アプルル「おにいちゃん、いいの? セミ・ラフィーナさんはもう十分、強化魔法をかけてもらってるのよ?」
アジド・マルジド「試合前から強化、ね……所詮は、温室育ちだな……」
クピピ「青龍の方角、口の院院長、アジド・マルジド! 白虎の方角、守護騎士長、セミ・ラフィーナ!
守護騎士vs院長ッ、狩人/ナイトvs黒魔/白魔ッ、猫vs樽ッ、
ロマンをかきたてずにはおかない一戦が、ここに実現したのですッ!
ハエ・ジャッキヤ「騎士じゃねぇ? セミ・ラフィーナが?」
アプルル「おにいちゃんは、試合前の強化魔法は一切使ってないの。
魔道士も騎士同様、常に日常臨戦体制であるべきだという信念からです」
ナナー・ミャーゴ「信念……か」
セミ・ラファーナ「アジド・マルジド……ここで決着をつけるぞ」
アジド・マルジド「ああ……おてやわらかに……(/bow motion)」
カーディアン「ハジメィッ★」
クピピ「ビースティンガー+1と連邦魔戦士制式短剣!
奇しくも両者の武器は同じ短剣ーッ、なのなのですッ! 両者、動かないッ」
セミ・ラフィーナ「!」
――小手調べに攻撃を仕掛けるセミ・ラフィーナ、しかしその身体を強烈な電撃が襲うッ!
アプルル「出たッ」
アジド・マルジド「ほぅ、もう食らったのか……さすがに素早い攻撃だな」
クピピ「ショックスパイクなのですッ!
黒樽のHPでは実用度が低いとされているスパイク系魔法が、
この天の塔地下闘技場で炸裂したァーッ、なのです!」
アプルル「10レベル以降、ブレイズスパイクを身につけた魔道士は星の数ほどいるけど、
PTプレイが日常化される中で使いこなしている魔道士は、おそらく10%にも満たない。
キャップレベルでスパイクを愛用してるのは、いつもソロのおにいちゃんくらいよ」
クピピ「出たぞ狩人のアビリティ、乱れ射ち! 対するアジド・マルジド、なんの魔法も唱えないッ、なのです!」
アジド・マルジド「ニセモノ(のダメージ)ばっかり……」
――――微動だにしないアジド・マルジド。
アジド・マルジド「これだ!」
――――本命の矢を、低い回避スキルでも見切るアジド・マルジド。
――――セミ・ラフィーナも攻撃の手を緩めない。ヘイストが効いているのか。
ハエ・ジャッキヤ「バイパーバイト! 奴の得意技だ!」
アジド・マルジド「ふっ」
クピピ「ブ、ブリンクーッ、なんと黒樽が白魔法ーッ! やはり黒白パンダなのです!」
――――さらに攻撃を仕掛けるセミ・ラフィーナ。だが……。
クピピ「どうした、ようやくヒットしたセミ・ラファーナの攻撃は、0ダメージ!」
アプルル「あの攻撃間隔のなかで、あれを……」
ナナー・ミャーゴ「あれは……」
クピピ「また白魔法、ストンスキンでダメージをカットしているのです!」
――――アジド・マルジド、反撃のスリプル。レジストできないセミ・ラフィーナ。
アジド・マルジド「1分(効果が)」
クピピ「強い強い強―――い、お見事院長! ブラボー黒樽なのです!」
アプルル「ソロプレイを極めてるわ……実現不可能と思われていた樽カウンター戦法を、
ああも完璧に体現できるなんて……。弓矢や魔法は準備する間にブリンク発動。
直接危害を加えようとする敵の攻撃に対し、ストンスキンとショックスパイクで返す。
敵の攻撃スピードが速ければ速いほど、カウンターダメージも増大してしまう……」
ナナー・ミャーゴ「カウンターか……なら、打つ手はひとつね」
セミ・ラフィーナ「なるほど、敵の攻撃に対して、反撃の度合いが変化する」
100の間隔で攻撃すれば、100の間隔でショックスパイクで反撃できるというわけか。
アジド・マルジド「よくできているだろう」
セミ・ラフィーナ「だが……私が敵でなくなれば、どうする?」
クピピ「立ち上がった、セミ・ラファーナ。しかしこれ以上何をしようというのか!?
院長のカウンターは、あまりにも完璧すぎるのです!」
セミ・ラフィーナ「攻めないぞ」
クピピ「動かない、双方動かなくなったのです」
アジド・マルジド「理想的だな。攻撃を仕掛けてこない相手には、反撃も必要なく、争いが生まれようもなく、
勝ちもなければ負けもない。理想の世界だ。ただし、これは試合だ。おまえの技と俺の技。
どっちが上でも構わないというには、このアジド・マルジド――若すぎる!」
――――射程ギリギリから魔法を放つアジド・マルジド。「バイオII、いただきっ!」
――――だが、吹っ飛んだのはアジド・マルジドだった。
クピピ「あ、当たった〜〜ッ!」
セミ・ラフィーナ「とうとう使ってしまったか、これを」
――――銃士制式長銃(バストゥークの戦績アイテム)を手に持った、セミ・ラファーナ。
ナナー・ミャーゴ「ウィンダス守護騎士のあいつが、あれを……」
クピピ「完全無欠を誇る院長のカウンター戦法が、狩人のブルジョワ兵器、銃の前にクリーンヒットを許しましたーッ、なのです!」
アプルル「おにいちゃんに、当てた……」
――――朦朧とした意識のなか、ファミコン時代の戦闘BGMイントロを口ずさむアジド・マルジド。
――――30年前、戦争中。先代ウィンダス口の院院長シャントット。
彼女の周りを、幾人ものタルタルが取り囲む。だが――――
口の院魔道士「参りましたッ!」「未熟者ゆえッ」「撃ちこめませんッ」
シャントット「オホホホホ! 攻撃される前に敵に力量を判らせ、敵に、刃向かう気概をなくさせるんですわ!
