死を覚悟した瞬間

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321あなたのうしろに名無しさんが・・・
自分ではなく、知人の話です。
2人で沢登りに行った所、沢の入り口の滝(高さ15メートル)の状態が
悪かったので直登を諦め、左から大きく迂回して滝の頂上付近まで登りました。
危うい足場から滝の頂上に出ようとした所、知人が掴んだ木の根が
ポキン!
バランスを崩した知人は15メートル下の滝壷へ!
悲鳴も何もなく、猛烈なスピードで滝壷の真中に突き出ている岩の近くに
落下しました。
一度滝壷に沈んだ友人がぽかっと浮かび、私は先ほど苦労しながら
登った滝の脇の斜面を飛ぶように駆け下りました。
滝壷まで下りきると、水深も考えず滝壷に入り込み、知人を引き上げましたが
意識はなく、彫りの深い顔が、腫れと頭蓋骨骨折でのっぺりしています。
そして、顔の傷からはあきれるほどの出血。
鼻の穴に指を突っ込み、鼻を引き上げると一気に血が吹き出しました。
ふもとのキャンプ場まで降りて救助を依頼し、救急隊とともに現場へ。
担架に彼を固定して山道を戻ります。交代で担架を担ぎましたが
流れる血で担架が滑り、途中何度も落としそうになりました。
何とか救急車までたどり着き、病院へ。
診断では頬、鼻、顎、目の周りが骨折。中でも頬骨は砕けているとの事。
眼球も傷ついており、内出血により脳が圧迫されているらしい。
落下の衝撃による内臓の障害は、その時点では不明。
最低4ヶ月は入院。退院後の治療にさらに数ヶ月を要する。
ただし、運良く死ななければという条件付でした。
そして、恐らく翌日まで持たないであろうとも。
遠隔地で家族の到着に時間がかかったため、私がここまでの話を聞きました。

顔のあちこちに人工骨を入れる羽目になったものの彼は元気に退院し
元の仕事に戻りました。
片目は白目が真っ赤で調節機能に障害は残りましたが、まあ、元気です。

落ちる直前、滝の頂上で赤い服を着た釣り人を見たと彼は言い張りますが
ほぼ同じ位置にいた私には何も見えませんでした。
斜面を駆け下りる最中、私は確かに男性の笑い声を聞いたように
思っていますが、無論、彼が聞いている訳はなく、確証もありません。