Aさん(男性の友人)の話をさせて頂きます。
その当時、Aさんは都営住宅に住んでいました。
その住宅は、同じ造りの部屋が左右対称になっていて、
2軒で1棟という住宅です。
ある夜、彼が仕事から帰って来ると、隣の家で
ゴソゴソと人が動く気配が。
隣には一人暮しのご老人が住んでおり、いつもなら彼が
帰宅する時間には寝静まっていて、何の音もしないはずなのに
、その日に限って音がしたらしいのです。
「じいさん、トイレにでも起きたのかな?」
そう思ってそんなに気にも止めず、その日はすぐに寝たそうです。
しかし、それから2,3日経っても同じ音が聞こえます。
決まって夜の12時頃。
そしてあくる朝。
外が騒がしくて目が覚めたAさんは、庭に警察が来ているのを
見てビックリしたそうです。
警察は隣の家に出入りしています。
外に出て、野次馬で集まっていた近所の人に尋ねてみると
「お宅の隣のおじいさん、自殺してたらしいのよ」
という答えが返って来たそうです。
え…だって、夕べも隣で音がしていたし…。
「じゃあ夕べなのかしら?とにかく、散歩していた人が、
部屋の中で誰かが…っているのが見えるって、警察に通報したんだって」
いくら他人とはいえ、隣の家の事なので、彼はあまりいい気持ちでは
なかったようです。
そして、警察の検死の結果、死後4日は経っていたそうです。
彼がここ数日、聞いていた音は何だったのでしょう?
普通ならここで話が終わるのでしょうが、続きがあります。
隣の部屋が空家になってからも、毎日その音は聞こえていたそうです。
ある夜、彼は意を決して隣を覗いてみる事に。そして、彼が見たものは…。
ちゃぶ台を部屋の真ん中に引きずって、ロープを掛けている
おじいさんの姿でした。
彼は怖い…というより、哀しくなったそうです。
この話を私にしてくれた時、最後にこう言っていました。
「いくら自分で選んだ道とはいえ、あの人は永遠にあの部屋で
同じ行動を繰り返すんだよ…」と。