか?
860 :
既にその名前は使われています:05/01/31 18:23:05 ID:dmFCrHmt
プレイヤー視点ていうのは珍しいのかな?
軽く楽しませて頂きました。
861 :
既にその名前は使われています:05/01/31 21:13:07 ID:zXNdIcco
保守してみますね。
ポルテは上手くやった。
ウィンダス森の区の外門には、深夜でも休まずにミスラの傭兵達が見張りに立っていたが、
その鋭い目をかいくぐり、サルタバルタ草原への脱出に成功したのだ。
ポルテはタルタル族の子供だった。その小さな小さな身体だからこそ、見とがめられずに
脱出できたのかも知れなかった。
ポルテはさっそく辺りを見渡す。危険なヤグード達に見つかっては大変だ。
そして見つけた。それは黄色い巨大な芋虫だった。
(おいで……僕の頼みを聞いておくれ……)
ポルテがそう囁いた瞬間、承知とばかりに芋虫は少年の方へと近づいていく。
それは、芋虫への呼びかけに失敗するなどと、考えもつかないような手慣れた様子だった。
そう、彼は幼くして優れた『獣使い』だったのだ。
彼はどうにか芋虫の背中によじ登ると、もう一度周りを見渡した。
大切な出発の時、これだけはやっておきたかったらしい。ポルテは鬨の声を上げた。
「よーし、はるかなるジュノへしゅっぱーつ!!」
と……何者かが急に目の前に現れた。
それは、白と赤の鮮やかなコントラストの服を着たミスラの白魔導師だった。
「ふぅん……ジュノに行きたいの?家出少年君。」
「うわわ、出た!魔女だぁ!」
ポルテはびっくりして叫んだ。
「魔女とは失敬な子ね?私は白魔導師のリタよ。人を悪魔のように呼ばないで。
それにしても……」
まずい、連れ戻される、などと心配顔のポルテに白魔導師はかまわず話を進める。
「芋虫に乗って、とは考えたわね。これなら骸骨やなんかに足音を聞かれずに済む。
でも、ゴブリンやヤグード達の鋭い目からは逃げられない。さて、どうしようかな……」
しばらく白魔導師リタは考えたすえ、ポルテに呪文を唱え始めた。
「あ……」
呪文の詠唱が終わると、ポルテの姿がすぅっと消え始めた。
「うわわ、僕なくなっちゃう。」
「おかしな子。魔導の国に居ながら、インビジの呪文が初めてだなんて。」
そう言って、姿の見えないポルテに近づき、ポケットに何かを入れた。
「よっぽど、獣使いの技に夢中なのね……パウダーを3つ入れておくわ。頭からパウダー
を被れば、今と同じように姿を消すことが出来る。」
ポルテは少しずつ安心してきた。連れ戻すどころか手助けまでしてくれるようだ。
「上手く使いなさい。ジュノへはただ道をたどればいい。そして自分の内なる言葉に
耳を傾ければ、自ずと道は開けていく。」
白魔導師リタはそういうと、ふっと姿を消してしまった。
そして……
今の出来事に少々あっけにとられていたポルテであったが、ようやく芋虫にうながして、
北への道を進み始めた。
モゾモゾとした芋虫のゆっくりとした歩みに少々苛立ったが、慌てては元も子もない。
姿を消しているおかげで何者にも気付かれずに済んだ。釣りをしているゴブリン、
焚き火を囲んでいるヤグード達の横を無事にすり抜け、いよいよタロンギ大峡谷の入口
へと向かおうとしていた。
丁度その時、白魔導師のかけた魔法が消えかかってきた。だんだんと自分の姿が半透明
になって現れてきたので、慌てて岩陰に隠れてパウダーを使おうとポケットを探る。
「あれ?なにこれ?」
パウダーの丸いカプセルの他にポケットに入っていたのは、一つのクリスタルだった。
炎や風や土でもなく無色透明で初めて見る物だ。なんだろう?
ポルテはしばらく考えていたが、判らないものはどうしようもない。
肩をすくめてクリスタルをポケットに戻し、カプセルを取り出して頭から被ろうとした
丁度その時、なにか妙な音が聞こえてきた。
ビシィッ…… ビシィッ……
何の音だろう?
そう思い、きょろきょろと周囲を見渡すと、そこに居たのは弓矢片手に狩りをする
一人の狩人だった。どうやら周囲にいる他の芋虫達が狙いらしい。次々と芋虫たちは
抵抗する術もなく倒されていく。まずい、自分の乗っている芋虫も倒されてしまう。
どうしようと考えていたが……
名案はすぐに浮かんだ。
カプセルを二つ取り出して、一つは自分に、もう一つは芋虫に振りかけたのだ。
やがて自分だけでなく芋虫もろとも姿を消していく。成功だ。
そして狩人にうっかりぶつからないよう、距離を置きながら進んでいった。
「あ、あれ?もう一匹いたはずなのになぁ……」
そんなことをいってる狩人から逃れて、いよいよ大峡谷へと入っていった。
(続く)
866 :
◆6NLrYYfI2g :05/02/01 02:26:45 ID:8HqbmER3
えっと、貼らせて頂きます。
以前、「雪山の少年」を貼らせて頂いたものですが、
どうしても要所要所が似通っているような気がしてならないのが、
まずいなぁ、と考える次第です。
読んで頂けたら幸いっす。いずれ続きも貼らせて頂きまっす。
867 :
既にその名前は使われています :05/02/01 06:07:27 ID:ZVqabTEz
なかなかいい感じっすね。続き楽しみにしてますよっ。
コルシュシュ地方タロンギ大峡谷……
獣使いの少年ポルテは芋虫にまたがり、ジュノを目指してゆっくりと旅を続けていた。
曲がりくねった谷道、上り坂や下り坂を越え進んでいたが、なぜか芋虫の歩くペースが
落ちている。
疲れてきたのかな?いや……そうじゃない。父の言葉がポルテの頭に蘇ってきた。
「獣をあまり遠くまで連れて行ってはならない。」
あまり縄張りから離れたくないのだろう、などと考えながら、ポルテは芋虫から飛び降
りて芋虫にうながすと、やがて芋虫はずるずるとした足取りでサルタバルタへと帰って
いった。
しょうがない、次の乗り物を探さなくっちゃ、と次の乗り物を探したが、その辺りで
動く物と言えば、サルタバルタでも見覚えのあるマンドラゴラの一種しかいなかった。
怒らせなければ何もしない、そしてこいつも獣使いが手なづけられる動物の一種だ。
遠くの深い森には襲いかかってくる危険な同種が存在することも聞いてはいたが。
「いっしょについてくるかい?」
そういうと、ぱたぱたと腕を動かしてポルテと一緒に歩き始めた。
身長は同じくらいなので乗ることは出来ないけど、旅の寂しさが和らぐ。
「君はこの辺りが住処なのかい?ねぇ名前は……」
話が伝わるはずもない相手と、会話するふりをしながらポルテは谷道を抜け、
景色の開けた場所へとたどり着いた。
「うわぁ……」
見渡す限り荒涼と広がる乾いた大地、そこに走る亀裂はもともと川であったという。
立ててある看板を見れば、それがジュノへと通ずる道だと判る。
ポルテはここに来るのは実は初めてだった。
ずいぶん遠くまで来ちゃったな……などと、感慨深げに景色を見渡していたが、人影
のようなものを見つけて、さっと岩陰に身を隠した。
ゴブリンだ。しかも二匹。
「パウダーを使わなくちゃ……でも、あと一つしかないしなぁ……」
なんとか見つからないよう距離を置いて先に進めないものか、と考えていたその時、
なんと「ポルテの頭の中から」強い掛け声が響き渡った。
【後ろ!】
「……え?……うわぁッ!!」
いきなりの掛け声に驚いて振り返ると、そこにはもう一人のゴブリンが長剣を抜いて
斬りかかろうとして居る所だった。
ザクッ!!
