【キミの優しさ】FF11ちょっといい話5【忘れない】
サンドリア行商用にタル♀でセカンドキャラを作りました。
薄暗い港区競売所前とモグハウスのわずかな距離を行き来する事だけが彼女の
日課で、なんだか可哀想かな、と思っていました。それでも、こっちを向けば
彼女はいつも笑顔で「そんな事ないよ」と言っているようにも見えました。
2ヶ月経ち、そんな思いも忘れていた頃。僕は1つの決心をしました。
「他にやるべき事もあるし、キリがないから、FF11を解約しよう」
そして、知り合いに今までのお礼を渡そうと、セカンドキャラに切り替えて
荷物の整理をはじめました。
彼女のモグハウスをのぞいたら、彼女が買っておいてくれたクリスタルや
合成材料が沢山ありました。もう使う事もないので、人に送ったり店で売って
ギルに変えていきました。わずかなお金が手元に残り、モウグハウスは空っぽ
になりました。
つづく
手持ちで何か処分できるものはあったかな・・・と、アイテム一覧を開くと、
そこには「冒険者優待券」と「ディア」が残っていました。
「そういえば・・・彼女は冒険者だったんだな」と、何か切ない気持ちになりました。
「外にだしてやろう」そう、思いました。
ディアを覚えさせ、ワックスソードを買いました。彼女がずっと大事にもって
いた、おそらくはもうしわくちゃであろう優待券もトレードさせました。
北区を抜けロンフォールへ出ると、外は快晴で、ウサギが跳ねています。
普通の冒険者がそうするように、ディアを唱えてそいつらに斬りかかりました。
日もくれ、城壁にかがり火が灯る頃、彼女はLV3になりました。
そして、ヴァナディールとのお別れの時間でした。
つづく
最後によく見ておこうとこちらを振り向かせると、夕日に照らされた彼女は、
最初に出会った頃の笑顔のままでした。たった1日だけど、喜んでくれたかな。
そんな事を考えながら、僕は最後のログアウトを押しました。
彼女は草原に座りこみ、ゆっくりとカウントダウンが始まります。
暗く、遠くなっていくヴァナディールの大地と彼女を、
僕は最後まで見つめていました。