後味の悪い話 その133

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都筑道夫の短編「風見鶏」

ノブオ(仮名)は児童向け教材のしがないセールスマン。
遠縁の町工場経営者の厚意で、家賃無料で工場の宿直室に寝泊まりさせてもらっている。
ある時、見知らぬ若い女から電話が来る。
女は民家の二階に監禁されていて、見張りの中年女の入浴中に適当な番号を回しているという。
(昭和4〜50年代の作品。電話はダイヤル式が普通だった)

「よかった、ちゃんとお話してくれたのはあなただけ。みんなイタズラ電話だと思ってるの」
「おばさんはとてもおっかない人なの、わたしが勝手に下に降りると折檻するの」
「玄関には鍵がかかっているの、開けかたがわからないの。おばさんが服を着せてくれないから、わたしはいつも裸なの」

見知らぬ女は毎晩、電話を掛けてくるようになった。
話すうちに、女はまだ若く、知恵遅れで自分の名前もわからず、おそらく美しいことがわかる。
そして、「おばさん」に監禁され、売春を強いられているらしいこともわかり、ノブオは女を救い出すことを決意する。