ポルテはギリギリの所でかわしゴブリンの剣は岩に食い込む。
転がるようにしてゴブリンから逃げまどうが、なおもゴブリンはポルテを追いつめよう
とする。この混乱でパウダーはどこかに落としてしまったが、もうそんなものを使って
いる暇もない。
しかし、雇い主が窮地だと見て、
「ピギギッ!」
一緒についてきたマンドラゴラが、健気にゴブリンに立ち向かった。
しかし敵うはずもなく、ほとんど一刀のもとに切り捨てらてしまう。
でも、その気の毒な犠牲のおかげで、どうにか立ち上がって走り出す時間は稼げたが、
離れたところにいた二匹のゴブリンも気がついたようだ。
何かを口々に叫びながらこちらの方に向かってくる。
ポルテは慌ててあらぬ方向へと駆け出そうとしたが、またしても声が響く。
【東へ。坊やの味方はそこにいる。】
訳も判らず言われたとおりに東へ走るポルテ。それを追いかける三匹のゴブリン。
もはや絶体絶命である。石につまずいて転んだりしたら一巻の終わりだ。
しかし走るうちポルテは見つけた。遠目でも判る、長い長い首と独特の顔つきを。
そうか!そういうことか!
ポルテは先ほどの声の意味をようやく理解して、大声で『彼』に呼びかけた。
「お願い!僕を助けて!こいつをなんとかして!」
すると、たちまち『彼』は呼びかけに答え、巨大な足音を立ててこちらに向かって来た。
ズシィ……ン ズシィ……ン
ズシィン ズシィン ズシィン ズシィン! ズシィン!
さらに、その長い首が強烈なハンマーと化してゴブリンをねらい打つ!
バシィィッ!!
「グボボァ!!」
ゴブリンは堪らず悲鳴を上げつつ吹っ飛ばされた。
『彼』……そう、野生のダルメルがポルテとすれ違いざま、長い首をふるいゴブリン
の一人を思いきりはじき飛ばしたのだ。
そして、ポルテは嬉々としてダルメルに呼びかけた。
「いいぞ!今度はその長い首を伸ばしておくれ!僕を背中に乗っけておくれ!」
ダルメルは呼びかけに答えて、うやうやしくと言っても良い仕草でポルテに向けて首を
下し、ポルテが頭に掴まるやいなや、ゆっくりと頭を持ち上げる。
そしてポルテはスルスルと首を滑りおりた。実は森の区で飼育されているダルメルで、
この乗り方は経験済みだったのだ。
「さぁ、反撃開始だ!覚悟しろよゴブリンども!」
ところが相手は3匹である。ダルメル一匹なんとかなると考えたのだろう。
口々に何かをののしりながら武器を抜いて向かってくる。
だが、それを見たポルテは陽気に笑いながら、
「あはは!この子に勝てると思ってんだな?後でほえづらかくなよー!!」
そう言ってダルメルをクルリと向きを変えさせ、逆方向に走らせた。
そして……向かう先は野生ダルメルの群れ!
ズドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
ぐるりと群れの中をを一周したポルテは、7〜8頭の野生ダルメルを引き連れ、
凄まじい地響きを立てて、今度は逆にゴブリンを追い立て始める。
ポルテが全てのダルメルを操れる訳ではないが、仲間の窮地と思わせることに彼は成功
したのだ。
「グモモモモッ!!」
この土地に住む者として、この恐怖は染みついているのだろう。
ポルテの考えに気がついたゴブリン達は、悲鳴を上げて引っ返して逃げようとするが、
しかしもう遅い。もはやダルメル達に踏みつぶされるか跳ね飛ばされる寸前である。
「わはははッ!それそれー!!」
もうポルテは、この逆転劇に小躍りせんばかりに夢中になっていた。
しかし、「異変」が起こった。
ぼっ! ぼっ! ぼっ!
「あ……」
なんと、ゴブリン達が突然炎を上げて燃え始め、終いには消滅してしまった。
その有様を見て、ダルメル達は驚き立ち止まった。
「一体何が……うわぁ!!」
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
ダルメル達を取り囲むように恐るべき炎が燃え広がった!
そしてポルテは見つけたのは、少し離れた崖の上で、こちらを見下ろす小さな影。
「調子に乗るのはそこまでだ、少年。」
影……それは漆黒のローブを身にまとった黒魔導師だった。
身長から見てタルタル族だと判ったが、顔をフードで隠していてよく判らない。
「だ、誰?」
ポルテのしどろもどろとした問いかけに黒魔導師は無慈悲に言い放つ。
「誰でも良い。お前が居るべき場所へ帰すぞ。」
そう言い終わるやいなや、ポルテに向けて恐ろしい声で呪文を唱え始めた。
「わ、わ、わ、わ……」
もうポルテにはどうしていいか判らず慌てるばかりだった。
その時、ポルテの真後ろで何かが起こった!
パキィィィィ……ン
ポルテのすぐ背後で起こった轟音、それは切り裂かれた『時空』の悲鳴だった。
そして、極限まで圧縮された呪文がポルテの全身を包み込み、そして次の瞬間!
「うわーーーーーーーーーーーッ!!」
その叫び声と供にポルテは光の渦に包まれ、消えてしまった。
そして後に残されたのは詠唱を中断した黒魔導師とダルメルの群れだけだった。
(続く)
875 :
◆6NLrYYfI2g :05/02/01 08:54:48 ID:8HqbmER3
>>867 つДT)さっそくの感想ありがとっす。
全体はほぼ出来上がってるので、このスレ内で収まるよう、
順次貼っていきたいと思いまっす。
カキィィィン……
気を失っていたポルテは強烈な金属音に驚かされ、意識を取り戻した。
金属音。それは赤魔導師の剣がオークの巨大な斧を弾き返した音だった。
ポルテがようやく薄目を開けて見えたのは、赤魔導師の装備を着た男、長身のエルヴァ
ーンの姿であった。
その赤魔導師はオークにニタリと笑って言う。
「もうこの子の匂いを嗅ぎ当てたのか。流石は豚の化身だな……
さあ来い。思い知らせてやる。」
赤魔導師は、よろよろと起きあがるポルテの方に振り向きもせず、剣を振るいながら
呼びかける。
「さ、気を付けて行け。オークやゴブリンに見つからないように。」
ポルテはろくな挨拶もしないまま、階段を駆け降りようとした。
だが、ふと自分が不思議な場所にいることに気が付いた。
ポルテが居たのは真っ白い建物の台の上で、巨大なクリスタルが鈍い音を立てながら
中空に浮かんでゆっくりと回転している。
そして見渡す景色は、サルタバルタとまるで違う見渡す限りの草原、いや高原だった。
ここはラテーヌ高原の『テレポドーム』……彼は転送魔法『テレポホラ』により、
遥か彼方のタロンギ大峡谷から転送されたのだった。
どうやら初めて味わった転送呪文に耐えられずポルテは気絶したらしかった。
ポルテは階段を降りて行こうとしたが、他の大人のように危ないからと引きとめない
赤魔導師を疑問に感じて振り返った。
しかし、台の上に残っていたのは、もはや赤魔導師によって倒されたオークの骸だけで
ある。あの赤魔導師は何処に行ったのだろう?
