大阪最強心霊スポット part32

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905本当にあった怖い名無し
この物語は、大阪三指に入ると謳われるある上級霊能力者の弟子が体験した『実話』を
モデルにした物語である。
しかし守秘義務と素人の安直な行動による被害発生を抑止する為、
物語の中では、個人名、団体名、所在地等は全て伏せられている。
主人公の男が霊能力者であることは『事実』であり、その伝説はこの男を知る者たちの間で
今も語り継がれている。

『本物の霊能力』を持つ男。


再び首吊り屋敷を訪れた僕を初めに待っていたものは、予想どおりゴチャゴチャした家だった。
相談者は僕が帰った後に掃除しなかったようだ。おそらく夜だったので「明日しよう」と
考えたのだろう。負霊圧に飲まれる人間の特徴である。
神は清浄だけでなく『早さ』を好む。速さでなく『早さ』だ。
職場に出勤する時に走って電車に駆け込む速さでなく、健康や朝の街を堪能する為に
勤め先の一駅手前の駅で降りて、そこから散歩がてらゆっくりと歩きながら職場へ向かう早さである。

やっぱりな。僕は心の中でそう呟いた。
負霊圧の元である二階の和室に入ると四辺に貼った護符が全て黒くなっていた。
その様は錆びた金属のようであり、人生を諦めた中年男性のようだった。
こんなことは初めてや。
桁違いの負霊圧を目の当たりにして、僕は戦慄した。

(続く)
906本当にあった怖い名無し:2012/07/25(水) 07:54:44.65 ID:dfYvnph10
僕は部屋を霊視した。陽の時間(朝昼)なら飲まれることもないと判断したからだ。
負霊圧が自分の霊能力を凌駕するケースで、陰の時間に霊視すると飲まれることがある。
霊視とは負霊圧の源泉との間合いを詰めることだからだ。
即ち攻撃力を高める為に防御力を支払う行為である。

『間は魔なり』。
『間合いとは魔合い』だ。
魔なるものとの触れ合い話し合いであり折り合いであり兼ね合いだ。

霊視の本質は視る行為でなく近づく行為である。
僕が魔合いを詰めたその瞬間、相談者が強く短い叫び声をあげた。
相談者が叫んだ理由はすぐに分かった。
畳みの一部分が、どす黒い血で染まっていたからだ。
天井を見上げると雨漏りのように血がポタン、ポタン、と落ちていた。
どうやら梁の上に『何か』いるようだ。僕は立ち位置を変えて梁の上を死角から視野に移した。
そこにはしたたる血の原因がいた。そして僕は彼と目が合った。

(続く)