ガチでゾンビが溢れたら皆どうするよ 29日目

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356 ◆JwKmRx0RHU
>>340
バックで入りながら、病院の駐車場に車を停めた。
綺麗な大型の総合病院だが、人間の社会など脆いものだ。
ほんの2ヶ月間ほど手入れしなかっただけで至る所に雑草が生い茂り、路面や駐車場に砂や土が溜まる。
ここに生きている者の気配はなく、目の前のコンクリートの箱で何が起こったのかは考えるまでもなかった。
巨大な棺に、いったいどれほどの数のゾンビが残っているのだろうか。
しかし、これほどの大病院ともなれば、機材や薬剤に事欠くことはないだろう。
14歳の妊婦も含まれているし、囚人が自称の通り医者ならば、その技能を使える体制を築いておいて損はない。
堺が口を開く。
「俺とこいつが薬や手術道具を調達して来るから―――」
「堺さん、貴方を失えば僕らは移動する手段を失います。 そんなリスクは冒せません」
「じゃぁどうすんの? こんなヤバそうなとこ入るなんて御免だよ」 生徒の一人が機先を制した。
「絶対やだ〜。 きっとゾンビだらけだもん」 女子も続く。
工藤はこの展開を予想してたようだ。
「僕に行かせて下さい。 堺さんのライフルを僕が、僕と川上さんの散弾銃を他2名に受け持ってもらうのでどうですか」
確かに、堺に何かあればバスは動かないし、囚人の雉貝(キジガイ)が九州行きを請け負うとも思えない。
川上さんの2tトラックに全員が乗るのも不可能で、工藤少年の指摘は正しかった。
雉貝は手錠を嵌めてあるから危険度も小さいだろうが、銃を扱う3人の中学生が互いを誤射してしまう事態が危惧される。
ライフルを追加すべきか堺が一人で検討したが、命中精度を要求されるライフルよりも散弾銃の方が適すると判断した。
サービスエリア脱出の際に雉骸と共闘した村上と前田が名乗り出て、調達チーム護衛担当3人は弾薬装填の練習を始める。
雉貝が荷を運ぶ人員2名を要求してきたので、毛利と三河が名乗り出るとそれを庇うようにヤンチャ組が替わりを引き受けた。
357 ◆JwKmRx0RHU :2012/04/22(日) 19:50:41.68 ID:78hSyl1i0
>>356
「こっちが囲まれたり、何か起きて退避する時はクラクションを鳴らすよ」 堺は2tトラックの荷台から複数の弾倉を渡す。
「はい」 工藤は受け取った弾倉をショルダーバッグに収めながら返事をする。
「みんな無茶するな。 物資は逃げたりしないから、危なくなったら迷わず後退してリトライすればいい。 焦りは禁物だ」
緊張してるのか、言われるまでも無いと思ってるのか誰も返事をしない。
「ちゃんと帰って来ないと駄目だからね」 三河は佐藤を見送る。
「じゃぁ」 工藤の先導でガラスの自動扉をこじ開け、一行は建物の中へと消えた。

ゾンビ独特のキンモクセイの花に似た臭いが立ち込めている。
「この臭い・・・ かなり多いぞ」 既に3体のゾンビが彼らに気付いた。
「大方の病院は1階と2階が外来診療と薬局。 手術室は地下ですね。 こっちです」 雉貝が指示す方向に工藤が進む。
曇り空の天候が足かせとなり、電気の通ってない病院内は昼間であるにも拘わらず暗い。
「散弾銃はなるべく撃たないで。 その8発チューブ装弾は補充に手間取るから、残弾をカウントしながら戦うんだ」
工藤は話しながら携帯電話を取り出し、カメラ機能で病院内ガイド図面を撮影する。
スピード・ローダーと呼ばれる給弾装備を持ってはいるが、ぶっつけ本番ではどこまで使いこなせるかも分からない。
M4A1カービンの銃口を下に向けた工藤を先頭に、雉貝、佐藤、村上、鈴木、渡辺、前田の順で小走りに進み、
3体のゾンビは身体を揺らしながら隊列の後を追い始める。
http://ja.wikipedia.org/wiki/M4%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%B3
358 ◆JwKmRx0RHU :2012/04/22(日) 19:52:02.36 ID:78hSyl1i0
>>357
「まずは薬局で抗生物質を手に入れます」
扉を開け、工藤が1人だけで先に入り、奥の部屋を調べていると通路から銃声が轟く。
室内の安全を確保した工藤が手招きし、雉貝、佐藤、鈴木、渡辺が入るのとすれ違いに通路へ出て2名を止めた。
散らばっていたゾンビたちが通路の各診療室から姿を現し、まさしく此処がゾンビの巣窟であることを知らしめる。
ざっと30体。
「お、おい早く撃てよッ」 前田が焦りを露わに叫んだ。
工藤は、無言で銃口の照星(フロントサイト)と後方の照門(リアサイト)をゾンビの頭部に合わせ、引金(トリガー)を絞る。
タタタン!
乾いた大きな発射音が鼓膜をつんざき、サッカーのシュートを食らったような強い反動を右肩に残して銃弾が発射された。
ほぼ同時に一番前のゾンビの頭部が弾け、体が崩れ落ちる。
「(よし・・・ 行ける)」 予想の通り強力な反動だった。
この時はまだ、自分の握力が持ち堪えられなくなるとは露ほども思わず、掃討を開始する。
タタタン!
1度の引き金で3発が連射されるのに気付き、単発に切り替えようと安全装置レバーを操作して撃つ。
タタタタタタ!
間違えて連射に切り替えてしまい、ゾンビの群れに弾幕が叩き込まれて腕や内臓が飛び散り床を埋める。
しかし、頭部が無傷なゾンビたちは恐怖する素振りもなく、たったいま浴びせられた銃撃すらも無かったかのように進む。
村上と前田は、人間の作り上げた兵器の無力ぶりを痛感してあとずさりした。
359 ◆JwKmRx0RHU :2012/04/22(日) 19:53:39.80 ID:78hSyl1i0
>>358
工藤は、残った位置に安全装置レバーを操作し直して攻撃を再開し、5体を残して弾倉(マガジン)をする。
残りのゾンビを倒し、薬剤を調達した彼らはゾンビだった残骸の脇を抜けて地下へと向かった。

「痛ぁ! 痛たた」 前田の踵に仕留めたと思われたゾンビが噛り付いている。
村上が脳天に散弾を撃ち込んでゾンビに止めを刺す。
「か、噛まれたか!?」 渡辺が前田のズボンの裾をたくしあげた。
「靴下を脱がせろ」 鈴木も駆け寄り、前田の踵からふくらはぎを確かめる。
雉貝が交替し、「噛み傷も歯型も出血も見られません。 感染の恐れはないでしょう」 診断を下し、全員が胸を撫で下ろした。
犯罪者とは言え、やはり医師の言葉は信頼性が格段に違うと思い知らされる。
「(堺さんは反対したそうだけど、医師を同行させた原さんの判断は正しかったんだな)」
工藤は、真っ先に病院での調達を提言した原にも、堺に劣らずリーダーとしての資質が有るのかも知れないと認識を改めた。
360 ◆JwKmRx0RHU :2012/04/22(日) 19:55:18.11 ID:78hSyl1i0
>>356のアンカー修正

>>340

>>344