又、先に進むにしても道や方角がまるで判らない。無理もない、始めてくるクォン
大陸である。
草花の生態系すら違う。出ている太陽が沈む途中か登るところなのかも区別できないのだ。
【今向いている方向、東であっている。そこの道をたどればいい。】
またしても『声』がポルテに届く。
明らかに、自分を支援しようとする何者かが居ることはポルテには判っていた。
しかしポルテには謎解きしきれない。している余裕もない。
なぜなら遠くでちらほらと見えるのは、先ほどポルテを襲おうとしたオークと同じ連中
であった。こうなると身の安全を確保する方が先決だ。
(どうしよう、進むどころか逃げ道を見つけるのがやっとだぞ。)
物陰に隠れながらポルテは考えていたが、ポルテはギョッとなって驚いた。
身を隠すため近づいていた小山……そう思っていた小山に「毛」が生えていたのだ。
(もしや……)
あわてて「小山」をグルリと回ると、見つけたのは角の生えた巨大な羊の顔だった。
(えっと……えっと……何だろうこいつは?)
だが、ポルテは実物の羊自体を見るのは初めてだ。父が来ていた装備は羊を模したもの
であったが、とてもそれから連想できるものではなかった。
それは、クォン大陸が誇る巨大生物の雄羊であったのだ。
しかし、そうした巨獣を恐れるポルテではない。もはや怖いもの知らずと言っても良い。
(よ、よーし!)
あっぱれと言うべき勇気を持って、雄羊の毛を掴んで背中を登り始める。
身震い一つで弾き飛ばされたら一巻の終わりだが、意外にも雄羊はポルテが登るのを
大人しく待っていた。
ポルテは遂に登り切り、山なりの背中にうつ伏せで掴まりながら、広大な背中に向かって
ささやく。
「東だよ。お願い、僕をジュノの方まで運んでいって。」
さすがのポルテも言うことを聞いてくれるのか少々不安だったが、
ズシィ……ン ズシィ……ン ズシィ……ン
ゆっくりと雄羊は東へ向かう。いや、偶然に同じ方向に歩いているだけなのか?
「頼むよ……ジュノ……まで……」
ポルテは疲れ切っていたのだ。
ごわごわした雄羊の毛に身を埋めて、そのまま深い眠りに落ちてしまった。
赤魔導師……先程、オークと戦っていた彼は、その様子をじっと見守っていた。
ポルテに見つからないよう、魔法によって姿や足音までも消していたのだ。
その彼に『心の声』が呼びかけた。
【タウス、あの子はどう?】
それはポルテが旅の始まりに出会った白魔導師リタの声だ。
タウスと呼ばれた赤魔導師は同じように『声』で答える。
【大丈夫と思う。今度は雄羊を手なずけてジュノへ向かっている。】
その赤魔導師の『声』。タロンギ大峡谷からポルテに語りかけていた声と同じものだった。
ずっと姿を消してポルテの後を付け、密かに護衛していたのだった。
【先程はお疲れ様。秘技・連続魔からの転送呪文『テレポホラ』瞬間詠唱、見事だったわ。
あんたほどのクラスでなければ出来ない芸当ね。私では黒魔導師の詠唱に間に合わない。】
【よしてくれ。めったに使える技じゃないし、この次何かあったら同じ真似はできない。】
【何かあったら姿を見せて暴れればいいわ。そんなに厳守する秘密じゃなくてよ?】
【さっき、少しやっちまったよ。利口そうな子だからもう気付いたかな?】
【そうでも無いと思うけどねぇ……あの子が凄いのは獣を操ることだけ。】
【ずいぶんな言い方だな。じゃ俺はこのまま護衛を続ける。お前はどうする?
石をあの子に預けてるんだろ?】
石とは、ポルテに渡した謎のクリスタル……『テレポホラ』用のゲートクリスタルだった。
【ジュノで取り返すわ。チョコボで先回りして行って出迎えるから。
ああ、極力手を貸さないで。あの子の実力が知りたい。後で武勇伝を聞かせてね。】
【了解。ま、雄羊を味方に付けたんじゃ、もう何者も手を出せないかな?】
【雄羊まで馴らすとはねぇ……それじゃ、あとよろしく。】
【おう】
そうして、「会話」を終えた赤魔導師は雄羊を追いかけ、彼も身軽に背中に飛び乗る。
雄羊は一瞬、不満そうな唸り声を上げたがポルテを乗せている今の状態では大人しく
歩くしかなかった。
(本当に馴らしてしまってるんだな。凄い。)
そのまま背中にまたがり、寝ているポルテを見守りながら雄羊に揺られていった。
(続く)
881 :
◆6NLrYYfI2g :05/02/01 17:00:02 ID:8HqbmER3
連投すみませんが続けて貼ります。
そして……
「う……う〜ん……」
ポルテが目を覚ましたのは、憂鬱なるジャグナー森林に入ってからだった。
本来、雄羊が迷い込むような場所ではない。道に覆い被さるようにうっそうと茂った
枝を、雄牛はよけようとせずバキバキとへし折りながら道を開いていく。
ポルテが目を覚ましたのは、この騒音のためだった。
「わぁ……」
まさに、大陸を越えてやってきたポルテにとっては脅威の世界だった。
サルタバルタでも見ることの出来ない曲がりくねった木々が、互いに枝を伸ばして
絡み合っており、日光を遮る巨大な屋根と化して暗い森を演出している。
地面では巨大な甲虫や、これまた巨大な足の生えたキノコ達がうごめいており、そして
暗闇では判りにくい黒い肌をした虎が目ばかりを輝かせて獲物を求めてうろついている。
歩くキノコの存在に仰天したポルテであったが、異様な足音を聞いてもっと驚いた。
根が足と化した巨大な「木」がズシィ……ン、ズシィ……ンと足音を立て歩いているの
だ。しかも、その「木」には顔がありポルテをまじまじと見つめている。
(……)
もはやポルテは、家出少年でもなく、ジュノを目指す旅人でもなく、その風景に魅入られ
た流浪の探求者と化していた。
正に、生まれ出でた世界を両目で吸い尽くそうとする赤ん坊の眼、そのものとなっていた。
(この世界は……僕の知らない世界は……どこまで広がっているのだろう)
しばらくして、その感傷は破られた。
「誰か……助けて……」
切れ切れと聞こえてくる助けを呼ぶ声。
ポルテは慌てて雄羊の向きを変えさせ、悲鳴に向けて走り出した。
やれやれ、ここにも居るのか。オークが槍を構えて一人の旅人を追いかけていたのだ。
今度はポルテが恐れる必要もない。巨大な雄羊がついているのだ。
「頼むよ!あの怪物をやっつけて!」
二言目は言わせぬ、とばかりに、すぐさま雄羊は走り出し、
どーーーーーーーんっ!
