【8月18日】百物語本スレ【怪宴】

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240代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8
コッソリ ◆.PiLQRq.0A 様 『無題』
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もう二十年近く前の夏の話だ。
その日はちょうど祭りがあって、友達と夜店を回る約束をしていた。
住んでいたところはド田舎だったので祭りの規模は大したことはないが、
夜店が出たり、公然と夜更かしが出来るその日は子供心に楽しみだった。
祭りの会場は、当時住んでいた家から小川を挟んだ向かい側で、会場へ行くには橋を渡るために迂回をする必要があった。
普通に行けば子供の足で徒歩20分程度はかかる距離。家を出たのは午後6時半を少し過ぎた頃。
「このまま普通の道を通って行くと約束の時間に遅れる」そう思ったので、ショートカットをすることにした。

家から祭り会場の方向へ真っ直ぐ進むと古びた水門があった。
その水門の上を渡って川向こうに渡れば半分以下の時間で祭り会場に着ける。
川向こうの友達の家へ遊びに行く時などに使っていたのだが、大人からは「危ない」と禁止されていた。
水門自体の老朽化や全く人が通らないような場所にあるのだから当然のことだと今は思う。

その水門の周囲は全く手入れされていない雑木林で、背丈ほどもあるカヤが辺り一面に生えている。
しかも時間は夕暮れ時。水門の近くに着いた頃には光は周囲の草木に掻き消されて辺りは真っ暗だった。
薄気味悪さもあったが、それ以上に夏特有の湿り気を孕んだ空気や身体に纏わりつく蚊柱が不快だった。
人は来ないと言っても、俺や近所の悪ガキが使うので、獣道のような細い通り道は確保されている。
はびこるカヤを掻き分けるようにして進んで行き、そろそろ水門だな、と思った。