霊能力者だけど、
「あの・・・?」
その時、僕の様子が変だと思ったのか、相談者が僕に声を投げかけた。
「今日のところは、こちらのお部屋に護符を貼っておきましょう」と僕は答えた。
この護符にはお師匠様の波動が込められている強力な護符だ。
とにかくこの部屋の禍々しい霊圧を抑えることが先決だ。
これ以上、首吊り屋敷で自殺者を出してはいけない。
護符を部屋の四辺に貼り終えたら、相談者にアクセサリーを渡して付けてもらった。
そして、家の掃除を徹底するように何度も念を押した。
特に水回りを重点的に綺麗にするように言っておいた。
その夜は、相談者の姉やこの首吊り屋敷についての情報収集に徹した。
まず相談者へ光物のアクセサリーを渡し、負の霊圧場に護符を貼る。
それから情報収集、これが着手して初めに行うルーティーンである。
詳しい話を聞き終えたので、その夜はそこで帰ることにした。
「絶対にこの部屋には入らないようにしてください。護符で負の霊圧を抑え込んでいるので、
この部屋の外にいる限り飲まれることはありません」と忠告し、首吊り屋敷を出た。
擦りガラスの向こうの世界に立っている背の高い女が、僕に「そんなことをしても無駄だ・・・」と
警告した。僕はその警告が聞こえなかったふりをして、踵を返し首吊り屋敷を後にした。
(続く)