オークを見事に跳ね飛ばした。勝負とも退治したとも言えない、あっけない顛末だ。
「え……なんで、こんな所に雄羊が……」
九死に一生を得た旅人は、自分の救い主に驚いている。
巨大な背中にちょこんと座っているポルテは、旅人からは見えなかったのだ。
ポルテは、用は済んだとばかりに向きを変えさせ、外れた道に戻ろうとしたが、その
雄羊の後ろ姿に向かって、旅人は手を振った。
「雄羊よ……ありがとう……」
切れ切れに聞こえてくる旅人の声……
ジャグナー森林のほぼ中心地点でポルテは困った。
川に架けてある橋が小さすぎて、雄羊では渡ることが出来ないのだ。
どこか浅瀬から渡ればと考えようとして、やっと思い出したことがあった。
「獣をあまり遠くまで連れて行ってはならない。」という父の言葉。
ポルテは雄羊からそろそろと降りて言った。
「ずいぶん遠くまで連れて来ちゃったね。ごめんね。」
雄羊が返事するわけもないが、もういいのか?とばかりに少し頭を揺すった。
そして高原に向けてゆったりと帰って行く雄羊の後ろ姿に向かって、ポルテは相手に
通じるはずもなかったが手を振って彼を見送った。
さて、ポルテはどうするつもりか。しかし彼にはもう算段が立っていた。
「さぁ、今度は君の番だ。」
彼が命じた相手は、黒い肌をした虎だった。
実は、あともう少しでポルテに襲いかかるところだったのだ。
虎が鋭い爪を振り下ろそうとした瞬間に、ポルテは武芸者が見せる白羽取りの様な鋭さで
黒い虎の攻撃を封じたのだ。
……実は、その背後で身を隠して護衛していた赤魔導師は既に剣を抜いていたのだが、
そのポルテの見事な獣使いぶりに驚嘆し、うっかり溜息を漏らしてしまった。
幸いにもポルテは気付かなかったのだが。
ポルテは身軽にその背に飛び乗って命ずると、黒い虎は凄まじい勢いで駆け出した。
「よーし、このままジュノへ駆け通すぞー!!」
赤魔導師は苦笑いで白魔導師リタに『話』を飛ばす。
【頼む、ジュノからあの子を迎えに出てくれ。俺の足ではもう追いつけない。】
見通しの良いバタリア丘陵に出たポルテを乗せた黒い虎は、ますます勢いよく駆け抜けて
いく。実はこのバタリア丘陵こそ彼の縄張りだった。ポルテにその早さを示すかのように
疾風の様な走りを見せ、ポルテはずり落ちそうになりながら、必死で虎の首につかまって
いた。
「おーーーーいっ」
遠くから声がする。こちらの方に駆け寄ってくるチョコボが一騎。
それは旅の始まりで出会った白魔導師リタを乗せたチョコボだった。
「あー!魔女さーん!!」
ポルテは大声で答えて手を振った。
「こらァーーーッ!魔女って言うなァーーー!!」
そんな陽気なやり取りをしながら、広いバタリアの地を一気に駆け通していく。
そして……遂に見えてきた。巨大なジュノの大門。
全速力のままで大門を通り抜けると、さらに見えてきたのは都市国家ジュノの巨大な塔。
ついに、ポルテはジュノへと到着したのだ。
(続く)
886 :
◆6NLrYYfI2g :05/02/01 17:14:33 ID:8HqbmER3
明日には結末まで貼ろうと思います。
887 :
既にその名前は使われています:05/02/01 17:29:33 ID:SlmXbVOG
面白かった。俺もペットに乗って移動してえ・・・
888 :
既にその名前は使われています :05/02/01 18:16:36 ID:ZVqabTEz
なかなかどころか、めっさいい感じ!
明日の続きが待ち遠しいっすっ!!
889 :
既にその名前は使われています:05/02/01 18:23:51 ID:2kQxsEi0
うむ、面白い。
結末に期待age
890 :
ケトラー:05/02/01 21:53:44 ID:c/huhSaa
あげ
891 :
既にその名前は使われています :05/02/01 23:33:02 ID:ZVqabTEz
寝る前期待age
「さぁ、遂にやってきたわね!」
白魔導師リタは興奮気味でポルテに言った。
初心の冒険者の誰もが憧れる都市国家ジュノ。そこは冒険者達が集う冒険者のための街。
リタの脳裏に駈け出しだった昔の自分が蘇ってきた。初めてジュノに到着したときの
感動を思い出して、ポルテの到着を我がことのように喜んでいた。
「……」
だが、ポルテは終始無言で虎から降り、元の住処に返るように指示している。
その表情は何故か緊張に包まれていた。
そんな様子にリタはいぶかしんでいたが、そうしている自分達に向かってくる黒い影に
気がついた。
あのタロンギ大峡谷で出会った黒魔導師だ。
「とうとう来てしまいおったな。この馬鹿者。」
そう言ってフードを上げて顔を見せると、ポルテは驚いてようやく口を開いた。
「あ……やっぱり、ベクトト叔父さん……」
「あらら、やっぱし身内だったのね?」
しかし、リタの横車を無視して黒魔導師ベクトトはポルテに詰め寄る。
「お前が来るには早すぎる。いずれは嫌と言うほどここに来ることになるだろう。
魔導の修行を怠り、家を抜け出して来るほどの場所ではないんだぞ?」
「あら、いいじゃない。私も最初はここに来たくてたまらなかったわ。
こういう冒険もたまには必要よ。さぁ、私が中を案内してあげる。」
「何を馬鹿なことを。ポルテ、この街にあるのは喧噪と人混みだけだ。子供が見物して
面白いものなど有りはしない。」
だが、ポルテの返事は意外にも叔父ベクトトに同調した言葉だった。
「そんなこと知ってるよ。僕だって見物に来たつもりじゃないんだ。」
「え……?」
リタは驚いてポルテを見返した。
「叔父さん。僕は父さんに会いに来たんだ。嘘でしょ?父さんが処刑されたなんて!」
「……誰から聞いた?いや、子供こそ耳ざといからな。」
白魔導師リタは何か思い出したらしく、思わず口を漏らした。
「ああ……もしかして、この子はあの獣使い『トルテ』の……」
「知ってるの!?父さんのこと知ってるの?」
子供らしからぬ厳しい表情でリタに詰め寄る。
「待て、ポルテ。こうなれば私から話す。それが叔父である私の責任だ。」
叔父ベクトトはポルテを差し止めて話し始めた。
「いいか?お前の父トルテは処分された。処刑ではなく抹消されたのだ。」
「まっしょう……?なにそれ?」
思わず口を挟むポルテに、叔父ベクトトは厳しい口調で叱りつける。
「人の話は最後まで聞け!!
