>>252 このような形で、日本での所持が禁じられている兵器が手に入るとは思っても見なかった。
しかも好都合なのは、これらの所有権を持つのが米軍だと言う点だ。
今後、自衛隊や警察と揉めても、彼らには没収する権限が無い。
工藤は、米兵が乗り捨てた車の中をそれこそ座席の下やマットレスを剥がしてまで丹念に調べ、数枚の書類を見つけた。
“ 口頭で、米兵から九州の以南の基地に届けて欲しいと頼まれた ” と事情を話せば、
(もちろん真っ赤な嘘なのだが)日本政府の如何なる立場の者でも手出しできない筈だ。
これら英文の書類は、その際の説得力を高めるのに必ず役立つだろう。
「大漁だな〜」
「凄いね」 佐藤と三河が寄り添いながら、品目別に整理している。
脱出戦で、佐藤が負ぶってあげてから二人の間は親密になったようだ。
「積み切れないよな」
「どするのか先生に訊いてこようか」 三河が無意識に呼び間違え、
「先生なんかぢゃない、俺たちとは無関係な他人だろ堺は」 佐藤が露骨に不快な表情を露にした。
「やだ、間違えちゃった。 女の先生を “ お母さん ” って言っちゃうのと同じ」
「ああ、有る有る。 俺もそれやったわ」 ゾンビ災害が起こる前の平和な生活を思い出し、幸せな気持ちに浸れる。
佐藤は三河の横顔を見ながら、この娘の笑顔をこれからも見ていたい、守ってやりたいと強く思った。
「やだぁ、そんなにこっち見ないでよ」
「え? あ、ああ、悪ぃ悪ぃ。 俺、あいつら見てくるわ」
照れ隠ししながら渡辺と鈴木に合流し、向こうが冷やかしてくる。
「あ〜ぁ、熱い、熱い」 毛利は、やっと三河と話せるわと言いたげな表情だ。
気を利かせて、距離を置きながら見守っていたのだった。
三河は聞き流しながら、笑顔を返してくる。
急に大人びた親友に差を付けられたかのように感じ、余裕顔が癪に思えた毛利は手のボトル水を振り掛けた。
「キャーッ 何?何!? たんま、たんまーッ」
騒いでる2人を見て他の女子も集まり始め、佐藤の周りにも男子が集まり自然と性別でグループができる。
川上 麻衣子はオートマチック限定の自動車免許証を持っているので、彼女に2tトラックを運転して貰うことになった。