556 :
◆JwKmRx0RHU :
>>488-489 「みんな、お疲れさま」
「お疲れさま」 生活担当の内田駿(うっちー)と丸山陽菜(まる)が、熱いお絞りを7人に配る。
「かぁぁーーーっ 生き返るぜーーーっ」 鈴木が顔を拭く。
「鈴木の “ とっつぁん ” ! 惚れちゃうかも〜」 内田が茶化し、皆に爆笑が巻き起こる。
それを田中が一人だけバスから降りず醒めた目で見つめており、西原に視線を移すと彼女が頷き返す。
「凄いね〜あんたら男らしくて恰好良いよッ やっぱり男は頼もしくないとね! 美咲も大樹に惚れ直しただろー?」
6人をもてはやしていた西原が、いきなり中村に会話を振る。
「え!? え!?」 どう返していいか分からず、自分の恋心を悟られた恥ずかしさに赤面している中村に、
「付き合っちゃいなよ!」 西原グループの山本凜(渾名:リンダ)が煽る。
「あ〜ん! いいなー! あたしも男らしい彼氏ほしいーーー! 屁タレ要らねぇ〜!」
西原グループの川向笛羅(読み:カワムキ・テキーラ、渾名:ムッキー)も同調する。
「はぃはーぃ。 ノンアルコール・ビールで祝杯ですよ〜」 原と内田と丸山が使い捨てコップを配り、飲み物を注ぐ。
バスには容量31リットルのボトルクーラーが装備されており、専用の小型エンジンによる独立した電力で冷やす。
この発電用エンジンが実装されているので、走行用の大型エンジンを停止させたままでも給湯や洗濯などに不自由しない。
「でわぁ、我らが勇士7人、全員の帰還を祝してぇ〜 乾杯ーーー!」
「かんぱーーーぃ!」
「おつかれーーー!」 バーベキューの大盤振る舞いに、場は更に賑わった。
「ひゃっほーーーぃ!」
557 :
◆JwKmRx0RHU :2012/05/02(水) 02:14:20.28 ID:qYnmNolG0
>>556 バスの中に原、堺、工藤、佐藤、高橋、毛利、中村が集い、救助要請について話し合っている。
「そうか、握力が・・・」
「ええ。 120発ほどで握りが利かなくなりました」 工藤は堺に報告しながら自分の左手を見つめる。
「俺たちゃ、命からがら逃げ出して来たんだ。 あんなリスクもう二度と負いたくねぇ」
「本当に、お疲れさまです。 貴方たちの頑張りで、小さな病院では手に入らない器具も多く入手できたそうよ」
「もし相手が嘘をついていて、それで犠牲者が出たら後悔してもし切れないよ」 中村が佐藤の袖肘を掴みながら言う。
「話してみて、そう感じましたか?」 工藤が原に確認する。
「こればかりは、確かめる以外に判断のしようがないわ・・・」
「最初は調達だと返事して、その後に言ってることを変え来たんだけど、それは何か事情あってのことかも」 と高橋。
「別館は地下じゃないから、さっきほどの危険はないだろうけど・・・」
「工藤君は行っちゃ駄目ッ 充分に回復してるか分からないんだから」 毛利が強く念を押す。
「僕が行くから問題ないだろ」 離れて聞いていた田中が座席から割り込む。
堺を除く全員が一瞬、黙り込み、その理解不能な空気に堺はけげんそうに見渡す。
「そもそも弾薬が足りるのか」 佐藤は田中の割り込みには触れなかった。
「持ち出した量の倍ある」 堺が即答する。
「(1度の強硬調達で3分の1も消費したのか・・・。 救助で更に3分の1を失えば、今後に支障が)」 工藤は眉をしかめる。
558 :
◆JwKmRx0RHU :2012/05/02(水) 02:15:45.95 ID:qYnmNolG0
559 :
◆JwKmRx0RHU :2012/05/02(水) 02:16:57.43 ID:qYnmNolG0
>>558 右構え後ろ左手のアンカー付きサバイバルナイフは、小指側および相手側に刃が来るリバース・グリップ(逆手持ち)。
ナイフの持ち方は大別すると、順手持ちで親指がナイフの峰(背部)や鍔(ハンドガード)を支えるセイバー・グリップ、
同じくいずれも刃が下を向く順手持ちで、親指を握りに用いるハンマー・グリップ、そしてリバースの3通り。
リバース・グリップではリーチが劣り、前に突く攻撃ができなくなるのでデメリットが大きいように感じられるが、実は違う。
3通りの持ち方で、最もパワーを得られるのがリバースであり、殺し合いに限った格闘では最も重要な要素の1つとなる。
ブッシュナイフや刀など、重量と加速でパワーを得られる長い刃物と違い、短い刃物では込められるパワーの大きさが、
そのまま相手へのダメージに転換される。 また、リーチが短いので接近戦になだれ込む展開なので、
ボクシングのジャブを指し合ったり、フェンシングのように牽制し合う展開も長続きしない。
リバースでは、自分側に向いている峰(刃の背部)を相手の腕や首に引っ掛け、相手の動きをコントロールする技法がある。
つまり、短い刃物ほどリバース・グリップのメリットが増すのだ。
田中は前となる右手に、ナックル型ガード付きナイフをハンマー・グリップで中段に構えている。
右手は拳と刺突を主体とした攻撃に使うのだろう。
構えから、相手の出方は予想できる。
“ (闘技の)空手に構えなし ” とは、これを戒めた口伝であるとした説が存在するほどだ。
また、剣術の柳生新陰流の奥義には「型」が無いが、これは相手の動きに応じて変幻自在に対するからであり、
構えるタイプの剣術に対するアンチテーゼとしての極致であると言われている。
田中の実力が如何ほどかは分からないが、独学で身に着けたのであれば、戦力として期待してよいと堺は考えた。