いいか、お前の父は以前から他の戦士や冒険者達と狩場や修行の場所を巡って、対立を
繰り返していたのだ。もともと『獣使い』というのは、彼ら冒険者達と行動が異なる
ため、こういう諍いが起こりやすいものなのだ。そして、とうとう事件が起こった。
お前の父に引っ張られてきた怪物共によって、彼ら冒険者達が惨殺されるという事件
だ。これを『上』の連中は大量殺人とみて、トルテは犯人として捕らえられた。」
堪えきれずにポルテは叫んだ。
「嘘だ!父さんがそんなことをするはずはない!」
今度は叱らずに叔父ベクトトは頷きながら同意する。
「確かにな……私も耳を疑った。だが、被害者の友人や事件の生き残りの恨みがつのり、
怒濤のような訴えが上がり、極刑『抹消』が適応された。
『抹消』とはな……普通は死んだら遺体が残るが、この場合は違う。
骨一本も残さず消されて仮の墓を掘ることも許されない、正に極限の極刑なのだ。」
ポルテはこの話を聞きながらワナワナと震えて呟いた。
「そんな……信じられない……」
叔父ベクトトは又も頷き、むしろ優しい口調で答えた。
「そうだろうとも。私も一人の話で納得できることとは思っていない。
ジュノに入り、話を聞いて回れ。もはや誰もが知っている事件だ。」
ジュノに入ったポルテは、さっそくその辺に座り込んでいる冒険者達に、誰彼無く話を
聞いて回った。白魔導師リタは、その様子を心配そうに見守り付き添って行く。
冒険者達は子供が相手と見て、ゆっくりとかいつまんで話をするが、どれもこれも叔父
の話以上の事実は出てこない。
目を潤ませて聞いているポルテを見て「元気を出せ」とおざなりな言葉を付け加えるのが、
彼らの出来る精一杯だった。
しかし説明をしてくれる人はましな方だった。
「知らない」
「うるさい、あっちへいけ」
「子供が聞いていい話じゃない」
等々……
最悪なケースは、トルテの息子と聞いて子供相手に本気で罵声を浴びせるものがいて、
頭に来たリタと取っ組み合いのケンカになる事さえあった。
涙を堪えながら、いや、もはや涙を拭いながら尋ね歩くポルテ。
そんな彼を、冒険者達は無慈悲にうわさ話をしながら、冷たく見守るだけだった。
最後に、もっとも有力な語り手を見つけた。
父と同じ羊の装備を着た髭面のヒュムで、どうやら父トルテと同僚らしかったのだ。
「……まったくひでェ話だ。今思い出してもはらわたが煮えくり返る。
いや、お前の親父に対してじゃない。勝手に殺人犯に祭り上げた『お上』のことだよ。
そん時の事件は俺も一緒だったから一番知ってるんだ。
親父は本当に優れた獣使いだった。確かに他の連中と争いになることもあったが、グッと
堪えて狩場を譲ったりして、こっちがイライラするほど下手に出てたぐらいなのに。
だが、どうしても狩場が少々被ることもある。そんとき事故が起こったんだ。
予想もしない蟹の群れに出くわして、どうにも対処できずに親父は逃げまどっていたが、
うっかり逃げた先に他の連中が固まって座ってたんだ。いやなに狙った訳じゃない。
いつも空いているはずの場所で、なんで今日に限って集まってやがるんだってなァ。
ああ、死んだ連中には殺されたとしか思えねェんだろうよ。
事故となったら禁固の刑で済む。賠償金でなんとかなるなら仲間と総掛かりでかき集めて
やったのに。俺達も散々文句を付けたが、その度にリンチが待ってるわけで……
おい坊や!どこにいくんだ!」
もう、ポルテには限界だった。
そして、在らぬ方向へとトボトボ歩いていき、誰の声も耳に入らなかった。
誰の話を聞いても、「お前の父はどこそこに生きていて……」などという夢のような話は
出てこなかったのだ。
白魔導師リタに抱きかかえられるようにして、ポルテは酒場へと連れられていった。
子供でも飲めるジュースを差し出されたが、ポルテは手も付けずに、うつむいて涙を
こぼし続けている。リタもポルテの側に寄り添い、たまらず貰い泣きしていた。
そこに、追いついてきた赤魔導師タウスと黒魔導師の叔父ベクトトが現れ、無言のまま
近くに腰を下ろす。
叔父も「それ見たことか。だから、この話を聞かせたくなかったのだ。」などという皮肉
を漏らす様子もない。彼も又、自分の兄弟が処分されたことが無念で仕方がなかったのだ。
しかし、その時。
「あー、ここにいたのか。探したぞ!トルテの息子!」
扉が開いて誰かが入ってきた。さっきの父の同僚である獣使いだった。
「おーい、みんなこっちだ!」
彼の呼びかけにぞろぞろと入ってきたのは、まだ見知らぬ冒険者達である。
そしてポルテが泣いていることもお構いなしに、口々に話しかけた。
「あんたが息子か!変わりに俺の礼を受けてくれ。あんたの親父のお陰で俺は救われたんだ。」
「この装備を見てみろ!すごいだろ?お前の親父が探すのを手伝ってくれたんだ!」
「お前の親父は、そりゃあ狩場に詳しくてな。どこが良いとか、お前には其処は早いとか。」
「俺たちも獣使いの連中とは争うこともあったがな……そういう時はいつも、お前の親父に
泣きつくんだ。」
「お前の親父と飲む約束をすっぽかされたんだ。息子のお前に約束を果たして貰うぞ!」
その怒濤のごとき責め立てられように、ようやくポルテの涙は止まった。
しかも笑顔まで浮かべ始めたのだ。
そこへ例の同僚は得意げに言う。
「どうだ?これがお前の親父の功績だ。抹消されたのがどうした。
墓石は石でしかなく棺桶に入っているのは骨くずばかり。そんなものは糞喰らえだ。
俺たちの心ン中にゃ、あいつとの旅や冒険がいっぱい詰まってる。
お前の頭ン中も、親父と一緒に遊んだりした思い出で一杯なんだろ?
旅の途中で親父から散々聞かされたよ。いずれ俺の息子は俺を超えるってなァ。」
綺麗にまとめたつもりだったが……
……本当の締めくくりをしたのは、後からやってきた一人の旅人だった。
「この赤い魔導師さんから聞いたよ。坊やだね?私をオークから助けてくれたのは。」
それを聞いた観衆が囃し立てた。
「聞いたか!もう親父の後を継いだってよ!」
そうして酒場は大爆笑に包まれて……
一通りのジュノ見物も終えて、ポルテはいよいよウィンダスへと帰ることとなった。
叔父ベクトトが言う。
「しばらくそっとしてやろうと思ったが、その調子なら大丈夫だな?
