399 :
◆JwKmRx0RHU :
>>387 「歩けるか?」 佐藤が前田に確認する。
「うん大丈夫」
噛まれたのは靴の上からで、しかも人体で最も堅い部位である踵の骨だったのが幸いした。
「一旦バスに戻って、調達した分を置いて来た方がいいのでは?」 村上が提案する。
「いや、上にいるゾンビが階段で降りて来る前に、一気に終わらせよう」 工藤が返し、一行は地下へと階段を下りていく。
電力を失っている病院の地下は、窓がないので奥まで見えないほど暗い。
銃に装着してあるライトや手持ちの懐中電灯を点けるが、
部分的に壁や通路が照らされるだけで、とてもではないが視界が確保できたと言える状況ではなかった・・・。
だが、ここで立ち止まっていても埒が明かない。
正面を撃てる構えを保ちながら工藤が進み始め、他の者も続く。
心許ないライトの光で照らされた通路。
その先に、もぞもぞと蠢く複数の塊が浮き上がった。
光に反応したゾンビは、白濁した眼球を工藤たちへと向けると、歯を剥き出しながら立ち上がり他のゾンビも連なる。
「来る、来るぞ・・・!」 鈴木の声が合図とでも言わんばかりに、一斉に移動が始まった。
違うのだ。
視界の条件が、1階とこの地下とではまるで違う。
それは素人目にも歴然とした差を感じることができるほどの悪化だった。
「ちくしょう・・・ッ」 工藤の銃撃が開始される。
1発、2発、3発・・・
止まらない。
倒れない。
「お・・・ おぃッ」 佐藤が叱咤する。
村上が工藤の隣に出て撃ち、ゾンビの首から上が全て弾け飛ぶ。
威力が増して見えるのは、それだけ距離が詰まっていることを意味していた。
工藤は安全装置レバーの設定を変える。
村上が2発目の引き金を絞るが、銃は何も反応しない。
この局面での弾切れだった。
400 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/26(木) 11:45:43.94 ID:MMJVi6Mi0
>>399 工藤が連射で薙ぎ払う。
村上は取り出したスピードローダーを焦って落とし、
マズルフラッシュがまるでナイトクラブのストロボみたいに、その動きをコマ刻みに映し出す。
“ 非常用発電機 発電設備 ” と書かれた扉を見つけ、
「電力を回復できるかも知れませんよ」 雉貝が表示を指す。
リロードした工藤は独断でその部屋に突入し、部屋にいた3体のゾンビを仕留め、全員を招き入れて鍵を閉める。
雉貝は部屋を一通り照らして周り、手錠を嵌められている手でドラム缶を叩く。
「ディーゼル発電機に燃料を足して下さい」
両手の懐中電灯で鈴木が照らしながら佐藤と渡辺で補給し、雉貝が発電機を再起動させて天井の照明が点灯した。
村上は回収したスピードローダーでリロードを終え、前田は1発ずつ補充し、工藤はショルダーバッグの残弾を確認する。
「お前ら弾は残ってんのか?」 佐藤が戦闘担当の3人に確認し、
「通路も灯りが点いてるからやれる」 工藤が扉の隙間から通路を確認し、再び施錠してから答える。
「たぶん大丈夫かと」 村上と前田は、リロードに手間取ったのも原因していた。
戦闘担当2名と、銃を立て扉を背にする工藤の横で鈴木が鍵を開け、ドアノブを回して扉を僅かに押す。
肩で扉を強く押して外に飛び出た工藤は、サイト越しに通路の奥、次いで振り向き背後に銃口を向けて進路を確保した。
散弾銃の2人も前後に展開し、その中央に調達担当が加わる。
「まだ、あんなに居るのかよ」 自分たちが使った階段を下りて来るゾンビの脚に、背後を守る前田がこぼす。
「走ろうッ 足元のゾンビに気をつけて」 一呼吸おくれた前田も後を追う。
401 :
◆JwKmRx0RHU :2012/04/26(木) 11:46:08.42 ID:MMJVi6Mi0
>>400 ドラマでよく映される “ 手術中 ” の電灯。
7人は、それが設置された部屋の前に到達し、目で合図しながら鈴木が開けた扉に工藤が飛び込む。
退路を確保する村上と前田、調達担当4人の背中から銃撃音が響き、やがて出て来た工藤と入れ違いに4人が入る。
工藤は単発で射撃するが、ワンショットキルできない。
「さ、佐藤くんを呼んでくれッ」 銃の狙いを保ちながら工藤が叫ぶ。
「どうしたッ」 村上に呼ばれた佐藤が駆け付ける。
「握力が出ないんだ。 命中させられないッ」
「貸せッ」 佐藤が銃撃するが、命中率は大差ない。
ライフルを工藤に返し、手術室の渡辺を呼ぶ。
「お前、シューティングゲーム得意だろ。 やれ!」
5発ほど撃った結果、佐藤よりは腕が立つ。
「おい!! まだかッ」 手術室に戻った佐藤の檄が飛ぶ。