そうすれば、この戦争も必ず勝てますことよ!」
アジド・マルジド「でれでれでれでれ、でれでれでれでれ♪」
――――アジド・マルジド、XX歳。
アジド・マルジド「想像できないんですよ。諸先輩方は、シャントット院長が天下無敵の大魔道士と、
尊敬してらっしゃるようだけど。俺にはどうしても、そうは思えないんですよ」
口の院魔道士A「貴様、院長に向かって……!?」
――――魔道士Aをサイレスで黙らせるアジド・マルジド。
アジド・マルジド「こちとら最前線でヤグードとの戦いに命張ってんだぜ。
師匠に魔法もロクに撃てないい腰抜けが、なに跳ね返ッてンだよ?」
シャントット「下がりなさいな、わたくしが相手をすれば済むことですわ」
――――魔法勝負で対峙する2人。
口の院魔道士「アジド・マルジドが……」「詰めてる……」
「院長が、下がってる……」
アジド・マルジド「いざ!」
――――魔力の泉で先手必勝、一気に勝負にいくアジド・マルジド。
シャントット「わ た く し 、 ブ チ 切 れ ま す わ よ」
――――詠唱を止めようと、とっさに武器を使ってしまうシャントット。
それを察知して背を向けるアジド・マルジド。
シャントットの短剣がアジド・マルジドを袈裟斬りに。舞う血飛沫。
口の院魔道士「な、なんと……」
アジド・マルジド「院長……卒業証書、しかと受け取りましたァッ!
次の院長は、この俺が継がせていただきますッ!!」
クピピ「さぁセミ・ラフィーナがとどめの一撃を加えんと、弾を装填したのです!」
――――だが、ダウン状態から即座に立ちあがり、体勢を整えるアジド・マルジド。
アジド・マルジド「舐めんじゃねェ、猫耳ィ!
生まれ落ちて30余年、魔法ぶちこむことだけ考えて生きてきたんだぜ!
てめェのような若造とはなァッ!」
セミ・ラフィーナ「若造!?」
アジド・マルジド「年季が違うんだッ!」
――――バインドで動きを止めるアジド・マルジド。
アジド・マルジド「まだまだァ!」
――――さらにスリプルを加え、背後からファイアIIを叩きこむ!
クピピ「いったァーッ! 完全に無防備なセミ・ラフィーナに、II系魔法!
院長にこれをやられては、ハーフレジストもできなァいッ! なのです!」
クピピ「ダメージは五分! 両雌再び向かい合った〜〜ッ、なのです!」
セミ・ラフィーナ(作戦などない、計算も何もない。パッチ前、使えないと言われつづけても
音を上げずについてきてくれた、この弓を……信じる)
アジド・マルジド(やれるものならやってみな。答えは単純。お前の弓と俺の魔法、どちらが上か!)
クピピ「徐々に、徐々にセミ・ラファーナのTPが溜まっていくのです!
アジド・マルジドも、強化・弱体魔法を着々とかけつづけているのです!」
――――さらに間合いを詰める二人。
クピピ「お、恐ろしい光景なのです! 手を出せば、必ず相手を倒せる距離なのです!
アプルル「よくやるわ、ふたりとも……」
アジド・マルジド「TP300までよく我慢したな……」
――――セミ・ラファーナのダリングアロー(WS)が、
アジド・マルジド「セミ……」
――――アジド・マルジドに、
アジド・マルジド「……ラフィーナ」
――――HITする瞬間。
――――アジド・マルジドの身体が黒い空間に吸いこまれる!
デジョンで姿を消したアジド・マルジドを見失ったセミ・ラフィーナ。
次の瞬間、魔力の泉を開放し、ファイアII、ブリザドII、サンダーIIを矢継ぎ早に放つ!!
カーディアン「勝負アリィィッッッ!」
アジド・マルジド「戦争を体験していた分、コンマ1ミリ、俺が上かな」
クピピ「勝負あり! 完全無欠のウィンダス頂上対決、ここに決着!
アジド・マルジド院長に凱歌があがったのです!!」
アジド・マルジド「ミスラというものに、狩人というものに、生まれて始めて畏怖した」
「もし生まれた月日が逆なら、今ごろ俺の身体はサルタバルタまで吹っ飛んでいただろう」
「戦場に立った時間が、そのまま明暗を分けた。それだけだ」
――――立ち去ろうとするアジド・マルジド。
セミ・ラフィーナ「甘いな……とどめは刺さないのかい」
ハエ・ジャッキヤ「な、なにを……」
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ウィンダス頂上対決 11/11:02/09/17 17:35 ID:23aYSe0F
セミ・ラフィーナ「カーディアンがどう判定しようが知ったことじゃない。
完全に息の根止めて決着というのが、真剣勝負というものだろう?」
アプルル「や、やめて、おにいちゃん」
アジド・マルジド「はぁッ!」
――――振り向きざま、倒れているセミ・ラフィーナへサンダーIIを叩きこむ!
ドンッッ!!!
クピピ「!!!!」
観客「キャアーッ」
アプルル「――――!!」
――――アジド・マルジドの放ったサンダーIIは、セミ・ラフィーナの僅か数ミリ横に着弾していた。
アジド・マルジド「生き甲斐を奪ってくれるな。あと何年でも、現役でいる」
セミ・ラフィーナ「……バカが…………」