罰として、当分は呪文の書き取りに専念させるから覚悟しておけよ。」
白魔導師リタが言う。
「ま、それも大切ね。あなたの父さんは魔導師の修行もしていたはず。
獣使いの常識なんだってさ。いろんな勉強して立派な獣使いになるんだよ。」
叔父ベクトトはリタを睨みつけて言った。
「何を言うか。私はこの子を獣使いになどさせんぞ。」
「いーえ。この子の将来を決める権利は、この子にしかありませんってば。」
そういって茶化したリタの言葉を、赤魔導師タウスが引き継いだ。
「そうだ。自分で進むべき道を決めて、しっかりと前に進むんだ。
この旅は、お前にとって必要な旅だったし、良い勉強となったはずだ。
お前のしたことは全て本当に正しかったのだ。」
叔父ベクトトは、もう堪忍袋の緒が切れたらしい。
「ええい、貴様らいい加減にしろ。さあ、もう帰るぞ。」
叔父ベクトトは呪文の詠唱を始めた。
それはタロンギで詠唱しようとした帰還魔法『デジョン』の上位魔法だった。
黒い闇に包まれるポルテに、リタは見送りの言葉を投げる。
「がんばってね!今度、ウィンにいったら呪文のごまかし方教えて上げるねぇ〜!」
そしてタウスの言葉、
「大きくなったら必ず会いに来い。俺と一緒に大暴れしよう。約束だぞ!」
そして、もはや消えかかるポルテは新しい友人達に手を振って叫んだ。
「タウスさん!魔女さん!また会おうねー!!」
勿論、魔女と呼んだことは、ワザとであったのは言うまでもない。
そして、リタに言い返す暇も与えず、ポルテはウィンダスへの帰って行った。
(完)
後書き代わりに私事(実話)を一つ。といっても、大した話ではありませんw
ただ、自分としては感動したので何処かに残しておきたいのです。
こんな事を書いたら、私のことが特定されるかも知れませんが……
私がいよいよLv18に近づきサポアイテムが必要となっていた頃、
LSに所属せず(所属するつもりはありませんでしたが)お手伝いを頼むあてなど在りませんでした。
どうしよう、シャウト要望するしかない。でも、サポアイテムの要望シャウトなんて聞いたこともない。
でも、しかたがありません。恥ずかしいのを我慢して、ウィン噴水前でシャウトを初めて見ると、
すかさず黒魔導師が駆け寄ってきて、私の要望に応えてくれたのです。
ファイア一発で見事にBogyを沈め、衣をゲットして頂きました(マウラ側です)
そして時は流れて……
なんと、ジュノ下層で忘れもしないサポアイテムの恩人がテレポ要望しているではありませんか。
エリチェン直後にそれを気がついたのですが、あわてて戻ってTellいれて、テレポさせて頂けたのです。
そして再度のお礼の言葉を聞いて頂けました。
嬉しかった。今度は逆にお手伝いのようなことが出来たのが嬉しかった。
しかも、目標の一つだったサポ白テレポが出来るLv72まで上げたことを見て貰えたのが嬉しかった。
そして彼女が覚えてくれていたのが、喜びモーションを連発してくれたのが、とてもとても嬉しかった……
いけ好かない■eの掃き溜めのようなヴァナディール。
けれども、行動一つ気持ち一つで輝かしい原石のようなものが、きっと誰にでも見つけられるはず。
その人に感謝の気持ちを込めて後書きの変わりと致します……なんちてwwww(*゚Д゚)タハハ
902 :
◆6NLrYYfI2g :05/02/02 06:47:36 ID:DlXh0zO5
て、いう個人的な話で終わらせるのもなんなので。
つДT)読んで頂いた方、感想を頂いた方、本当にアリガト
最後はペットの活躍がない超重い展開でスンマセン
ジュノを踏み荒らすゴジラを操り大活躍、なんて展開にするわけにも行かず、
話を締めなきゃならないということで……
で、私の駄文の完結が900( ゚Д゚)ゲットー
903 :
ケトラー:05/02/02 07:40:23 ID:1zCxXWVs
おもしろかたよ
904 :
既にその名前は使われています:05/02/02 09:50:38 ID:PW9VqgTA
携帯唐揚げ
905 :
既にその名前は使われています :05/02/02 17:16:16 ID:hHImsfgT
久々に面白かったです。◆6NLrYYfI2g さんありがとー。
ポルテとリタの絡みで成長期版とかないかな〜。。。と期待age。
906 :
◆6NLrYYfI2g :05/02/03 00:12:09 ID:8/vArsd2
>>903 >>905 つДT)感想ありがとです。続編は...ちょっと妄想が働かない状態w
これで終わりってのが綺麗かも、とも考えたり。
907 :
既にその名前は使われています :05/02/03 05:44:00 ID:OyQQb76R
>906
なんかもったいない気もするけど、こればっかりは書き手のモチベの問題でしょうから・・・。
とにかく新作期待してますよっage
三沢さんオモロカッタ。
あんた煽るだけじゃなかったんだな!
見直しマスタ。
909 :
既にその名前は使われています:05/02/03 22:08:44 ID:RamCttxX
ageage
910 :
既にその名前は使われています:05/02/04 09:56:57 ID:WzOtd3gz
次スレ立てるの?age
911 :
◆yANtvXYFvY :05/02/04 12:48:06 ID:UKLSwoyR
あらためて彼女を見る。
彼女はやはり狩人だった。
黄色と黒を基調とした薄手の革鎧に胸当がついているものを着込んでいる。
背中には矢筒と、小柄な体格には不似合いなほど大きな弓を背負っていた。
これだけ大きいと弦の堅さも並じゃない。相当な腕力がいるはずだ。
だが、見た目は、そんな力などとてもありそうにない、どこにでもいそうなヒュームの女性だった。
小柄だった。彼と頭一つ違う。
茶色い髪は前髪を右に垂らし、サイドを小さく後ろで束ねてある。
ぱっちりとした眼は、さらに大きく見開かれていた。
───何だって?
今気付いた。彼女は彼の顔を見ながら、何かに驚いているような顔のまま固まっていた。彼も驚いた。
しばしの沈黙が辺りを支配する。
耐えられなくなった彼は恐る恐る声をかけた。
「えっと……どうかしたかな?」
「……ル?」
「え?」
ぼそっと言ったので聞き取れなかった。
「……ハルなの?」
彼はまた驚く羽目になった。
「なんで俺の名前を……?」
「───ッ!!やっぱりハルなの!?無事だったのね!?」
彼女は彼───ハルに抱きついた。すがりついた、と言ったほうがよいかもしれないが。
ハルはいきなり飛びついてきた彼女を抱き止めるしかなかった。
密着した体は、筋肉で引き締まっているのがよくわかる。だが肉付きは悪くなく、
女性特有の柔らかさは失われていなかった。
抱き止めた衝撃で脇腹の辺りに鈍い痛みが走った。今まで気付かなかったが折れて
いたのかもしれない。
『無事だったのね!?』
彼女はそう言った。
つまりどこかで会った事があるのか?そしてその時に生き別れた?
だが彼にそんな覚えはなかった。名前もわからなければ、顔にも見覚えはない。
「……ごめん。君は誰かな。」
彼はなだめるように優しく言った。
これ以上事を荒立てたくない。傷は治ったわけではないし、脇腹の痛みが酷くなっている
のだ。とりあえず離れてほしかった。
しかし顔を上げた彼女の眼に涙が溜まっているのを見て彼は焦った。
まずい。泣かせたか。
「私よ!アシュレイよ!!まさか───覚えてないの?」
彼女───アシュレイと言うらしいが───は、半ば懇願するかのように問い掛けた。
ハルはもう一度記憶を手繰ってみたが、やはり覚えはなかった。
「……すまない。」
それだけ言うと、アシュレイは俯いて、そっとハルから手を離した。
やっと解放されたかと思ったが、痛みは引かない。ますます酷くなっている。
苦痛に顔をしかめたが、彼女は気付かず、俯いたままだった。
「どうして?……ハロルド……私はずっと……」
「ん、なんだって。ハロルド?」
彼女は小さく呟いただけだったが、今度は聞き逃さなかった。
「俺の名前はハルだ。ハロルドじゃない。」
アシュレイははっとした様に顔を上げた。
「そんな……。ハル、じゃない……?でもその顔は───」
彼女が何か言いながらまた近寄ってきたのはわかった。
が、不意に世界が白黒に点滅したかと思うと、次に見えたのは迫りくる地面だった。
───この子にとって、ハロルドって奴はとても大事な存在なんだな。
そこで彼の意識は途切れ、闇の中へと堕ちていった。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
世界が、輝いていた。
眩しい。とても。今まで見た事のないほどの輝き。
もしも死後の世界というものが存在していて。
そこが現世よりも素晴らしい場所だったとしたら。
人々は、何のために必死に生きているのだろう。
そして、何のために───────
「───ん、ん?」
眼を開く。が、眩しさのあまりまた眼を細めてしまった。
窓から射し込んだ光のせいらしい。おかげで目が覚めてしまった。
ベッドから上半身を起こしたが、頭はまだはっきりしていなかった。
───何か、夢を見ていたような気がするんだけど。
考えても思い出せなかったので諦めた。
こういうのは、考え続けても思い出せた事がない。ふとした時にいきなり甦ってくるものだ。
「今、朝か……?」
起きあがって窓に近付いた。
窓の向こうでは太陽はやや低い位置にあった。だが、あれが昇っているのか、沈もうとして
いるのかわからない。
「こっちの方角は、えーっと───あれ?」
───こんな位置に窓なんかあったか?
ふと違和感を感じて周りを見渡してみた。
やはり何かがおかしい。
だんだん頭がはっきりしてきた。
───俺は怪我をした。ゴブリンに追われてたな。助けられて。それで───ケアルを
唱えろ。アシュレイ。誰だ?脇腹が痛んできたんだ。狩人。女の。クロスボウがささっ
たままだぞ。そうだよ。───ここはどこだ?
「くそっ、うるさい!!」
思考がまとまらない。苛立って自分に怒鳴ってしまった。
落ち着け。基本から始めよう。
まず自分の体を確認した。
上半身の薄い肌着一枚と、ズボンのみという軽いいでたち。
肌着の下には包帯が巻いてあった。
そこでクロスボウが刺さっていたことを思い出す。
どうやらだれかが治療したようだ。
自分の体を確認し終えると、次は最後の出来事を思い返した。
───そうだ、気を失ったんだ。そしてここに運び込まれた?誰が?……彼女か。
「てことは、ここは病院?」
そう呟いた時だ。
扉が開いた。反射的に身構える。
扉の向こうから現れたのは何度か見た顔だった。
「あ───目、覚めたんですか!?よかった……!」
そこにいたのはアシュレイだった。よく見ると、後ろにも誰かいた。
「やぁ、調子はどうですか?鏃は取り除いておきました。一通り処置は終わったと思いますが、
もし気分が悪くなったら言って下さい。」
長身痩躯のエルヴァーンの男だ。この男には会った事がある。
「ありがとうございます。モンブローさん。」
「いえいえ。こちらも君には世話になってますからね。」
ジュノ上層にある病院を経営している、モンブロー医師だ。『医術』という、珍しい治療術を
身に付けているらしい。ハルは以前、何度か頼まれて、薬の素材を探してきたり、患者の様子
を代わりに見に行ったりした事があった。
「それに、お礼ならこちらのお嬢さんに言って下さい。彼女が君を見付けていなければ、死んでいた。」
「あなたが一番重傷だったんですよ?」
上目遣いで顔を覗き込むアシュレイ。が、そう言うと急に彼女の顔が曇った。
「それなのに、私……なんていうか。その。ごめんなさい。」
アシュレイは深々と頭を下げた。ハルは慌ててそれを止めさせた。
「いいんだよ。君がいなかったら俺は今頃ここにいないんだし。……ありがとう。」
そういって、にっこり微笑んだ。
それを見たアシュレイの表情は和らいだが、今度は顔を染めて俯いてしまった。
───しかし、信じられないな。
「モンブローさん。」
ハルは医師に呼びかけた。
「はい。なんですか?」
「本当に俺が一番重傷だったんですか?」
それが信じられなかった。
あの時動けたのはハルだけだった。
───その俺が一番重傷?
「ええ。まあ確かに他の方々も良い状態とは言えませんでしたが、君ほどではありませんでしたよ。
魔力も無限ではありませんから、治療しきれなかった何人かはここに運ばれたのですけど、彼らは
擦り傷や火傷は負ってましたが、致命傷には至ってませんでした。君の場合は、まず全身打撲、火傷、
クロスボウによる創傷。そして右上腕部・鎖骨の骨折、左足関節果部───ようするにくるぶしです
ね───骨折、それに肋骨も数本折れてました。更に、そんな状態で動いたものですから、内臓も酷く
傷付いていたみたいです。ここに運び込まれた時、吐血量が凄まじかったですから。痛かったでしょう?」
『痛かったでしょう?』と聞かれ、ハルは苦笑いしながら頷くしかなかった。
あの時動けたのは自分だけだった事も話してみたが、「それは単に、君が一番早く目を覚ましただけ
ですね。」ときっぱり言われてしまった。
現に、アシュレイの仲間が到着した時には、皆意識を取り戻していたらしい。もっとも、倒れる前に魔力
は尽きていたのでロクな治療はできていなかったようだが。
ホームポイントは皆同じ場所にしてあったので、白魔道士が回復し切れなかった者を、黒魔道士がデジョ
ンIIでジュノに送還し、残りの彼女の仲間がそれを医院まで送り届けたらしい。
その後、黒魔道士はすぐにハルの所に来て、アシュレイと共にデジョンIIで送り、彼女がハルを医院まで
運び込んだということだ。
ハルは考えをまとめてみた。
最初に起きたのは自分。(だが一番重傷だった。)
助けを呼びに行ったがゴブリンに絡まれて死にかける。(その間に仲間は目覚めていた。)
異変を聞き付けてきたアシュレイとその仲間に皆助けられる。(この時点でハルが助けを
呼びにいった意味がなくなる。)
痛みに耐えきれなくて意識を失う。(追い討ち。)
ようするに、だ。
「これが本当の骨折り損のくたびれ儲けってやつか。」
聞こえないように呟いた。あはは、と、乾いた笑いを少し漏らして、また黙った。
───笑えないっての。
泣きたくなった。
モンブロー医師は「あとはお若いお二人で。」とか言い残して出て行った。
ハルはまたベッドの中で上半身のみを起こしている。アシュレイは脇の椅子に座って所在無さげにしていた。
なんとなく気まずい沈黙が流れる。
───何か話しかけないとな。
「あの、さ……」「あのっ……」
同時だった。
「「え?」」
これまた同時。
ハルは思わず噴き出してしまった。アシュレイもつられて笑った。
「ああ、どうぞどうぞ。お先に。」
彼女に促すと、少し躊躇ったがすぐに話し始めた。
「あの、名前。まだちゃんと言ってませんでしたよね。」
そういえば、そうだ。
彼女が『アシュレイ』だというのはわかっているが、あれは自己紹介したとは言えないだろう。
「私、アシュレイっていいます。アシュレイ・ウォーカー。」
「ウォーカーさんね。」
「あ、アシュレイでいいですよ。」
そういうと彼女は微笑んだ。
「俺は……ハルだ。」
「……ハル?」
「そう。」
「えっと……それだけ、ですか?」
「うん。」
「……そうですか。」
なんとなく腑に落ちないようだが、人にはそれぞれ事情ってものがある。彼女もそれ以上詮索するのは止めた。
「じゃあこれで自己紹介もちゃんと終わりましたね。次はあなたの番ですよ。ハルさん。」
「え?あ、そうか。」
ハルは困ってしまった。
何か話しかけないと、と思って声はかけたが、何を話すか決めてなかった。
「えーと、そうだな。俺の話は───」
そこで思い付いた。
「そうだ。あの時、君、俺の事誰かと間違えたよね?」
彼女の顔色が変わるのをハルははっきりと見て取った。
───しまった。触れたらマズイ話題だったか?
だが言ってしまったものは仕方ない。彼女の様子を見て、早めに切り上げるかどうかしよう。
「あの時の事は、それは───」
彼女が口を開いた時だった。
不意に扉が開いた。二人とも、驚いてそちらに目を向けた。
入ってきたのはモンブロー医師ではなかった。
ガルカだ。
そいつは部屋の様子を伺い、アシュレイに目を止めると、一礼した。彼女は突然の事に
戸惑いながらも、礼を返す。
それからそいつは、ハルの方へ顔を向けた。
924 :
◆yANtvXYFvY :05/02/04 13:23:11 ID:UKLSwoyR
またできた分だけはっておきます。
タイトルは急ごしらえですので、変わるかもしれません。
自分的には、やりとりが少しありきたりな感じもします。
読んでいただけると嬉しいです。
ちなみに今回途中から改行を少し揃えてみましたが前回と比べてどうでしょうか?
(途中からなのは途中で思いついたからですw…すいませんorz)
自分で見返してみると、モンブロー医師の会話部分がやや読みづらいような気もします。
925 :
ケトラー:05/02/04 19:50:14 ID:Rs06cOBn
ほしゅ
926 :
既にその名前は使われています:05/02/04 20:45:10 ID:E22FEMD2
>>924 会話のやりとりは、ちょっとぎこちないかなって程度で気にならなかった。
むしろ、描写が一人称のようでもあり、三人称のようでもあるので、
その辺がちと読みにくい。(誤読だったらすまん。)
お話的には、なかなか興味をそそっていいと思います。
なんか、偉そうな感想でごめんちゃい。
>>924 読みましたよ。
改行は、揃えてあるほうが見やすいですね。
35〜40文字(70〜80桁)くらいの間で改行を入れてくといいかもです。
(このへんの加減は、書き手さん次第でしょうね)
928 :
既にその名前は使われています:05/02/04 23:31:06 ID:WzOtd3gz
> ◆yANtvXYFvYさん
読ませて頂きました。
二人の関係とか、6人の倒れていた理由とか、
とにかくそれが気になるので、続きが楽しみです。
あと、
> 「「え?」」
一瞬、なんだこりゃって思いましたが、意味はすぐにわかりました(説明付きなので)
うーむ、こういう表現もあるのかぁ……と考え、ちょっと面白かった。
929 :
既にその名前は使われています:05/02/04 23:49:50 ID:E22FEMD2
>>910 このスレは、どのくらいで次スレ建てたらいいんかな?
進むときは進むけど、進まんときは全然進まんし。
970くらい?
930 :
既にその名前は使われています:05/02/04 23:54:52 ID:WzOtd3gz
>>929 うーん....
とはいえPart4だし、スレ主さんが居たら、これまでどうりに運営して貰えばいいのかな?
まぁ、900超えたら適当にやればいいような気も。
931 :
929:05/02/05 01:00:08 ID:HseHF7tQ
>>930 ふむ、このスレはおれが建てたんだけど、1〜3は違うのよな。
まあ、成り行きを見て適当がいいのかな。
スレ主さん、てのは居ないと思うよ
今までは続き読みたい人が自主的に立ててた感じ
933 :
◆6NLrYYfI2g :05/02/05 08:17:21 ID:xUQxCypQ
ありがとです
新作も、なかなか妄想が浮かばず、といった状態です(汗
うーむ、続篇考えるとしたら……言い訳編になっちゃいそうな気もw
934 :
◆yANtvXYFvY :05/02/05 10:13:51 ID:WrnBUtQq
みなさん感想ありがとうございます。
続きもなるべく早く書きたいと思うので頑張ります。
>>926 描写は意図して一人称っぽくしている部分もあります。
ですが、いつのまにか一人称が出てきてる部分も多いんですよね…
要修行ですね。
話の内容に興味を持っていただけているのはとても嬉しいです。
表現ばっかり拘って話がつまらなかったら本末転倒ですので。
勿論、表現も伴っていないと駄目ですが。
>>927 なるほど。参考にしますね。
>>928 話の本筋はある程度できていますが、そこまでの肉付け(話を盛り上げる部分)が現在イマイチ希薄なので
そこをもっと掘り下げていきたいなぁと思います。
表現については〜「え?」「え?」と2個並べるよりもカッコふたつくっつけてひとつにしたほうがいいかと思いましてw
追記。
>>926 三人称だとどうしても説明くさくなってしまうのがいやで、どうにか避けようと
思っているうちに一人称が混ざってしまうのかもしれません。
だったら最初から一人称で書けばいいのかもしれませんが、三人称でしか書けない事もあるので。
「あ〜っ、もうっ! なのです」
天の塔書記官の間に設(もう)けられた受付で、書記官のクピピが、
猛烈な早さで羽根ペンを走らせていました。
「どうして? 星の神子さまは、終業すんぜんに、こんな、たくさん、
勅書を、書くよう、命ぜられたの、かな?」
バン、バン、バン、バン、バン! はんこの乱れ打ちです。
「しかもこの内容っ!」
ピラリと書類を一枚つまんで取り上げてみせました。
「星の神子の名をもって命ずる。なんじ、バレンモレンは、シャントットに
最新式のエレガントな帽子をあつらえること」
書類を読みあげたクピピは、踏み台にしていたストゥールのうえにペタンと
座りこんでしまいました。そうして、肩をすくめて、手のひらをうえにして
頭の左右にさしあげて、
「ふえぇ〜っ? あほか? 神子さまは、あほなのなのか。あほに成って
しまわれたのか? なのぉ。……ふぁあ、疲れたの」
部屋のなかには、残業中の彼女ひとりだけしかいませんでしたから、
誰にはばかることもないというわけで、言いたい放題です。
投げだされた書類が、あちらに飛んで、こちらにひるがえって床に吸いつく
ようにして落ちました。
そのようすを横目で見守っていたクピピは、目の前の机の上にある書類の
束に視線をうつすと、ため息をついて、まぶたをおろしました。
目を閉じたまま、手をもぞもぞ動かしてうわぎのポッケから飴玉をだして、
お口へパクリ。右の頬へころがし、左の頬へころがし、両手をほっぺにあてて、
えへへへへ。(ロランベリー風味のキャンディーなの♪)
「さあて、もう一息。クピピファイトなのです」
うんと伸びをすると、すっくとたちあがりました。
そして、羽根ペンをとって書類づくりを再開しようとしたとき、先ほど
投げだした一枚のことを「あっ」と思いだして、振りかえりました。
振りかえったクピピは、ギクリと身体をこわばらせて、
「ゴクリ……」
まだまだ舐めごたえのあった飴玉を飲みこんでしまいました。
「はわわ、飲んじゃった。っと、それより、そ、そこに居るのは誰なの
ですか!?」
ズビシ、と手にした羽根ペンで指差した先には、さっきの書類が宙に
うかんでいました。
「姿を消していても、ばればれなのですよ!」
「……」
しかし、姿を隠して書類を読んでいると思われる相手からは、なんの反応も
ありません。「むー」とクピピは、唇を突き出して、羽根ペンを置くと、
もう一度ズビシ。それでも反応がなかったので、今度は、はんこをつかんで
投げつけてみようとしたのですが、そのとき、
「見つかってしまいましたか……」
クピピの見詰める空間に書類を携えたタルタルが姿をあらわしました。
「うあ! シャントット博士」
「ごきげんよう」
博士のおじぎは、エレガントでした。
「こんな時間になぜここに? いつのまに? ドアは開かないのに、
どうして? 一体、全体、なにごとなのですか?」
「クピピ落ち着いて。まず、わたくしの質問に答えなさい」
「う、はい」
威圧感にクピピは、“気をつけ”をして固まってしまいました。